SKI 

   マッターホルン・スキーパラダイス(ツェルマット)

第三章 マッターホルン・スキーパラダイスにて

4.夢のアルプス大滑降

V.イタリア・チェルビニア

この高さになると、雪ですっぽり。どこでも滑れちゃう!クラインマッターホルン、標高3,883メートル。イタリア側の風景は、
切り立った険しい岩肌の目立ったスイス側とは一転、雪また雪に覆われた
真っ白な世界だった。もちろん圧雪整備されたコースもあるが、
一面オフピステはシュプールだらけ。コース以外は滑ってはならないと
やかましい日本と違って、こちらは何でもあり。どこを滑ろうと自己責任
なのだ。それが遊び本来の姿だと思うが。。。

こんな気持ち良さそうな雪世界、ふわふわっと入り込みたくなるが、
僕とちゃまの技術では制御できずに雪ダルマになるのがオチだ。
入りたそうなガイド河野さんの誘惑も断ち切り^^コースを滑る。
「ひゃっほ〜〜〜〜〜〜〜」
何と広大なことよ! 何とスケールの大きいことよ。空は青空、
澄み切った空気、まわりは障害物のない銀世界。5キロ6キロ先が
全て見渡せるなんて日本じゃありえないでしょっ!

クラインマッターホルンからイタリア側を滑り、コースは180度まわりこむ
ように今度はスイス側方向に向かっていく。まわりこんだ時、正面に
クラインマッターホルンから滑り降り、180度展開した時に見えるマッターホルンマッターホルンが見えるのだが、今までとは別人のように不恰好だ。

「スイス側ではマッターホルンだが、イタリア語ではモンテチェルビーノと
 呼びます。まぁ、とても同じ山とは思えないくらい見た目が変わっちゃい
 ますから、名前が違ってて区別できていいかもしれませんね。ですから
 イタリア領にいる間は、マッターホルンとは呼ばないでモンテチェルビーノ
 でいきましょう」 と、ガイドの河野さん。

なるほど。これから向かうチェルビニアもモンテチェルビーノからとったに
違いない。快適なコースをスイス方向に向かって飛ばしていく。
もうこの辺はいつスイスでいつイタリアなのかわからない。
中級者に最適な高速バーンだが、完全に圧雪されて荒れてないため
(コブが全くない)初級者でも楽しめるのはゴルナグラートと同様だ。
それにしてもこの3,500メートル超の景色の何と大らかなこと。
一面天上の平原世界。エリア毎に表情の変わるマッターホルンパラダイス
は場所場所で本当に驚かされる。

クラインマッターホルンからのコースはこんな感じ。雄大としか言いようがないやがてコースが斜め前方2方向に分かれる。右に行けばイタリアへ、
左に行けばトロッケナーシュテグに戻るコースというが、こんな表示じゃ
高速でかっ飛んでたら見落とすだろう。やっぱりガイドを頼んでいて
よかった。間違えてトロッケナシュテグに降りても、またロープウェイで
登るか、あるいは2本ロープトゥを乗り継げばイタリア側に戻ることは
できるが、これだけのスケールだと時間のロスが大きい。この辺の
ロープトゥは1本1本が長いので、掴まってると疲れそうだ。

チェルビニア側のトップ、テオデュールパス(Theodulpass)3,301mまで
下りてきた。ここからは正真正銘イタリア側の大滑降だ。
一見上級者コースのような斜度もあるが、なんなく滑れるのは韓国
ヨンピョンと同様だ。日本で30度のコースと聞けば誰もが上級者コースを
連想する。日本では30度を越えるコースでコブのない圧雪コースが皆無
(?=僕の知る限り)だからだ。だからみんな尻ごみすることになるが、
上中初級者コースの判別は、実は斜度にあるのではなく整備状況による
のではないかと感じる。
30度10度20度など、変化に富んだこのコースをスキー経験2年のちゃまが
チェルビニアへは、この山々に突っ込むように滑り降りていく気持ちよく滑ってるのだ。例え15度であっても、めちゃくちゃ荒れてたり
コブだったりすると途端に彼女は滑れなくなるに違いない。

テオデュールパスからのコースは、ゴルナーグラートからリッフェルベルグ
へと至るコースを彷彿させる風景が広がる。深い谷を持つ山々に周囲を
囲まれるからだ。が、ゲレンデ自体はオフピステの中の圧雪コースという
感じではなく、大きなゲレンデに無数にコースが行き交ってる感じ。
スキーヤーもそこそこ滑っていて、今まで滑ってきたどのコースよりも
日本のスキー場に近い感じ。
このチェルビニアエリアもスイスエリアに負けず劣らずとにかく広い。
いや、一つのエリアとしては、スイスのどこよりも大きいかもしれない。
そんな無数のコースチョイスの中から、河野さんはモンテチェルビーノ
(マッターホルン)にまっすぐ突き進むように滑っていく。
そういえば、彼とのメールのやりとりの中で、ちゃまは今回の旅が何よりも
マッターホルンを目的としてることを伝えた筈だ。だからこそ彼の勧めを
はねつけてゴルナーグラートのホテルに泊まったのだ。そんな僕らの想い
を知っていて、出来るだけマッターホルンに近づくコースを選択してくれた
イタリア側から再接近したマッターホルン。もはや別の山。。。のだ。ありがたい話。
途中1本リフトで上がり更に滑り込んだ地点で河野さんが立ち止まった。
「さぁ、ここがモンテチェルビーノに最も近づいたポイントですよ」とカメラを
パチリ。でも右の写真を見て、マッターホルンですって言われても
信じる人はいないでしょうねぇ。それくらいスイス側とイタリア側では
表情が違ってるのです。

さぁ、ここからは一気にチェルビニアの街まで滑り下りる。硬く締まった
舞い上がる雪が粉のように散る上部から、標高が低くなるにつれ
ソフトな感じがしてくる。それでもシャーベット状になることはない。
あっ、街が見えたと思ったら、ほんとすぐに滑り下りてしまった。

「はい、ここがチェルビニア、標高2,050メートルです」
うーむ、もっと遥かに遠いと思ってたのに、随分あっけなく着いてしまったぞ。

「それはお2人の滑りが早いからですよ」
エッ そんなことはないでしょ・・・ コースの視界が効いていておまけに
すいてるから、日本だったらあそこに見えたらこれくらいかかるという
感覚の半分くらいの時間で滑れてしまうということでしょう。
にしても、さっきクラインマッターホルンにいたかと思ったら、1時間経たずに
ほんと誰もいない。。。平日のチェルビニアは人気のない建物群が印象的1,800mの高度を下りてしまったわけだ。
にしても人気(ひとけ)の感じない街並みだ。ゴーストタウンはかなり
オーバーだけど、人工の建物ばかりが目立つ。木の温もりを感じる
シャレーの多いスイスとは明らかに雰囲気が異なる。

「随分人気がない街ですねぇ」
「そうですね。ツェルマットはスイスや各国からバカンス客が集まって、
 土曜日に入って土曜日に帰る、つまりほとんどの方が8日間のバカンスを
 楽しまれます。ですからいつも賑やかですが、チェルビニアの客は
 ほとんどがイタリア人で、日本と同様週末に遊びに来ます。ですから
チェルビニア街の前にかかるロープトゥ。正面の山はマッターホルン。 この街もウイークデイはガラガラなんですよ」
「それにチェルビニアは完全にスキーヤー・ボーダー・観光客などの為に
 作られた街で、ツェルマットには住人がいますがここにはいませんからね」
「そしたらここで働く人達はどこで住んでるんですか?」
「もう一つ下のヴァルトルナンシュという街に住んでいて、ここまで通って
 くるのです」
フーム。なるほど。雑学が増えたぞ^^

200 snow reports」では靴に履き替えてチェルビニアの街を散策し、
ランチしたと書いてあった。また、事前に調べたチェルビニアツアーの
ほとんどが、この街でランチとスケジュールしてあった。そこで僕らも
靴を持参してたのだが・・・

「さぁ、じゃがさん、ちゃまさん、上がりましょうか!」
エッ? 予想外の展開に戸惑いを隠せず呆然としてしまった。その表情見て
ちゃまが大爆笑。
「じゃが、行くよ〜〜」


W.イタリア・ヴァルトルナンシュ
ヴァルトゥールナンシュ側のロープトゥ
右上の写真のロープトゥを1本上がり、斜め横におりてゴンドラ乗り場へ。
志賀高原の蓮池からジャイアントへの連絡用ロープトゥには転倒したり
掴めなかったりで利用に四苦八苦してたちゃまだったが、このロープトゥ
は一回で成功。
「志賀のが不親切なんだもんっ!」
確かにあのロープトゥは掴まるだけだから両腕だけに荷重がかかる。
女性には不親切かも。マッターホルンパラダイスのロープトゥには
直径30cmくらいの円盤状のものがロープにぶらさがっていて、両大腿で
挟んでお尻に引っ掛ければ、両手を離しても楽々上がっていける。
(さすがに斜度のきついところは両手でロープを掴んどかないとバランス
崩してしまうが)

日本と違ってマッターホルンスキーパラダイスではロープトゥが大活躍。
個人的には遅いリフトに乗ってるよりは、滑りながら上がれるロープトゥ
の方が好きだが、指先が凍てつく寒さの時は厳しいかも。

イタリア側最トップ プラトーローザよりここからゴンドラ2本、ロープウェイ1本の計3本を乗り継いでイタリア側の
トップに上がっていく。2番目3番目のゴンドラやロープウェイの景色もまた
異質だ。大きなダム湖はまるで黒四ダムを思い起こさせる。ここも難工事
だったに違いない。
イタリア側トップはプラトーローザ(Plateau Rosa)3,480m。駅から望む
モンテチェルビーノはあの不恰好な山容だ。
一方、最初のゴンドラを降りたところからリフトを3本乗り継いでも、
もう一つのトップ テオデュールパスに登ることが出来る。
このテオデュールパスは、先ほどクラインマッターホルンから滑り降りて
きたところだ。万一風が強くてロープウェイが止まっても、このリフト3本が
動いてる限りスイス側に戻れるのだが、迷わずスムーズに行けるかどうか
は疑わしい。2本目のゴンドラは谷を越えていくため、その上の
ロープウェイが止まって元に戻りたいとしても、スキーでは戻れないのだ。
(チェルビニアまで滑り降りてからもう一度上がらないといけない)

「では、今度はヴァルトルナンシュまで滑ってみましょう」と河野さん。
ヴァルトルナンシュと言えば「200 snow reports」の管理人さんもヴァルトゥールナンシュ側に下りる途中には奇岩が多い到達
できなかったマッターホルンパラダイス最遠のエリアだ。何と何とこの
巨大なイタリア側スキーエリアを、たった1日でざっと経験させてくれようと
してるのだ。そういうことか。それでチェルビニアでの散策をしなかった訳か。

プラトーローザから一気に滑り始める。ここもまた斜度変化に富んだ楽しい
高速コース。チェルビニアとは谷を越えた別の峰となるので、モンテチェル
ビーノ(マッターホルン)は最上部を除き終始望めない。どこにいても必ず
拝めるマッターホルンパラダイスだけにちょっと異質な感じ。が、モンテ
チェルビーノが見えないからといって、いくらでも奇岩連峰で楽しませて
くれるのだからさすがアルプス。

2,500メートル地点付近まで下りてきたところに、コースに立て看板が
置かれていた。イタリア語で書かれてたようで僕らには意味不明だったが、
「残念ですね。ここから先は雪不足でコースの状態が悪いみたいです。
 ヴァルトルナンシュは標高1,500mなんで、もうこの時期は厳しいん
 ですよ。残念ながら街へは行けないですね」

千メートル以上は悠にある長く遅いペアリフトだが、森林限界を遥かに超える素晴らしい景色に飽きることなく見とれ続けたこのページ最初の地図の一番右端のところまで滑ってきて、あとゴンドラ
1本分滑ればヴァルトルナンシュというところで断念となった。
思えば標高1,620mのツェルマットで街中は雪がまるでない状況だった。
1,800mのフーリーですらコースに雪がなくなるありさまだからしょうがない。

上に戻るため、ゆうに1キロ以上はある長い長い遅いリフトを2本乗り継ぐ。
リフトからの眺めは右の通り。高地の澄んだ青空は本当に透き通るよう。
絵になる風景をぼーっと眺めてるだけでも心が洗われ、遅く長いリフト
乗車時間も気にならなかった。
さらにロープトゥを乗り継いで、そこから一番上に架かるロープウェイ駅の
乗り場まで滑り込んだ。
「では、ここでランチにしましょう」

「ここはスイスじゃなくてイタリアですから、スキーもぽんと置いとくと盗まれ
かねないので、置き方にも工夫が必要ですよ」
と、河野さんは 特にたくさんのスキーがかたまってるところの中の方に
隠れるようにスキーを置いた。
ランチをとったレストランイタリア側ではいいスキーだとほんとに持ってかれるらしい・・・

料理はパスタやピザ、サラダなど、イタリアらしいメニューが並んでるようだ。
「ようだ」というのは、メニューが読めないからでして^^
近くの人が食べてる皿を指差して、「あれくれ〜」とパスタを注文。味は
普通だったが、何より2,812mという高地のハンデを忘れさせてしまう店の
あり方が素晴らしいと思う。これはマッターホルンスキーパラダイスの全ての
店に言える事ですが。
ちなみに河野さんはパニーニ(ホットサンド)を食べていた。これがとっても
美味しそう〜。やっぱり地元の人は知ってますねぇ^^

食べ終わってロープウェイで再びプラトーローザへ。先ほどはここから
ヴァルトナンシュ方面に滑り降りたが、今度はスイス側の大滑降。
マッターホルンの雄姿を楽しみつつ、東壁から北壁へ回り込むように
まさしくマッターホルンスキーパラダイスそのものを楽しむ夢のスキーが
待っている。

夢のアルプス大滑降、後半のスタートだ☆

クラインマッターホルンからフランス側遠景チェルビニア側コースの上部マッターホルンと言われてもにわかに信じがたいが、イタリア側はこんな感じ
チェルビニアからロープトゥに乗るヴァルトゥールナンシュの圧雪高速コースを激走!


第三章 4.夢のマッターホルン大滑降 X.マッターホルン山麓の大滑降 につづく

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