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医療機関の労働時間コンサルティング

医療機関の勤務体制、特に病床を持つ医療機関の勤務体制は、原則365日24時間体制となります。
その結果、不規則な勤務体制やストレスから心身ともに疲弊し、退職される方も後を絶ちません。人間の体は基本的に昼間働き、夜寝るようにできておりますので、3交代制等で夜勤を行う医療機関では、労働時間マネージメントによるリスク管理が非常に重要です。




適正な人員配置
医療機関以外にもシフト制をとっている業種もありますが、業務内容は工場のライン等の定型業務や看視業が多いのではないでしょうか。
もちろん、それはそれで別の苦労や問題があるとは思いますが、医療業務は、不規則性と人命に直結する重要性を考えると、介護事業と併せてスタッフへの負荷が大きい業種と言えます。

そのため、シフト制や変形労働時間制等の制度だけでなく、業務内容によっては正規従事者以外の補助者を採用して複数化を図り、正規医療従事者の負担を分散させて労働時間の削減を目指しましょう。
ただし、看護補助者の採用や活用については、必要な研修を行うことはもとより、業務内容や配置にも留意しながら、適切な指導、監督を行うことが必要です。

時間算定と割増計算
また、時間算定においては、労働時間の把握だけではなく、割増賃金の計算も間違いのないように、計算式や算定基礎賃金の範囲を賃金規定等に明記しましょう。
不規則な業務で、日勤、深夜業、時間外労働、深夜残業、公出、休日出勤等により計算も違ってきます。できれば、賃金明細にすべて記載して、いつでも本人が確認できるようにしておきます。

休憩時間と労働時間
休憩時間の確保は、時間算定以外に医療スタッフの健康面においても重要ですが、通常、所定労働時間と休憩時間は決まっていますので、当たり前のように休憩は取得したものとして扱ってはいませんか。

医療機関は、一斉休憩の適用除外ですので、原則として各自がバラバラに休憩を取得することになりますが、取得できなかった場合の時間算定に問題が発生する場合があります。微妙な問題ではありますが、明らかな指示がないまま休憩時間に労働した場合、それは労働となるのか。それは「使用者の指揮命令下にある状態か否かに」よって判断さることになります。
労働時間と判断されれば、時間外労働が発生することになり、除外すると不払い残業が発生する可能性があります。
また、使用者は休憩を与えなかったことにより、労基法34条違反ということになります。

変形労働時間制
医療機関等で、1ヶ月単位の変形労働時間制が多いのは、不規則なシフトによる休日確保と夜勤等の場合には、通常の法定8時間労働では対応できないためでしょうが、変形労働時間制の趣旨はあくまでも、労使が工夫して休日増と労働時間の短縮を進めることができる制度であることを忘れないようにしましょう。

ただでさえ負荷が大きい医療スタッフについて、決めた変形労働時間制が絵に書いた餅となっていては法の趣旨に反することになります。
尚、1ヶ月単位の変形労働時間制においては、変形期間の各日、各週の労働時間を特定する必要があり、平均して週40時間の範囲内であっても、使用者が任意に労働時間を変更するような制度は、変形労働時間制に該当しないとされています。
(昭和63.1.1基発1号、平成93.25基発195号、平成2.3.31基発168号)

結果的に、変形労働時間制に該当しないことになってしまったら、どうなってしまうのでしょうか。労働時間を算定し直して、割増賃金を遡及して支払うことになってしまうのでしょうか。
そんな大変なことになってしまったら一大事です。という訳で、決めたシフトや労働時間は自由に変更しないことを原則厳守としましょう。

シフト制と過重労働
シフトの組み方は、その医療機関の規模や内容によって、様々でしょうが、基本的な考え方は同じではないでしょうか。
それは、医療機関の規模により、その病院内での24時間体制を構築できるシフト体制が必要となるということです。

日勤、夜勤、深夜勤、3交代制、2交代制等を組み合わせて、勤務割表を作成するのは、電車の時刻表を作成するほどの複雑さに思えます。
電車には感情がありませんが、医療従事者は生身の人間であり、感情もあり長時間働けば疲労もします。
さらに、その時間帯に勤務する人達の能力や相性や希望を考慮し、変形労働時間制の上限に注意しながら、配置基準を満たして作成しなければならず、さらにさらに、突発のアクシデントにも対応しなければならないのです。殆ど神の領域と思えるほどです。

でも、できればもう少し余裕が欲しいと思われてはいませんか。
患者さんはもとより、医療従事者自身の負荷が表面に出て来る前に一度シフトの組み方を見直してみませんか。シフトの組み方は、その医療機関の総合力だと思います。業務の効率化や時間外労働の削減活動、看護助手の活用等も含めて業務全体を見直し、シフトを再構築しましょう。


医療機関の労働時間マネージメント


医療機関の時間外労働自体は、数字的には他の業種に比べて過度に多いという訳ではありませんが、製造業等の交代性がある業種と比べると多い傾向にあります。
ただし、単純な数字の比較では測れない要素があり、時間管理のリスク管理上は、その部分を無視するわけにはいきません。




まず第一に、勤務の時間帯が常に移動しており、一定期間(例えば1週間単位とか)同じということがなく心身への負荷が大きい。

第二に、勤務から勤務までのインターバル時間が一定でなく、さらに、残業になるとさらに短くなり、休息時間が減ってしまい心身への負荷が大きい。

第三に、業務開始前の準備と終了後の整理業務により、常に残業が発生することが常態化しているなかで、その時間が労働時間にカウントされていないことが多く、心身への負担と伴に不払い残業の発生が懸念される。

第四に、休日の取得が不規則で連休が取りずらい為、休日前後の休息時間が少なく、一般企業の労働者と比較すると、心身への負荷が大きい。


看護従事者の時間外労働の削減

看護師業務の整理
一定規模の医療機関では、時間管理が既にシステム化されていると思われますが、時間外労働があっても申請していないケースも目立つようで、実態を伴っていないという指摘もあります。

労働時間と時間外労働の定義を理解してもらうと伴に、各医療機関におけるケースをできるだけ例示することによって、例えば所定労働時間の前後であっても”労働時間”であれば申請するようにしましょう。

・本来の看護業務以外の業務の見直し
検査の際の患者の搬送や食事の配膳、入退院の際の事務手続きを簡素化又は移管し、移管部署の増員や看護補助者の採用を検討する。

・本来の看護業務の見直し
始業前準備や終業後整理を所定労働時間内に行い、引継ぎ業務のIT化を図る。

所定労働時間の意識をもち、終業後はすみやかに次のシフト引継ぎを基本とする。

チーム間や他病棟との連携を制度化し、臨機応変な対応体制を整え効率化を図る。

医療従事者の休日
労基法第35条は、毎週1回の休日の付与義務を使用者に課していますが、その休日は原則として「暦日休日」とされています。(S23.4.5 基発535号)
医療機関のように交替制の勤務制度があって、その業務が2暦日にわたる場合にはどうしたらよいのでしょうか。

1昼夜交替勤務の休日付与
午前8時から翌日午前8時までの労働と非番を繰り返す1昼夜交替勤務の場合は、非番の継続24時間は、休日とは認められず、非番に続く暦日午前0時からの継続24時間の休日を与えなければならない。(S23.11.9 基収2968号)

注1)
医療機関における2交替での当直勤務は、上記に該当し、非番プラス暦日24時間の休日を付与しないと、労基法35条違反になります。

3交替制の休日付与
番方編成による交代制における「休日」については、下記要件のいずれにも該当するときに限り、継続24時間を与えれば差し支えないとされる。(S63.3.14 基発150号)

(1)番方編成による交替制であることが就業規則等により定められており、制度として運用されていること。

(2)各番方の交替が、規則的に定められているものであって、勤務割表等によりその都度設定されるものではないこと。

注2)
この通達により、医療機関の多くで3交替制の場合、継続24時間を休日とする扱いをしているようですが、上記要件を満たすことに注意が必要ですし、製造業等の3交替とは基本的に違うことを念頭に置くべきです。


注3)
上記要件を満たしたとしても、シフトの順番等によって継続24時間を満たさなければ、休日扱いされないことにも注意が必要です。