遊撃インターネット狂人雑記59

北のりゆき=死売狂生=行方未知

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2010

416日(金)奥歯を抜く

 対症療法でがんばったんだけど、もうどうにもならんということで、奥歯を抜くことになってしまいました。このままでは腐って自然に抜けてくるらしい。今なら間に合うので、全部抜くのではなく、二またになっている歯根の半分だけ抜くことになりました。歯を半分に割って悪くなっているほうを抜くわけです。生き残った部分は、根が一本だけしかないので銀歯をかぶせても支えきれない。そこでブリッジで補強するという治療方針です。保険がきくのであんまりお金はかからないらしい。別の歯医者では、全部抜いてインプラントを入れ、総額三十万とかいっていたので、それよりかはマシだろう。
 トホホ状態になって歯医者にいってきました。永久歯の奥歯を抜かれるのはどんな感じかと戦々恐々でしたが、そんなに痛くもなかった。上手に奥歯を半分に割って抜いてくれました。これだったら歯をけずられるほうがはるかに痛い。たいして血も出なかったし、麻酔が切れてもそんなに痛みません。しかし、今まであった奥歯がないという喪失感はかなりのもので、まったく元気が出ません。

 よれよれと帰宅後、元気づけに録画していた脳天気Hアニメ『BH系』をみました。プールのシーンで親友の彼氏が「ぼくも古典が好きでね。トルストイやドストエフスキーや…」なんてセリフをしゃべっています。横でそれを聞いていた子供が「おとうさんのすきなご本だぁ」などと発言。三歳にしてドストエフスキーを知っているとは、なかなかやるのう。今度寝る前に読んでやろう。

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417日(土)『毒入り』(あさりよしとお)/『萌え萌えナチス読本』/『小説 馬車馬戦記 ディエンビエンフー大作戦』/『真昼の暗黒』(アーサー・ケストラー)

 アマゾンでオススメされていたので、あさりよしとおの『毒入り』を読みました。あさりよしとおを読むのは、『なつのロケット』以来だなあ。十年ぶりくらいか…。
 うーん。なんか作画も内容もレベルが落ちている気がする。慣れで描いていて読者が一番みたいところに手が届いていないというか…。あれほど天才的にうまい人でも長年描いているとマンガ力が落ちてくるんだなあ。マンガ家とは、おそろしい職業だと思う。

 アマゾンをうろついていたら『萌え萌えナチス読本』なる本を発見。ナチス萌えとは、これいかに。四月二三日発売かあ。ロクでもないシロモノのおそれも大きいが、これは買わねばなるまい。予約しました。本当に最近は、なんでも萌えにしちゃうよな〜。今度はソ連の秘密警察萌え本を出してくれ。『萌え萌えKGB読本』とか。
 他にもベトナム戦争に派遣されたソ連空軍の女パイロットが、テンヤワイヤの活躍するという『小説
馬車馬戦記 ディエンビエンフー大作戦』なんていうライトノベルもみつけたぞー。こんな話しらしい。

ソ連空軍のパイロット、マーシャ・カルチェンコ大尉は、ベトミンを支援する軍事顧問団の一員として、インドシナ戦争真っただ中のベトナムへ送り込まれることとなった。
ベトミン防空軍が根拠地とする中国南部でマーシャを待っていたのは、複葉練習機タイガーモスと大戦中の連絡機シュトルヒのコピー生産機。この旧式機
2機が防空軍の全航空機だという……。
だが、スターリンの命令とあれば、乗らざるをえない。
時代遅れの機体を駆って、マーシャがベトナムの空を飛ぶ
!
お堅い政治委員、ベトナム美女、残留日本兵、さらには元ドイツ空軍、フランス空軍の外人部隊パイロットも登場だ。
マーシャの、ベトナムの未来をかけた戦いが、今始まる
!!

 面白そうじゃん。どこの図書館も入れていないので、これも買わざるを得ないなあ。
 さらにさらにアーサー・ケストラーの『真昼の暗黒』が、いつのまにやら岩波文庫に収録されているのを発見してしまった。こんな内容の本です。

 独房404号に収監された古参党員ルバショフ。三度の審問を通じて明らかになる過去と現在、壁を叩く獄中の暗号通信。No.1とは誰か? 自白はなぜ行われたか? スターリン時代のモスクワ裁判と大粛清を暴いたベストセラー、戦慄の心理小説。

 ルバショフの外見はトロツキーを、理論はブハーリンをモデルにしているようです。この小説がすごいのは、作者の実体験が投影されているところです。著名なジャーナリストだったケストラーは、実はドイツ共産党の秘密党員でした。当時ドイツではナチスと共産党が抗争を繰りひろげており、ケストラーもナチスとの内戦的な地下戦争に参加します。ここらへんは、『ケストラー自伝 目に見えぬ文字』に詳しい。
 ナチスが政権を握るとフランスに逃亡して、反ナチ文書の作成などをおこなう。さらにジャーナリストとしてスペイン内戦に参加。フランコの反乱軍の支配地域に潜入報道を試みますが、逮捕されて死刑判決をくらう。国際世論の圧力で釈放されると、ソ連に渡りスターリン全体主義体制を目の当たりにすることになります。そして共産党から脱党。
『真昼の暗黒』は、最も初期に大粛清を批判して書かれた小説であり、ジョージ・オーウェルの『
1984年』に匹敵する衝撃をヨーロッパの知識人に与えたようです。体制に疑問を抱いた主人公が、拷問で洗脳され人間性を破壊されて独裁者ビック・ブラザーを愛しながら殺されていくという『1984年』のほうが内容の深さや文学性では上にあると思うけど、『真昼の暗黒』の歴史的な重要性はそれに劣りません。今まで日本で絶版だったのが不思議なくらいです。
『真昼の暗黒』では、人類の進歩と党の勝利のためには自分が反革命の汚名をきて殺されなればならないとルバショフは自らを納得させ、ありもしない反革命活動を自白して処刑台に登っていきます。これは古参ボリシェビキが次々と反革命やスパイであると自白して処刑されていくという、あからさまにでっち上げであったモスクワ裁判の謎にひとつの回答を与えたものでした。
 昭和二五年発行の古本↓を持っています。手に入れるまで十年くらいかかったんだぜ…。しかし、新訳版も買わなければなるまい。

  

    

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418日(日)『日本仏教をゆく』(梅原猛)を読む

 週刊朝日百科に連載していた『仏教を歩く』を単行本にしたものです。宗派ごとの教義の解説書だと思ったら、仏教者の小伝記集でした。だいたい知っている坊さんたちでしたが、なにかといえば『怨霊』と『鎮魂』が出てくるのが梅原猛らしい。
 民間信仰では弘法大師空海は人気がある。だけど、オレはどうも嫌いだ。空海は権力に取り入った祈祷仏教の山師で、謙虚な清僧である最澄をいやったらしくいじめたというイメージが強い。
 日蓮もちょっとなあ。浄土門の法然や親鸞がすがるべき仏とした阿弥陀仏を、経典の法華経にすりかえただけじゃないのか。後から天台宗に入ってきた密教と浄土教を比叡山から一掃し、法華経を国教にしろと主張したのが日蓮宗だろう。個人が勝手に念仏を唱えているだけの浄土真宗にくらべると余計なお世話だし、単なる復古主義でオリジナリティがないように思える。現代の仏教系新宗教はたいてい日蓮宗系統だけど、ちゃんと法華経を読んで理解している信者がどれだけいるだろうか。創価学会員なんて法華経を寿量品と方便品しかないとおもっているんじゃないのか。
 この本で特に目新しく感じた部分は、『仏教と芸術』の項で、普通は芸術家として扱われている運慶や雪舟や千利休を宗教者としてとらえて記述しているところです。また、室町以降の禅についてかなり詳しく扱っており、『近代の仏教者』として大谷探検隊の大谷光瑞、チベット探検の河口慧海、禅の思想をヨーロッパに広めた鈴木大拙、童話作家の宮沢賢治をあげています。近代の仏教者については、まだ評価が定まっていない点も多く資料も少ないので、ここである程度詳しく知ることができました。
 他にも何冊か読んでいるので日本仏教の歴史についてはある程度知識がついたように思えます。インドの仏教がなぜ滅びたかなど、これからは仏教の世界史について知りたいと思う。なにかいい本はないだろうか。

 

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419日(月)『歌舞伎町・ヤバさの真相』(溝口敦)を読む

 題名でずいぶん損をしていると思う。くだらない雑本みたいな題名だけど、内容はしっかりしています。『悪所』とはどのようなところかという定義にはじまり、江戸時代の内藤新宿までさかのぼって新宿の歴史を説いています。それによると、女郎の投げ込み寺として有名な吉原の浄閑寺の無縁仏が一万人くらい(浄閑寺は、眠狂四郎が住みついていることでも有名ですね)。内藤新宿の投げ込み寺であった成覚寺の無縁仏は、二千二百人くらいであったといいます。江戸中期から新宿がかなりの規模の色町であったことがわかります。
 今につながる歌舞伎町の歴史は、敗戦の焼け野原からはじまったと言っていいでしょう。当時の新宿は、テキ屋系のヤクザが優勢でバラックの闇市が建てられ、東口を尾津組、南口と中央口を和田組と野原組、西口を安田組などが仕切っていたといいます。もともと新宿はヤクザがつくり発展させてきた町といえないこともないですね。現在もアルタ前から西口に抜ける地下道があるが、そこを管理しているのはヤクザ組織の末裔らしい。
 特に興味深かったのは、日本で唯一朝鮮人が設立したといわれる暴力団、『東声会』についてのくだりでした。

 東声会は鄭建永(日本名は町井久之。以下町井と呼ぶ。一九二三年七月生まれ、〇二年九月死亡)が一九五七年に設立したが、その前から町井一家として活動実態があった。
 町井の父親は戦前、古い埋め立て地である江東区深川古市場地区で古釘再生の仕事をしていた。町井の継母は日本人だったが、生母は韓国人で、町井が幼いとき父親と別れ、町井自身は生母を覚えていないという。

 東声会は、広域暴力団山口組の下部組織になり山口組の東京進出の先兵となった。その後、警察による徹底した頂上作戦により解散するが、その後継組織は現在も新宿に強い勢力を有している。他にも下のように絶対マスコミが書かないようなタブーに触れています。

 町井は創価学会の熱心な信者だったし、東声会会員の中には創価学会信者が多いという定説もある。創価学会のため諜報謀略工作に従った東声会会員もいる。

 暴力団を手先に使う宗教団体…。汚いことでは定評のある日韓政治癒着についても触れています。下痢で政権を放りだした安倍の爺さんあたりも関わっていそうだ

 町井は敗戦直後から日米韓の反共人脈に強いパイプを持ち、とりわけ右翼の巨頭だった児玉誉士夫とは二人三脚を組んで六五年、日韓基本条約調印に漕ぎつけ、日本の経済援助金一千八十億円を韓国にもたらした。おそらくその功を賞され、六八年韓国から国民勲章である冬栢章を受勲し、七二年には韓国外換銀行からバックペイだったのか、六十億円の信用供与を得た。七三年には東京・六本木の千二百坪の土地にTSKCCCビルを竣工するが、町井はこの土地とビルを担保に韓国外換銀行から五百四十億円を引き出して、終生返さなかった。

 こんなことを書いて大丈夫なのかいなと思ったら、暴力団員に本人と長男が襲撃され重症を負っている。
 現在の歌舞伎町がどうなっているかというと、

 歌舞伎町は住民から愛を注がれることが少なかった。警察と自治体は規制と取蹄りという体罰を加えた。訪問客からは愛と畏怖はともかく、少なくとも敬意は払われなかった。外国人マフィアは単に略奪をこととした。
 そのために街自体が非行化し、犯罪以外には何もない罪の街、シン・シティと化したともいえよう。歌舞伎町の特色は許容され、面白がられる怖さから、虚脱して精気のない怖さに変質したのかもしれない

 歌舞伎町は老いた街となり衰退しつつあるというのが結論のようです。

 悪所が好きで、昔は意味もなくうろつき回ったものでした。歌舞伎町、新大久保、黄金町、堀之内、西川口…。真夜中にそんなところをうろついても危険を感じたことはありません。カネを落とすお客さんみたいな顔をしていたからね。客に危険を感じさせるようでは、だれも寄りつかなくなって、悪所に寄生しているヤクザは日干しになってしまう。むしろヤクザが辻々に立ているほうが安心な感じでしたね。
 とりわけ九十年代初頭の歌舞伎町から新大久保にかけてが一番面白かった。数百人の外国人売春婦が街に立ち、イラン人の売人が半ば公然と麻薬を取引していた。今なら持っているだけで警察に目をつけられそうなロリものをマンションの一室で販売しているロリコンショップなんてのもあったなあ。当時を知る者にとっては、今の新宿は残骸みたいなものです。関西など地方ではそうでもないんだろうけど、オレの周辺ではどんどん悪所がなくなっていく。寂しい限りだ。

 著者の溝口敦は、ヤクザものだけでなく『食肉の帝王-巨富を掴んだ男』という著書もあり、講談社ノンフィクション賞などをとっています。食肉といえば、屠殺業と不可分であり、屠殺といえば被差別民の主要な職業です。マスコミタブーとなっている同和ですね。余談だけど以前「屠殺業」と書くとサベツだと怒るキチガイ人権屋がいた。「屠業」と書かないとサベツなんだそうな。
 毎日食卓に上る肉が、いかにいかがわしい団体にカネを落としているか。そのカネがどこにどのように流れていくのか。鶴タブー(創価学会)、菱タブー(山口組)、それに同和のタブーと、数多くタブーに切り込んだ著者は、やはり大変に度胸のあるジャーナリストです。切り込みも鋭い。
 癌になってボケてしまった感のある立花隆を別格とすると、現在は溝口敦と佐野眞一がノンフィクションの書き手の双璧ではないかと思う。 

  

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420日(火)『スターリングラード 運命の攻囲戦』/『小説 馬車馬戦記 ディエンビエンフー大作戦』(富永浩史)を読む

 アントニー・ビーヴァーの『スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943』を読みました。独ソ戦のスターリングラードをえがいた本は数多いが、これが一番の傑作らしい。
 唖然とするほどすさまじいスターリングラードの市街戦と、逆包囲された第六軍が餓死寸前にまで追いつめられ降伏するまでをえがいています。人間の持つ意志力のものすごさと、その意志力をもってしてもいかんともしがたい運命の歯車のようなものを強く感じました。これほどまでに膨大な人命とエネルギーが、絶滅戦争などという無意味なものに費やされたことには虚無感に近いものを感じさせられます。また、ある程度知っていましたが、両軍の捕虜の扱いの悪さにも驚かされました。餓死するままに放置され、生き残ることができたのは五パーセント未満という悲惨さです。ちなみにシベリア抑留された日本兵の生存率は九〇パーセント程度だから、明らかに扱いに差があります。日本は攻め込まれたほうだからね〜。
 新たに発掘された独ソ兵士の手紙からの引用が多く、単純な戦記物に終わらないミクロとマクロの視点をうまく組み合わせた傑作だと思います。
 しかし、重い。ヘビーです。ヘビーすぎます。そこで表紙からして楽しげな『小説
馬車馬戦記 ディエンビエンフー大作戦』を読みました。ソ連のドジっ娘パイロットがベトナムに派遣され日本軍がのこしていった隼を修理して、フランス傭兵部隊のドイツ人エースたちと対決する話し。ティーゲル戦車や象さん戦車も登場するぞー。ライトだー。

 

 くだらないのではないかと危惧していましたが、まったくそんなことはなかった。面白い。戦闘機についてのうんちくなどは、ほとんど衒学的といっていいほど詳細です。よく意味がわかんなかったけどね。
 一番面白かったのが、メガネで百合の政治委員の女の子が「わたし、チェキストじゃありませんっ
!」と叫ぶシーンです。政治委員というのはフランス革命が元祖で、軍における党のお目付役といったところです。ロシア革命では、レーニンは軍事専門家(軍人をこう呼んだ)を信頼しなかったので、各部隊に共産党の代表である政治委員を配置しました。指揮官の命令は、政治委員の同意がなければ無効であり、政治委員には指揮官を銃殺する権利まで与えられていたといいます。当然のことながら軍事専門家と政治委員は、犬猿の仲で殺し合いになったことさえあります。というか、たいてい政治委員が軍事専門家を殺してますね。内戦時代に方面軍の政治委員だったスターリンが、百人以上の軍事専門家を廃船につめこんで川に沈めて虐殺した事件は有名です。しかし、素人の政治委員が軍事作戦に口出しすると、たいてい戦争に負けました。独ソ戦の際は、政治委員制度は何度も廃止したり復活したりを繰り返しています。
 チェキストというのは、チェーカー員ということです。チェーカーとは、『反革命・投機取締非常委員会』の略で、後の
GPU - OGPU - NKVD - KGBと名称を変えて続いたソ連秘密警察の元祖です。だからチェキストとは秘密警察官ということになります。秘密警察は、粛清の名のもとに古参共産党員を殺しまくりました。「わたし、チェキストじゃありませんっ!」というセリフは、「わたしは(共産党員だけど)秘密警察官なんかじゃありませんっ!」という含意があります。共産党の上に秘密警察が立っていた当時の体制からすると、かなりやばいことをいっているわけです。うーん。マニアックだ。
 他にも医師団陰謀事件
(スターリンが侍医団を毒殺集団として逮捕・処刑した事件)やらスターリン暴落(スターリンの死によって朝鮮戦争が終結することが予想され西側の株が大暴落)やら、共産趣味者ならニヤリとさせられるエピソードが各所にちりばめられており、大変楽しめました。
 この本は、表紙などのイラストを描いた速水螺旋人(なんと読むのだらう
?)の絵物語が元になっているようです。だから挿絵も内容に合っていて大変よいものでした。ソ連のドジっ娘パイロットが銀色の隼を駆ってベトナムでドイツ人エースと対決なんて、よく考えたよなー。よく書けてるよ。オレもこんな小説を書きたーい。『萌え萌え大粛清 お昼の暗黒』なんてどうだろうか。
 そうそう、主人公の名前は、マーリア・アルカージェヴナ・カルチェンコといいます。これがおかしいのではないかと思いつきました。ロシア語では、女性の名前はア音(あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ)で終わります。マーリ
(名前)・アルカージェヴ(父称・アルカージィの娘の意)に続く姓が『カルチェンコ』ではおかしいのではないか? 『カルチェヴナ』じゃないかなあ…。しかし、ちょっと調べたら、『カルチェンコ』というのはウクライナ人に多い姓で、男女同形なんだそうな。…むう、ぬかりないですな。たいしたもんだ。

  

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421日(水)『町でうわさの天狗の子』一巻/『僕の小規模な生活』三巻を読む

 鬱で脳の状態がアレになってきたので、文字の多い本を読む気がしません。積んどいたマンガを消化することにしました。
 四月十一日の雑記に書いた『乙女の日本史』で紹介されていた『町でうわさの天狗の子』(岩本ナオ)一巻を読みました。主人公の女の子は天狗の娘です。父親が顔が赤くて鼻が長いリアル天狗。神さまの一種らしい。母親は人間の女で、主人公の外見も幸いおさげで普通の女の子です。でも、力が強いとか変な妖怪がみえるとか、少しだけ異能力があります。で、普通の恋をするんだけど、天狗の娘なので周囲も本人も少し困惑気味という設定です。セリフ回しがなんとなく民俗学っぽくて、ちょっと『もっけ』を思い出しましたね。面白いんだけど、少女漫画なので読むのが疲れるんだよな〜。二巻以降はどうしようか思案中です。

 続いて『僕の小規模な生活』(福満しげゆき)三巻を読みました。自意識過剰で根暗で愛妻家の作者の日常を描いた作品です。二巻を読んだ時には、売っ子に出世したのでつまらなくなったと思いました。でも、三巻で盛り返したぞ。奥さんの出産に立ち会ってビビりまくる福満氏がよかった。巻末オマケに少年マガジンに掲載された変なお色気マンガが収録されています。

  

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422日(木)『クーデタークラブ』一巻/『闇金ウシジマくん』一巻を読む

『クーデタークラブ』一巻を読みました。『革命部』という副題がついています。『クーデター』(支配階級内での非合法な権力の移動)と『革命』(被支配階級が支配階級を打倒して権力を奪うこと)では、全然違うんだけど、まあいいや。一巻では、女装癖のある秀才の高校生が双子の女子高生に誘惑されて、悩んだあげく美術室の地下にある『クーデタークラブ』に入部申請するまでです。なんだか意味がわからんな〜。本番は二巻以降という感じですね。まあ、『革命部』という副題につられて二巻も読んでみようと思います。

 続いて『闇金ウシジマくん』一巻を読みました。『ナニワ金融道』をくらーくして教訓的な部分をなくした感じですかね。闇金に金を借りたやつが破滅するまでを数話完結で描いています。悪人のウシジマくんが主人公のピカレスク漫画とでもいいたくなる作品ですね。闇金の周辺のいかがわしい雰囲気がよくでており、そこらへんが好みです。でも、くらーいので、こいつを続けて読んだら鬱が悪化しそうだ。気分が良いときに読もうと思う。

  

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423-24日(金-土)『釈迦とイエス』(ひろ さちや)を読んで『大審問官』を考える

 仏教学者のひろ さちやが書いた『釈迦とイエス』を読みました。釈迦とイエスを人間としてとらえ、対比してその人生から教訓やら教義やらを読みとろうとする試みです。ひろ さちやは、仏教学者なので、釈迦についてはたくさん書いているし、その本はオレも読んでいます。ひろ さちやが、イエスをどのように捉えているか興味がありこの本を読んでみました。
 とりわけ興味深かったのが、荒野の三つ誘惑に対するひろ
さちやの解釈です。ちょっと長くなりますが引用します。

イエスが受けた「誘惑」は三つある。「マタイによる福音書」(4)を見てみよう。

 さて、イエスは悪魔から誘惑を受けるため、″霊″に導かれて荒れ野に行かれた。そして四十日間、昼も夜も断食した後、空腹を覚えられた。すると、誘惑する者が来て、イエスに言った。「神の子なら、これらの石がパンになるように命じたらどうだ」

これが第一の誘惑である。
これに村してイエスは、あの有名な言葉でもって応じている。

 イエスはお答えになった。
「『人はパンだけで生きるものではない。
 神の口から出る一つ一つの言葉で生きる』
 と書いてある」

ここでイエスが言った言葉 「人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる」 は、『旧約聖書』の「申命記」(8)の言葉である。
 このイエスの応答はじつに見事である。彼はこう答えることによって、自分は神の子であることを立証したのだと思う。
 悪魔の誘惑は、政治のほうからの誘惑である。
 この地上には、飢えた人たちがいる。彼らはパンを求めて泣き叫んでいる。そういう現実を前にして、政治の世界にいる人間は宗教者に、
「この現実をなんとかしろ!」
 と迫るのだ。つまり、そこらに転がっている石ころをパンに変えろ、奇蹟を起こせ、と要求する。そして、それを拒めば、
「宗教は阿片だ」
 と、宗教への攻撃をはじめる。それが政治の世界にいる人間のやり方だ。彼らは宗教を利用したいのだ。悪魔というのは、そういう政治の世界にいる人間である。悪魔は、イエスを自分たちの世界に取り込み、イエスの持っている宗教的な力
神の子としての力 をうまく政治の世界に利用しようとしたのである。

 オレはバカなので、てっきり童話にでてくるような黒くて矢印みたいな尻尾の悪魔が出現して、「石をパンに変えてごらん」とイエスを誘惑したと書いているのかと思った。それどころか、腹が減っていて石をパンにかえる能力があるなら、パンに変えて食えばいいじゃん。なんでそれが悪魔の誘惑なの? というとらえかたでした。しかし、ひろ さちやの解釈によると、悪魔というのは、現実の悲惨を前にしたイエスの心の迷いのようなものらしい。
 売れっ子作家の佐藤優も、黙示録に登場する獣とは『国家』を象徴するのだとたしか『神学部とは何か』で書いていた。黙示録は、世界の終わりに天使やら怪獣やらが暴れる話しではなく、キリスト教の国家観をあらわしているのだとか。聖書はそういう読みかたをするべきらしい。

 しかし、イエスは、そういう誘惑に負ける人間ではない。彼は毅然として誘惑をはねつけた。
 考えてみるがいい。わたしはイエスに成り代わって言いたい。そもそもパンを求めて泣き叫ぶ者をつくったのは政治ではないか。政治は、どの時代の政治であれ、どの国の政治であれ、国家主義の政治、全体主義の政姶、社会主義の政治、共産主義の政治、デモクラシーの政治、いかなる政治形態であろうと、一部の人間の利益に奉仕し、残りの人間を泣かせることをする。貧しい人から搾取し、金持ちに分配する。いや、搾取されて貧しくなり、搾取した奴が金持ちになる。貧しい人間を泣かせ、金持ちをうはうは喜ばせる。それが政治だ。政治とはそういうものだ。

 石をパンに変えるというのは無茶なようだけれども、石炭を掘ってカネにかえ、それでパンを買って人々に配れば文字通り石がパンに変わりますわな。鉄鉱石を輸入して車や船に加工して売りさばき、それで世界中から小麦を買っている日本なんて、ぴったり当てはまるじゃないか。しかし、それで人々は満たされているだろうか。それに宗教が政治に関わって人々の生活に口をはさんだり、金持ちになることを賛美しはじめたら、うっとうしいよなあ。

 イエスは悪魔の誘惑に対して、自分はいっさい政治に関心がない― と答えたのだ。これほど見事な言葉はないであろう。

 ― 略 ―

「人はパンだけで生きるものではない」 わたしは、いまは、イエスのこの言葉に賛成である。だが、この言葉は危険だ。きっと世人の反撥を招きそうだ。
「馬鹿を言うな! 人はパンなしで生きることはできない!」
 そうした言葉が撥ね返ってくるかもしれない。
 いや、何を匿そう。若いころのわたし自身が、イエスのこの言葉に反撥していた。インドで、アフリカで、何千万という飢えた子どもたちがパンを求めて泣き叫んでいる。針金のように細い手足で、腹だけが不思議に膨れている子どもたち。泣く力すら失ってしまった子。
その彼らに、冷然と、
「人はパンだけで生さるものではない」
 と言えるのか
?!  そう言える奴は冷血漢だ! パンを求める者にはパンを与えねばならぬ。以前のわたしはそう考えていた。

 ― 略 ―

 しかし、イエスの主張は違う。パンを与える仕事は政治のやるべきことだ。宗教は宗教の仕事をすればよいのであって、宗教が政治の仕事をすべきではない というのがイエスの主張である。わたしは、いまは、このイエスの考えに全面的に賛成である。
 なぜか? 理由はすでに述べた。政治というものは、本質的に、

 ― 依怙贔屓(えこひいき)

 だからである。誰かを泣かせ、誰かを喜ばせる。それが政治だ。宗教が政治に関与すれば、多くの場合、権力者に胡麻を擂り、底辺に生きる人を泣かせることになる。それが逆になって、宗教者が民衆の味方をし、反権力闘争の先頭に立ったとしても、権力の側にいる人間を宗教者が宗教の名においていじめることになる。それは、つまりは神の愛、ほとけの慈悲が一部の人々に及ばないことである。果たしてそれでいいのであろうか……。
 やはり、宗教は政治に関与すべきではないだろう。

『カラマーゾフの兄弟』という小説に『大審問官』という章があります。この部分は、文学・神学上の大問題作とされており、考察本が何十冊となく出版されています。オレは、『カラマーゾフの兄弟』を三回通して読み、『大審問官』の部分だけを五回は読んだけど、どこが問題なのかすら、さっぱりわからんかった。こんな話しです。

 魔女狩り時代のスペインにキリストが復活して奇跡を起こす。すると通りかかった魔女狩り大僧正(大審問官)がキリストを逮捕させ、牢屋にぶち込む。そして夜、キリストの独房にその大審問官がやってきて、キリストを責めるわけです。荒野の三つ誘惑を拒否したのは大変な間違いであると。第一の誘惑の拒否によって、おまえは民衆にパンを与えず自由を与えた。しかし、民衆はそんな自由には耐えられずパンをもとめる。だから私(大審問官)がおまえ(キリスト)にかわって、民衆の自由を奪いパンを与えているのだ…。

 なんでイエスが石をパンに変える奇跡を起こすことを拒否したら、民衆に自由を与えたことになるのー〜〜????? 
 しかし、ひろ
さちやの説明で少しはわかった気がしてきました。石をパンに変える奇跡というのは、イエスの教えの政治化を象徴的にあらわしているのだ。政治というのは、現世における強制力だから、イエスは政治を拒否して信仰を、換言すればこの世のものではない霊的な価値観を民衆に与えようとしたんだな。強制力をともなわないその新しい価値観を、大審問官は自由とよんでいるのだろう。

 悪魔の第二の誘惑については、より明瞭に理解できました。 

 荒れ野において悪魔の第一の誘惑を受けたあと、イエスはつづけて第二の誘惑を受ける。

 次に、悪魔はイエスを聖なる都に連れて行き、神殿の屋根の端に立たせて、言った。 
「神の子なら、飛び降りたらどうだ。
 『神があなたのために天使たちに命じると、
 あなたの足が石に打ち当たることのないように、
 天使たちは手であなたを支える』
 と書いてある」                   (「マタイによる福音書」
4

 これが第二の誘惑である。
 これに対するイエスの応答は簡単だ。

 イエスは、「『あなたの神である主を試してはならない』とも書いてある」と言われた。

 悪魔のそそのかしに乗って屋根から飛び降りたほうが神を信じているようにみえるけど、実は違うんですよね。飛び降りてみせるという行為に、神を試すという意志がひそんでいる。イエスのように神を信じ切っている者は、神を試すようなまねはしない。
 しかし大審問官は、飛び降りてみせるべきだったとイエスを責めます。民衆は、イエスのように神を信じ切れるほど強くないのだ。信仰のあかしが欲しいのだ。だから見世物の奇跡をねつ造してでも、民衆を導かなければならない…。

 次に悪魔は、第三の誘惑をする。

 更に、悪魔はイエスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とその繁栄ぶりを見せて、「もし、ひれ伏してわたしを拝むなら、これをみんな与えよう」と言った。すると、イエスは言われた。「退け、サタン。
『あなたの神である主を拝み、
 ただ主に仕えよ』
 と書いてある」                            (同上)

ここでイエスが引用した言葉も、「申命記」(6)にある言葉だ。
この第三の誘惑でもって、悪魔の誘惑は終わる。

 そこで、悪魔は離れ去った。すると、天使たちが来てイエスに仕えた。    (同上)

 ということは、イエスが「神の子」であることが、以上で証明されたわけだ。
 そこで、「神の子」としてのイエスの伝道がはじまる。イエスは荒れ野を去って、ガリラヤに行く。

 ところで、第三の誘惑はどういう意味のものか……? この第三の誘惑は、第一の誘惑と同じである。ここで問われているのは、

 ― 宗教か? 政治か? ―

 の選択なのである。悪魔はイエスに、この地上を統治する政治的権限をおまえに与えよう、おまえはその政治権力を使って、この地上を自由に統治しろ、そうすすめたのである。そしてイエスは、悪魔に、
「ノー」
 と答えた。それで悪魔は退散したわけである。

 これに対しても大審問官は、イエスが地上を統治すべきであったと責めます。イエスがその責任を放棄したから、自分たちが教会組織をつくりアメと火刑などの恐怖とで社会を統治しているのだ。民衆は、支配されることを望んでいるのだと。
 大審問官の一連の言葉に対し、キリストは一言も語ることなく、最後に静かに大審問官の唇にキスをします。大審問官は、牢の扉を開き、「出ていけ。二度とあらわれるな。」という。キリストは黙って牢から出ていく。ここで大審問官の章は終わります。

 ここはオレの解釈だけど、たぶん大審問官は、「汚れ仕事をやらせやがって」とキリストに対して腹を立てているのだと思う。そしてキリストは、正しい信仰に意志的に背き、汚れ仕事を引き受けている大審問官を赦しているのだろう。…たぶん。
 もともとキリスト教の専門家でもないひろ
さちやの解釈を、さらにオレの粗雑な頭でカジリとって『大審問官』に当てはめたものだから、みる人がみれば間違いだらけの珍解釈かもしれない。でもオレは、『釈迦とイエス』を読んで、今までさっぱりわからんかった『大審問官』を、このように理解することができました。オレにでもこのくらいのことを考えさせ、内容を理解できるのだから『釈迦とイエス』は、たいした本なのではないかと思います。

 蛇足ですが、『カラマーゾフの兄弟』は、一八七九年(明治十二年)に発表された小説です。エーリヒ・フロムが『自由からの逃走』を発表したのが一九四一年(昭和十六年)。ドストエフスキーの思想は、六十年以上も先を走っていたようです。やっぱり天才だよなあ。

  

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425日(日)『山椒魚戦争』(カレル・チャペック)を読む

「ロボット」という言葉を作ったことでも知られるチャペックの『山椒魚戦争』を読みました。一九三五年発表ですから、SFの古典といってもいいでしょう。
 道具をあつかうことができてしゃべることもできる大山椒魚が発見され、産業用に大量に養殖されます。気がついたら軍事目的に使われる山椒魚までつくられ、山椒魚の数が人類の数倍にまでふくれあがっている。そして、山椒魚総統があらわれ、人類に戦争を挑んでくる。圧倒的な山椒魚の戦力に人類は敗北し、大陸は沈められ山椒魚の生存に適した浅瀬だらけになってしまう。ところが最後に、山椒魚も民族に分裂してアトランティス山椒魚とレムリア山椒魚が戦争をはじめるというオチです。
 人類がエゴでつくり出したもの(ロボット・生物
etc)が暴走してしまい、反乱をおこすというパターンは、手塚治虫が『鉄腕アトム』などでさんざん使っています。もちろんパクッたのは手塚先生のほうですよ。
 ファシズム批判の本でもあります。ナチスの人種理論をからかって山椒魚にあてはめ、アーリア山椒魚はドイツだけの優秀山椒魚であるとかなんとかいう理論を書いてみたり、山椒魚のリーダーは、実は人間でアンドレアス・シュルツという元曹長だったとか、あからさまにヒトラーをモデルにしてみたり…。連載中にファシストに爆弾を送りつけられたりしたらしい。チェコがナチスドイツに占領されると、自宅にゲシュタポがやってきた。幸い
? チャペックは、もう亡くなっていたので、どうしょうもなかったらしいが。
 ナチスとともに共産主義もからかっています。ソ連のモロトフ外相がモデルの『モロコフ』なる人物による共産主義インターナショナルのアピールが面白い。チェコがソ連の衛星国になると検閲で削除されてしまった。ちょっと長いけど転載します。 

  山椒魚の同志諸君!

 資本主義制度は、最後の犠牲者を発見した。階級意識に目ざめたプロレタリアートの革命的昂揚によって、資本主義の暴政は、すでに決定的に崩壊しはじめたが、海の労働者諸君、腐敗した資本主義は、奉仕させるために諸君を駆り出し、ブルジョア文化によって諸君を奴隷化し、諸君をおのれの階級的法律に服従させ、諸君のすぺての自由を奪い、罰せられないことをいいことにして、諸君をむごたらしく搾取するために、あらゆる努力をおこなっている。(十四行削除)
 働く山椒魚諸君
! 諸君のおかれている奴隷状態の重圧を自覚すぺき時は、来たのだ!(七行削除)
 階級的・民族的権利をたたかいとれ
!
 山椒魚の同志諸君! 全世界の革命的プロレタリアートは、諸君に手をさしのべているのだ。(十一行削除)
 すべての手段をつくして、工場委員会をつくれ。代表をえらべ。ストライキ基金を積み立てよ
! 自覚した労働者階級は、正義の戦いにある諸君を見捨てず、諸君と手を取りあって、最後の攻撃をおこなうものであることを、銘記せよ。(九行削除)
 全世界の革命的被圧迫山椒魚よ! 団結せよ
!  最後のたたかいは、すでに始まったのである!
                                   モロコフ(署名)

 

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426日(月)『あふがにすタン』/『萌え萌えナチス読本』を読む

 先日注文した『あふがにすタン』と『萌え萌えナチス読本』を読みました。『あふがにすタン』は、いわゆる擬人化萌えというやつです。アフガニスタンを擬人化して、萌えつつその近代史を学ぼうという欲張りな企画。…で、読んでみたんですけどね。つまんない…。
 左ページに4コママンガが載っていて、右ページにその解説があります。絵も解説もスカスカですなあ。三十分くらいで読み終わってしまった。読んだといえるかどうかもあやしい。ながめたというレベルです。オレは古本で買ったから四百円くらいだったけど、定価は千五百円です。こいつを定価で買わされた人は泣いているだろうな…。
 続いて『萌え萌えナチス読本』です。これも定価千五百円。うーん。千五百円の価値があったかな〜。全然萌えないんですけど…。今さら文章のほうに内容の充実はもとめないけど、絵のほうもダメですな〜。もうちょっとナチスっぽくて上手な絵師を使ってくれよ。ちょっとネットを回っただけで、こいつらよりうまい絵描きはいくらでもみつかるだろ。むしろ解説文は思ったよりマシだった。その解説と萌え(ない)絵が全然つながってないんだよな。この程度の本ならオレでもつくれそうだ。企画はいいんだから、プロならもう少し時間とカネを使って本をつくるべきだろう。
 両方ともあんまりおすすめできませんね〜。

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427日(火)『キャノン先生トばしすぎ』(ゴージャス宝田)を読む

 なぜオレがこうもエロに関心があるかというと、もちろんもともと好きというのもあるけど、それと同時に『エロ』と『死』は、日常を浸食して最も破壊的なものになりうるからじゃないかと思う。まあ、しゃれた言いかたをすればエロスとタナトスに関心がある。俗に言えば露悪的なのが好きだということだぁ。
 2ちゃんねるの二〇〇七年エロマンガ大賞一位受賞作です。一年以上前に購入していたんだけど、積んでいてそのままにしていました。最近いろいろあってちょっと眠れなかったので何気なく手にとってみたのです。

 

 コレハヒドイ…。「スゴイ」じゃなくて、「ヒドイ」ね。いい意味でですよ。ここ数年これほど激しいエロマンガは読んだことがありません。人によっては、エロを飛びこしてグロの水準にまで達していると感じるかもしれない。細君にみせてやったら拒絶反応を示された。
 オレが最初に衝撃を受けたエロマンガは、漫画ブリッコで読んだひろもりしのぶ(みやすのんき)の『アネクドート』でした。女の子がさらわれて腹にでっかいペニスの墨を入れられ見世物小屋で下品犬と交尾させられて感じてしまういうシロモノ。脳天をぶん殴られるような衝撃を受けました。こいつは『オトナなんかだいっきらい
!!』という単行本に収録されています。他にも森山塔『よい子の性教育』、このどんと『奴隷戦士マヤ』、別役礁『ナース』(ビザールコレクション1収録)、芳町カゲコ『性と文化の大革命』、富本(真行寺)たつや『CROQUIS』『表面張力』、町田ひらく『Alice Brand』、ZERRY藤尾『扉をコジあけて』、上連雀三平『アナルジャスティス』、氏賀Y太『毒どく』(同人誌)、和田エリカ『アリスのお茶会』、故・岡すんどめ (安宅篤)『姫雛たちの午後』。
 うーん。絶版が多いなー。『オトナなんかだいっきらい
!!』や『性と文化の大革命』なんて、アマゾンにすら登録されていない。好きなエロマンガ家は他にもいるけど、二五年くらいエロマンガを読んできて(描いたりもしたけど)、「こりゃすごい」と思えたエロマンガは、これくらいです。『キャノン先生トばしすぎ』は、こいつらの水準に達してますよ。
 ゴージャス宝田の本は、ずいぶん昔に『
空とぶ妹』という同人誌を買ったことがあります。あのころとくらべてずいぶん技量があがっているうえに、全然枯れずにぶっ飛ばしているところが偉い。それにセックスしてるだけじゃなくて、ちゃんとテーマやストーリーがある。思わず感動しちゃったよ。
 
売れない三十才のエロマンガ家がアシスタントに入ったのは、超売れっ子エロマンガ家の巨砲キャノン先生。その正体は十二才の美痴少女でした。キャノン先生は、お嬢さんなんだけど性欲過多の女の子で、スイッチが入ると狂気の性行動に走ります。特にシリの穴にオシッコを射精してもらうのが好き。…まあ、くわしくは買って読んでくださいな。スゴイというか、なんというか…。

 

 ↑コマ割りや書き文字の位置などを工夫して目線を誘導するなど、よくみると構成にかなり高度な技術を使っているよね。
 それにしても、
人間の性的想像力には際限がないのだろうか…。ここまでやってくれると一種の爽快感まで感じられます。ここ数年のエロ本では、イチオシですねー。エロ表現に関心のある人は、ぜひ読んでもらいたい。
 キャノン先生、じゃなくて
ゴージャス宝田先生は、この調子でがんがんトばしていってほしい。

     

     

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428日(水)『日本のミイラ仏』(松本昭)を読む

 最近なぜか即身仏が気になってしょうがありません。学者さんが書いた本なのに、くだけていて面白かったですよ。
 日本人というのは、世界でも珍しいミイラをつくらない民族なのだそうです。ツタンカーメン王から唯物論者初のミイラとなったレーニンまで、死体をそのままの形で保存したいというミイラ製造の欲求は、ほとんどあらゆる民族にあるらしい。ところが日本人は例外的にミイラをつくらない。死穢を非常に忌む民族だからだろう。死に対するケガレ意識ですね。
 死穢に対する強烈な忌避感は、少なくとも平安時代以前からあり、貴族は絶対に火葬に立ち会ったりしませんでした。「この世をばわが世とぞ思う
望月の欠けたることのなしと思えば」で有名な藤原道長も、最愛の娘が死んだ際に嘆き悲しんでいるのに、周囲にとめられて火葬にはでませんでした。源氏物語でも、生き霊に殺されてしまった夕顔の火葬を従者の惟光にまかせて源氏は遁走しています。そんな民族がミイラをつくるはずありません。ところが中世末期ごろから東北の一部で即身仏とよばれるミイラがつくられるようになりました。著者は、日本人の死に対する意識がこの時代に大転換したのではないかと推測しています。

 現在公開されているミイラ仏は、全部で十五体らしい。大半は湯殿山系列の真言宗の寺にまつられています。ネットで調べてみると、寺院で「即身仏一覧表」なんてものを配っているらしい。この一覧表を片手にミイラ仏全十五体と対面する旅をした人のホームページを発見しました。同じようなことを考えている人がいるもんですねー。
『日本の即身仏・ミイラについて』
http://www5f.biglobe.ne.jp/syake-assi/newpage147.html

 

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429日(木)『珍世界紀行ヨーロッパ編』(都築響一)を読む

 よい意味で素晴らしく悪趣味な本です。ヨーロッパに点在する怪スポットを見事な写真で紹介しています。カテゴリー別にそれぞれ『蝋人形』『信仰』『性愛』『暴力』『病理』『アウトサイダー』『カタコンペ』などなどです。特にグロな解剖標本や死体を平気で露出するところは、日本人と死に関する感覚の相違が露わになって実に興味深い。以前読んだ『珍日本紀行』と見くらべると、民族性が根本的に違うんだなと思わされます。
 日本で公開されているミイラ仏は十五体にすぎません。しかし、イタリアには八千体のミイラを保管している教会があります。八千ですよ〜。まさに圧巻です。ほかにも奇形標本やら拷問道具やらドクロ教会やら…。実に悪趣味で素晴らしい内容でした。
 著者の
都築響一は、くるっているようで意外にまともで良識的です。写真と同様に解説文も大変面白い。異界的なものに興味がある人に特におすすめです。
 文庫版を購入しましたが、あまりにも内容が素晴らしいので高価な大判がほしくなってしまった。

 

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430日(金)トロツキーの胸像が届く/『トロツキーの挽歌』を読む

 ウクライナから注文していたトロツキーの胸像が届きました。思ったよりも状態がよく満足できるものです。

 

 トロツキーとは、ロシア革命を指導したレーニンと双璧とされる革命家です。十月革命時には、ペトログラードソビエト議長としてレーニンの武装蜂起を強力に支持。ボリシェビキ単独の蜂起をソビエトによる蜂起に転化し、十月革命に決定的な役割をはたします。革命後は外務人民委員(外務大臣)、軍事人民委員(国防大臣)を歴任し、赤軍を創設し内戦に勝利をもたらしました。中国革命でいえば毛沢東に対する朱徳、明治維新だったら大久保利通に対する西郷隆盛みたいな人物でしょうか。スターリンは山県有朋かな。
 しかし、レーニンと同格の指導者としてみられていたトロツキーですが、レーニン死後にスターリンら政治局員の多数派が結束して攻撃し、失脚してしまいます。ロシア革命が一九一七年でトロツキーが政治局員を解任されたのが一九二五年だから、この胸像がつくられたのはこの時期、九三年前から八五年前だと思われます。
 失脚後も反対派を組織して執拗にスターリンに闘争を挑んだトロツキーは、一九二九年にソ連から国外追放にされます。しかし国外でもスターリンに対する闘争を続け、ついに新しい共産党・第四インターナショナルを設立します。中核とか革マルとか、日本の新左翼もこのトロツキーの影響を強く受けています。いまだに第四インター系の組織もあります。
 その後、独裁権力を確立したスターリンによるトロツキー派の弾圧は徹底したもので、『左翼反対派群像』という本によると二千人以上のトロツキー派が収容所に送られ、生き残ったのは一人だけだったといいます。トロツキー自身も、一九四〇年に亡命先のメキシコでスターリンの放った刺客にピッケルで脳天を打ち砕かれ暗殺されてしまいます。
 もしスターリン時代にトロツキーの胸像をもっていることがばれたら、間違いなく収容所に送られて殺されていたでしょう。偽装転向した老トロツキストが護持していたのか、それともどこかに埋もれていたものが発掘されたのか…。とにかく歴史の重みを感じさせられます。

 
 
スターリンと対峙するトロツキー

 値段は送料込みで二万五千円くらいでした。これを高いとみるか安いとみるか…。オレにとっては、収集家が隠れキリシタンのマリア観音像を二万五千円で手に入れたようなもので、安いというのもバカらしいほどの激安でしたね。でも、こんな人物でも細君にかかると「サザエさんみたいな頭のおじさん」になってしまう〜。

 
 我が家のソ連軍部隊(左からレフ・トロツキー軍事人民委員、サーニャ・V・リトヴャク中尉、ウラジーミル・レーニン人民委員会議議長、ヨシフ・スターリン共産党書記長、能美クドリャフカ航空宇宙大学校生、Mig-60ちゃん)

 トロツキー胸像入手記念に『トロツキーの挽歌』(片島紀男)を読みました。著者はNHKのディレクター出身。学生時代に慶応大学で社学同をつくり、六十年安保の国会突入闘争に参加しています。NHKでは、『埴輪雄高・独白「死霊の世界」』などを手がけたとのこと。まあ、金持ち老トロツキストの道楽といったところでしょう。
 とりわけ目新しいことが書いてあるわけではなく、ドイッチャーのトロツキー三部作、プルーエ『トロツキー』、ヴォルコゴーノフ『トロツキー・その政治的肖像』、『トロツキー自伝』などから面白いところをつまんで、失脚から暗殺されるまでのトロツキーの姿をえがいています。オレもここらへんの本はだいたい読んでいるけど二十年以上も昔のことです。すっかり忘れていました。『トロツキーの挽歌』は、独創性はないけどよくまとまっていて、昔読んだものの内容を思い出すのに役に立ちました。ちょっとトロツキーについて知りたいという人におすすめです。

  

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