医療機関の時間外労働自体は、数字的には他の業種に比べて過度に多いという訳ではありませんが、製造業等の交代性がある業種と比べると多い傾向にあります。
ただし、単純な数字の比較では測れない要素があり、時間管理のリスク管理上は、その部分を無視するわけにはいきません。
まず第一に、勤務の時間帯が常に移動しており、一定期間(例えば1週間単位とか)同じということがなく心身への負荷が大きい。
第二に、勤務から勤務までのインターバル時間が一定でなく、さらに、残業になるとさらに短くなり、休息時間が減ってしまい心身への負荷が大きい。
第三に、業務開始前の準備と終了後の整理業務により、常に残業が発生することが常態化しているなかで、その時間が労働時間にカウントされていないことが多く、心身への負担と伴に不払い残業の発生が懸念される。
第四に、休日の取得が不規則で連休が取りずらい為、休日前後の休息時間が少なく、一般企業の労働者と比較すると、心身への負荷が大きい。
看護師業務の整理
一定規模の医療機関では、時間管理が既にシステム化されていると思われますが、時間外労働があっても申請していないケースも目立つようで、実態を伴っていないという指摘もあります。
労働時間と時間外労働の定義を理解してもらうと伴に、各医療機関におけるケースをできるだけ例示することによって、例えば所定労働時間の前後であっても”労働時間”であれば申請するようにしましょう。
・本来の看護業務以外の業務の見直し
検査の際の患者の搬送や食事の配膳、入退院の際の事務手続きを簡素化又は移管し、移管部署の増員や看護補助者の採用を検討する。
・本来の看護業務の見直し
始業前準備や終業後整理を所定労働時間内に行い、引継ぎ業務のIT化を図る。
所定労働時間の意識をもち、終業後はすみやかに次のシフト引継ぎを基本とする。
チーム間や他病棟との連携を制度化し、臨機応変な対応体制を整え効率化を図る。
医療従事者の休日
労基法第35条は、毎週1回の休日の付与義務を使用者に課していますが、その休日は原則として「暦日休日」とされています。(S23.4.5 基発535号)
医療機関のように交替制の勤務制度があって、その業務が2暦日にわたる場合にはどうしたらよいのでしょうか。
1昼夜交替勤務の休日付与
午前8時から翌日午前8時までの労働と非番を繰り返す1昼夜交替勤務の場合は、非番の継続24時間は、休日とは認められず、非番に続く暦日午前0時からの継続24時間の休日を与えなければならない。(S23.11.9 基収2968号)
注1)
医療機関における2交替での当直勤務は、上記に該当し、非番プラス暦日24時間の休日を付与しないと、労基法35条違反になります。
3交替制の休日付与
番方編成による交代制における「休日」については、下記要件のいずれにも該当するときに限り、継続24時間を与えれば差し支えないとされる。(S63.3.14 基発150号)
(1)番方編成による交替制であることが就業規則等により定められており、制度として運用されていること。
(2)各番方の交替が、規則的に定められているものであって、勤務割表等によりその都度設定されるものではないこと。
注2)
この通達により、医療機関の多くで3交替制の場合、継続24時間を休日とする扱いをしているようですが、上記要件を満たすことに注意が必要ですし、製造業等の3交替とは基本的に違うことを念頭に置くべきです。
注3)
上記要件を満たしたとしても、シフトの順番等によって継続24時間を満たさなければ、休日扱いされないことにも注意が必要です。
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