ドライバーの業務は、残念ながら長時間労働が前提の職種と言われています。「改善基準告示」でさえ、運転時間は2日平均9時間までとなっておりますが、それだけでも時間外労働が発生することになってしまいます。
要は、時間外労働をしないと業務が成立しない業種なのです。
そこで、業務を成立させるためには、限度時間の範囲内で36協定(時間外及び休日労働に関する労使協定)を締結し、かつ、監督署に届出ることが絶対必要条件になります。
今回の「働き方改革」による法改正により、罰則付きの上限規制が法定化され、特別条項付の場合にも上限が設けられました。
自動車運転者についても、上限規制が改正法施行後5年間猶予されていましたが、いよいよ2024/4/1より施行されます。
自動車運転者の上限規制自体は、原則45H/月、360H/年となり特別条項付の場合を除けばこれを超えることはできなくなります。
特別条項付36協定を締結した場合の上限は、960H/年の総量規制となりますが、故に通常の時間管理が大切になります。
また、36協定自体の限度時間の設定は、1日、1ヶ月、1年毎に規定する必要があり、「改善基準告示」の拘束時間を越えない範囲内で、その運送事業者個別による限度時間を算定しなければなりません。
「改善基準告示」の範囲内で限度時間を算定するのがまた結構やっかいです。
運送業の36協定の限度時間の算定 2024/4/1〜
期間 |
限度時間の計算 |
1日 |
13時間(原則拘束時間)− 8時間(所定労働時間) − 1時間(休憩時間)=4時間
15時間(上限拘束時間)− 8時間(所定労働時間) − 1時間(休憩時間)=6時間
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1ヶ月 |
284時間(月の拘束限度時間)− 所定労働時間 − 休憩
ex. 所定労働時間8時間 21日稼動の場合
284時間(原則拘束時間)− 168時間 − 21時間=95時間
310時間(上限拘束時間)− 168時間 − 21時間=121時間 |
1年 |
3,300時間(年間の拘束限度時間)− 年間所定労働時間 − 年間休憩時間
ex. 年間労働日数260日、年間所定内労働時間2080時間、年間休憩時間260時間の場合
3,300時間−2080時間−260時間=960時間
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※各企業の所定労働時間・日数により、限度時間は各企業ごとに違います。
上記の算定結果を見ても分かりますように、月の限度時間が拘束時間とはいえ100時間前後となります。
働き方改革による安全衛生法の改正により、時間外労働時間が月80時間を越えますと、労働者の申し出により、医師の面接指導が義務づけられ、申し出がない場合でも、努力義務が課せられるようになりました。
年間の上限時間が960Hということは、単純計算ですと月80Hが限度ということになります。
面接指導等がトラック運転手のみ免除になるわけではありませんので、36協定の限度時間は限度時間として、日頃から労働時間の短縮に取組み、ドライバーの休息が取れないことがトラブルの元凶とならないよう配慮する必要があります。
会社としては、労働時間を短縮しても経営が成り立つ経営環境を作り上げなくてはなりません。
働き方改革は運送改革です。一緒に取り組みましょう!
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