50年代共産党非合法軍事文書集成8
『平和と独立のために』前書き
はじめに
このパンフレットは、1950年代初頭に朝鮮戦争の勃発により半非合法化された日本共産党が発行した非合法機関紙『平和と独立のために』の復刻である。査問・リンチ・スパイ・弾圧・分派・ゲリラ・謀略・火炎ビン・武装闘争そして自殺という言葉が似つかわしい戦後左翼の最暗黒時代のものだ。戦後史・日本左翼史に関する第一級の一次資料であると考え、今回復刻することとした。
この機関紙を初期は『平和と独立』と呼んでいた。しかし、1952年3月に発禁になると題名を『平和と独立のために』と変え、非合法地下機関紙となった。当時の共産党は数多くの宣伝紙や機関紙を発行していたが、この『平和と独立のために』は党の首脳である政治局の意見を広範に下級組織に発表するための機関紙である。
当時は共産党の大衆機関紙である『アカハタ』(当時はカタカナ)も発禁となっており、共産党が『アカハタ』の後継紙を配布したら同罪ということで、この『平和と独立』もその編集・印刷関係者ばかりでなく読者までも逮捕するという徹底した弾圧をうけた。ある記録では、共産党の関係機関紙・誌で発禁にあったものは818種類にも達したという。1952年3月の『平和と独立のために』の弾圧では、全国1850カ所が捜索され多数の逮捕者を出している。逮捕者は2年程度の実刑をうけたが、後のサンフランシスコ講和条約の発効により釈放されたようだ。このような重弾圧にもかかわらず『平和と独立のために』は地下で発行され続け、全国に配布されていったのである。
編者は『平和と独立』40号から『平和と独立のために』346号まで、とびとびながら現物を入手できた。わら半紙に手書きのものも混じる新聞というよりもビラに近いものだ。その上印刷されてから50年近くたっているので紙質が劣化し、紙を開くと砕けてしまうという状態である。その中で入手できた『平和と独立』の一番古い号を先頭におき、続けて『平和と独立のために』を順番に収録した。ページ数の関係ですべてを収録することはできず、139号から177号までとなった。これ以後の号も読者の求めがあれば出していきたいと思っている。
非合法紙という性格上、『平和と独立のために』は国会図書館にも収蔵されていない。現在の共産党は、当時の武装闘争を分派が行ったものとして否定しており、当然収蔵はしているだろうが縮刷版などを出す気配はない。編者が『平和と独立のために』に関して代々木の党本部に問い合わせた際の窓口の対応は、警戒心もあらわにした極めて共産党的・官僚的なものであった。この本は本来研究機関などがしっかりした装丁の縮刷版として発行するべきものだと思う。そのような計画があれば資料を提供したいと思うので、奥付まで連絡していただきたい。
今後も冥土出版/遊撃隊は、様々な資料を発掘し復刻していきたいと考えている。期待されたい。 冥土出版/遊撃隊 1998年6月