労働条件のコンプライアンス -不利益変更・配置転換・出向- |
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労働契約法では、労働契約の成立と労働条件の変更は、労働者と使用者の合意により成立・変更することができるという合意原則が掲げ られています。(労働契約法第1条、第3条、第6条、第8条) 原則として企業は労働者の合意なく労働条件を変更することができません。その合意した内容は、労働基準法内の強行法規に違反しない 限り有効です。 |
労働条件とは、労働契約の内容である労働条件は全て含まれますので、「合意した労働条件」も「就業規則で定める労働条件とした労働契約の労働条件」も含まれ
ます。現実的にはどこまで対等に合意できるかが問題です
就業規則による労働条件の変更 労働契約法第9条、第10条 |
労働契約法第9条では、就業規則による労働契約の変更についても「合意の原則」を確認してます。ただし、次の第10条では、第9条の例外規定として、「周知」
と「合理性」を条件に企業の就業規則による不利益変更を認めています。
ただし、労働契約で就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分は影響されません。
就業規則により労働条件を変更する合理性の判断基準 |
@労働者の被る不利益の程度 |
A変更の必要性 |
B変更後の就業規則の内容の相当性 |
C労働組合等との交渉状況 |
つまり、就業規則により不利益変更を行う場合、それが有効かどうかの判断は、上記の判断基準により総合的に判断される訳ですが、いずれにしても、その”変
更”に合意しない労働者まで拘束することはできないと言うのが原則です。
現実的には、事業主が合意によらず、抜き打ち的に就業規則を変更することも多々あると思われますが、その場合は、上記変更条件をすべて満たす必要があります。
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企業にとっては、経営組織を効率的に動かし労働者の能力・適正に応じた配置調整の他、能力開発、組織の活性化、雇用の維持等の為 に、配置転換又は転勤を行う必要があります。これを配置転換命令権といい、労働者の個別の同意なしに配転(配置換え、転勤)を命 ずることができるとされています。ただし、判例により下記の条件を満たすことが必要です。 |
配置転換の要件 |
配置転換の要件 |
@労働協約又は就業規則に業務上の都合による配転命令の規定があること |
Aその規定に従って、実際に配転が頻繁に行われていること |
B採用時に、勤務場所・職種等を限定する合意がされていないこと |
また、配転は労働者の生活に大きな影響を及ぼしますので、配転命令権は、権利濫用法理の制限を受けます。
その有効性の判断は、配転による従業員が被る不利益の程度により判断されます。
@家族の健康の保持等
A家族の援助や介護の必要性
B子供の養育等
実際には、上記のような社会意義のあるものに限られていますが、その必要性が通常受任すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもの
と判断される場合や業務上の必要性がなかったり、他の不当な動機や目的があった場合にも権利濫用により無効となる可能性があります。
最近では、親の介護により転勤ができずに退職するようケースも散見されます。
転勤可能な「総合職」と地域限定社員である「一般職」があり、相互に異動が可能なシステムが確立しているような企業は、まだまだまれ
でしょうし、中小企業にあっては、ないものねだりに等しい事案かもしれません。
ただ、今後の高齢化社会や労働力不足に対応して、労働条件(労働時間・出勤日数・時間外労働・勤務地等)を区別した限定社員制度等の
創設も、転勤による介護退職等を防ぎ、多様な働き方に沿うことになると考えます。
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在籍出向とは、出向元と出向先との合意により、現在勤めている会社との雇用契約関係を維持したまま、出向先とも労働契約関係を成 立させ出向先で就業することをいいます。 出向は同一会社内の配転とは根本的に違いますので、就業規則に明確な定め、及び採用時に就業規則との周知により包括的同意が必要 とされています。 |
出向命令の要件 |
出向命令の要件 |
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就業規則等に出向命令の明確な定め | 出向先の基本的労働条件 |
出向先の範囲 | |
出向期間 | |
復帰後の待遇 | |
採用時の就業規則等の周知による包括的同意 |
この出向命令権の根拠が満たされていない場合、出向は使用者の権利の一部譲渡であるという考えから、民法第625第1項により労働者の同意が必要となります。
民法第625条第1項 使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。
転籍出向
転籍出向とは、現在勤めている会社との雇用契約関係を終了させて、新たに他の会社とのに雇用契約関係を成立させることを言います。
転籍には民法第625条第1項により労働者の個別の同意が必要であり、在籍出向のような事前の包括的同意では認められません。
出向命令権の濫用 |
@業務上の必要性のない場合
A出向者の選定に合理性がない場合
B通常受任すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合
以上の場合には、権利の濫用として無効とされます。
●包括的同意が認められる余地
事前に転籍先や労働条件が明らかになっている系列グループ企業に限られるが、この場合も権利濫用法理が適用されます。
●同意拒否による懲戒解雇は無効となります。
●雇用調整目的の転籍拒否に対する解雇には、整理解雇の4要件を満たす必要があります。
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