FATE 01 出会い
『 彼 女 ハ ア ル 日 突 然 僕 ノ 前 ニ ア ラ ワ レ タ 』
春の若草色に光る草むらのなかでは彼女は目立ちすぎた。
彼女はうずくまっていた。
肩ほどの長さの藤色の髪が、白くたなびくワンピースが、どす黒い真っ赤な血で染まっている…
顔は見えない。しかし、彼女が荒く息をするたびに髪の間から真紅の首輪が見えた。
そして 鎖がジャラジャラと音を立てた・・・
「どうしたの・・・?大丈夫?」
香がゆっくり近寄って話し掛ける。
手を伸ばし 肩をたたくと、彼女は驚きと同時に香の手をはねつけた。
『コナイデ!』
彼女は傷つく体を抑えながら向きを変え、香を睨みつけた。
彼女の口は動いていない。頭の中に声が響く。
人間のなせる技ではない。彼は彼女の姿を見た。
藤色の髪から覗く額にはバンソウコウ、つりあがった瞳は赤と紫のオッドアイ、ボロボロの服の上を銀色の鎖が這っている。
「おいで」
香は先ほどはねつけられた 真っ赤に染まった右手を もう一度、彼女の前に差し出した。
『イヤ!!コナイデ! サワラナイデ!!』
「…こんなに傷ついたコを放ってはおけないよ…」
香は持っていた大きな布で彼女をぐるぐる巻きにして担ぎ上げた。
《皆に見せたらビックリするだろうなぁ~》
ばたばたと動く彼女を軽々と肩に抱え、香は家へと急いだ。
「只今…忙しいところ悪いいけど、風呂沸かしてくれる?」
「おぉ、お帰り…って何だよそれは!?」
「みつけたのさ」
突然、真っ赤な塊をかかえて帰ってきた香を見て、弟、擾暁(みさと)は叫んだ。
「…手当てをした方がいいんじゃないのか?」
叫びを聞きつけ、椅子から立ち上がったイトコ、蔭時(かげとき)は台所から一人の少女を呼び、近寄ってきた。
香は板間に血で真っ赤に染まった布の塊をおき、頭のあたりを外した。
謎の固まりから何が出てくるのか、少々離れた所で見つめていた三人は現れた少女に口を開けた。
彼女は、始めこそ体をばたばたさせていたが、蔭時が連れてきた少女を見たとたんに動きを止めた。
『アナタハ…ダレ…?』
少女に届けられた小さな声に、少女はぴくりと方を震わせる。
蔭時を向く。こくりと、頷かれる。
「私はハクリュウ…立花、人間じゃないから安心して。 この人たちも良い人よ。あなたは?」
『・・・御影・・・エーフィ・・・・』
「初めまして。じゃぁ・・・まずはその体を綺麗にしましょう?いらっしゃい」
立花は残りの布をゆっくりと解き、御影を風呂場へ連れて行った。
02/07/13