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トラック運転者の時間外労働の上限規制と改善基準告示  2024/4/1改正施行


2024/4/1〜

自動車運転者の改善基準告示の改正時間外労働の上限規制が同時に適用されま 
す。

と言うことは、
この基準や上限を守るために、労働時間を一段と細かく正確に管理する必要に迫ら 
れるということになります。もちろん、本来は以前から行なうべき業務ではありま 
すが、今後は運行業務の効率化とともに一層の管理が必要となるでしょう。



デジタコもかなり普及してきており、その数字が正確なら業務改善を除く時間管理業務の殆どは終了してし
まうと思われますが、ドライバーの労働時間は正確に決まっている時間は一つもないと言っても良いので、
デジタコの操作上の取扱と時間算定のルールをしっかり把握する必要があります。


始業・終業も休憩時間も運転時間も休息期間も、守るべき時間は決まっていて運行時間の想定も可能でしょ
うが、実際の時間は極端に言えば走ってみたり、荷主へ到着してみなければ分からないわけです。

休憩時間か否かの判断や分割休息の取扱い、長距離輸送の際の時間外の算定等によって、総労働時間や時間
外労働時間が変わってしまいます。


時間外労働の上限規制

自動車運転者は、特別条項付36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が960Hとなり、いわゆ
時間外労働の上限規制が始まります。

ただ、既に実施されております一般業種の労働者と異なり下表の通りとなります。



【36協定(特別条項なし)の上限規制】
労基法36条
年間
時間外労働
45時間
360時間


【特別条項付36協定の上限規制】

一般の業種
トラック運転者
時間外労働
年720時間
年960時間
時間外+休日労働
月100時間未満
-
時間外+休日労働

2〜6ヶ月平均の全て
月80時間以内
-
時間外労働45時間超の月数
6ヶ月
-

トラックの自動車運転者の上限規制は、一般の労働者に比して緩く年間の総量規制のみとなっています
が、ここで忘れてならないのは自動車運転者の長時間労働の是正や休息期間の確保の為に制定されました

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」という厚労大臣告示です。
この改善基準告示の改正施行が、自動車運転者の上限規制の開始に併せて2024/4/1より施行されます。
改善基準告示の時間管理は拘束時間での管理ですので、36協定の届出の際には、告示の拘束時間の範囲内
で36協定の時間外労働の上限を設定することになります。



上限規制の管理と同時に「拘束時間」や「休息期間」の管理を行ない、その他に通常の給与計算や労務管理
を行なうのは、地場の中小の運送屋さんにとってはかなりの負担と言えるでしょう。


また、経営への影響も大きく、80H以上の残業が常態だった運送屋さんがドライバー全員の時間外労働を
平均80H以下にすると、
売上や利益への影響も大きく、少ない時間で効率的に生産性を上げる仕組み
が必要となります。


※詳細は右のページへ 運送屋さんの2024年対策  働き方改革は運送改革


改善基準告示

トラック運送事業者には、一般企業とは違う特別な労働時間管理が必要です。
近年、国土交通省と労働基準監督署の指導が厳しくなっており、さらにお互いの連携も深まっています。この背景には、依然として長時間・過重労働が問題となっており、長時間労働による労災事故やトラック事故が多発している状況がありますが、このような運転手の労働条件を改善する為に「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(令和4年厚生労働省告示第367号)、いわゆる「改善基準告示」が改正され2024/4/1に施行されます。

 トッラク運転者の労働時間等の改善基準告示  2024/4/1〜
項目
基準の内容
説明
拘束時間
1年
・1年/3,300時間−最大1年/3,400時間
(最大要件)
労使協定により3,400時間まで延長可
・拘束時間とは労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)
 の合計時間
・1ヶ月は締日から締日前日まで
・1日とは、始業から就業までの24時間
・労使協定とは「拘束時間の延長に関する協定書」

・手待ち時間は労働時間
・休憩時間は拘束時間に入るが労働時間ではない。
1ヶ月
・1ヶ月/284時間−最大1ヶ月/310時間 
(最大要件)
・労使協定により年6ヶ月を限度に1ヶ月/310時
間可

年間拘束時間が3,400時間以内
・1ヶ月の時間外・休日労働時間数が100時間未
満 (努力義務)

・284時間を超える月は連続3ヶ月まで。
1日
・1日/13時間−最大1日/15時間
(最大要件)
 1日/14時間超は、週/2回まで

(例外規定)
宿泊を伴う長距離輸送(走行距離450km以上)
の場合1日/16時間まで延長可(週/2回まで)
休息期間
・継続11時間以上(努力義務)−継続9時間(義
務)
拘束時間が14時間超は週2回が限度なので、
休息期間が10時間未満となる回数も週2回が限度
となります。


(例外規定)
宿泊を伴う長距離輸送(走行距離450km以上)
の場合1日/8時間まで可(週/2回まで)

(24時間−最大拘束16時間 = 休息期間8時間
注)一運行終了後継続12時間以上の休息期間要
・勤務と勤務の間の時間で、睡眠時間を含む勤労者の
 生活時間として、労働者にとってまったく自由な時
 間
(24時間−拘束13時間 = 休息期間11時間

・休息を継続9時間以上とは、最大拘束15時間に対応
 したもので、拘束13時間の場合は、休息は継続11
 時間となります。

※片道拘束16時間超の長距離運送は1週に1回(往復
 で週2回となる為)しかできませんので、一定の工
 夫が必要です。
休息期間の特例
(分割休息)
・連続3時間以上で2分割又は3分割可
業務の必要上やむを得ない場合で継続9時間以上
の休息期間を与えることができない場合

(要件)
・1ヶ月程度の全勤務回数の2分の1までが限度
・1回3時間以上の分割休息
・休息期間合計 
 2分割:10時間以上 3分割:12時間以上
・例外規定なので条件遵守要
・合計休息期間の付与に注意が必要
 休息期間の合計時間が満たされない場合は分割休息
 は成立しない
隔日勤務の特例
・2暦日/拘束21時間 休息期間継続20時間
(要件)
業務の必要上やむを得ない場合で、上記時間厳守
の場合に限り隔日勤務に就かせることができる


(例外規定)
・夜間4時間以上の仮眠:2暦日の拘束24時間以
 内可

 2週間/3回まで
・2週間の拘束時間126時間以内
 21時間×6勤務
・「隔日勤務」とは始業及び終業の時刻が同一の日に
 属さない業務をいう
・隔日勤務後の休息期間20時間以上の付与に注意
フェリーの特例
乗船中の時間は休息期間として取り扱う。
乗船時間は休息期間として、休息期間から減じる
ことができる。ただし、減算後の休息期間は、フ
ェリー下船から勤務終了までの時間の2分の1を

下回ってはならない。
休息期間となるフェリー乗船時間と本来与えるべき休
息期間により下船後の拘束時間(労働時間)の算定に
影響するので注意が必要です。
注)フェリー乗船時間が休息期間を満たしている場合
  は下船時刻が次の始業時刻になります。
運転時間
・2日(始業より48時間)平均 1日/9時間
・2週間平均 1週/44時間 
・運転時間は、特定の日を起算日として、2日・2週間
 を平均して計算します。
連続運転時間
・4時間以内
(4時間以内又は4時間経過直後30分以上の休憩
することにより運転を中断しなければならな
い。)


(例外規定)
・高速道路等のSA・PA等に駐車できず、やむを
 得ず4時間を超える場合には4時間30分まで延
 長可

・運転の中断は休憩とする
・4時間30分を1セットと考えると計画しやすい。
(運転4時間+運転離脱30分)
・運転を中断する休憩等は、1回につき10分以上とし
 て分割可。
休日
通常勤務:休息期間9時間+休日24時間
=継続33時間
隔日勤務:休息期間20時間+休日24時間
=継続44時間
いかなる場合でもこの時間が30時間を下回って
はならない。
・休日は休息期間に24時間を加算した連続した時間
・2日連続の休日を与える場合は、2日目は連続24時 
 間以上で差し支えない。
時間外労働の限度
・法定労働時間 1日/8時間 1年/360時間
 法定労働時間を超えて労働させる必要がある場
 合は36協定の締結・届出が必要となります。

36協定の限度時間


1ヶ月
1年
原則
45時間
360時間
特別条項付
-
960時間
・トラック事業は、時間外労働の労使協定がなければ
 改善基準による運行が違法になる場面がでてきます。
・労使協定があっても、運転時間の制限は延長できま
 せん。
・1日の最大拘束時間(15時間)、1ヶ月の拘束時間
(284時間・310時間)、1年の:拘束時間(3,300

 時間・3,400時間)の範囲内でしか時間外・休日労
 働はできません
・1ヶ月の 時間外・休日労働は、1ヶ月の拘束時間
−(1日の法定労働時間+休憩時間)× 出勤日数が

限度となります。
休日労働の限度 ・休日労働は2週間に1回を限度とし、かつ1ヶ
月の拘束時間及び最大拘束時間の範囲内で可能

以上のように他産業とは違ううえにかなり細かく規定されているにもかかわらず、労働時間は引き続き高い水準を保ったままです。
交通安全及び従業員の安全衛生の観点から見ても、この改善基準を守るのは最低条件ですし、運送業の経営者・運行管理者・総務人事関連の方たちにとっては厳守の基準となります。

運送業にとって、ドライバーを含めた従業員の就業環境の改善が、今後の大きな課題です。
ドライバーの平均年齢が高い状況の中で、就業環境の改善と若手の採用・育成を進める為には、従来からの物を運ぶだけの運送業から脱却して生産性を高め、働き方改革に対応した物流業に変革していく必要があるでしょう。
一緒に取組みましょう。