お や お や

9月

娘に望む事

 
   我が家の娘は、この夏で5歳になりました。早いものでもう年中さんです。
 ひとりっ子で、なおかつ私の両親にとっては初孫とあって、親戚一同からずいぶんかわいがられ、大事にされて育ちました。
 家ではしたい放題でしたので、入園前には「はたしてともだちと仲良くやっていけるかな」と大変心配したものでした。
 けれど実際に入園してみれば、私の心配などなんだったのだろうと思うほど、たくさんのともだちと実に楽しそうに過ごしていました。
 それに対して私自身が子供だった頃は、登園するのが嫌でたまらず、毎日「朝が来なければいいのに」と思っていました。
 園生活になじめず、よくひとりぼっちで遊んでいたのを覚えています。
 ですので、私の娘には、楽しい園生活を送ってほしいなぁとずっと思っていました。
 むらさき幼稚園に通う娘を見ていると、ああ私もこんな園生活を送りたかったとしみじみ思い、娘がうらやましいような気持になります。
 娘は虫が大の苦手で、ほんの小さな虫でも恐がります。
 ある日、園へお迎えに行った時、娘の下駄箱に虫がいたようで「虫~!」と泣いているのが見えました。
 すると何人かのともだちが「どうしたの?」とすぐにかけ寄ってきてくれました。
 同じ組の子たちだけではなく、違う組の子もきてくれているように思えました。
 私は子どもの頃、恐い事や困った事があると、黙って固まってしまい、周りの人に助けを求める事ができませんでした。
 心の中では「誰か助けてほしい」と思っているのに、声に出す事ができませんでした。
 それを思えば、娘は園でも、虫が怖いと言って泣き、お昼ごはんが食べられないと言って泣き、自分の感情を素直に表に出せていて、私はいいなぁと思っています。
 それは、周りの人たちは、きっと自分を助けてくれると、無条件に信頼しているからだと思うからです。
 娘は人を引っぱっていくリーダータイプではないですし、特別に目立つ存在でもないと思います。(親にとってはもちろん大切な存在ですが)
 けれどもちゃんと遊びに誘ってくれるともだちがいて、自分から誘えば応じてくれるともだちがいます。
 ともだちをつくるのが得意ではなかった私にしてみれば、それは決して当たり前の事ではありません。
 あんなに小さな娘が、しっかりと人間関係を築き、たくましいなぁととても頼もしく思えます。
 ともだちに恵まれ、
 先生たちに恵まれ、
 良い園に恵まれ、
周りの人たちにそのままの自分を受け入れてもらい、のびのびと成長できているのだろうと思っています。
 園の規模や、保育時間も、娘にはちょうど良いのでしょう。
 園の人たちに支えられ、私の想像を超える成長を見せてくれる娘ですが、彼女なりに緊張したり、悩んだりする事もあるでしょう。
 私はあまり“ちゃんと”“がんばって”生きてほしいとは思いません。
 つらい事があれば上手に逃げていいと思いますし、自分の気持ちを一番大事にしてほしいです。
 そのためには、娘の悩みやグチを受けとめてあげられるように、私自身も成長しなければならないのだなと思います。
 特別な、立派な人間になってほしい。
 とは思いません。
 ただ毎日リラックスして、気楽に過ごしてほしい。
 これだけが、私が娘に望む事です。



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