SKI 

   マッターホルン・スキーパラダイス(ツェルマット)

第三章 マッターホルン・スキーパラダイスにて

7.スネガ・ロートホルン・ストックホルン観光

T.スネガパラダイスからロートホルンパラダイス
ケーブルカーの概念を壊すめちゃくちゃ速い地下ケーブル地下ケーブル入口からホームまで延々と続く通路
スネガはマッターホルン・パラダイスの中では最もマッター
ホルンから遠く離れたエリアである。が、このエリアから望む
マッターホルンが最も美しいと言われ、テレビや雑誌などで
捉えられる映像はここから撮影されたものが一番多い。
そのスネガエリアへは地下ケーブルを利用して駆け上がる
ことになる。ツェルマット鉄道駅から地下ケーブル乗り場へは
巡回バスを利用するのが一般的だが、歩いても1キロない
くらい。スキーを持たない身軽な観光部隊となった僕らは、
駅からのんびり歩いてアクセスした。
ゴルナグラート・モンテローザ鉄道の線路に沿って暫く歩くと
小川に出る。ここからのマッターホルンは格別だ。小川を渡り
左方向に200mも歩けば地下ケーブル駅の入口となる。
ツェルマット鉄道駅からは10分もあれば歩けるだろう。
山の岩盤をくり抜いて駅を作ってるところは、昨日のクラインマッターホルン
ロープウェイ駅と同様だ。但しこちらの方が相当奥に入る。駅入口からケーブルカー乗り場
まで延々と続く通路を見るとうんざりしてしまった。といって歩かなければケーブルカーに
辿り着かないのだから致し方ない。。。

地下ケーブルは、その名の通り地上に出ることなく、ひたすら地中を走る
ケーブルカーだったが、とにかく速いのにびっくりした。僕のケーブルカーの
スネガのオープンテラスカフェ(レストラン) 背後のゴンドラ&リフトが交互に架かってて不思議!概念をふっとばすスピードだ。真っ暗な地中のことゆえ何キロくらい出てる
のかは定かではないが地下鉄並みのスピードは出てそう。ものの3分で
1,620メートルのツェルマットから2,288メートルのスネガまで引き上げて
しまうのだから驚きだが、実際ケーブルカーに乗ると、こんな山中に
これだけの規模の高速鉄道を作ってしまうスイス人の発想に敬服して
しまう。といってこの種の驚きはここに始まったことではない。
3千メートルを越えてなおよじ登っていく登山電車にもびっくりだし、富士山
より高い場所に無支柱で谷を跨ぐロープウェイを架けてしまうこと自体、
突拍子もない発想なのだが、それを現実化してしまうのだから信じがたい。
ほんとスケールが違いすぎる。。。

さて、スネガ(Sunnegga)に着き、そのまま通路を歩いていくと、すぐ正面に
レストランのオープンテラスが広がってる。テラスのすぐ下はスキーコース
となっていて、近くにペアリフトやゴンドラも架かっている。昼下がりの
この時間、客は2/3くらいの入り。ラッキーなことにこのレストランの
ベストテーブルと言うべき席が空いていた。紛れもなくその席は、グラビア
などの写真を飾る最もマッターホルンの見やすい席。とことん満喫しよう!
スネガのオープンテラスから見るマッターホルン昨日のガイド河野さんの言葉を思い出した。

「壁の二面が見えなきゃマッターホルン見たって言えない」

ここからのマッターホルンは見事に東壁と北壁の二面を見せて聳え立って
いる。雄雄しく屹立するゴルナグラートからのマッターホルン、手を伸ばせば
とれるような間近な存在だったシュバルツゼーのマッターホルン、それぞれ
違った美しさを披露してくれたマッターホルンだが、ここスネガからは最も
気品ある凛とした姿を示してくれている。見れば見るほど、昨日よくあの
山の周りをぐるっと滑ってこれたものだと感動がよぎる。

テラスからマッターホルンまで遮るもののない見事な展望。ここで半日
過ごしても飽きないかもしれない。もちろん望めるのはマッターホルンだけ
ではない。マッターホルングレーシャーパラダイスからシュヴァルツゼー、
リッフェルベルグからゴルナグラート、この後行くことになるストックホルンと
コーヒー飲みながらのんびり楽しめてしまうのだ。何て贅沢な時の過ごし方
だろう。そんな極上のリゾートを楽しんでる客達は、そう言えばスキーこれでもスキーシーズン真っ只中なのですが・・・ウェアーを着てる人は
半分くらいしかいない。ということは、半分は僕達のようにスキーをせずに上がって
きてる人たちなのか・・・と考えつつ、よくよく観客見物しててぎょっとした。
客の女性にノースリーブで寛いでる人が2人もいる。しかも一人はどうみても60過ぎ
くらいの年輩者だ。うーん。。。 一体ここはどこ? 常夏のビーチリゾート? 
今日は快晴ではあるが、それでも3度前後の気温なのだよ・・・

背後のロートホルン方向を見上げると、上空にパラグライダーで飛んでる人が見える。
そう言えば昨日のグレーシャーパラダイスではセスナ機を見かけたし、ほんとこちらは
スキーばかりでなく色んな遊びをエンジョイしてるもんだ。スケールが違うのは景色
ばかりじゃないらしい。

スネガからゴンドラを上がってみる。このゴンドラはとっても不思議で、
ゴンドラ・リフト・ゴンドラ・リフトの順に交互に架かっている。こんなの初めて
お目にかかった。が、考えてみるととても便利な仕組みだ。
ゴンドラとリフトが交互に架かってますこのゴンドラ&リフトの乗り場は2箇所ある。ちょうど上から乗り物が下りて
きた地点での乗り場はゴンドラ専用。地下ケーブルから来た人やカフェで
休憩して出てきた人はこちらの乗り場に誘導され、ゴンドラに乗車する
仕組みとなる。乗車後、すぐ回転台でぐるりと180度まわってもう一つの
乗り場となるが、ここはスキーコースから直結したリフト乗り場となっている。
つまりスネガパラダイスを滑りこんで来た人は、リフトに誘導されるので
スキーを着脱する必要がない = ガンガン滑れるというシステムだ。
何と合理的!

ブラウヘルド(Blauherd)2,571mまで行くこのゴンドラ&リフトは、スキー
コースに隣接して架かっている。みんな気持ち良さそうにかっ飛んでる。
スネガパラダイスのスキーコースはこの2日間滑ってきたどのコースよりも
極めて日本に近い感じ。大自然とオフピステが目立つ今までのエリアとは
違って、ここでは圧雪コースが主役であり、またコース長や角度が無難で
安心してゲレンデスキーヤーが滑れそうなところも日本的といえよう。
という意味では、日本からツェルマットにやってきた皆さんが最初に
足慣らし的を兼ねて滑るお薦めのエリアとも言える。
岩肌に突っこんでいくような迫力のロートホルン行きロープウェイもちろん実際に滑ってるわけではないので、見た感じの推測に過ぎないのだが。

ブラウヘルドからさらに上に上がるロープウェイに乗車してみた。先ほどのゴンドラと
距離は同じくらいだが稼ぐ標高差が約2倍、つまり行きは急上昇、帰りは急降下が
待ってるのだ。しかもこのロープウェイもまた無支柱がゆえに、山肌に突っこむような
恐怖はグレーシャーパラダイスのロープウェイと変わることはない。
写真の通り、斜面はところどころ土肌が剥き出しになっている。雪のつきにくい急峻な
岩盤では、3千メートルの高地でもさすがに4月の南西斜面となるとこの通りだ。
いくらオフピステフリークもこれでは厳しいかも^^
地下ケーブル乗車以降角度的に望めなかったツェルマットの街も、このロープウェイ
からは米粒のように眼下に見てとれる。
このエリアで最も高いロートホルン(Rothorn)3,103mに到着。

頂上からは、ロープウェイの架かってる斜面の裏斜面にも長いリフトが架かっていて
スキーヤーが次々滑り降りていく。コースの多さ、バラエティの豊かさにはもはや
溜め息しか出てこない。

再びブラウヘルドに向け、ロープウェイで下る。この中で、ペットの大型犬を2匹連れた
女性に会う。こちらでは犬が乗車しても全然違和感がないのが不思議だ。日本では
盲導犬以外はダメなんでしょうねぇ、、、

ブラウヘルドから、今度は谷に向かって下りていくゴンドラに乗ってみた。今まで乗って米粒のようなツェルマットの街きた数々の
ゴンドラと違って、まるで観覧車の箱のような小さなゴンドラだ。このゴンドラの乗り場と降り場を結ぶ
スキーコースはないので、エリア間連絡的な使われ方をするのだろう。
ガント(Gant)2,223mからロープウェイに乗り継ぎ、一気に標高を千メートル以上を駆け上がり、
3,286m地点に到達する。ここはゴルナグラートからさらに谷を越えてゴルナー氷河を上がった地点
でもある。そう、つまりクルムホテルゴルナグラートよりさらにリスカムやモンテローザに近づいた
展望が広がってるのだ。そしてここからさらにロープウェイがより奥地へより高地へと架かってる。
こうなったら最果てのエリアまで足を延ばそうじゃないか!

U.スイス最高峰 モンテローザ(ストックホルンにて)
老朽化が進んでそうなロープウェイだが、支柱が一つだけあったからまだ救われた・・・一つだけだけど^^
とてつもなく古そうな、頼りなさそうな、つまり今にも壊れそうなロープウェイに
乗る。このロープウェイが最もモンテローザに近づいてくれる最奥地へいざなって
くれる乗り物なのだ。スキーヤーでかなり混雑する。観光部隊は僕達だけだ。
スキーもせずにこんな奥まで乗り継いでくる物好きはいないということか^^ 
物好きと言えば、このロープウェイに乗ってるスキーヤーも類に漏れない。
何故か? それは上の地図を見てくれればわかることだ。
昨日スキーガイドの河野さんにゲレンデマップ(ページ冒頭の地図のこと)の
黄色のコースラインは何を意味してるか聞いてみたのだが。
「あぁ、黄色のコースは自己責任で滑りなさいというコースです。仮に
 コース上で遭難しても行方不明になっても一切責任持ちませんという印
 なんですよ」
改めてマップの欄外を見ると、黄色のラインは「Downhill ski runs」と注釈して
ある。つまりどこにも河野さんの言うようなことは書かれてないのだが、
コース規制と過保護が徹底し管理者責任のうるさい日本とこちらでは、
全てが違うのだろうからまんざら適当とも言いがたい。
実際この黄色のラインがどんなコースだったかと言うと、コブと不整地の
オンパレード。上から眺めて感じるのだから、実際滑ったらもっと鬼のような
バーンなのだろう。
スイス最高峰モンテローザ
ストックホルン(Stockhorn)3,405m、マッターホルンスキーパラダイスで
スイス最高峰モンテローザ(4,634m)に最も近い展望台である。
氷河の上にちょこんとただの岩がのっかってるだけのように見える。
少なくともマッターホルンのように絵になる山ではない。
ところが周囲に漂う荘厳な空気、大氷河に囲まれ、ここにやって来る人の
少なさも相まって、まるで御神域とも感じるようなおごさかな佇まいは
畏怖を感じるほどのものであった。静けさを取り戻した夕暮れ以降の
ゴルナグラートで感じる空気そのものだ。

そんな空気に浸ってるのは僕らだけ。ロープウェイで同乗してきた
スキーヤー達は嬉々としてピステになだれ込んでいる。
ここからは整地されたコースは一切ない。いったん滑り始めたら、もう途中で
迂回などできないのだ。果てしなくオフピステが続いてる。その終わりが
一体どこなのかは全く見てとれないが、フリークにとってはそんな無尽の
滑走がたまらないのだろう。僕らがここを滑れる日は一体いつになること
やら。。。 日本的なスキー講習を受けてる限りは、まだまだ遠い日のこと
モンテローザとは反対側の眺望だろう。

なお、地図に見えるストックホルンの下 2,715m地点から3,247m地点に
架かるロープトゥは営業してなかった。

再び3,286m地点に戻り、今度はロープウェイで谷を跨ぎゴルナグラート
へと渡る。これをもってマッターホルンスキーパラダイス左半分のエリアを
ぐるり一周してきたことになり、ざっとではあるが2日間でひとまず全域の
景色を眺めることに成功した。
朝、スキーで滑り始めた時は再びゴルナグラートに戻ってくるとは思っても
みなかったし、ましてちゃまが怪我をして僕らが観光部隊に変身しようとは
考えもしなかった。が、怪我の功名という表現が正しいかどうかわから
ないが、スキーをしてたら今日スネガエリアやストックホルンを巡ることは
なかったし、新しい遥かなる眺望の美しさに触れることもなかった。また、
結果としてマッターホルンスキーパラダイスを一通り巡ったことで、
それぞれの位置関係やコース配置が頭に入った。これは次回再び来た
時には役立つだろうし、今度はガイドなしでも効率的にスキーを楽しむことが出来そうだ。

慣れ親しんだゴルナグラートから電車でマッターホルンを楽しみながら下る。これが最後のゴルナグラート・モンテローザ鉄道。
2日間、雲一つない快晴に恵まれたのは何よりの天からの贈り物だった。


第三章 8.ツェルマット につづく

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