お や お や

1月

べーっだ

 
 Rは常に活発で何をするのかとハラハラさせられる子でした。勝ちたい!負けたくない!という思いが強すぎてその場から脱走してしまったり、グッと我慢ができなくてお友達を叩いてしまったり。まとわりついていたかと思いきや忍者のようにいなくなり、店内放送で呼ばれただけでも二度三度。迷子ならもっとあります。
 何事にもやらないかやるか、0か100しか考えられなかったRですが、むらさきの保育の中で変化が見られました。「やりたくないけどみんな楽しそうだしやってみようかな」や「自分の思ってたことと違う!でも譲らないと遊んでくれないしな」など、30や70の選択もできるようになってきました。これは親が言い聞かせるだけでは難しく、子供同士の遊びを通して経験を積んできたのだと思います。そこにはむらさきの先生達の声かけや、安心できる環境作りがあってこそ成り立つものだとも思いました。
 先生達の子供への接し方は本当に勉強になることが多く、私も家でよくリンクさせました。おもちゃを自分でどこに片付けるか決めさせたり、姉弟で相談させました。「幼稚園で頑張っているので、家ではお父さんお母さんの愛情に包まれて休憩して、また元気に幼稚園に来ればいいんですよ」と聞いて、確かに!と思い、家ではホッとできる場にしようと努めました。プレイホームで芋もちを作ったと聞くと家でも一緒に作りました。Rの意見も聞きつつ、私のアレンジも加えて「こんなやり方もあるよ」と方法は一つではないことを分かってもらおうとしました。家では芋もちのたれをみたらしのようなとろみをつけました。その時はあまり上手くできませんでしたが、「海苔を巻いたらおいしいかな?」「うまくできなかったけどRと作ったからおいしいな」と私の気持ちをRに伝えるようにもしました。
 園でダンボール遊びが流行っていると知れば家でも遊びました。ダンボールで作ったRの大好きなドラゴンクエストの装備は大好評でした。以前のRは工作に苦手意識があり、はさみも上手く使えていませんでした。一緒に作って遊ぶことで、出来たものを与えるのではなく、一から作り出す喜びを分かって欲しかったのです。勇者の装備をしたRは「外に出たい」と言い出し、その日行く約束をしていた伏見の科学センターへそのままの格好で行きました。勇者リョウスケは館内を散策。誰も気にすることなく無視してくれたので、展示された恐竜に立ち向かってみたり、ごっこ遊びを楽しんでいました。ダンボール装備のまま展示物で遊ぶRを遠目で見ながら、微笑ましいやら恥ずかしいやら面白いやら終始ニヤニヤしてしまいました。
 むらさきに転園するまでは、苦手なものや不得意なものがあったとしても、「これなら自信がある!」と思えるものを伸ばせばいいと思っていました。でもRは苦手なものはやらない。やらせようとしても泣いて脱走する。怒る。叩く。その場からいなくなることは自分なりの解決方法ですが、それが許してもらえる場とそうではない場があります。苦手なものも興味が持てるように手助けが必要なのだなと気付きました。
 ある日先生から、「ポロポロ涙をこぼして我慢している姿が見られます」と教えていただきました。レベルアップです。すごい!その場で我慢できた!イイネボタンがあるなら連打したい気分でした。少し経ち、「わああああ」と大声で泣けるようになりました。それもイイネ!解決方法のレパートリーが増えました。大声で泣けるとスッキリするのか、遊びに戻っていく姿が見られました。最近では、眉間にしわを寄せて感情を抑えていたかと思うと「べーっだ」とあっかんべーをするようになりました。あっかんべーをすることで気持ちを落ち着かせているようでした。見た目も態度もでかく、難しい言葉を好んで使うので年齢より上に見られがちなRですが、「べーっだ」だなんて、まだまだ6歳の男の子だなと微笑ましくなりました。むらさきの自由保育で、経験値をためてレベルアップしていくRが見られて嬉しいです。焦って強敵に立ち向かわせボロボロに負け、親子で泣いたこともありましたが、弱い敵でもいい、ゆっくり経験値をためていって欲しいと思います。



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