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6.3日目 悲劇は重なる・・・アルプス最後のスキー
T.再び襲い来る高山病
前夜もまた、初日の夜同様 静寂な空間の支配する神秘的なアルプスのサンセットを
素敵なディナーと共に楽しみ、夢気分で気持ちいいベッドに包まれたのだが。。。
朝目覚めた時に激しい頭痛と吐き気に襲われた。昨朝と同じ高山病だ。しかも
ただ苦しいだけではない、2日連続の高度障害で身体のエネルギーや抵抗力が
ほとんど失われてる感じがする。また滑り出したら治るだろう、だけど明日はもう
身体が耐えられないかもしれない、立ち上がれなくなるかもしれない、苦しみの中で
そんな不安と危機感にさいなまれた。予定ではここにもう1泊(計3泊)するつもり
だったが、これ以上身体に負担をかけたら取り返しがつかなくなる・・・
苦しみでもだえながら、ちゃまに今晩はツェルマットで泊まろうとお願いした。いや、
反対は受け付けないのだから、お願いではなくごり押しだ。
ちゃまがフロントでお願いしたところ、当日キャンセルだがチャージなしで受け付けて
くれたそうだ。
「ツェルマットでホテルが空いてればいいんですけどね」とホテルマンは心配してくれた
そうだが、もしツェルマットが一杯なら、マッターホルン・ゴッタルド鉄道に乗って
隣町のテーシュまで行くつもりだった。それ程、身体の消耗が深刻だった。
もちろん今朝の朝食も摂ることが出来ず、ちゃまにスーツケースの整理をお願いして
よろめきながらチェックアウト。
この時、ホテルから荷物だけ鉄道でツェルマットに送るシステムがあると
聞いた。何てラッキーだ! 僕の高山病は高度を下げて治るものではない
から、電車で45分揺られること自体恐怖だったのだ。スキーさえ出来れば、
新鮮な空気を取り込むうちに症状が和らいでいく。荷物を別送できれば
とりあえず克服できそうだ!
荷物送迎は2つで30スイスフラン、1個あたり1,400円ほどだ。このシステム
があるということは、極端な話だが何が何でもガツガツ滑りたいという
人向けにはちょうどいいかも。ツェルマット到着日に荷物を抱えたまま
ゴルナグラートに上がってきて、荷物を送ってしまえばこのエリアで
高速リフトを使って初日からがんがん楽しめてしまうという訳だ。
まぁ、よほど滞在期間の少ない人向けですが^^
今日はスネガエリアに足を運ぶか、それとも昨日の3,800m超の
グラッシャーパラダイスで楽しむかの選択だったが、あの感動が忘れられ
ない僕らはグラッシャーパラダイス行きを決めた。ということは、これが
最後のゴルナーグラート。真っ青な顔をしながらも、ホテルやリスカム・
モンテローザの姿をまぶたに焼き付けて出発。グレーシャーパラダイスから
イタリア行きは考えてなかったので時間は充分。
まずはゴルナーグラートからリッフェルベルグへ。何度滑っても気持ちいい
コースだ。朝の人がいない解放的な空間が最高。せっかくだからこのエリア
4本のコースを全て滑ろうと、繰り返し高速リフトを利用した。
今日も快晴、2,800mの高地の清涼な空気は僕の病状をどんどん
和らげてくれた。
まず上図37のコース。これは登山鉄道とつかず離れず滑っていく。初日、
何も見えない雲の中たどったコースでもある。起伏が細やかで比較的
コース幅も狭い。途中ローテンボーデンの駅から38コースが分岐してるが、
こちらは滑らなかった。
右の写真は36コース。これはもう最高だった。写真を見てもらえばわかる
だろう、綺麗に整地されたコースはゲレンデスキーヤーには垂涎の楽園だ。
コース幅が広く適度に起伏に富んで斜面変化を楽しめる。アルプスに
突っこむように滑走していく、正面右側にはマッターホルンが鎮座している。
極楽のような世界を堪能させてくれた。
ツェルマットにステイの人も、是非朝一番の鉄道で登って滑ってほしい。
ホテルでの朝食1回分抜くだけの価値は十二分にあるのだ。
食事を摂りたくなったら、リッフェルアルプかゴルナグラートのホテルに行けば、
最高の展望というおかず付きで食事が楽しめる筈だ。
ここに架かってる高速リフト、もし車で例えるなら・・・と言っても車に疎い僕には
クラウンくらいしかラグジュアリーサルーンは出てこないが、間違いなく最高グレードの
リフトと言えよう。高速フード付きという装備は言うに及ばず、音や振動もないソフトな
乗り心地、座面・背もたれ共にふわふわのクッション付き。背もたれは肩までかかり、
ゆったり寛ぐことが出来る。
今までの僕の一番快適なリフトは韓国ヨンピョンのゴールドリフトだったが、これは
それを凌駕する快適さがあった。加えてこの展望と新鮮な空気。
もうたまらないですよ〜。
U.悲劇は続く・・・
2本滑ってだいぶ高度障害の辛さもおさまり、最後に35番のコースを滑ってフーリーへ
向かう筈であった。
このコースも36コースと同じような起伏の連続。もちろん完璧に圧雪された高速バーン
だが、先の2コースと違うのは、落ち込みの斜度が深く長めということ。いや応なく
飛ばせるバーンだからこそ悲劇は起こってしまった。
ちゃまが速度制御できずに大転倒してしまったのだ。もしもコースがふかふか粉雪の
パウダーだったら、速度オーバーを意識した時にエッジを立てて急制御
出来たかもしれない。あるいは転倒したというだけですんだかもしれない。
が、ここは3千メートル近い高地。朝のがんがんにしまった雪を、さらに
圧雪で踏みしめてるコースだからただではすまない。あっと思った時に
起伏の落ちこむところで身体が飛ばされ、コースを外れオフピステまで
転がってしまった。たまたま高度障害を飛ばすためにちゃまと滑って
なかったため、その瞬間は見てなかったが、コース的にひょっとしたら
危険と立ち止まった一つ上の起伏で起こってしまった。。。
ストックは曲がり、サングラスは壊れ、顔中が腫れて擦り傷だらけだった
が、今思うと火事場のクソ力なのだろう、自分で横滑りでリッフェルベルグ
駅まで下りていった。
そう、僕らのマッターホルンスキーは思いもよらぬ形で幕となったのだった。
急ぎツェルマットまで鉄道で降り、すぐに病院に直行。病院ではレントゲンを
撮られただけだが、幸い骨には異常なく、特に処置することなく終わった。
ところが実際は上半身、特に首の神経を損傷していて、6週間を経た今でも
コルセットつけながら毎日リハビリに通ってるほどの重症だった。
ただこの時は現地の病院でとりあえず異常なしと言われて、それなら
どうしてもエリア巡りしたいというちゃまの願いもあって、観光見物する事になったのだ。
「今思うと、何故あの痛みを抱えながらあの後遊覧できたかわからないんだよなぁ」とちゃまは言うが、
旅先でまだまだ見たいという気持ちが、本来は動けないほどの痛みをおさえさせたのかもしれない。
飛び込みでいくつかのホテルに空きを聞いたがどこも満室。マッターホルン鉄道のツェルマット駅構内にある観光案内所に
飛び込んで、ようやく泊まれるホテルを見つけられた。
次にゴルナーグラート鉄道の駅で荷物をピックアップし、スキーをしまい靴を履き替え、荷物をホテルに預けて観光準備OK。
まだお昼過ぎということもあり、一度も訪れてないスネガエリア見物に出かけた。
第三章 7.スネガ・ロートホルン・ストックホルン観光 につづく
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