お や お や

11月

末っ子の成長

 
 
Fは、二歳上の兄と八歳上の兄がいる三兄弟の末っ子です。家の中では、年齢差のこともあり、長男と「下二人」と括られることも多いですが、二男が世話焼きなので、結局兄弟の中でもいつも末っ子ちゃんとして大切にされています。親の方も、長男が今のFと同じ歳の頃には、当時は初めての海外生活に不安ばかりだったこともありますが、基本的に長男をとても頼りながら、大人のように扱っていたと記憶しています。しかし、今のFに対しては全くそのような気持ちはありません。いつまでも「我が家の小さな赤ちゃん」の扱いで、彼の成長に目を向けるより、ただただ可愛がってしまっていることが多いです。
Fは一歳になる頃から海外で暮らし始め、集団生活デビューは、一歳半からの保育園でした。小さい学校でしたが、保育園から高校までが同じ敷地内にある学校だったため、毎日三兄弟で同じバスに乗って通学し、校内でも「〇〇さん家の末っ子ちゃん」としてとても可愛がってもらえていました。なので、この春むらさき幼稚園に年中さんから入園し、兄弟とは別に一人で通い始めたことは、彼にとってとても大きな変化でした。
度胸はある方なので、緊張しながらも新しい環境に無事に飛び込んで行けたかな?と思っていましたが、入園してしばらくは、戸惑うことも多いように見受けられました。初めての日本の園生活での習慣の違いや、言葉の面でも、本人にとっては英語優位な場面においての日本語でのやりとり、また、日本語でも関西弁には馴染みがなかったので、新鮮に聞こえる言葉が多いなど、最初はなにもかもちんぷかんぷん?というよう様子でした。帰宅してから園の様子を尋ねると「ずっと遊んでばっかりなんだよ」と、自由な時間の使い方にも戸惑っているようにみえました。また、すでにお友達同士のくくりがある中に飛び込んでいったので、F自身も、周りのお友達も、お互いに少し様子を見合っている時期もあり、ブレイクスルーできるきっかけを先生がたも見守っていてくださいました。
そのきっかけは夏になって突然訪れました。虫捕りです。我が家の男子にはあまり虫好きがいなかったので、家族ではこれまで特に虫と触れ合う機会を持つことがなく気がつきませんでしたが、どうやらFは虫好きだったようです。園でいろんな虫を捕まえては、牛乳パックなどにいれてもらい、大事そうに連れて帰ってくるようになりました。その虫捕りを通して、園でもたくさんの交流がうまれたようで、その頃から、降園後の話の中に、お友達の名前も聞けるようになりました。家族に属さない彼だけのコミュニティがきちんと確立された瞬間でした。
また、夏休みに入る頃から別の変化も見られるようになりました。Fは自分のことをずっと「小さくてかわいいから。。。」と良くも悪くも言っていたのですが、「もうお兄ちゃんやし!」と、いうようになったのです。周りに自分より小さい子たちがいて、頼られる場面があり、周りの人(先生など)から「大きい」と認めてもらえる環境が彼にそのような変化をもたらしたのかなと感じています。
それから、園で友達とのやりとりが増えていくとメキメキと関西弁も上手になっていったように感じています。我が家は夫が山形、私が神奈川出身なのですが、ついつられて関西弁のようなイントネーションで話したときに「なんか変やなぁ」と教えてくれたこともありました。「これは、自分の言葉なんだ!」と、自信を持っているようにみえて、頼もしく感じています。
新しい環境での戸惑いを丸ごと認めてもらえ、未熟さゆえの争いさえも大切にしてもらえる幼稚園の環境にとても感謝しています。この出会いは、彼にとっても、私たち家族にとっても大きな財産です。ついつい「気づいたら勝手に育っている」と、思ってしまいがちな三男ですが、先生がたの視点や受け止め方にヒントをいただきながら、彼の一つ一つのステップを一緒に全力で喜んだり、悔しがったり、時にこっそりと応援していきたいなと思っています。




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