園 長 と 語 ろ う

平成29年5月

―自然(じねん)に―

 数年前乙私幼の研修会で小児科の女医先生にご教導頂いたことに「子どもが自分の手足を使って採取できる果実は食べても腹を壊す事はありません・・・」というお話を伺い子どもの頃を思い出し野いちごを赤いのや青いのまで採っては食べて、青いのは甘くないけれど歯触りが良かったのを思い出し一人うなずいていました。

 五月の連休、自家用車での遠出を計画されている方もおいでになるでしょう。本来なら幼児の足で移動できる範囲内が望ましいのですが、親御さんはマイカーが生活の一部になっていますのでハイスピードの移動や長時間 車に揺られる事のないよう努めて大地を踏むチャンス(休憩)を取って下さい。また、子どもが喜ぶから・・・と遊園地で電動遊具なども乗らなんで良いようなら乗らずに・・・いてほしいです・・・。木々のオゾンを一杯受けられるような場でお弁当を広げたりできるのがほんとの休息ではないでしょうか。

 二十年、三十年と人生を経験している人でもジェット機で初めて海外旅行をすると時差ボケで何日かは変な気分に悩まされるものです。といった不自然な事を必要でなければ経験させる事は控えてください。

 乳幼児期は最も自然な状態です。私達大人が○○の様に育ってほしい・・・といった願いを実行に移すと、自然から離れていきます。ただ幼児期は「指導指示が通らない・・・」ので理解をしていると思っても本人が楽しそうな事を見つけると、「あれほど毎日言っている(教えてる)のにー!」と思っても何の役にも立ちません。すぐその輪の中に入れます。これが幼児の特性でもありますし、特権でもあります。でも「特」の字に「自然」と入れる方が良いのでは・・・と思います。

 親御さんはご心配の余りについつい言ってしまいますよね。しまいには「何回も言わせんといて、今度何かあったらもう知らないよ・・・!」と。

 人の子どもに限らず哺乳類の子どもは親(母)に見離されると生きる事が出来ない・・・と、それを「畏(おそ)れ」として身体全体に受け継いでいるのだと思われます。

 胎児で顔も形成されその眼が笑顔のトレーニングをしている・・・というテレビの映像を見て種を絶えさせない人の生き様だと思うのです。胎児のうちからお母さんに愛されようと笑顔のトレーニングをしているのですから。(私には胎児が羊水の中で動いていて目らしき二本の筋がヘヘとなっているようにしか見えませんでしたが。)

 三歳児から英才教育を・・・とお考えになる親御さんもおいでになるでしょう。でも幼児期は人間としてあらゆる生きる必要な力の芽を出す大切な時期です。その為 自然は三歳ぐらいで感情の脳細胞が新陳代謝を始めるというのです。又周囲が目に入らない自己中心期であったり知的好奇心は旺盛で楽しそうな事をしているのに興味を抱くと何の断りもなく渦中の人になっているといった特性だったり・・・。渦中の人達はみんな自発のできごとです。楽しいと思えて渦中の人になった「わたし」は遊んでいた人を泣かせたでしょう・・・あるいは水や砂をぶっかけられる・・・といった反撃にも遭ったでしょう。その道筋で「わたし」も何人もの人の自分勝手な自発性に対応してきました。その度に感情面の脳細胞が大きくなったはず。その知的好奇心も「楽しそう・・・」と思える事に反応します。こんなオールマイティー発芽期に限られた才能のみ伸ばそうと親御さんの思いで英才教育を受けたとします。これは幼児の自発性そのものを無視して専門家を初めとする周囲の大人が意図して人間作りをしますので人らしく生きる人の情(こころ)が育まれることなく技量だけが突出したりしますとそのトップを維持する精神力が揺らぎ選手生命を失う事になりかねません。スポーツ選手は身体のトレーニングを要しますので芸能といった精神文化に突出した人が老いる年になっても第一線・・・という人とは思えない作り上げられた筋力を落ちないようにしないと体躯にひずみが出てしまいます。横綱貴の花関が現役を引退し、親方として再デビューされたその姿に別人と思える程減量されていました。このような減量の努力ができない人は自然体で生きれることが最も幸せではないかと私は思うのです。

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