お や お や

2月

笑うことも泣くことも宝物

 
  2015年早春、二歳前のDと園庭解放へ、それが「むらさき幼稚園」との出会いでした。アヒルを追ったり、水たまりで手をぴちゃぴちゃしたり。「誰のお母さんー?」園児の人懐っこさに私も嬉しくなりました。賑やかなのが大好きで「遊びたい!」が爆発しそうなDを、私だけで相手をするのに限界を感じて、その年の秋からプレイルームに通うことを決めました。長門先生もお母さん方も優しく隔てがなくて、親子でくつろいで過ごせる楽しい時間でした。クリスマスのオーナメントを作ったり、手話を交えて「虹」を歌ったり。満三歳で入園できることを知り、長門先生の「Dちゃんなら大丈夫」の言葉に背中を押され、一年早い入園を決めました。
 2016年春、しろはとの組の一員に。朝、鼻歌まじりに登園する日が続きました。しろバスで帰ってきたある日、Dのほっぺたに引っかき傷が。当時は玉のほっぺ(笑)に傷が!とびっくり!!担任の先生に相談したところ、「すみません、まだ言葉がスッと出ない年少さんでは手が出てしまうことがあって」とのこと。新米むらさきママだった私は、「Dが年下でどんくさいから周りをイライラさせてるのかな、一人だけ狙われてるのかな」などとヤキモキ。そんな時、お誕生日会に招かれました。◯ちゃんが、張り切ってみんなの分のおやつのトレイを出そうとしたのに、もう一人トレイを配ろうとした△ちゃんに、横からトレイを取られて、癇癪を起こしてしまいました。遠巻きにする子どもたち、のこのこ近づいて◯ちゃんにトレイを差し出すD。振り払われただけでしたが、引っかかれるまでの流れが想像できました。悪意があるわけではなく、それぞれが思うように行動した結果、たまたま起こったことと分かって、心配していた気持ちはほぐれて、引っかき傷も微笑ましいものに見えるようになりました。ある日曜日、Dと私は家のリビングでトミカで遊んでいました。「遊ぼ~」と誘ってくる割に私が車を動かすと、「違う、こっちから!」だのと自分ルールを押し付けてくるので、私はいつもイライラしました。その日は珍しく二人で楽しく遊べてるな~と思った時、Dが「なぁ□くん」と私に呼びかけました。□くんは幼稚園のお友だち、ちょっとびっくりしましたが、「あぁ□くんと、こんなに和やかな空気で楽しく遊んでるんだなぁ」と暖かい気持ちになりました。やがて五~六人のグループで三輪車に乗って園庭を走り回ったり、遊びがダイナミックになって行きました。
 2107年春、親しくなったしろはとの組のお友だちの多くが、ももの組に進級し、Dはしろうさぎの組でもう一年、年少さんとして過ごすことになりました。五月に誕生日を迎えた時「四歳になったから、ももさんに入れるん?」と聞いてきました。「入れないけど、ももさんのお友だちと遊んでも良いんだよ」と伝えました。一学期の間はお部屋が別れても一緒に遊んでもらっているようでした。二学期の半ばのある夜、布団に入って寝ようとしていたら「この頃、Dな、ももの組のお部屋に入ったらダメって言われんねん」と言ってきました。「Dな、なんでか聞いてみたんやけど、Dが悪いからって言われてん、なんも悪いことしてないのに」成長著しい年中さんと差が開いて来たことで、遊びのノリの邪魔になっているのだろうと思いました。「しろうさぎのお友だちの?くんとは遊ばへんの?」と言ってみました。「うん、砂場で?と遊んでる」園で一緒に遊ぶ、遊ばないの関わりは純粋で、私がどうにかできることではないと思い、D自身が自分で乗り越えてくれることを願いました。担任の先生が気遣って声をかけてくれて、自然にしろうさぎの組のお友だちと関わることが増えていきました。二学期も終わりに近づいた頃、帰り際園庭に残って遊ばせてもらうことがありました。そこでは年長さん、年中さん、年少さんが混ざって遊んでいます。年長さんの☆くんをリーダーに年中の□くんもいる五人くらいの輪にDも入っていて、とんでもなく楽しそうです。寒いし早く帰りたい母をよそに、盛り上がる遊び。Dは時に遊びのルールが分からず脱線したりしながらも一緒に遊べています。Dが自分自身でお友だちとの関係を紡いでいく、二度とない贅沢な時間。見守る先生方の心配り。お母さんとの交流。Dも私も幸せだな、と思います。



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