【謎の黒人】

電車を乗り継ぎ、京成電鉄八広(やひろ)駅へ到着。青砥で乗り換える際、駅員さんに「八広に行きたいんですが」と番線を訊ねる。でも車掌という腕章をつけている私が、電車のことを人に聞くのはヘンかなー。
デジカメの電池がないことに気付き、八広駅のキヨスクで電池を買う。知らないおばさんに「何があるの?」と聞かれ、「散歩の会です」と言ってごまかす
こないだ吉原散歩をしたときに来た八広だが、あまりに何もなかったため歩いたことはない。玉ノ井からずーっと荒川に向かうと八広。
だからスポット7・4号20〜24P、45〜46P尾行の舞台の木下川(きねがわ)小学校も『また住宅街かよ』と思って、ちょっとめんどくさくなった。
でも瓦が落下しそうな家とかあるし、荒川からドブのような悪臭が漂ってて、さっきの小市民な街とは違うからまあいい。
小学校へ向かう途中、廃工場みたいな工場がいっぱいあった。サビサビのボロボロの工場で、なぜか門柱に赤い十字架が描いてあったりした。フォークリフトがいっぱいあるので、印刷か製紙かなと思うが、八王子の染工場と雰囲気が似てるしサビサビだから水を使うところだ。「紙状態の製品で水を使う」といったら染物だろうなとアタリをつけた。

木下川小学校はもう廃校になっていた。小学校の前にはスポット8・4号20P、尾行中に編集長が菓子パン、バナナン、コーヒー牛乳を買った駄菓子屋スポット9・同、編集長が入って何も買わなかった酒屋がある。説明、記念撮影。すっかりこのダンドリに慣れ、時間通りに進んでいるので安心。
だが、この酒屋(現コンビニ)での買い物時間をたった5分しか予定しておらず、コンビニの爺さんがのろいので、大幅に時間が押してしまった。
時間ないなあと焦るがどうしようもなく、コンビニの前で待つ。すると黒人がやたら通る。たぶんここらの工場で働いてる人々だろう。あの門柱の十字架マークは、なんか黒人の人たちの宗教なんだろうか? ようやく買い物が終わり、スポット10・4号20P、尾行班が張り込みをした荒川河川敷へと向かう。

【皮革地帯】

川沿いには吹きガラスの工房があった。こんなに暑いのに、そして土曜日なのに吹きガラス。
だが隣りの工場はヒンヤリ涼しげ。中を覗くと、濡れた肌色の紙のようなものが積んであるのが見えた。何なのかなーとよく見たら、動物の皮のようだった。形からして、たぶん豚の皮だろう。
あ〜、染物じゃなくて革なめしだったのか! 写真は原皮から塩抜きしたり、染めたりするためのドラム。なめし業のことを「タンナー」という。原皮は塩漬け状態で入荷し、それを洗って表面をキレイにして、タンニン(渋)でなめすから。でも今はタンニンは大変なので、クロムでなめす。そういうことは、さっきタンナー視察記を見て知った。知ってしまえば別にどうということはない、単なる工場だ。
でも現場では、工場のボロボロ具合、肉色の濡れた皮、謎の十字架、黒人などのアイテムでいらぬ緊張をしてしまった。十字架というかキリスト教は、荊冠旗とか、十二使徒のバーソロミューが皮革職人の守護聖だったりして、皮革業と馴染みが深いのかもしれない。だけどバーソロミューは生きたまま皮を剥がれて殺されたから皮革の守護聖に抜擢されたらしい。ちょっとその役付けってどうなのか。

【楽なお昼ごはん】

荒川河川敷でお昼ごはんを食べた。あんぱん、カレーパン、ソーセージぱん。たぶん13時30分ぐらい。足が痛くて、草っぱらにへたりこんだ。かおるちゃんは「汗が出ない」と言って、やや熱中症気味。汗が出すぎる私には、汗が出ないほうがいいだろうと思うが、「汗が出る人がうらやましいです」とうらやましがられた。
意匠堂さんに「楽しいですか?」と聞いたら「まあソコハカとなく…」と言葉少なだった。
あと眞鈴ちゃんは、ハンドルネームからして女だと思っていたらムクつけきオッサンというかネカマ(本人からの「女だと名乗った覚えはないのでネカマではない」との抗議によりstrikeタグ付与。しかしネカマは一般的に「女です」とは名乗らない)だった。でもよく見ると目がつぶらで髪が長く、新宿二丁目にもいるタイプだから今後“眞鈴ちゃん”とちゃん付けで呼ぶことが全会一致で決定。
塔島さんは近くに座ったスキンヘッドの前島さんに「どうしてそんな髪なの?」と聞いた。前島さんは「…ハゲてきたから」と、また言葉少なだった。
みんな疲れ果てて言葉少なではあるが、これでちょっとは交流できたし、楽しくはないけど楽だったからよかった。だけど旅程はまだ半分だ。
さて食事がすみ、八広駅から押上→業平橋へ向かう。 業平橋へ→


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