FATE 02 不思議な少女
立花は服の裾を縛って風呂場に入ると、石鹸を泡立てた。
「額のバンソウコウ、外してもいいかしら?」
御影がうなずく。
立花がゆっくりと外すと、そこには真っ赤に光る水晶があった。
「まぁ…綺麗ね…」
立花は湯と石鹸を染み込ませたタオルで御影の水晶を磨いた。
すると水晶は真っ赤に光を放ち、御影を包み込んだ。
そして見る見るうちに体中の傷が癒え、体を汚していた血が消えていった。
次の瞬間、立花の前にいたのは つやつやと輝く藤色の髪に、真っ白の肌を持ち、
瞳に生気を取り戻した ちいさなエーフィの姿だった…
「よかった、 やっぱりよく似合うね」
御影は黒いレースのキャミソールにブーツカットのGパンを着せられ、香の横に座らされた。
しかし、御影は自分を見つめる6つのヒトの目が怖かった。
立花にしがみつき、彼女の服をつかんで離さなかった。
「ニンゲンが嫌いなの? 何があったか…私だけにでもいいから話してくれない?」
そんな立花の質問にも御影は答えなかった。
「いいのよ、ムリにとは言わないから。疲れているでしょう?
…彼女、どこで休ませてあげたらよいでしょうか…」
立花が男性陣を仰ぎ見ると、香は立ち上がって部屋へと歩きはじめた。
「今日から僕 下で寝るから、好きに使っていいよ」
香は部屋に御影を案内すると、部屋を出て行こうとした。
しかし、御影は寝る気配を見せない。それどころか立ったまま、じっと枕を見つめている。
「どうしたの?寝ないの?電気消すよ?」
「…寝る…どうやって “寝る”?」
香は考えてもいなかった答えに唖然とする
「寝るって…普通に…もしかしてベッド使ったことないの!?」
御影はベッドとは何かといわんばかりにうなずく。
彼女は一体いままでどんな方法で寝ていたのだろうか…
香はベッドまで戻って掛け布団をめくった。
「ここにねっころがるんだよ、ほら」
しかし、香が御影の腕をつかもうとすると、彼女はびくりと飛び退いた。
香はため息をつき、一歩その場から離れた。
ようやく御影はベッドにたどりついた。香はゆっくり布団をかけ、御影に向かって微笑んだ。
「オヤスミ」
自分を警戒し、力を抜かない御影の額の水晶に軽くキスをすると、香は電気を消して部屋を出て行った。
2002/07/13