SKI 

   マッターホルン・スキーパラダイス(ツェルマット)

第三章 マッターホルン・スキーパラダイスにて

3.2日目の異変
朝焼けのマッターホルン
初日は残念ながらアッターホルンを拝むことが出来なかったが、3,100m
の世界で迎えた翌朝、ちゃまの歓喜の叫び声で目が覚めた。
「わ〜〜〜〜〜っ 見てみて〜〜〜〜」
窓の真正面から飛び込んできたのは、そう、マッターホルンだ!
いや、その迫力たるや感動なんてもんじゃない。頂上までこんなに間近に
望めるなんて!
ホテルの部屋は「Matterhorn View」をおさえたものの、この○○View
という表現がクセモノなのは幾度とない旅行で味わってるのだ。
よくありがちなのが「オーシャンビュー」 海が広がると思いきや、窓から
顔出して or バルコニーに出て身体をよじったら海が見えるというもの。
確かにそれだって部屋から海が見えると言われてしまえばそれまでだが、
「オーシャンビュー」につられて予約した方からすると詐欺だと言いたくなる。
そういう旅行者の批判を受けてのことかどうか、最近はこういう“ちらっと”
ビューを「パーシャル・オーシャンビュー」と区別して表示してる旅行会社も
増えてきた。では旅行者の期待通りの風景が窓の外に広がる部屋は
何と表示してるかというと、海沿いのホテルでは「オーシャンビュー」ではなく
「オーシャンフロント」が一般的になっている。
「フロント」「ビュー」「パーシャル・ビュー」の順に分けて表示をしてるのだ。
山や街の場合、「マウンテン・フロント」とか「シティ・フロント」という言い方は
聞いたことないが、いずれにしても「View」である以上、気持ちは期待半分
だったのだが、もうこれはフロント以外の何物でもない。
窓を全開にし、アルプスの空気を思いっきり取り込んだ。凍えるかと思いきや、
手がかじかむということのない心地よさ。2日目にして最高の感動の朝を
迎えたのだった! と言いたい。言いたかったのだが、実は僕はとんでもない
異変に襲われていた。

ものすごい頭痛と吐き気、けだるさ。この感覚、かつて味わったあれだ。そう、
高山病だ。昨夜寝る時までは何ともなかった。身体が高度馴化したと安心して
たのだが・・・。知り合いの薬剤師さんが持たせてくれた高山病の資料によると、
睡眠中は酸素の取り込みが少なくなるので、起床時に高度障害を起こしやすく
なるらしい。富士山の時のような腹痛や身体の節々の痛みはない。が、
それでも動けないことに変わりはない。
経験上、新鮮な空気をどんどん取り込まなければ苦痛を和らげられない事も、
また高度を下げなければ治りようがないこともわかっていた。今回は
高山病薬も持参してはいたが、これはのたうちまわった時の最終手段と
高山病でヨレヨレながらもアキレス腱だけは伸ばしておく決めていた。対症療薬である以上、強い薬効作用で副作用やアレルギー
でも起こしたらえらいことだからだ。その前に、少しでも何か口にしとか
なければ身体がもたない。今日は一日ガイドさんとの国境越えの
パワフルスキーが待ってるのだ。
ここで高山病経験のない方は、頭痛に吐き気でスキーなんか出来るわけ
ないと思われるかもしれない。ところが富士山の時も今回も吐き気には
波があって、10分倒れこんでは2分ほど動けそう また倒れこんでは
動けそうの連続なのだ。その動けそうな時を見計らってとりあえず
下りてみようと頭の中では考えてるのだが。。。

ちゃまに手伝ってもらいながら30分近くかけてウェアに着替え、階下の
レストランに下りようとするも、カフェのテーブルで倒れこんでしまい、
ちゃまにフルーツカクテルだけ持ってきてもらい倒れこみながら口にする。
ちゃまによると、ここの朝食のクロワッサンは絶品だったとのこと。
パン好きの僕にとっては何とも悔しいが、もちろんそれどころじゃない。
とにかく外に出て新鮮な空気をとりこまなければと、這いつくばるように
外へ。そこには昨日とうって変わって雲ひとつない朝の大パノラマが
待っていた。「病は気から」ではないけれど、富士山の時と同じく息を呑む
パノラマを目の当たりにすると、一瞬症状を忘れるもんだ。
激しい頭痛と闘いつつも準備運動だけは欠かせない。さぁ、行こう!


第三章 4.夢のマッターホルン大滑降 T.ゴルナグラートからフーリーA につづく

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