園 長 と 語 ろ う

令和3年6月

― 安心起(あんじんき)行(ぎょう)の保育 パート3 むらさきが大切にしていること2―

 四、五月号で安心(あんじん)・起(き)行(ぎょう)の保育をシリーズ「自由・自在を自然に」と言う当園の保育理念をお話しさせて頂き、人間は情緒(心)が安定していると自分にとって成長する糧(かて)を好奇心や興味となって自分で学習します。私はこれが青(思)春期で好奇心や興味を抱けなくなると物忘れといわれる健忘症が進み、老人と成り「成長ホルモン」が死へのホルモンへと変化するそうで、安楽往生を遂(と)げるのです。言い換えれば好奇心や興味を抱ける内は青春だと言えます。

 乳幼児期は「無心」だとか「無邪気」と言われ欲(煩悩)にかられる事がなく邪(よこしま)な気持ちが無いので母やそれにかわる人に育児をしてもらうと目がまだ開かなくても抱っこしておっぱいを飲ませてくれたり、ぬるま湯で絞ったタオルで汚れた身体を拭きおむつを代えてくれたり・・・など育児(お世話)して頂ける人の前で手足をバタつかせたり笑ったりキャキャと身体全体で表現してくれると楽しみになります。代償を払ってベビーシッターに育児を代行してもらうとこれには代償の支払いという経済的行為になってしまい互いが利益を追及する事になりここから生まれる精神感情(精神文化)は損得勘定(物質文化)になり豊かな心を育むという本来の育児ではなくなります。母の健やかに育つ願いの育児に赤子は全身でその喜びに応えてくれます。これが互いの愛情の表現、即ち愛の体験学習となるのです。

「むらさきが大切にしていること」2は個人主義が主流を成してきて、親が求める利便性はその求めに企業家は応えてくれて家庭生活では体験学習ができ難くなりました。衣食住の生活全て幼児の目の前では体験できません。洗濯もおやつ作りも掃除もスイッチ一押し「チンして食べ…」で出来上がります。

こんな時代だからこそお母さんやお父さん、祖父母や卒園児の父母や祖父母の方々にご来園頂き手作りの日常生活を園児と共にして頂くことで「真似をしたい…」と好奇心を抱くような姿を見せてやってほしい。そんな私達の思いから、四十余年ほど前から保護者のみなさんに幼稚園にご来園頂く機会をご用意させて頂き園児の体験学習にご理解ご協力を得ていました。

コロナ感染症防止により十七ヶ月ほど保護者のご来園をおことわりしております。徒歩通園児のみ園に入り手指消毒とうがいを義務付けされており今では、何も言わなくても自分でしっかり励行しております。

園児が降園すると手が触れる所、物全てを消毒し清掃します。コロナ感染症のワクチン鎮圧が行き届き、平常時の世界が戻って参りますと、保護者やそのOB・OGやボランティアの皆様も幼稚園にご来園頂く事が増えるでしょう。そこで本稿のテーマ「むらさきが大切にしていること」パート2は「園児のプライバシーを護る」事なのです。来園された保護者がご覧になった園児の様子を保育の現場で担任や主任、園長に話す事は許されますが園外の他人(園児の親も含む)に話さないでください。(特にSNS)

年中・年長に進級した子どもは前担任の要録が引き継がれておりますが新入園の子どもは現在観察中で週に一回開かれる全体会議、学年会議の場で問われ、入園面接用紙や要録等の資料と元担任の語録などに基づき話し合われその子の今最も良い手助けに責任を持っておりますので保護者に知らせる時期にも充分気を遣っております。「もう少し我慢すれば本人が乗り越える力がでてきているので…」とそんな時にママ友の子が泣かされている場面をご覧になった来園保護者がママ友に伝えたらどうなるのでしょう。伝えられたママ友は心配の種が増えます。これは心配という不安定が身は二つに分かれても心は一つと言われ幼児も不安定になってしまいます。担任が泣いている子を抱っこして「○○ちゃんの心を温めてあげる」とハグしてやって「悲しかったなー」っと勇気づけしてやると「遊んでくるー」と仲良し友の所へ戻るのです。

これは来園の保護者が見た子どもの様子は園生活の一場面(点)をご覧になったのです。担任は日々の生活と言う線で見ていますので。「先生は良い事しか知らせてくれはらへん」という発言がありましたがその子が自分で乗り越えた自信を伝える方がお母さんも喜びとして受け取れる…これがお母さんの我が子への勇気づけとなるからです。だからむらさきの保育は「待つ保育」とも言われます。これをしなければ子どもの主体性は育めません。




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