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労務リスクと是正勧告  


労務リスクと言いますと、是正勧告といった行政処分をすぐに思い浮かべられると思いますが、実際にはそれだけでは済まされないケース

も想定しておかなければなりません。

民事責任について

例えば、従業員が業務上の事故等で、第三者に怪我等を負わせた場合には、本人はもちろん使用者である会社も、第三者に与えた損害を

賠償する責任(民法第715条)を負うことになります。

また、労災事故の場合でも、安全配慮義務違反(債務不履行)不法行為により、損害賠償へと発展する事態も珍しくなくなり、労災

給付がなされても不足が生じる場合や、労災保険ではカバーされない慰謝料については、会社相手に民事上の損害賠償請求が起こされる

ことが多くなっています。

労働契約法の第5条に「安全配慮義務」が労働契約上の規定として明文化され、損害賠償額も高額化していることと相まって、企業にとっ

てこのような労務リスクを放置しておくことは、リスク管理上好ましいことではありません。

また、自己申告制や、始業・終業の時刻を出社・退社時刻で記入しているなど不適正な時間管理がまだ見受けられます。過重労働や賃金不払い残業、さらに不必要

な残業代の支払を防ぐ為にも、まず、労働日ごとの各従業員の始業・終業時刻を確認記録し、これを基に労働時間を把握・確定することが必要です。

刑事責任について

民事上の責任だけでなく、労災事故が発生した場合、使用者は刑事責任を問われることがあることも確認しておきましょう。

業務上過失致死傷罪(刑法第211条)

業務上の注意義務を怠り、労働者を死傷させた場合、業務上過失致死傷罪の刑事責任を問われることがあります。

●労働安全衛生法違反

安全衛生法は、労働者の安全・衛生に関する事業主の責務を措置義務として定めており、この措置を怠った場合には、労働災害の発生の有無に関係なく安衛法違反

が成立します。

また、安衛法は両罰規定がありますので、違反行為を行った行為者だけでなく使用者としての会社にも罰金刑が科せられることになり、会社の信用等に大きな悪影

響を及ぼすことになります。

行政責任について

最後に行政責任についてということになります。監督署の基本的な業務は、労基法や安衛法、最賃法といった法令の周知と履行の確保にありますが、これを実現す

るために行われる1つの手法が、事業所調査であり、臨検と言われるものです。

労災事故が発生していなくても、労基法や安全衛生法違反が確認された場合や違法行為ではないが改善箇所が明らかになった場合については、監督署による是正勧

告や指導が行われ、勧告・指導された会社は、指定の期日までにその状態の解消、改善をしなくてはなりません。

また、監督署は労働災害発生の急迫した危険があり、かつ、緊急の必要があるときは、作業の停止や施設の使用停止等を命じることができます。

臨検には以下の種類があります。

定期監督

その年度の労働行政運営方針に基づき、特定の業種や業界、労働条件等を定めて行われる監督。

申告監督

労働者からの申告が監督署にあった場合に行われる監督。

災害時監督

労災が発生した事業所における発生原因や再発防止の為に行われる監督で、一定の基準以上の災害の際に行われます。

再監督

是正勧告を受けた事業所に対して、その後の是正状況を確認するために行われる監督。

監督署は何を確認しに来るのでしょうか

監督署が臨検の際に、何を確認するのかを知っておくことは非常に大事なことです。

前述しましたように、監督署の基本的業務は労基法等の履行の確保にあるわけですから、それは法令に則った労働条件の確保であり、安全衛生の確保ということに

なります。すなわち、賃金の確保や、労働時間の遵守、安全確保措置の履行を確認するための作業ということになります。


是正勧告の傾向と対策

労働基準監督署長は、労働基準関係法令に基づく臨検、尋問、許可、認定、審査、仲裁をつかさどる(労基法第99条3項)こととされ

ています。

監督官も臨検、尋問を行うことができ(労基法第101条)、法令違反の罪については、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う

こととされています。(労基法第102条)

つまり、法令違反事件について、逮捕、送検する権限がある方々なのです。

但し、労働法の全ての法律に適用されるわけではなく、労働基準監督官の司法警察権を定める法律は、労基法や安衛法、最賃法などの法律に限られています。

要は、労働条件や安全面に関する事項に限られます。とはいっても、税務調査官すら持っていない強制調査権限を持っていますので、侮ってはいけません。

そして、その他の労働法違反については、それはそれで労働局等の担当がしっかり取り締まることになりますので、こちらも迂闊に違法行為はしてはいけないと

いうことになります。

では、労基署の調査により、残念ながら違法行為や改善箇所が見つかった場合にはどうなるのでしょうか。

指導・勧告を受けた場合、当然ながら是正・改善をしなければなりませんが、実務的には内容により制度そのものを作ったり、変更する必要が生じる可能性があり

ます。書類の未提出や訂正だけでしたら、届出をして報告すれば済みますが、賃金や労働時間についてお金が絡んでくるとそう簡単には処理できない可能性があり

ます。

要は、指導・勧告を受けるということは、反省を表明して書類を提出すれば終了するのではなく、過去の違法行為を清算して会社の体制や制度を見直すという膨大

な作業が伴う可能性があるということを覚悟する必要があります。

指導・勧告→報告

指導票

臨検の際に、法令違反とまでは認められないものの、通達やガイドラインから見ると改善が望まれる場合に交付されます。「指導票」だけ交付される場合もあり、

内容によって「勧告書」と両方交付される場合もあります。

是正勧告書

臨検の際に、労働関係法令違反が認められた場合に、その状態を解消するために、違反事項と是正期日を記して交付されます。事業主等は受領年月日と受領者氏名

を記入・押印して受け取ります。

是正報告書(報告書)

指導・勧告された内容の是正・改善状況を報告するための報告書です。是正内容と是正完了日を記載し、必要に応じて証拠書類を添付します。尚、是正勧告書には

違反事項と是正期日が記載されていますので、原則としてその期日までに是正しなければなりません。

是正勧告の対策

退職者からの申告

従業員からの申告で、多いのは不払い残業です。不払い残業は、賃金は最も大切な労働条件であり、過重労働に直結する可能性も高く、労働条件と安全衛生の両面

に抵触することが想定されますので監督署としても見過ごすわけにはいかなくなります。

申告したのが退職者で、不払いが事実であればさっさと金銭で解決した方が得策です。裁判に持ち込まれて得することは何もありませんし、在職者にも波及したら

問題が大きくなるばかりです。

在職者からの申告

在職者からの申告でも多いのも不払い残業です。申告監督により不払いが発覚した場合には、遡及して支払を命じられます。時効は2020/4/1以降の賃金につ

いては3年ですが、3年間さかのぼって全社員の残業代を支払ったら会社は倒産してしまいます。それではどうしましょう。

実務的には「3ヶ月」程度が多いようですが、最終的には監督署に、いくら支払いなさいという権限はありませんので、お互いが納得した金額で示談にもっていけ

れば、監督署は口出ししません。

まず、事実関係を確認し、実際の残業代がいくらになるかを計算し、会社の経営状況と勧告書による遡及期間とを勘案しながら、支払不可能な部分については従業

員に放棄してもらうよう書面を作成・提出します。会社を潰してまで支払えとは監督署も言いません。

申告者以外の在職者に対しても賃金制度の見直しが必要となります。みなし残業制等の対策を講じて将来にわたってはキッチリと残業代を支払いながら過去分につ

いては、できれば静かに時効を待てれば良いと思います。


書面の不備や協定の未締結・未届け等は、書類の作成や締結により改善しますが、その後の運用や労働時間削減対策等は、制度の作成・運用が絡んできますので、

監督官との相談・打合せも大切です。

事前相談

事前通知があり、訪問や呼出予定がはっきりしている場合の事前相談・現状確認と労働関係法令違反に対する説明

立会

・監督官への対応

是正報告書の作成

・是正策の検討・提案と実施支援及び監督署との折衝

是正内容により、書面の作成・届出、就業規則の作成・変更、賃金制度等の制度設計、残業代計算等の業務が発生します。

大切なのは、監査や臨検がいつやってきても動じない体制作りですが、万が一行政処分を受けた場合には、迅速に対応することが大切です。









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