園 長 と 語 ろ う

平成27年5月

―くもの子を散らす―

 ゴールデンウィーク家族と過ごして、充分癒され気分はルンルン・・・となるところ○○ランドとか○○遊園地へ長時間自家用車に乗って・・・あるいは新幹線で長距離を超スピードで移動・・・といった不自然な生活を過ごすと静養どころか、かえって身心の疲労となるものです。子ども(特に幼児)は這い這いできるようになると手にするものを口に入れて、何であるかを認知しようとします。何らかの理由で落ちた柿は食べる事ができません。歯が立たないからです。ところが自然に落ちた熟柿なら渋柿でも甘くなっていますので食べる事ができます。寒冷地の果実(リンゴが代表)や晩生(おくて)の果物は冬が来るまでに食べ頃になってないと日照不足で甘くなれません。余談ですが寒冷地で甘柿の苗木を育てて実がなっても甘柿になれないのは日照不足で糖化作用が起らないからだと言われています。地を這って出来る苺なんかは摘んで食べても大丈夫。乳歯の生え揃った幼児なんかは園で苺狩りに行って「赤いのたべやー」とか「青いの食べたらおなか痛くなるでー」など口うるさく言うのですが何故か青いのを食べる子が居ます。「すっぱー」とか「渋―い」など言う子もいませんし腹痛を訴える子も居ません。何故青いのを摘んで食べるのか食卓に上がる苺と全く別物に見えるのに・・・と不思議に思った私はちなみに食べてみるとなるほど乳歯でも噛み砕ける程で無味無臭と言えるほどの味ですが、この歯触りが幼児にはなんとも言えなく心地良いのでしょう。ヘビ苺とか毒苺と言われるのは食べても味が無く歯触りも柔らかいので食感は食べるに値しないと思います(毒のないことは辞書で調べての試食でした。)

 小児科のお医者さんが自分で穫れるものは食べれると申しておられます。木に登れるようになれば木の果実は熟して落ちるのを待たなくても食べられるという事でしょう。さて余談が多くなりましたが新入や進級の四月は初体験や周りの人の探り合いで神経をあまりにも使いすぎ大人ならとっくにノイローゼになるのですが、熱を出したり「幼稚園行かないー」とストライキしたり・・・と自然に調整をしていました。そしてこのゴールデンウィークは自分の足で歩ける範囲を行動範囲として家族の人とゆったり、のんびり時には走り回ったり・・・と充分身も心も癒す事ができればそれぞれの好奇心や興味のある事を求めて遊びがどんどん発展します。「くもの子を散らす・・・」が如くに子ども達は園内中どこにでも出没します。園庭のいたるところに木の切れ端をころがしてあったり、プランターや鉢が置いてありそれをひっくり返すと虫達の宝庫。一番人気はダンゴムシ・カナブンなどの幼虫が腐った木切れの中から見つけられたり、子ども達が幼虫などの虫をゲットするその凄腕を一番よく知っているのはカモ達でガアガアとうずくまってる子ども達の居るところにいち早く駆けつけ子どものゲットよりも素早く上前をはねるのです。子どもがあっけにとられている隙に嘴で木切れを砕きカモが大好物をゲットすることも度々、「先にゲットしたの俺やしー」とか「アヒルに盗られたやろー」とトラブってる子どもを横目にカモにプレゼントとばかりやっとゲットした幼虫を放り投げてプレゼントする年少児も・・・。幼虫一匹にしてもそれぞれの子どもの興味は千差万別。カモだけは一貫して「餌」なのです。ムカデを見つけると一気に子ども達はハイテンション。「先生呼んできて!」見つけた子どもは逃げないよう見張り役・・・。「先生、ムカデー」と残りの子 二・三人が伝令に走ります。聞きつけた先生は食用油の入った空瓶と割り箸を持って駆けつけ、素早く箸でムカデの頭をつかみ、食用油の瓶に漬け込みフタを閉めればムカデ油という毒虫に刺された万能薬です。いらがの幼虫に刺されるとヒリヒリと痛く赤く腫れあがります。子どもは「エンチョ、ムカデ油つけてー」とその効用のてき面を一番知っているのは何回も刺された経験者です。

 毛虫ですら集めて毛虫ランドを使い古した鍋に見立て観察です。こんな虫達が活発に活動する頃と相まって好奇心や興味はとめどなく広がります。

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