SKI 

   マッターホルン・スキーパラダイス(ツェルマット)

第三章 マッターホルン・スキーパラダイスにて

4.夢のアルプス大滑降

U.フーリーからクラインマッターホルン

国内・海外を含め、ガイドさんを頼むのはこれが初めての経験。一日中滑れるのはたった2日しかないという日程の中で、
噂の国境越えイタリアスキー越えを果たしたかったこと。双方のエリアへ移動するのに、ゴンドラやロープウェイを何度も
乗り継がなければならないこと、その移動手段がちょっとの天候変化で止まってしまったらもうスイス側には戻って
これないこと、それが僕らの想像を絶する3800メートルという日本の感覚だとありえない条件下で行われること等から、
天候条件も含めマッターホルンエリアを精通してるガイドをお願いするしかないと決めていたのだ。

このガイドについては、オプショナルツアーに参加するものと、貸切でガイドを雇うのと2手段あった。
もちろん前者の方が安い。が、他のお客さんと同じとなるとレベルの違い・希望ピステの違いなどによるストレスを
感じる可能性がある。足を引っ張るのも引っ張られるのも嫌だ。まして僕らにとって時間は貴重だ。
そこで貸切ガイドを雇うことにした。今になって思うと、高山病を抱えながらのスキーだから貸切でよかった^^

待ち合わせまで1時間弱、ベンチで休んでた僕達に声をかけてきたのはガイドの河野さんだった。スキー場では
日本人をほとんど見かけないので すぐに僕らとわかったのだろう。ガイドが客を待たせてはいけないと、
この時間にいるということは、ツェルマット駅でのゴンドラ待ちも考えて相当早く家を出てきたのだろう。やはり客商売は
こうでなければ^^

「さぁ、行きましょう」
うーむ、高山病のこと言い出せなかった。もうこうなったら行くっきゃない!この軽い頭痛が悪化しませんように・・・

この大型ロープウェイが無支柱で上がってくイタリア越えを果たすためには、フーリーから2本のロープウェイを乗り継が
なければならない。ツェルマットからだと3本ということになる。このエリア
上部に行く人々で混雑し、フーリーで2本分 約20分弱のロープウェイ待ち
があった。今回のスキーで待ちがあったのはここだけだ。ロープウェイが
何人乗りかはわからないが、100人近くは乗ってしまう。幸い列の先頭
だったので、前方窓に立つことが出来た。フーリー 1,864mから
トロッケナーシュテグ(Trockener Steg)2,939mまで、深い谷間を横切って
引き上げてくれる。そのパノラマもさることながら迫力には言葉を失って
しまった。高所恐怖症の人は絶対に乗れまい。この谷あいを無支柱で
横断してしまうのだ。尤もロープウェイが無支柱で架けられてるのは、
これだけではなくてマッターホルンスキーパラダイス全体で言えること
だった。。。
登りと下りのロープウェイが中間地点ですれ違う時、通常は同じ高さで
すれ違うが、無支柱だとどうなるか。支柱間の距離が長ければ長いほど
重量のある方が沈み込むことになる。朝のこの時間、下りのロープウェイ
は空っぽで 登ってく方はギュウギュウ詰めだ。結果すれ違う時、下りの
ロープェイの箱の下がくっきり見えるほど下のほうをすれ違った。
クラインマッターホルンからトロッケナーステッグ・ツェルマット方向を望むこんなに高度差のあるすれ違いは初めてだが、その分重みがロープに
かかってるということでもあり、もしロープがブチッと切れたら・・・・
そんなこと考えるとあぶら汗が滴ってくる。もっとももそのお陰で、
しばらく高度障害への恐怖を忘れることは出来たが^^

トロッケナーシュテグからはリフトやロープトゥなどでスキーを楽しむことが
できるし、シュヴァルツゼーエリアに滑り込むことも出来る。ここからは
人の流れが分散されるので、フーリーのような混雑からは解放される。
ガイドさんの薦めでトイレをすませておく。

さぁ、いよいよクラインマッターホルンへ。先ほどと全く同じ形のロープウェイ
に乗り継ぐ。右側には365日スキーを楽しめるサマースキーのメッカが
広がり、正面のテオデュール氷河を横断するようにロープウェイは進んで
いく。そうこの辺は氷河スキーの世界なのだ。
例によってこのロープウェイも無支柱だ。下を望む恐怖は
フーリー・トロッケナーシュテグ間に勝るものはないが、こちらは正面の
恐怖が待っている。重みでロープが下にたわむので、最初はロープが
クラインマッターホルンからゴルナグラート方向を望む沈み込むぶん高度が上がっていかない。このクラインマッターホルンの
ロープウェイ駅は、山の岸壁をくり抜いて無理やり駅を作ってる構造だ。
つまり目前に岸壁が迫る迫る・・・うわぁ〜 ぶつかるかも〜と恐怖を感じる
区間後半の最後になって、ロープウェイらしからぬ急上昇が待ってるのだ。
普段この感覚に乗り慣れてるツェルマットの人々は良いが、無支柱の
経験のほとんどない僕らには遊園地の絶叫アトラクションに乗ってるような
感じだ。
途中まで高度障害へのドキドキで胸いっぱいの僕だったが、
後半のスリルでまたもやぶっ飛んでしまった。
ほんとにあっという間の高度3,883mに到達。僕の人生で未だ到達してない
高さ。富士山が3,776m、それよりも高いところまでロープウェイを架けて
しまうという発想がすごい。数々の谷や氷河を無支柱で横断させてしまう
という技があったればこそだが。。。 吐き気ない、腹痛なし、身体の痛みなし、頭痛は軽いままだ。よし、いけるぞっ!

右の2枚の写真はクラインマッターホルン到着直前のロープウェイから。
上の写真はまっすぐ下方向を。真下がテオデュール氷河、左から真ん中
方向に向かってゲレンデコースが延びている。右上の谷あいになってる
ところがツェルマットの村だ。
下の写真は上のの写真より右方向を望んだもの。左上にきれかかってる
谷あいがツェルマット、真正面に横たわってるのがゴルナー氷河、その
崖の上一面がリッフェルベルグからゴルナーグラートのスキーエリアだ。
そう、先に紹介したゴルナグラートからもクラインマッターホルンは望める
のだ。右側の小さな2枚の写真は既に今までに紹介済みのゴリナーグラート
からの写真だが、左側の写真を見てみよう。ブライトホルンの右側に、
一段低くなった峰にちょこんと突起のように突き出てる部分がある。
これがクラインマッターホルンだ。
クラインマッターホルン・イタリア側からフランス方面のパノラマ
では話を戻そう。クラインマッターホルンの駅は岸壁をくり抜いて出来てる
と紹介したが、駅はスイス側。この岩盤を山の反対側までくり抜いて
通路が出来てる。その間200メートルくらいだったかな。途中、国境線を
またぎ、実にあっけなくイタリア入国。通路を出ると、またまた素晴らしい
大パノラマが広がっていた。テオデュール氷河が間近に広がってるせいか
ゴルナーグラートのような山々が迫り来る迫力はない。
が、この高さならではの同レベルに連なる山々、そしてフランス方向に
目を向けると、マッターホルンパラダイスではここからしか望むことの
出来ないアルプス最高峰のモンブランが遠くに見えるのだ。
ガイドさんに教えてもらってやっとわかったとはいえ、今までテレビや
本でしか知らない名峰をこの目で見られたというのは最高の気分だ。
雲ひとつない抜けるような青空、天が僕らに最高のプレゼントを用意して
くれた。感謝!感謝!


第三章 4.夢のマッターホルン大滑降 V.イタリア・チュルビニアへ につづく

マッターホルン・スキーパラダイス トップページにもどる

スキー編のページにもどる            トップページにもどる