横浜の社労士事務所 労務コンサルティング・残業対策・就業規則・労働相談


社会保険労務士小事務所人と企業を前向きに支援します
        Social Insurance And Labor Consulting Office



TEL:045-482-6047

mail:roumupal@icloud.com



PROFILE

顧問契約・アウトソーシング

労務コンサルティング


労働問題解決支援
無料労働相談受付中!


人事・労務レポート









   



神奈川県社労士会横浜北支部
みどり社労士会
全日本トラック協会
神奈川県トラック協会

運送屋さんの就業規則
運送屋さんには運送屋さんの就業規則が必要です!


就業規則で安全運行を根付かせましょう!

運送業は物流の要であるとともに公共のインフラである道路を使用して、一般の市
民が混在する場所で行う業務です。その為、一歩間違えれば一般市民を巻き込む重
大な事故に繋がってしまうという、人命と隣り合わせの業務でもあります。

そして、昨今のツアーバスの事故事例を見るまでもなく、運送、旅客事業を取り囲
む環境は、行政の取り組みも含めて非常に厳しいものがあります。



事故を含む違反行為の要素としては、大きく分けると次の3つの要素があると思います。
それは、車両であり、積荷であり、ドライバーであります。

車両については、過積載であり、安全整備であり、車両点検であり、業務に合った適正な車両であること
が望まれます。

積荷により積載方法が違いますし、荷崩れしないような技術の習得も必要です。また積み込み時間や出発時
間も変わってきますし、拘束時間や労働時間にも影響します。さらに、危険物等であれば、知識や資格も必
要となり、ドライバーへのストレスにも大きな影響を及ぼします。


そして、ドライバーの要素としては、過重労働であり、低賃金であり、健康管理や飲酒運転防止等の安全
運行に対する取組等
が考えられます。

当然のことながらこれらの要素はすべてリンクしており労働環境の悪循環へと繋がっていきます。そし
て、不幸にも事故等が発生した場合には、会社の存続にも大きな影響を及ぼすことになってしまうのです。


運送業は、労働基準法が想定している企業とは業態も経営環境も違います。36協定の限度時間の制限も一
般企業とは違い現行では適用除外(H31/5現在)ですし、長距離便のドライバーについては、休憩時間に
ついても適用除外(労基則32条)となっていて、なんと休憩を与えなくても良いことになっているので
す。これがそのまま運用されるとすると、過重労働の長距離大型トラックが眠気を抱えたまま全国を走り回
ることになってしまいます。


現実的にはトラック運転者の労働時間等の改善基準告示のなかで、拘束時間についての限度時間や運転時
間、休憩についても規定されており、一定の歯止めになっております。

告示ですから法律ではありませんが、法律の仲間としてこれは守らなければなりません。国交省の「貨物自
動車運送事業者に対する行政処分の基準について」
による行政処分についても、自動車等の使用停止処
分基準が厳しくなっており、累積点数制度による「事業停止処分」や「事業許可の取消」も対岸の火事とい
う訳にはいかなくなってきています。


このような厳しい環境なのですから、最悪の事件が勃発する前に、全社的に安全運行に取り組み、ドライバ
ーの業務の一環として安全運行義務を就業規則の服規規律の中に規定することは非常に重要です。

そして、「労働時間の改善基準」についても、いずれにしても守らなければ行政処分の対象となるのですか
ら、漠然として意識するのではなく、「自動車運転者の時間管理規定」として明文化し、ドライバーと情
報を共有しながら取り組みます。

併せて、賃金制度についても、複雑化してしまった制度をシンプルで管理しやすく、残業代が削減できる
制度
に見直しましょう。


しかし、残念なことに中小の運送屋さんの就業規則で、このような運送業に特化した規定をあまり見たこ
とがありません。(トラック協会の発行しているモデル就業規則には「改善基準」の規定がチャンと記載さ
れています。念のため。)

朝、出社して夕方には業務が終了するような定型業務とは違い、出社も退社もバラバラで、休憩時間か手
待ち時間かも良く分からず、常に社外で危険を背負って運行するドライバーと工場やオフィスのような一定
の施設内で働く従業員が同じ就業規則で管理できるわけがありません。


そういう訳で、運送屋さんには運送屋さんの安全運行についての服務規定、改善基準に沿った時間管理
規定、
また、労働時間では計れない賃金制度が必要となります。


安全運行についての服務規程

就業規則の基本は、労働条件の明示と服務規律にあります。

ドライバーも当然のことながら、従業員の一員ですから社員全体を規律する服務規程も必要ですし守らなければなりません。

しかし、ドライバーが従業員の殆どである中小の運送屋さんにとっては、一般従業員に対する服務規程だけでなく、安全運行を目的とするドライバー向けの服務規定も労務提供義務の一つとして企業秩序を守るために、別途規定する必要があります。


その中で、運行前後の点検義務や健康管理義務、安全運転義務、事故防止義務等を明記します。
そうすることによって、服務規程に違反する行為が判明したり、義務を履行しなかった場合には、懲戒規定に則って処分ができることになり、業務の実効性が担保されることになります。
もちろん、目的は安全運行の実施ですから、明文化するだけで実態が伴わなかったり、会社が規定を無視して、過積載や過労運転を強要したり容認したりしては何にもなりません。全社で取り組むことが労務管理上も運行管理上も大切です。

運送業は、許認可業務なので運送業の社長は、陸運事務所の方ばかり見ている方が多いようですが、過重労働については、労働基準監督署も一体と考えるべきです。
事故等が発生した場合には、最近のツアーバスの事例を述べるまでもなく、事故等の原因が、過労や飲酒、過積載にあり、このような運行が恒常的に行われていて、さらに事業主が適切な指導や監督を怠っていた場合には、使用者責任を問われるとともに、事業の継続が難しくなってしまいます。
そうなる前に、しっかり規定して、事業主を中心に業務の一環としてドライバーの健康管理や運行管理体制を確立しましょう。


改善基準に沿った時間管理規定

ドライバーの労働時間の把握はできていますか

中小の運送屋さんにとって、ドライバーが何時間実労働をして、何時間休憩をして、労働時間のうち手待ち時間はどの位あるのかというような、労働時間の実態を把握することは非常に困難な作業であると思います。


最近でこそ、デジタコなるものが出現し、労務管理ソフトや時間管理ソフトも揃いつつあるようですが、中小の運送屋さんの全車両に装着されるのは、まだ若干先のことと思われます。

しかし、業務は待ってくれません。毎日の業務の中で、時間外労働が発生し、過重労働が発生し、リスクを負った運行管理が行われているのです。
労働時間の改善基準告示の数値自体も一般企業から見るとかなり緩やかな数値のように思われますが、多くの運送屋さんの労働環境はその緩やかな数値すらクリアできないのが実態です。

ただ、チョッと待ってください。実際の話、実労働時間を把握できていないのに、どうやって時間外労働時間を計算しているのでしょうか? 分かるのは運転日報の出発時間と帰着時間から判断する拘束時間のみです。でも、出発前にも、帰ってからも業務はありますよね。ドンぶり勘定? イヤイヤ、そんなことはないでしょう! でも、時間管理してるの?
イヤイヤちゃんとしていますよね。たぶん。 
そうか!!だから労働時間の改善基準は拘束時間なのか。 と、一人で合点してしまいました。
しかし、実際のところ、事務所の休憩室で昼寝や雑談やテレビを見ている時間まで、手待ち時間として労働時間に参入している運送屋さんもあります。きっと社長の指揮・命令下で将棋を指してるのだと無理に納得しましたが・・・・・・・んんんん〜

もうそろそろ、こんな管理から脱却する時期です。労働時間の改善基準告示の各事項未遵守が計31件以上で安全確保義務違反となります。それ以前に、運送業として過労や無理な運行を課すことによる重大事故等を回避する社会的責任があることから目を背けてはいけません。

無い袖は振れないという社長さんもいらっしゃるでしょうが、できることがあるのも事実です。
改善基準告示の各事項を就業規則に規定することにより、労使ともに守るべき労働条件の一つとして明記されることになります。
経営者と従業員がお互いに守るべき義務として、自覚するのにお金はかかりません!



労働時間で計れない賃金制度


労働時間を基本とした賃金制度で大丈夫ですか?

労働時間を把握するのが難しい業態である運送業が、労働時間(固定給)を基本とした賃金制度で問題はないのでしょうか。
もちろん、事業主は労働時間を把握・管理しなければならない義務があるとしても、賃金制度全てを時間ベースにするのには無理があります。


中小の運送屋さんの賃金計算は、社長の経験に裏打ちされた場合が多く、その額の正確さにはビックリさせられることも多々ありますが、既に数字としてのシビアなコスト管理が求めらる時代になっております。

どんな賃金制度にするにしても、コンプライアンスに沿った制度で、かつコスト力があり、なおかつドライバーのヤル気を喚起する制度にすることは、至難の業でありますが、避けて通れません。

運送屋さんの賃金制度でも記載しておりますように、運送業と一口で言っても多種多様で、運送機種も方法も運送環境も労働環境も違いますので、他所の真似をしても意味がありませんが、中小の運送屋さん向けの賃金制度の考え方を以下に規定してみました。

@コンプライアンスに沿った賃金制度
ex:残業代の計算方法、支払いの遵守、最低賃金の遵守

A手当をなくしたシンプルで管理しやすい賃金制度
ex:業績給、固定給+業績給

B残業代削減の賃金制度
ex:成果給ベースの残業代制度、みなし残業代制度

C社員のやる気を喚起する賃金制度
ex:業績給、ドライバーの業績・評価と連動した手当又は賞与制度

賃金制度の変更で、会社だけが利するだけの規則変更では、従業員のモラールアップは図れませんし、変更の意味の半分はなくなってしまったと考えるべきです。
言い換えれば、賃金制度の変更とは会社と従業員のお互いが納得できる着地点を探す作業とお考えください。
そして、就業規則完成の暁には、従業員への説明・周知を疎かにしてはいけません。
就業規則の変更による賃金制度の変更は労働条件の変更になりますので、労働契約法第9条及び10条の影響を受けます。

となるとどうなるかというと、その労働条件の変更が、不利益変更の場合は以下のいずれかの条件が必要となります。
@不利益変更の場合は、労働者の合意が必要。ただしAの場合を除く
(労働契約法第9条)
A変更後の就業規則を周知させ、かつ変更後の就業規則が合理的なものである時
(労働契約法第10条)

ということで、不利益変更の場合、中小の運送屋さんにとってはAによるよりも、@にそって書面による個別の同意を得ることを優先するべきでしょう。
しかし、労働条件の変更は、すべて不利益変更になるのでしょうか。賃金の減額は間違いなく不利益変更になりますが、「年俸制」への変更は?、「業績給」への変更は? どうなるのでしょうか。難しい判断を迫られることになります。

基本的には、総額人件費を減額せずに賃金制度を業績給に変更する場合には、不利益にならないと思われますが、個人的には、増額する従業員もいれば、減額となる従業員も出てくると思いますので、全社的な不利益変更従業員個別の不利益変更にも注意が必要となります。そのような場合には、移行のための緩和措置も検討すべきでしょうし、こんなグレーゾーンのような場合には、チャンと説明して同意書をもらっておいた方が間違いないでしょう。

ということで、説明・周知及び同意書は賃金制度の変更には必須条件と考えておくべきでしょう。