遊撃インターネット雑記44
北のりゆき=死売狂生=行方未知

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2008

61日(日)府中にいく

 しばらく忙しく雑記の更新が滞ってしまいました。すいません。
 ちょっと用事があって府中にいってきました。郊外の住宅地というイメージがあったけど、意外にひらけたところでした。駅前に大きな伊勢丹やトイザらスがある。さっそく伊勢丹の日本酒コーナーをのぞいてみました。新宿本店にくらべると品ぞろえは二十分の一くらいかな。吉祥寺の東急とくらべても五分の一程度か。ちょっとガッカリしてしまった。
 トイザらスでウレタン製の積み木を購入。伊勢丹の地下で紀の国屋の粟大福と栗最中を購入して帰宅したのでした。

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62日(月)『焦点 武装闘争特集合本』の版下作り

 警察の広報誌『焦点』の過激派特集を集めた『焦点 武装闘争特集合本』の版下を作りました。マスコミなどに配布されたもので「記事や写真は自由に転載して下さい」ということなので、ありがたく使わせてもらうことにしたのです。第一級の史料だよね。七〇年代の内ゲバや爆弾闘争に関する記事が中心です。
 新左翼の武装闘争は、内ゲバと爆弾闘争が頂点であったように思えます。権力と直接対峙する武装闘争は、決意主義のパフォーマンスにすぎず結局大したことはできなかった。評判が良かったら八〇年代のゲリラ闘争に関する記事を集めた『焦点 ゲリラ闘争特集合本』もつくりたいと思っています。 
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63日(火)『公安警察の報告文書』の版下作り

 共産党系の団体らしい『秘密警察糾弾人権擁護共闘会議』が発行した『公安警察の報告文書』の版下作りをしました。宴会帰りの公安が忘れていった『作業報告書』を労働組合員が拾い、出版してしまったという反警察文書の復刻版です。昭和三三年当時の警察によるスパイ工作や組合の監視などが克明につづられています。共産趣味者だけでなく警察マニアにもお勧め。
 しかし、版下ができただけではまだまだです。このあと印刷と製本もしなければならない。時間がいくらあっても足りないですよ…。
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64日(水)『時をかける少女』をみる

 ずーっと前から気になっていたアニメ版『時をかける少女』のDVDをみました。ちゃんと流行を追いかけているオタクに比べるとオレは二年ぐらい遅れているなあ。
 噂に違わずよい出来でした。主人公の女の子が人間的なのがよい。キャラがよくてストーリーが面白くて作画がきれいという、ケチのつけるところがない作品です。ちょっと演技にジブリぽいところがあるのが気に入らないくらいかなあ。アニメが好きだったらみておくべき作品だと思う。☆☆☆☆☆

 

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65日(木)『天元突破グレンラガン』をみる

 エヴァンゲリオンのガイナックスがつくった『天元突破グレンラガン』をみました。いいかげん版下作りに疲れたのでアニメに逃避です。昔のロボットアニメの「熱い」ところをそのままに現代風にアレンジした作品を目指した…のかな?
 主人公のアニキ分が死んだらとたんに面白くなってきた。アニキが死ぬ場面は『あしたのジョー』のパロディ、いや、 最近はインスパイアというのか、なのかな。力石をモデルにしたとおぼしきキャラも登場するしな。ロボットが光るゲロを吐くとは思わなかった。
 テレビアニメなのに中盤まで進んでも作画が崩壊しないところもよい。かなり質が高いアニメだと思いますよ。

  

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66-7日(金-土)梵を飲む

 ネット注文した『梵 特撰純米大吟醸』『梵 GOLD 無濾過 純米大吟醸』『梵 艶 純米大吟醸』が届きました。『梵』シリーズは、純米大吟醸で貯蔵酒が最高にうまい。逆に新酒はあんまりうまくないなあ。
 明日は土曜でお休みなので朝方まで『天元突破グレンラガン』をみながら八合くらい飲んでしまった。土曜は二日酔い気味で半日ゴロゴロする羽目に。

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68日(日)『ひろさちやの「無門関」を読む』を読む

 『ひろさちやの「無門関」を読む』を読みました。アマゾンの商品の説明より。

 48則の公案を解いてみよ。中心思想は「無」にある。「無」は虚無の無でもなく、有無の無でもなく、無の無である-。禅の公案集「無門関」を、ひろさちやが現代流にわかりやすく読み解いた、禅の奥義に案内するガイドブック。

 ひろさちやという人は、浄土宗系の人です。親鸞じゃなくて法然のほうね。だからこの本は、念仏の人が浄土宗の解釈で禅を読み解いたという、まあ、奇書だよね。
 よくある禅の解説書は、オレにはチンプンカンプンだったりします。ひろさちやの本は分かりやすくて面白いからね。それで手にとる気になりました。それに他力本願の浄土宗の人が自力の禅宗の公案をどう解釈するかというところにも興味がありました。
 無門関(むもんかん)は、中国宋代に無門慧開によって編集された公案集です。八百年くらい前に書かれた本なので現代とは文化的背景が異なり、解説がないと問いの意味すら分からない。たとえばある問答の末に、××和尚は「旗を引っ込めろ」といった、とあります。それはなぜかというのが問いなんだろう。旗を引っ込めろ
????? わけがわかりません。解説によると昔は坊主が説法する際に旗を出したのだそうな。だから「旗を引っ込めろ」というのは説法は終わりだということなんだと。だからこの公案は、なぜここで説法が終わりになったのか、という問いらしい。こんなの解説してもらわないと分かるわけないよな〜。
 一読して思ったのは、当り前だけど禅というのは自分で行なうもので本を読んで分かった気分になるものではないということです。禅とは、脊髄反射的な思考の短絡を嫌い、常に多面的な思考をもって物事の本質をみる訓練なんだろう。訓練というか鍛錬で修行なんだから本を読むだけじゃダメなのは当然です。しかし、この本は読み物として面白い。オレでも分かるし☆☆☆☆★

 

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69日(月)ROME 6.7をみる

 細君がパートにいっている間、エログロ大河歴史ドラマROMEをみながら赤ちゃんをかまっていました。
 腕が吹っ飛んだり血が吹き出したり…、残虐描写に気合いが入ってるなあ。赤ちゃんにみせるのはよくなさそうなのでエログロシーンになったら、両手で赤ちゃんを目隠しするという方式をとりました。でも赤ちゃんは、テレビ画面には興味を示さず積み木にふけっていたので迷惑なだけだったかもしれない。
 
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610-11日(火-水)大審問官スターリンと天元突破グレンラガン

『天元突破グレンラガン』を全話みました。全話みることができるくらいには面白かったですよ。
 特に第二部の前半が面白かった。人類の敵を倒して七年後、主人公は人口が百万人にまで増えた人類の指導者になっている。ところが新たな敵があらわれると弟分に失脚させられ死刑を宣告されてムショにぶち込まれます。スゴイ展開だ。同じ会社がつくったエヴァンゲリオンでもクーデターが起こったよな。ガイナックスは、こういう展開が好きなのかな。
 たまたま同時に『大審問官スターリン』という本を読んでいたので妙な共時性を感じましたよ。『大審問官スターリン』は、日本人のソ連学者が書いた本です。スターリンの大粛清を主に文化人や芸術家に対する弾圧の視点から描いています。ちなみに大審問官っていうのはドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』より復活したキリストを宗教裁判にかける大審問官からとったのでしょう。どーでもいい話だけどオレが留置所にぶち込まれたとき『カラマーゾフの兄弟』を差し入れてもらった。でも、何回取り組んでも十数ページ読んだら寝てしまって大審問官までもたどり着くことができなかった…。あの特有の回りくどい文体がどうにもダメでしたね。作者の亀山郁夫は、ロシア文学に影響を受けているみたいで文体がドストエフスキー
(の日本語訳)に似てる〜。ちょっと読むのに苦労しています。
 スターリンが帝政ロシアの秘密警察のスパイであったという資料『オフラナ・ファイル』におびえ、パラノイア的妄想をふくらませ大粛清に到ったというのが骨子。スターリンは、完全な警察のスパイではなく、何らかのつながりをもっていて党内闘争で邪魔なものを警察に密告していたのではないかといわれています。ヒトラーにユダヤ人の血が入っていたという手塚治虫『アドルフに告ぐ』にちょっと似ているね。
『天元突破グレンラガン』では、弟分は主人公が新たな敵と対抗できないとみてクーデターを起こしたということで、後に反省して脱獄した主人公と和解します。…現実政治ではあり得ないよな。この弟分は、新たな敵との戦いで多くの民衆を見捨てることになると苦しむけど、これも現実政治ではあり得ない。スターリンの言葉に「一人ひとりの死は悲劇でも、大勢の死は統計にすぎない」というのがあります。ある意味政治の核心を突く名言だと思いますよ。
 ヒロインのヨーコは、政府に加わらず田舎で教師をしています。このエピソードでは、コロンタイという女革命家を想起しました。ロシアの名物革命家で革命後は教育担当の人民委員
(大臣)をつとめた人です。教育が動物の調教と同等視されていた時代に子供の自主性や創造性をのばすというリベラル左巻きの人が喜びそうな教育政策を行ないました。スターリンが権力を握った後、奇跡的に殺されずにすんだものの政治的には死んだも同然でした。ひたすらスターリンの慈悲を乞いつつ卑屈に生きたわけです。まあ、現実はそんなものだよね。
 グレン団の旧メンバーをロシア革命に当てはめるとオールドボルシェビキですね。現実政治の世界では、ほとんど全員がスターリンの秘密警察に拷問され、してもいない陰謀を自白。見せ物裁判にかけられて処刑されます。『天元突破グレンラガン』では、主人公の元に再結集して新たな敵と戦い英雄的に死んでいきます。旧キャラが次々と処刑されていくなんていう暗いアニメはみたくないからそれでいいんだけど、同時に読んでいた本が本だからね。やっぱりぬるいなあ…、と思ってしまいましたよ。

 

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612日(木)新聞広告でたどる6070年代の日本車(沼田亨)を読む

 題名の通り60年から70年代の日本車の新聞広告を集めた本です。オレは、史上初めて大衆消費社会が到来した60年から70年代に興味があるんですね。自分が子供のころのことだし…。その大衆消費社会のシンボルともいうべき自動車の、しかも広告に目をつけたのは実にいい視点だと思います。
 実際に自動車の新聞広告を読んでみるとこれが実に面白い。偉そうな言いかたになりますが、大衆のもつ独特の俗物性・キッチュさ・軽薄さ・ペカペカさと、熱気・希望・消費の喜びのようなものが渾然一体となって迫ってきます。広告という媒体の性質上、単なる写真や文章よりも直感的に「分かる」んですよ。半日くらいあきずに眺めてしまった。
 もうひとつ。自動車会社のなかでもトヨタのエグさは群を抜いているなあ、とあらためて感じましたね〜。☆☆☆☆★

 

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613日(金)ゲバルト時代(中野正夫)を読む 

 最近過激派の回想録がブームみたいです。過激派上司さんの『I LOVE過激派』が端緒をつけたのかな。『ゲバルト時代』は、赤軍派からRG派という軌跡をたどった人の回想です。赤軍派はよく知られていますがRG派もそれに負けないくらいの武闘派でした。赤軍派は前段階武装蜂起の革命戦争派。RG派は爆弾闘争を含む地下ゲリラ戦争派というようにオレの頭の中では分類されています。
 著者は、赤軍派の機関紙など公然部門で活動します。最も回想録が出ているであろう赤軍派でも、軍の回想が中心で公然部門のは少ないので面白かったですねえ。公然部門といっても、ものすごい弾圧の下での活動なので半非公然活動に近い。昼間でもカーテンをおろしてほとんど拠点から出ることもできない。うっかり一人で外に出たりすると公安に路地に引っ張りこまれてテロられたりする。機関紙なんてどうやって印刷していたのかと思ったら、シンパの出版社の社長に原稿を渡すとその社長が印刷所に回してくれたらしい。赤軍派自体がどこで印刷しているか知らないという…。武装闘争を闘う半非合法党派の活動というのはそういうものなのかもしれないね。
 著者は重信房子を筆頭に遠山美枝子や森恒夫などにも会っています。永田洋子とは警視庁の留置場ですれ違ったと。その人物評なども興味深いものでした。しかし、資金稼ぎに左翼崩れのマスコミと接触したり替え玉受験をしたのがバレて査問にかけられることになり、赤軍を脱走します。残っていたら連合赤軍で殺されていたかもしれない。正解でしょう。
 しばらくブラブラしていると
RG派にスカウトされます。RG派というのは、普段は真面目な市民を偽装して生活し、指令がくるとゲリラをやるという党派です。ブントの軍事組織や左派が源流のようだから赤軍派とは兄弟みたいな党派でした。そこで著者はパトカーに火炎ビンを投げつけるゲリラをしたりしているから、立派なゲリラ要員です。最後は、指紋から指名手配者と同じところにいたのがばれて犯人隠匿で逮捕され出獄後に組織を離れました。大変な人生だなあ。
 赤軍派と
RG派にはちょっと面白い思い出があります。以前『連合赤軍服務規律』という冊子を発行したことがありました。原版は連合赤軍の森恒夫が執筆したといわれマスコミに出回ったものです。ところが都市生活を行なうゲリラの注意とでもいうべき内容で、どうも山にこもった連合赤軍っぽくないんだよね。
 常々疑問に思っていたところ、あるとき
RG派の機関誌『赤報』を読む機会があり、そこに『連合赤軍服務規律』とまったく同じ文章が掲載されていたのです。赤軍派とRG派は、もともと同じブント左派から出た組織だし『ゲバルト時代』の著者のように人的交流?もあったようだからRG派の服務規律とも言い切れないんだけど、時期的に考えて少なくとも連合赤軍の服務規律ではないような感じです。いつか訂正しないとなあと考えつつも確証がなくそのままにしていました。
 先日、映画『実録連合赤軍』みた際にふと思いついてネット辞典のウィキペディア(
Wikipedia)で「連合赤軍」を引いてみました。そしたら連合赤軍服務規律が載っているんだよね。あらあらと思って眺めていると…、「第十四章 彼女」のところで(註:武器等を指す隠語と思われる)なんて書いてある。ひい! この注はオレがつけたものだ…。これを書きこんだ人は遊撃インターネットをみたな。う〜ん。間違った知識を広めちゃったなあ…。
 間違った情報といえばもっと面白いことがあったぞ。ずっと以前に『魔法使いサリン』という冊子を出したんですよ。アメリカのアングラ本に載っていたサリンの作り方の翻訳版です。これのおかげでえらい目にあいました。まぁ、そのことはいつか別に書くことにしよう。
 で、その『魔法使いサリン』をつくっていることをオタク友だちに話したところ、そいつは『勇者サリーンの歌』という替え歌をもってきました。ロクなもんじゃないけど、こんな歌詞です。

 平和な夜の 松本市内
 殺せるもんだ ぼくらの手でも
 あたり一面 死体ゴロゴロ
 さあ! かぎたまえ サリーン サリーン
 調合! 調合! たちまちあふれる毒ガス兵器
 撒け− 撒け− 勇者 サリーン サリーン

 勇者ライディーンOPの替え歌なんだけどね…。まあ面白いんでこいつも載っけといたのです。いやいや。反省してますよ。反省。
 そんなものを出したこと自体忘れていたある日、たまたま手にとった写真週刊誌『
FOCUS』におかしな記事をみつけました。転載します。
 
オウム作詞「サリンの歌」まで登場―米国オウム公聴会議事録のサワリ

  

 オウム真理教事件は、米国でも「安全保障上、最も重大な懸念となる事例」として、深刻に受けとめられている。
 米上院政府活動委員会の調査小委員会は、5カ月にわたり6名の調査スタッフを、日本、ドイツ、ロシア、オーストラリアへ派遣、100ページに及ぶ調査報告書をまとめ上げた。更に、10月31日、11月1日の両日、この報告書を基にオウム事件に関する公聴会を開いた。公聴会には、生物・化学兵器専門家、CIA、FBI関係者の他、オウムの上祐史浩が87年に開設したニューヨ−ク支部の平岡由三子現支部長も証人として出席した。
 公表された報告書は、オウム真理教の歴史、教義、組織構成、幹部のプロフィール、行なった犯罪、海外での活動……と詳細にわたっている。
 日本に関する部分では、オウムが作詞した「サリンの歌」の歌詞までが登場している。この歌は、オウム施設で押収された、94年12月30日付の「サリン製造マニュアル」に書かれていた。このマニュアルの作者は「松本アーンリン」。報告書では、この名前は、松本サリン事件をもじつた筆名とみている。
 さて、その歌詞は以下の通り―。
  
----
 松本市の平和な夜、
 俺たちの手でも人を殺せるぞ、
 到る所に死体が満ちる、
 そこだ
! サリンを吸えサリンを、
 サリンを用意しろ
! サリンを用意しろ!
 すぐに毒ガス兵器があふれるぞ、
 撒け! 撒け! サリン、勇者サリン…。

 この歌の存在は一部には知られていたが、何ともおぞましい歌詞が公開されたのは、これが初めてである。
 
--以下略--

 ぶははは…。日本語を英訳してそいつを再び日本語に直すとずいぶん歌詞がエグくなるな。こっちの歌詞のほうがいいじゃないか。この歌の存在は一部には知られていたが ってなんだよ。みてきたようなウソばっかり書きやがる。オウム施設で押収された、「サリン製造マニュアル」に書かれていた というのも大ウソだにゃ〜。こいつは同人誌の即売…、いやいやいつか別に書くことにしよう。このマニュアルの作者は「松本アーンリン」っていうのも違うぞ。発行人・松本散燐だった。ちなみに訳者・第一通報者というフザケぶり。
 アメリカの上院議員さんは、お疲れ様でした。オウムさんには、とんだ濡れ衣を着せてしまったな。この「調査報告書」なるものが大統領まで上がっていたら最高なんだがな。
 いやいや。反省してますよ。反省。

 

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614日(土)不忠臣蔵 (井上ひさし)を読む

 井上ひさしの『不忠臣蔵』を読みました。討ち入りに参加しなかった不忠臣たちを描いた本です。質のよい噺家の語りみたいな文体ですね。ちょっと話ができすぎたきらいはあるけど面白いですよ。
 面白いんだけど、どうも井上ひさしの本を続けて読もうという気にならない。なぜか肌に合わないんだなあ。

 

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615日(日)都築響一の本を読む

 定期的に不眠におちいります。どうにもこうにも眠れない。そこで先日買いだめた都築響一の本をまとめて読みました。この人の本はどれも素晴らしい。写真もいいし文章も実によいね。なんと言えばいいだろう。気がきいているというか、ストンと腑に落ちてくるんですね。
『ラブホテル 
Satellite of LOVE』『イメクラ Image Club』『夜露死苦現代詩』の三冊を読了。面白すぎてますます眠れなくなってしまったよ。『ラブホテル Satellite of LOVE』と『イメクラ Image Club』は写真集です。ながらく絶版だったけど最近小型版になって再版された。題名のとおりラブホテルとイメクラの写真を集めたものです。位置づけは悪趣味B級スポットの写真ルポルタージュというところなんだろうけど、百年もしたら超一級の風俗資料になると思うよ。写真につけられたキャプションもいちいち気がきいていて面白いんですよ。『イメクラ』の前書きをちょっと転載させてもらいましょう。

 イメクラをアートとしてとらえる人間はいない。しかしそれが風俗雑居ビルの中にあるからだれも気にしないだけであって、もしそれがそのまま、酒落た現代美術館のフロアに再現されていたら、いったいどうなるだろう。それはすばらしく難解なコンセプチエアル・アートに見えてしまうのではなかろうか。
 本来的な意味からして、イメクラとはシミュレーション・アートの極北なのだ。無名のアーティストと無名のコレクターと無名の観客が、評価されることも援助されることもないままに、それどころか法を犯し逮捕され閉店を余儀なくさせられる危険をつねに冒しながら、ストリートという名の壮大な美術館で展開しつづける、無意識の、だからこそ真に革新的なプロジェクトとしての。

 収録された写真に小難しいことはひとつもありません。独特の生っぽい迫りかたは、宮本常一に通じるものがあるような気すらします。都築響一のほうがずっと面白いけどね…。
『夜露死苦現代詩』は、死刑囚の辞世の句、寝たきりボケ老人の独語、暴走族の特攻服の刺繍、精神病者の文章、見せ物小屋の口上など詩と呼ばれなかったものを現代詩として集めたもの。電波系が多いけど、この電波が一周まわって立派な詩になっているのに感嘆しました。特に寝たきりボケ老人の独語がよかった。ひとつ引かせてもらいます。

 あの坂もこの夜も幾つもお葬式がおこなわれてて…
 わたしはいつだって独り
 でもその目的はわたしを皆殺しなんですよ
 いつだって7人か9人の殺し屋が狙ったまま
 窓の向こうで御無沙汰地獄してるんです
 その人達が誰かは、しまわなくても知ってるんですよ
 でもこんなつらいのに誰かは言えない
 はやく帰りたいのに日が暮れる恋なのかしら…
 合掌ですね

 ………すばらしい…。

   

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