お や お や

3月

安心の場所

 
 むらさき幼稚園の園庭開放に初めて行ったのは、Nの兄のTが三歳になる頃です。
 待望の第一子のTは、昼も夜も寝てばかりで、知り合いのいない京都での子育ても不安なく過ごすことができました。
 楽しいばかりの育児でしたが、一歳半を過ぎると、落ち着きがなくお友達のおもちゃを取ったり叩いたりするようになりました。
 のびのび育てたいと思いながら児童館に行っても、常にうろうろするTを監視し、ダメ!!危ない!!ばかり言っていました。
 近所の幼稚園の未就園児の集まりでは、二歳児にみんな一緒に!を強要され、違和感を感じていました。
 その頃友人に誘われて行ったむらさき幼稚園の園庭開放でも、お友達と車のおもちゃの取り合いになりました。
 必死に譲らせようとする私に、山口先生が「ただ遊びたかっただけだと思いますよ。」と優しく声をかけて下さいました。
 その言葉で、他の人の目を気にして、Tがおもちゃを取った理由を考えて来なかった事に気づきました。
 よく見ていると、にこにこしながら取っています。何でうまく遊べないのかな・・・から、そうだったんだ!!と目からウロコが落ちました。
 その後お話させていただき、ココしかないと思い、すぐに入園させてもらうことになりました。
 Tは入園初日から思いきり楽しみ、迎えに行くと「帰らない!!」と走って逃げて行きました。
 その後は女の子が多く、男の子三人のクラスで、お世話をやいてもらい、楽しい幼稚園生活を過ごしました。
 二回目のしろさんは人数も多くにぎやかなクラスで、Tも手を出すケンカをよくしました。
 ある日何げなく「何で叩くの?」と聞くと「やらなきゃやられる。」との返事。
 三歳児の予想外の答えに驚きましたが、そこで思う存分思いを出す事ができ、やりきった感からか、すぐに落ち着きました。
 Tも今は四年生です。反抗期で扱いが難しくなってきましたが学校の代休日は必ず幼稚園のボランティアに行っています。
 未だに幼稚園が安心の場所のようです。
 妹のNは入園前は虫が大嫌いで、小さな虫を目ざとく見つけ絶叫していたのに、虫好きの男の子と仲良くなり、夏頃には園庭で手のひらに毛虫をのせて見せてくれ短期間での変化に驚きました。
 年中では仲良しの男女三人組でいつも一緒でしたが、思いを伝える事が上手にできず、ぶつかる事も多々ありましたが、年長になる頃にはうまく伝えられる様になり今もケンカしても、すぐ仲直りできる大好きなお友達です。
 うちでは時々先生が園での様子を書いてくれるメモを大切にとってあります。
 この先成長と共に、大好きなむらさき幼稚園での記憶も薄れてしまうかもしれません。
 日常のちょっとした出来事のメモが、先生方から温かく見守られていた事、お友達と夢中であそんだ日々を思い出すきっかけになればいいなと思うのです。
 今、親の私にできることは、転ばぬ先の杖よりも、転んでも何度でも起き上がる力を信じて見守れるよう、私自身もこどもたちと一緒に成長していくことだと思っています。
 最近Nは、小学校へ入学する不安からか、私にペタッとくっついてきたり「抱っこ」と言うようになりました。
 小学生になったら、とまどう事やまた違う悩みが出てくるかもしれませんが、幼稚園でもゆっくり時間をかけて成長してきたNのことなので、乗り越えられると信じています。
 卒園まで残りわずかとなりましたが、いっぱい遊んでいっぱい笑って、大切な思い出を作ってほしいと願っています。



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