お や お や

6月

見守る力

 
   うちのKは小さい頃からとても頑固です。納得できない事は何が何でも拒否!!遊び方もダイナミックで個性的でした。柵を見つけてはよじ登り、水道の蛇口を見つけては気が済むまで水遊び、裸足になるのもお気に入り。見ていてヒヤッとする事は沢山あったけれど、楽しそうに遊ぶKを見ていて、思うように遊ばせてやりたいと思っていました。でも、そんな遊び方を良しとしない人も沢山いて、外で遊ばせていると冷たい目で見られる事も多くなっていきました。おもちゃの「貸して」や「順番こ」などのやり取りも上手く出来ないKと私は、その場にいる事すら許されない様な気がして、周りに迷惑をかけない様に、出来るだけ人が少ない時間に・・・人が少ない場所に・・・とだんだん人目を避けて過ごす様になっていました。寂しかったんです。だから何とか周りに合わせられる様にKをきちんと躾けなくちゃと厳しく接してみたりもしたけれど、厳しくすればする程、Kの目から光が、笑顔か消えていく様で「こんなはずじゃなかった」とまだ小さなKを責めて、そんな自分を責めて、怒って泣いて・・・。そんな時、むらさき幼稚園に出会いました。蛇口をひっくり返して噴水にしたり、バスプールと園庭の間の柵に登ったり、どろんこになりながら活き活きと遊ぶ子どもたち。Kにさせてやりたかった事が全部目の前でキラキラしていて、私までワクワクしたのを鮮明に覚えています。そしてKの姿を見て「自分の意志を持っていて良い」と言ってくれる先生。そのままで良いんだよって初めて肯定してもらえた気がしました。そして始まった幼稚園生活。行きたくないと言う事もなく楽しく通っていたのですが、年少さんの秋になってとてもひどいイヤイヤ期(?)がありました。一度気に入らない事があるとへそを曲げてしまって泣き続けたり、人や物にひどく当たって手や足が出る事も・・・。どうしたいのか、なぜそんなに荒れているのか分からなくて困っているときに担任だった先生がお電話をくれて「一緒に考えたい」と話を聴いてくれました。この頃の私は、まだ自分が解決しなくちゃ、この子が迷惑かけないようにしなくちゃと思っていて、問題点をどうしたら直せるのかばかり悩んでいた私に、先生は自分の思いを出せるのは良い事だと、そして「嫌な事があるとなかなか切り換えられなくて涙が出てしまったり、手が先に出てしまう事もあるけれど、Kちゃんが楽しいなって思える事の方を沢山見つけてあげたいと思っています」と言ってくれました。周りの目や評価を気にして悪い所ばかりに目を向けてしまっていた私にとって、その言葉はとてもあたたかくて、Kの事をこんなに考えてくれる人達がいる事にビックリして、初めて私は独りぼっちじゃないんだと心が軽くなりました。Kはそんなややこしい時期をゆっくり見守ってもらい、年中さんになる頃には少しずつですが自分の思い通りにならない事もすっと受け入れたり、他の選択肢を考えたりする姿が見られる様になりました。後から、あのイヤイヤは幼稚園に入って初めてお母さんと離れ、気を張って良い子でいた自分と、園生活に慣れて本来の自分はこうじゃないんじゃないかという気持ちがぶつかる時期だったんじゃないかと教えてもらい、私の知らない所で子どもなりの思いや葛藤があった事を知りました。最近は、あんなにわがまま放題だったKが相手の事を気にかけたり、優しい言葉をかけてくれる事が増えました。うれしかったり、悲しかったり、色んな気持ちを自分でしっかり感じて、確かに一回り大きくなったこの心の成長は、Kのペースを大切に待って、ゆっくり見守ってくれた先生や添乗員さん、お友達にお母さん達、関わってくれた全ての人達のおかげ。本当に本当に感謝の毎日です。むらさき幼稚園で過ごせる時間もあと少しですが、ここでもらった言葉や経験はずっと宝物です。子どもの育つ力を信じて、これからもこの愛しい頑固者の成長をゆっくり楽しく見守っていきたいと思っています。



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