SKI 

   マッターホルン・スキーパラダイス(ツェルマット)

第三章 マッターホルン・スキーパラダイスにて

5.快晴のゴルナーグラート・モンテローザ鉄道


T.ツェルマットからリッフェルアルプ

マッターホルン・ゴッタルド鉄道のツェルマット駅からかすかに見えるマッターホルンこの旅行の目的だったマッターホルンをぐるり半周心ゆくまで満喫し、さらに
最大の楽しみであったイタリアへの国境越えアルプス大滑降も経験でき
大満足の僕らは、ツェルマット駅からゴルナーグラート・モンテローザ鉄道に
乗り、ゴルナーグラートのホテルへと向かった。
ゴルナーグラートへは、地下ケーブル・ゴンドラ2本・ロープウェイ2本の計5本
の乗り継ぎで到達するルートもあるのだが、周遊しながら帰るのでない限り
一般的ではない。

ゴルナーグラート・モンテローザ鉄道は、シーズンを問わずツェルマットを
訪れたおよそ全ての観光客が一度はお世話になる交通手段と言える。
それは乗ってるだけで簡単に3,100メートルの展望台に連れていって
もらえるし、他のエリアからは望めないスイス最高峰のモンテローザを
眺められるからでもある。

僕らがこの鉄道に乗るのは昨日に引き続き3度目。そのレポートはこちらに
書いてあるので参照してほしい。ただ昨日と異なるのは、今日が快晴に
恵まれたことだ。昨日は雲中の走行で、車窓からは何も見えなかった。
ツェルマットも小川の辺りではマッターホルンが綺麗に見える好天率の高いアルプスにあっては、やはり晴れの登山電車の車窓風景を
紹介せねばなるまい。
先のページでも紹介したが、この鉄道はゴルナーグラート・モンテローザ
鉄道といい、マッターホルンの名はどこにも冠されていない。
モンテローザは終点ゴルナーグラートに到着しないと見えないので、いわば
「ゴルナーグラートに行ってモンテローザを見る鉄道」とネーミング解釈しても
よさそうだ。しかしその道中は常にマッターホルンと共にある。観光客が
マッターホルンを気軽に眺めるのに、こんなに便利な交通手段は他には
ないのだ。しかも1,600メートルから3,100メートル地点まで片道42分間
ずっと見えっぱなしだから、標高に応じた姿を楽しめる。乗ること自体で
これだけ満喫させてくれる列車は、おそらく世界に他にあるまい。

スキーパスを持ってれば乗車フリーだが、普通に買うと片道3,500円、
往復だと7千円くらいはする。決して安い乗り物ではない。
(スイスカード持参者は半額になる)

ツェルマットの駅の改札ゲートを過ぎると、ホームに至るまで柵が巡らされ、
ぐるぐるまわるような構造(誘導)形式をとっている。僕らが乗った時間帯は
いつも空いていたので何でこんな柵があるのか不思議だったが、実は
翌朝の駅の様子を見て納得。朝のツェルマット駅はゴルナグラートに
向かう人々でいっぱいだったのだ。それで先着順に列車に誘導できるよう
あのような柵をめぐらしていたのだ。ちょうどディズニーランドの乗り物待ち
右側車窓に広がるツェルマットの街並みの列と同様だ。ツェルマットにステイした場合、ゆっくり朝食を食べてから
上がろうなんて思ったら大変かもしれない。よくガイドブックで混雑を避けて
朝一番電車に乗ろうと薦めてるが、これは本当のことかもしれない。

列車に乗ったら進行方向右側の席に座ろう。出発してほんの300メートル
くらい走り小川を越えるくらいのところでマッターホルンが姿を現す。
1600メートルの低地から、街の建物と織り成す見上げるマッターホルンは
霊峰と言うべき佇まい。列車は緩やかに右にカーブし、樹木の生い茂る中
ツェルマットの街を見下ろしながら次第に高度を上げていく。
登山電車ならではの急勾配だ。車窓からの風景はツェルマットの街の
構造を知るのにとっても便利。
ツェルマットから8分、最初にフィンデルバッハ(Findelbach)駅に到着。

フィンデルバッハを出ると、やがて列車はトンネルに突入、左に大きく
カーブしながらノロノロ走り、ランドトンネル(Landtunnel)駅2,060mを通過
する。となる。この駅はスキーコースの途中にもなっていて、下山者の
便宜を図るためだけの駅という性質だ。したがってゴルナーグラート行きの
列車は通過してしまうし、ツェルマット行きも15時半から17時半の間の
列車のみが停車するのだ。
駅では列車が来るまでみんな座り込んで待っている
次のリッフェルアルプに至るまで、左側の車窓からはツェルマットの街が
見えるので、先のトンネルカーブで列車が180度ターンしながら高度を稼いで
きたのがわかる。ツェルマットから19分、リッフェルアルプ(Riffelalp)駅
2,211mに到着。ここではかなり多くの乗降客がある。
マッターホルンエリアに5ツ星ホテルは3軒しかない。うち2軒がツェルマット
にあるが、あとの1軒がここリッフェルアルプにある。標高2,200mの
5ツ星山岳ホテルとあって、世界中に固定客を持ってるらしい。
登山鉄道の話から少々脱線して、このリッフェルアルプリゾートの話をしよう。


U.5つ星『リッフェルアルプホテル』でのディナー

        http://www.riffelalp.com

ツェルマットの街を散策ついでに日本語観光案内所に立寄った。ここの
スタッフからリッフェルアルプリゾートの話を聞いたのだが・・・なかなか
好奇心そそられる内容だった。
「私自身はリッフェルアルプリゾートには行ったことないのですが、まぁ
5ツ星ですから毎晩正装ですよ。出てくる料理もキャビアとか。じゃがさん
なんか男性だからタキシード着なきゃいけないですよねぇ。毎食毎食正装
じゃ、私なんか気疲れしちゃってとても楽しめませんよ。食事見物が
リッフェルアルプホテルの概観許されるなら、どんな世界か一度覗いて見たいもんですけどね」
ウーム、伝統的な貴族社会の文化が残るヨーロッパで、5ツ星のホテルや
レストランにおいて客にそれなりのドレスコードと立ち居振る舞いを求め
られることは予想されるが、それにしても今時毎晩フォーマルディナー
なんてなぁ。それに毎晩キャビアだなんてあり得ないと思うが^^
僕もちゃまもフランス料理は大好きで、フォーマルディナーも堅苦しいという
印象はまるでなく、あれはあれで非日常的な楽しみを得られて大好きだ。
このスタッフから話を聞くまではアフタヌーンティーに行くつもりでいたが、
こうなったらディナーを体験しないではいられない。僕らが旅行する時は、
一度はそれなりのレストランで食事をするので必ずジャケット・ネクタイ・
革靴を持参してるのだ。ということで、翌日ホテルメインダイニングでの
ディナーを体験してきた。時系列順に記載してきたこのレポートからすると
先走ることになるが、ここで紹介しよう。

リッフェルアルプ駅からリゾート(ホテル)までは1キロ近く離れてる。夏の
間はミニ電車が走るらしいが、冬季はレールが雪の下に埋もれている。
スノーモービルが行き交い宿泊者の荷物を運んでくれるが、人は1台に
ホテル内にある暖炉と装飾品一人が限界なのでみんな10分以上かけて雪道を歩いていくしかない。
5ツ星だからだろう、到着客のほとんどは革靴で歩いて行く。それが緩んだ
雪にめりこむのだから見ていて気の毒なくらい。本当に極上のサービスを
提供するなら、せめて歩道用の除雪をするとか、常に圧雪して歩きやすく
するとかすればいいのにと、はなから期待がトーンダウンしてしまう。

ホテル内は木の香りに包まれ、入口にクロークがあり、ベルマンが待機
してるなど高級山岳ホテルとしての雰囲気を充分醸し出してる。
(かといって、普通の格好でも違和感なさそうだけど)
早速ダイニングに通される。入口の支配人らしき給仕に予約名を告げると、
僕らの雰囲気(服装?)を一瞥した上で席番号がスタッフに告げられ、何と
おそらくこのレストランで最上と思われるテーブルに誘導された。
だだっ広い雑多な雰囲気のスペースもあったが、そちらではなく奥まった
少人数が静かに食事を楽しめそうなエリアの、しかも窓際で 柱や窓枠が
展望の邪魔をしない真正面にマッターホルンがそびえる席だったのだ。
僕らは宿泊者どころか外来の一見客なのに何故?と思ったが、周囲を
見渡して納得。ジャケットにネクタイ姿の僕らが一番まともなだったからだ。
ディナー客が全員フォーマルだなんてとんでもない、それどころか上着を着てない客すらいる。挙句Tシャツ姿まで・・・。
かの日本語観光案内所のスタッフがこの光景目にしたら目が点になるでしょうね^^ 
メニューにはコース料理もアラカルト料理もあったが、ダイニング内のブッフェテーブルの数々の前菜料理が気になった僕らは
アラカルトで注文。もちろんブッフェ以外にメインも頼んだ。味は・・・極めて平凡、何のことはなかったのが残念。ぎとぎと
くどくない味わいは日本人好みだろうけど塩がきつすぎた。仮に塩加減がちょうどだったにせよ、ゴルナグラートホテルの
料理の方が見た目・質・工夫・味わい、全ての点において上でした。

登山電車は夜7時過ぎくらいで全ての運行が終わるが、帰宅の従業員用に11時にリッフェルアルプからツェルマットまで
列車が運転される。ディナーを楽しみたい場合は、この列車に乗ってツェルマットに戻ることが可能。
(但しスキーパスの利用不可)
ホテルから駅までは真っ暗な森道ながら外灯が灯り、満天の星の下なかなかロマンチックですよ☆

まさに世界の車窓から!V.リッフェルアルプからゴルナーグラート

再び話を鉄道に戻そう。リッフェルアルプを越えると、早や森林限界を越え、
樹木のない世界へと突入する。先ほどのトンネル左カーブ以降、お預け
だったマッターホルンがしばらくするとドーンとその雄姿を披露してくれる。
山並みの一部分であるとか、他とのコントラストの妙だとか、そんな
マッターホルンではない。列車とマッターホルンとの間が深い谷になってる
ので、まさに遮るものが何もないのだ。この対面はちょっとしたドラマだ。
途中、朝 リッフェルベルグからフーリーに向かい滑り込んだスキーコースと
並んで列車は走っていく。鉄道・スキーヤー・マッターホルン、このエリアを
象徴する光景が展開されるのだ。
ツェルマットから30分、リッフェルベルグ(Riffelberg)2,582mに到着。

このリッフェルベルグはもう僕らにとっては御馴染みの場所になった。
初日、何も見えない雲の中さまよったのもここだったし、今朝、その彷徨った
建物がリッフェルアルブホテル周辺だと確認したのもここの話だ。

ブライトホルンをバックに駆け上がる登山鉄道また、ゴルナーグラートエリアでスキーを楽しむ人にとってもリッフェルアルプ
はベースとなる場所だ。ここからゴルナーグラート下まで、マッターホルン
スキーパラダイスでは数少ない快適なフード付き高速リフトが架かって
いて、アルプスの醍醐味を味わえる最高のスキーを繰り返し楽しめるのだ。
但し、高速リフトでは、ブライトホルン・リスカム・モンテローザと4,000m級の
連なる息吹と横たわるゴルナー大氷河の息を呑むパノラマを味わうことが
出来ない(そこまでリフトでは上がれない)ので、このまま登山列車の旅を
続けてほしい。

リッフェルベルグを出た先の車窓の風景についてはこちらで既に紹介した
のでここでは略したい。マッターホルンそのものを楽しむ車窓からアルプスの
連なりとオフピステの雄大さを楽しむ車窓へと変化していく。
ツェルマットから42分で終点ゴルナーグラート(Gornergrat)3,089m到着。
ここですぐに滑り出すのもいいが、まずはクルムホテルゴルナーグラートに
足を運んで、カフェでゴルナー氷河と4,000m級のアルプスの織り成す風景
を楽しんでほしい。アルプスに来たと真に実感するだろう。
本当は夕刻のサンセット前後(20時前後)の静寂の中の神々しい偉大な
ゴルナグラートから望むリスカムとモンテローザアルプスを体験してほしいものだが、こればかりは宿泊者でなければ
味わえない。

ともあれ晴れた日の車窓風景のバリエーションの豊富さはどんな観光客も
目を見張るに違いない。ゴルナーグラート・モンテローザ鉄道、是非是非
皆さんにも楽しんで頂きたい!





第三章 6.悲劇は重なる・・・アルプス最後のスキー につづく

マッターホルン・スキーパラダイス トップページにもどる

スキー編のページにもどる            トップページにもどる