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運送屋さんの労働時間リスク  -未払賃金請求期間が3年に延長-

「改善基準告示」のとおりに、拘束時間を原則13時間とした勤務体制で労働していた場合で、休憩が1時間取れたとして、

拘束時間13H−休憩1H−法定労働時間8H=時間外労働4Hとなり、毎日4時間の残業となってしまいます。さらに、労働時間が

深夜業の時間帯があれば、深夜割増が加算されます。

経営者としては、安全衛生や安全運行の面だけではなく、残業代の支払も頭の痛いところでしょう。

ドライバーの仕事は、当然ながら事業場外の仕事ですから労働時間を細かくチェックしずらい部分があります。 
例えば、「手待ち時間」と「休憩」を見極めることは難しいし、それを全て記録することは至難の業かもしれません。


そんな訳で、残業部分の賃金を安易に「定額払い」にしてみたり、「事業場外のみなし労働時間制」を採用してみたり、「歩合制」にして、残業代を逆算

して計算してみたりとあの手この手で、時間管理の手間を省いたり、残業代を抑制しようと試みています。しかし、手間だけでなく残業代そのものまで省いてしまいますと、運転手が退職後に監督署に「申告」に走り、痛い目に遭うことが間々ありますので注意が必要です。


不払い残業が発覚し、悪質な場合には、監督署の「是正勧告」に及ぶ可能性もあり、最大で3年間遡って支払うことになる可能性もあります。このような場合

企業の存続に重大な影響を及ぼすことも考えられます。


また、紛争調整委員会による「あっせん」、さらに「労働審判」へと進むたびに時間とコストの支出を強いられることになります。

また、割増賃金の他に「遅延損害金(6%〜14.6%)」、「労働審判」で運転手に請求されれば、裁判になった時に裁判所から「未払い金と同額の付加金」の支払いを命じられる可能性もあります。ここまできたらもう肝を据えるしかありません。


そして、こんな状況になる前に、打てる手は打っておかなくてはなりません


未払賃金請求期間が3年に延長  2022/4/1〜

2020/4/1改正労基法の施行により未払い賃金の消滅時効が当分の間3年とすることになりました。

ということは、2020/4/1以降に発生した未払賃金は、3年たたないと時効が成立しませんので、2023/3/31以降までは支払い義務があるということになり

ます。


2020/4/1以前に発生した未払い賃金は、2020/4/1以降に請求されても2年間の2022/3/31で時効が成立して支払い義務は消滅します。


まずは未払い賃金を発生させないことが肝要です。

ただ、未払い賃金が発生する要因は一つではありません。

@ 労働時間算定 

 ・運転以外のその他業務(日報書き、洗車、朝礼等)時間の未算入

 ・待機時間の取扱 待機時間の一部独断で休憩に算入

 ・労働時間の勝手な端数処理


A 割増賃金計算

 ・算定基礎賃金と除外賃金の不正確

 ・みなし残業手当の未精算


B 割増率の不正確

 ・深夜業と深夜残業の未算入(25%+25%=50%)

 ・休日割増率の間違いと休日深夜割増の未算入(35%+25%=60%)


未払いが発生する”要因はない”と確固たる自信をお持ちの社長さんも、”もしかしたら”と不安を抱えている社長さんも、今一度未払い賃金発生要因の

チェックをされることをお勧めします。

注)

2023/4/1からは中小企業も1ヶ月60H超の時間外労働については、50%以上の割増率が必要となっております。


付加金の請求期間も3年に延長

今回の改正労基法では、付加金の請求期間も当分の間3年間に延長されています。

付加金とは、

@解雇予告手当

A休業手当

B割増賃金

C有給休暇取得時の賃金


労基法第114条では、裁判所は上記@〜Cの賃金の未払いが生じた使用者に対して、労働者の請求により未払い賃金の他、これと同一額の付加金の支払を命

ずることができるとされています。

この付加金請求の時効期間も2年から当分の間3年に延長されました。


労基法第114条では、裁判所は労働者の請求により付加金の支払を命令することができるとされていますので、裁判所の裁量により裁判によって決定される

ことになります。

一方、訴訟の前段である労働審判は労働審判委員会で決定されるものですから、付加金の支払いを命令することはできないというのが大方の考え方のようです。


ただ、裁判移行に備えて、労働審判申立て時に付加金請求をしておくケースも多いようですから、故意はもちろん、過失であっても未払い賃金は管理を見直し

早期の清算・解決が大切です。



定額残業代への対応

付加金の請求期間も3年に延長
定額残業代と実際の時間外労働に対する割増賃金の比較
定額残業代相当部分とそれ以外の賃金とが明確に区別することができること。また、定額残業代相当部分と通常の時間外労働と

して計算した割増賃金とを比較対照するできる定めがあること。

定額残業代相当の時間外労働を超えた時の割増賃金の支払

実際の残業代に対する割増賃金が、定額残業代相当部分を超えた場合には、その超えた時間に相当する割増賃金をその都度

(賃金計算期間ごと)支払う必要があること。

【事業場外のみなし労働時間制】

「事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ば

ず、労働時間を算定することが困難な業務である。」とされています。
みなし労働時間制の適用がない場合 昭和61.1.1基発1号

以下のような使用者の具体的な指揮監督が及び、労働時間の算定が可能な場合はみなし労働時間制の適用はない。

何人かのグループで事業場外労働に従事す場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合。

事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合。

事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務具体的指示を受けたのち、事業場画で指示通りに業務に従事し、その後事業場に戻る場合。


運送業においては、当然ながらドライバーの主な業務は事業場外で行われるものですが、多くの運送事業所のドライバー業務は、目的地、積荷の種類と積込み

場所、配送ルート及び運行距離、又は運転日報等からも運行時間及び労働時間を算定でき、さらに携帯電話、車内無線、タコグラフ等の設備によって常

に運行状況を把握することも可能です。このようなことから、ドライバーの業務は、上記2.、3.に該当するものと考えられます。

よって、ドライバーについては「事業場外のみなし労働時間制」の適用はされないとされています。


出来高給のリスク

保障給の無いフルコミッションで雇入れること自体レッドカードとなりますが、そのような事業所でも、さすがにそのままポ〜ンと給与として支払うような

ことはされていないようです。


出来高給で総額を管理しながら、一定の基本給、諸手当を決めておいて、まずそれに振り分け、残業代を計算し、残りを業績給とか営業手当の名称で緩衝材

としてして使い、売上の高低に対応できるようにしている会社が見受けられます。


先に割増賃金を算定すると、成果給を割増賃金の基礎賃金に含むのを忘れてしまうことがあります。どんな場合でも成果給は割増賃金を算定する基礎賃金に含

みます。

事業所によっては基礎賃金に含んでいないケースもあるようですので注意が必要です。


フルコミッションの場合、万が一売上がゼロということになると、給与自体もゼロということになってしまいます。使用者の責めに帰すべき事由によって売

上がゼロになったのであれば、「休業手当」(労基法第26条)の支払いが必要となる可能性がありますし、従業員が働いたにも拘らず、売上がゼロとなった

場合、出来高払いの保障給(労基法第27条)に引っかかります。賃金体系を出来高給にすること自体は、問題ありませんが、保障給を組み込んだ賃金制度

に制度変更することを検討する必要があります。



労働時間削減へ向けての提案

長時間労働による運送事業者に対するイメージの低下は、質の高い若年層の従業員の獲得をいっそう難しいものにしており、

なかなか企業の将来像が描けなくなってきています。

一昔前の到着時間は、運送事業者が決定権を持っていましたが、「ジャストインタイム方式」により、必要な物を、必要な時に、

必要なだけ、運んでもらうようになってきました。特に大手製造業やコンビニ等で顕著に見られます。

指定時刻にキッチリ運ぶ為には、余裕を持った運行が必要となり、指定時刻前には既に到着して、工場とか、お店の近くで待機

するいうことになります。

その場合、ドライバーは、トラックから離れて時間を自由に使うわけにもいきませんから、結局その時間は「手待ち時間=労働

時間」となり、長時間労働の一因となってしまいますし、割増賃金増加の原因となります。

そこで、運送業の労働時間削減へ向けての提案をいくつかしてみたいと思います。
労働時間削減へ向けての提案
拘束時間削減委員会の設置

拘束時間及び労働時間の削減を目的に、労使で問題点を出し合い業務効率を図る為の方法・手段を検討。

安全運行パートナーシップ・ガイドラインの遵守

荷主との良好なコミュニケーションを保つことは、安全運行に欠くことはできません。

過積載の防止、運行時間の確保、また、荷主による突発な依頼変更にも荷主とともに適正な運行計画を確保します。

効率的なルートの設定

荷主、納入先、積荷、渋滞情報を検討し効率的なルートを検討・作成及び指示する。

手待ち時間の削減

積み込みの状況を荷主と常に連絡を取り、手待ち時間の削減を図る。積み込み時間の遅れにより到着時間が遅れる場合は、荷主に協力を依頼し了解を取り

付ける。また、「手待ち時間」と「休憩時間」の区別をハッキリさせる。

積み込み・積み降ろし時間の短縮

手積み・手降ろしを止め、できるだけ、パレット積み、カーゴ積みにより効率化を図る。

変形労働時間制を採用

柔軟な労働時間管理ができるよう変形労働時間制を取り入れる。

パート・アルバイトの活用

恒常的に残業が発生する原因がパート・アルバイトで補える業務であるならば、一考するべきでしょう。例えば、パートの賃金とドライバーの割増賃金の比較

では、人件費の削減になる可能性もありますし、時間短縮による従業員のモラールアップを考えるとその効果はさらにアップする可能性があります。









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