運送屋さんの2024年対策 -働き方改革は運送改革- |
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割増率の引上げと上限規制 中小企業に猶予されていました割増率の引上げがいよいよ2023/4/1より実施されます。 運送業の99%以上が中小企業と言われておりますので、殆どの運送会社で月60Hを超える残業時間の割増率が50% になります。 さらに、2024/4/1からは自動車運転者に猶予されていました上限規制が適用されますが、特別条項付の36協定を締結 する場合は、時間外労働の上限が960H/年(月平均80H/月)となります。 |
〜2024/3/31 |
2024/4/1〜 |
上限規制なし |
・特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働 の上限が年960時間となります。 ・時間外労働と休日労働の合計について、 月100時間未満 2〜6か月平均80時間以内の規制は適用されません。 ・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ 月までとする規制は適用されません |
働き方改革の最後の仕上げがドライバーに対する労働時間の削減ということで、長時間労働によって売上を確保していた運送屋
さんにとっては、根本的に経営や運行管理及び賃金制度を含む人事制度の見直しが必要となります。
割増率50%の影響 |
例えば下記の条件で比較してみますと
所定内賃金(基本給+諸手当) 250,000 所定労働時間 173H/月
ドライバー数20人 時間外労働80H
[割増率25%] 250,000 ÷ 173H × 1.25 = 1,806
(所定内賃金/月) (所定労働時間/月) (割増率) = (割増時給)
(所定内賃金/月) (所定労働時間/月) (割増率) = (割増時給)
残業80H 割増賃金 1,806H × 80H = 144,480
[割増率50%] 250,000 ÷ 173H × 1.5 = 2,168
(所定内賃金/月) (所定労働時間/月) (割増率 = (割増時給)
(所定内賃金/月) (所定労働時間/月) (割増率 = (割増時給)
残業80H 割増賃金(1,806H × 60H)+(2,168 × 20H) = 151,720
151,720
- 144,480
7,240(一人当たりの負担増/月)×20人(ドライバー数)= 144,800(負担増/月)
単純計算ですが、年間の負担増はこの12倍ということになります。
今まで長時間労働が常態化していた運送屋さん、特に長距離が主体の運送屋さんにとっては上限規制と相まって労働時間短縮に向けて運行の効率化が
求められます。
上限規制の影響 |
今まで、月平均で80H以上の残業が常態だった運送屋さんが、ドライバー全員の時間外労働を平均80H以下にすると次のような問題が予想されます。





以上の観点から、現在の経営を維持・発展させるためには、時間を浪費しながら体力勝負で輸送量を維持するやり方から、少ない時間でできるだけ効率的に
生産性を上げる仕組みが必要なのが分かります。
労働力を維持するためには、労働環境の改善にも取組む必要がありますが、利益が減ったままではそれも叶いません。正当な運賃と料金を請求し、効率化に
取組み、賃金を上げ、労働環境を改善しましょう。
もうすでに取り組んでいる運送屋さんも多数あるようですが、車両30台以下の地場中心の運送会社さんにとっては、これからが正念場ではないでしょうか。
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運送業の効率化と生産性の向上 運送屋さんのドライバーは、勤続年数を重ねてキャリアを積んでも残念ながら年ごとに定期昇給ができるような業種ではありま せん。 会社は残業時間の上限規制により労働時間の適正化に向かいますと、その分輸送量が減少して売上が減少することが危惧されます。 対策としては、荷主さんとの運賃交渉、運行の効率化により輸送量を維持しながらコスト削減も図り、労働時間を減らしながら 労働環境も改善し、できればチョットでも売上を伸ばして、生産性を上げるという膨大なプランを実行しなければなりません。 |
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物流労働生産性= 不可価値(経常利益+人件費+租税公課+支払利息+施設使用料) 従業員の平均労働時間数 <国交省H28.4「物流生産性革命」より> |
具体的には2021年に国交省が発表しました「最近の物流政策について」が方向性を示しています。



を目指すとされていますが、どれをみても運送会社単体での取組みとしては、なかなか道のりは険しいと思われます。
運行効率のUPへの取組 |
上記の計算式によりますと、生産性を上げるためには付加価値を増やして、労働時間数を減らすことが必要です。
労働時間の削減、コスト削減、輸送量の維持、利益の確保をするためには、まず、現在の実車率、積載率、稼働率を把握し、運行効率のアップを図る
必要があります。
運行効率=稼働率×実車率×積載率 |
稼働率 = 一定の対象期間にトラックが稼働した時間の割合
※トラックが運送業務により車庫にいない状態の時間で、稼働時間は走行時間とその他の時間に分けられる。
稼働率=稼働時間÷対象期間の総時間×100 ※30日の月に1日10時間で20日稼働した場合は28%となる (10時間×20日=200時間)÷(24時間×30日=720時間)=27.7% |
実車率 = 走行キロのうち収入につながる荷物を運んで走った距離の割合
実車率=積載しての走行距離÷総走行距離×100 ※100km先の届け先へ輸送して片荷で戻れば実車率は50%となる |
積載率 = 最大積載量に対する実際の積載トン数の割合
※荷物と車両の組合せの状態を確認でき、合理的な積荷の運行により高まる
積載率=実際の積載トン数÷最大積載トン数×100 ※10tトラックで5tの積荷しかない場合には積載率は50%となる |
まずは、自社の実車率、積載率、稼働率を把握して運行効率を算定する必要があります。現状を把握し目標数値を決めて対策を講じましょう。
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運行効率アップの運送改革 「2024を乗り切るには運行効率を上げればいいんだ。」と言っても、ではどうすれば良いのでしょうか。 運送業ですから、できるだけ高い単価の積荷を、できるだけ多く効率よく運べば運行効率は上がります。 「そんなことは分かってる」、「だから〜、じゃあ〜あ、その為にはどうすればいいんだ」とお叱りの声が聞こえそう ですが、前段で把握した御社のデータを基に運送改革に取組みましょう。 |
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稼働率対策 |
稼働時間は、出庫してから帰庫するまでの時間で走行時間とその他の時間に分けられます。
稼働時間が多ければその分、輸送量を増やすことが可能となりますが、一人のドライバーで増加分を補おうとしますとその分労働時間も増えてしまい、
上限規制に抵触することになってしまいます。
ではどうするか、稼働時間とはドライバーの労働時間ではなく、トラックが稼働している時間ですから、複数のドライバーで担当して稼働率を上げる
ことを検討しましょう。
ドライバーと一緒にトラックが週休2日制になっては稼働率は上がってきません。
そして、トラックが常時車庫で数台も遊んでいるようですと、会社全体の稼働率は上がってきませんので、状況によっては減車か車両の見直しが必要に
なります。
また、稼働時間が長くてもその他の時間(待機・作業時間)ばかり長いのでは、稼働率が高くても運賃は稼げません。
稼働時間の中身も検討し、その他の時間の効率化により実車となる時間を増やし、さらに積卸の作業時間や待機時間も料金化を検討しましょう。

@1台のトラックのドライバーを複数シフト化
Aシフト化による配車係の教育と能力向上

@稼働時間の有効活用の為、新規荷主を獲得
A稼働時間の増加分を埋める運行

@予備車の必要性を確認し車両台数を整理
A輸送内容に合った積載と架装による車両の適正化

@稼働時間に合わせた多様な雇用条件の人員確保
A労務管理の強化
実車率対策 |
実車率は走った距離のうち、運賃に反映される実車距離の割合ですから、空荷距離を少なくすれば実車率(実車距離率とする)は上がりますが、
時間的な効率を反映させる実車率(実車時間率とする)も重要となります。
稼働時間が増えても実際に運賃に反映される実車(時間)率が上向かなければ、コストばかり増えて運送屋さんの利益に還元されません。
さらに前述しましたように、積卸の作業時間や待機時間も料金化できれば、「実車率+α」としての効果が期待できます。

@新規荷主の開拓
A帰り荷の確保
B共同配送による荷台の空きスペースへの積荷確保

@待機時間の削減・・・入出庫予約システムの導入
A積卸の時間削減・・・クレーン、パレット活用による効率化
B荷主への負担依頼・・・荷主社員が担当することにより付帯業務から解放され運行業務に専念

・輸送経路を随時見直し、高速道路も活用して効率化を図る。

@スマホアプリ等による、点呼、時間管理、運行管理システム、入出庫予約システムの導入
A伝票やパレットの標準化
積載率対策 |
稼働時間を長くして、実車率を上げても実際に運んでいるトラックの中身の積載量がそのままでは、運行効率は上がりません。
運送屋さんの主たる業務は運んで稼ぐことですから、最終的には輸送量が上がらなければ、いくらコスト削減をしても会社の収益はなかなか好転は
しません。

@混載・・・複数荷主の配送ルート、積荷、車両を見直し集約する
A積載の標準化・・・車両毎の積載率の偏りを見直し、各トラックの積荷を均等化する
B運行回数の集約・・・運送回数又は複数車両の運行を集約する

@共同配送・・・パートナー会社との共同配送により、積荷の集約や帰り荷のマッチングを図る
Aマッチングアプリの活用・・・帰り荷の確保

運行効率を上げて、生産性を高めるためには運送屋さん1社だけの取組みでは限界があります。割増率アップや上限規制のための労働時間削減や労働
環境の整備でも、作業効率を上げるための機械化や物流DXについても先立つ原資が必要です。
効率化の為に効率的に取組みましょう!
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