お や お や

10月

ひと山越えて…

 
 年長になり、誕生日を迎えて「もう6歳になったから!」と色々な事をやってみせるR。その言葉が一々感動的に聞こえる今日この頃…。振り返れば彼との生活には何かと“しんどさ”が付きまとっていました。
 妊娠中は切迫流産・早産の危険があり入院と自宅安静をする日々、出産後は全然寝ないで泣きどおすので一晩中抱っこして夜明けを迎える日々、歩き出したら親を放って好奇心の赴くままに走って行くか立ち止まって動かない日々、遊具で遊ぶようになったら一人遊びに集中するあまり周囲と摩擦を産む日々…。初めての子育てで、より一層しんどさが増していた気がします。
 幼稚園入園前には周囲の視線や初めての状況に強く緊張すると逃げ出すようになっていました。特に子どもの集団と見るや否や、脱兎の如く…。この「緊張しい」が入園後、園生活や様々な行事において大きな壁として立ちはだかる事となります。一緒の机でお弁当を食べる、列に並んで歩く、身体測定でパンツマンになる…等々、壁を数え上げるとキリがありません。加えて言葉の発達が遅かったせいか、友だちと揉めても言葉を返せず、大泣きして金切り声を出してばかり…。年中に進級した際には集合写真の撮影にも集合できず、欠席していないのに右上の“丸の中”に入る有り様で、いつになったら落ち着くのだろう…と園生活2年目を迎えても不安は拭えないでいました。
 それが変化しだしたのは年中の半ば頃。専ら好んでいた一人遊びより友達と一緒に遊ぶ事を求めだし、それがきっかけで集団の場に集まるようになり、言葉も増えていきました。けれど周囲と関わりだして一歩進んだかと思えば、今度は関わる事で周囲の気持ちと自分の気持ちが折り合わない事態が増え、まるでハリネズミのジレンマのような状態がしばらく続きました。
 そして年長。弟が入園した影響もあるのか、自分が園で一番年上だと自覚したようで、何かにつけては「もう年長だから!もう6歳だから!」と自分の気持ちをコントロールするようになりました。身体測定でパンツマンになったり、カフェテリアでご飯を取りに行く列に並んだり、そらのくみの話し合いに加わったり、遊びに誘った子に振られても「しかたない…」と諦めたり、粘って交渉したり…。しかも先生方から聞く所によると今までの壁は何だったのかと思う程にスッと動いているそうです。あまりの変化に先生方と「いったい彼の中で何が起きたのか…?」と首を捻りながらも感動する毎日です。
 もちろん未だに「緊張しい」で「見られていて恥ずかしいからできない…」と動かない時も多々あります。それでもこのひと山を彼が自力で登りきる経験をさせてくださった先生方には感謝しかありません。彼との生活に“しんどさ”を感じていた親の私達も、彼なりの乗り越え方を知った事で彼のペースを見守れるようになり、むしろその様子を今では“楽しみ”にさえ感じられるようになったからです。



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