お や お や

6月

友だちの子

 
   Yは、赤ちゃんの時からとても育てやすい子でした。
 よく寝て、よく食べて、癇癪もないし、イヤイヤ期もあまりなく、私や主人の手を焼かせることはほとんどありませんでした。
 第一子だけど順調な子育てだ!と思って喜んでいたけれど、成長とともに公園や、子育てサークルに行くようになってから気になることが出てきました。それは、同年代の子どもと交わろうとしないこと。他の子どもたちが集まって楽しそうに走り回っていても、Yはただみてるだけ。。始めだから緊張してるのかなと思って回数を重ねても、知った顔の大人には寄って行くのに子ども達とはしゃぐことはありませんでした。そのことは私にとってはなぜかとても辛く悲しいことでした。子どもたちがお母さんから離れて遊んでお母さんたち同士はおしゃべりしていても、Yは私にピタッとくっついている。他のお母さんたちにYくんもみんなと遊んできなよーと促されても動こうとしない。そんなみんなと違うYを私は受け入れることができませんでした。どうしてYは他の子みたいにお友だちと楽しくしないんだろうと、普通に遊んでほしいとばかり願っていました。そしてだんだんそのような場に行くのが苦しくなり、足が遠のいたまま幼稚園に入園しました。 
 入園してからはYの集団生活の様子を見なくて済むというのが実は一番ホッとしました。だからお楽しみ会のような親子イベントに参加するのが本当は苦痛でした。どうせ私から離れないし、他の子どもたちと遊んでいる姿なんて見れない。そしてその通り、お楽しみ会は遊戯室に入ってることもできず、カフェテリアでは自分で座る席が決めれないし、お皿を持ってお料理を取りに行くこともできませんでした。そしてその時間は私にとっては苦しい試練のようなものでした。「ねえ、何でみんなみたいに普通にできないの」って言ってしまいそうな気持ちを堪えているような感覚でした。さらに年中さんの運動会の時は、Yはクラスで一人だけ競技に参加せず、先生に参加するよう促されても逃げてみたり、砂をいじってみたり。。そんなYの姿に、今までなら「どうしてみんなと同じことが出来ないんだろう。。」と悲しくて恥ずかしい気持ちがこみ上げてその場に居れず隠れて泣いていたと思います。でもその時感じたのは、不思議なことに、今までの感情とは異なり、Yが感じているドキドキする気持ちがまっすぐ伝わってきて、そのままのYを受け入れ、それでもいいか!と前向きに思える自分でした。そしてそんなYが愛しくて必死にビデオカメラを回していました。運動会のあった二学期は、登園渋りが出たりもしました。前触れもなく急に幼稚園にお休みしたいと言い出して、狼狽しましたが、すぐに「そっか、うん、いいよ」とまずはそれを受け入れることが出来たのも、私の中では大きな進歩でした。
 今までは、寄り添うこと、認めることが私にとっては難しくて私の気持ちが全面に出ているような子育てでした。でもむらさき幼稚園の環境が私にも少しずつ寄り添う子育てが出来るように作用しはじめたのかなと思います。それは先生方のどんな時も子どものいいことだけを拾って教えてくれたり伸ばそうとしてくれる配慮や、お母さんたちの信念のある自由な子育てが園全体にいい空気を作り出してるのだろうなと感じました。また、その頃読んでいた本に、自分の子を友だちの子と思うことで客観的に子どもと関わることが出来るというような内容のことが書いてあり、確かに友だちの子だったら気にしないようなことが自分の子どもの場合はとても気になり、些細なことでも心配で、周りの目にビクビクしていた私がいました。でも、Yを友だちの子と心の中で思うことで、大抵のことがあまり気にならずおおらかに受け入れることが出来ることに気づいたのです。
 Yの様子は徐々に変わりはじめ、年中三学期のお楽しみ会は何とか最後まで参加でき、生活発表会ではお友だちと遊んでいる姿も見ることが出来ました。
 そして、現在年長さんの一学期。担任の先生が変わることで環境の変化に弱いYは不安定な毎日を過ごし、現在進行形でまだまだ大変です。二歩進んで一歩下がってまた二歩進んで二歩下がる!?ゆっくりゆっくり成長する彼のスピードにこれからも寄り添い続けれたらなと思います。



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