遊撃インターネット雑記46
北のりゆき=死売狂生=行方未知

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2008

91011日(水〜木)『国家の謀略』(佐藤優)を読む

 佐藤優の『国家の謀略』を読みました。旧ソ連でいかがわしげな諜報活動に従事していた経験を生かして書かれたスパイ本です。
「インテリジェンス」がどうだとかもっともらしいことを書いているけど、要するに陸軍中野学校やスパイ大作戦を現代実話実体験に味つけした感じかな。
SAPIOに連載していたコラムをまとめたものらしく、あの雑誌の主な購読層である保守愛国・反北朝鮮・政治軍事オタクな人が好みそうな内容です。オレも「政治軍事オタク」なんて他人のことをいえないけどね…。
 佐藤優の著作は、拘置所から出てきた頃が一番よく、数を書くごとに質が落ちていく気がするなあ。前に別の本で書いたことをくり返したりしてるし。
 以前に比べれば質が落ちたとはいっても貴重な知識が多くてやっぱり面白い。諜報能力では、イギリスが一番、イスラエルが二番だとか。アメリカは、電子的な情報に頼りすぎており諜報能力ではイギリスやイスラエルに劣る、なんて興味深いことが書かれていたりします。アメリカのインテリジェンス能力が案外低いのは、突出して強い国なので諜報や謀略に頼らなくても戦争に勝てるからであろうと。旧ソ連はどうだったのかと読んでいると、イギリスの亜流であるとばっさりです。
 とりわけ興味深かったところを紹介します。

 インテリジェンス、特にヒュミント(人的情報)の世界では、ポジティブ・インテリジェンス(積極諜報、情報を取る側)とカウンター・インテリジェンス(防諜、情報を守る側)では、一進一退のせめぎ合いが日常的に行われている。ポジティブ・インテリジェンスに従事する人が家に帰ると、壁に掛けてある複数の絵が入れ替わっている、タバコを吸わないにもかかわらず応接間の灰皿に吸い殻が2、3本ある、切っていたはずのテレビのスイッチが入っている、本棚の本が入れ替わっているという実害のないシグナルが来る。
 これを無視し続けると、長期休暇中に冷蔵庫のプラグが抜かれ食品が腐る、自動車のガラスが割られる等の実害のあるシグナルが来る。この場合も自宅の金品や車内のカーステレオが盗られることはない。物盗り目的ではないことがわかるようにシグナルは出される。その先は、運転中に自動車がオーバーヒートしたり、パンクするような仕掛けがなされる。この辺でシグナルをきちんと了解したという反応を返しておかないと酒や食事に一服盛られるという段階に上がるのである。それでも言うことを聞かないと、直接殴られる、あるいは事故に巻き込まれ負傷するということになるが、ここまで鈍感もしくは無謀な人物はポジティブ・インテリジェンスには向かない。
 他方、灰皿に吸い殻があったくらいのシグナルに過剰反応して、情報収集活動をやめてしまうと相手側から小馬鹿にされる。「シグナルのキャッチボール」においてどこまで踏み込めば相手をどの程度刺激し、それに対してどのような反応が来るかを読むのがポジティブ・インテリジェンス専門家の腕なのである。

 この部分を読んでかつてのゲリラ党派・戦旗派が発行した『武装闘争と権力弾圧』という本を思い出しました。なんで公安警察ともあろうものがこんなバカなことをするんだろうと思っていたけど、つまりこういうことだったんですね。オレは、警察がせこく嫌がらせをしてまわってるんだとばかり思ってましたよ。文体が面白いのでちょっと長めに引用するぞ。

  

 本年四月、山田治安戦略のもとに全国五番目の「過激派担当」公安三課が発足した埼玉県下(県警本部長 福井前警視庁公安部長、公安三課長 新井重信)では、わが同盟本部車両のみならず、労働者が通勤等に使っている車やバイクに対する破壊工作が相次いでいる。
 四・二五弾圧以前においては、
(1)本年初頭、同一の本部車輌のドアミラーが都合三回にもわたってもぎとられるという事態が発生したのに加え (2)三月四日夜半には埼玉県内で駐車中の本部車輌の、燃料供給用ゴムホースが切断された(写真1)。これらはもちろんただのイタズラでは断じてない。特に(2)の場合には駐車場所付近で埼玉県警のデカが張り込みをしていたのを運転していた同志が目撃しているし、車輌下部にもぐりこみ三本あるゴムホースのうち、いちばん目につかない奥のホースをハサミ状のもので切断するという手口からしても、埼玉県警の公安デカの仕業であることば明白だ。
 また四・二五弾圧以降においては、
(3)同一の本部車輌が四月二十五日の本部ビル家宅捜索中と、五月十八日、二十一日と連続三回タイヤをパンクさせられるという破壊工作を受けた。
 このうち二十一日の破壊工作を調査した結果発見されたのが、写真2の鉄片だ。この鉄片は厚さ一ミリのブリキの板を直角三角形に切り、折り曲げて九十度の角度をもつ突起二つが突き出すようにあらかじめ工作されている。発見されたときには写真で見て上部の突起がタイヤに突きささっていた。空気が抜けるところまで深くささってはいなかったが、これに気付かずに車を動かすと、車重で突起がくいこみタイヤがパンクするというわけである。去る八五年に本部使用バイクのタイヤから発見された三角形に切った鉄片よりも、より巧妙な鉄ビシというべきシロモノだ。このような破壌工作の道具を持って公安三諌のデカ共はわが同志の車輌をつけ狙い、スキを見てはタイヤに突きさしているのである。
 本部車輌の他にも、
(4)五月初め、上福岡市霞ヶ丘団地にとめてあったバイクのハンドルが、太さ十ミリのボルトを外して破壊されている。それのみならず埼玉県警は、埼玉県内の労働者の同志の使用車輌までも標的にして、(5)マフラーの止め金を破壊し、タイヤに数本の釘をうちこむ、とか(6)バイク二台を盗む(うち一台は同志の手により発見、一台は未だ不明)、(7)車のドアミラーを破壊する、などの破壊工作を練り返しているのだ。
 これらの破壊工作を行っているのはこの四月発足した埼玉県警公安三課だ。過激派弾圧を専門とする公安三諌の設置は、東京・神奈川などに続く全国五番目のものだが、警備部管理官新井重信をキャップに総勢六十名である。元警視庁公安部長の福井典明県警本部長 − 新井を軸にわが同盟への弾圧シフトを強め、「天皇訪沖までの過激派壊滅」に躍起となっているのだ。
 この革命派弾圧を専門とする公安デカ共は、何とかしてわが同盟への組織破壊攻撃を行おうと血道をあげつつもわれわれの組織防衛闘争の前に正面切った弾圧にうって出ることができず、その腹イセに車輌破壌を行い、もってわが同盟の闘いを妨害しようとしているのである。なんという卑劣な輩であることか。本部車輌はもとより、労働者の同志が自ら得た貸金で購入し通勤のために使用する生活必需品であるところの車やバイクを破壊することを「職務」としている公安三課のデカ共は、文字通り労働者の敵、人民の敵だ。

 日本の国家権力は内弁慶だから国外ではやらない(できない)ことを自国内では平気で行なう。なんでおまわりがこんなことするんだ? 腹いせか? なんて思った記憶があります。つまりこれは権力が組織的に行なった武装闘争を行なう過激派に対する「警告」だったんですね。国際スタンダードなんだ。うーん。腑に落ちた。国家権力といってもヤクザだよな〜。
 戦旗派は、花火みたいなロケット弾を撃ちこむ程度の武装闘争だったからこの程度だったけど、銃と爆弾による武装蜂起を主張した赤軍派は、メンバーが公安刑事に路地に引きずりこまれ袋叩きにされることがしばしばあったとか。
 
それでも言うことを聞かないと、直接殴られる、あるいは事故に巻き込まれ負傷するということになる 
 
と佐藤優が書いているとおりだ。ちゃんと段階を踏んでいる。
 しかし、佐藤優は、謀略やら諜報やらをスマートに言いかえたインテリジェンスの専門家を自称するだけあって平気でウソを書きます。たぶんイスラエルに雇われて日本の世論誘導を仕事にしてるんじゃないかな。たとえばこんなところ。

 1973年10月6日午後2時過ぎ、イスラエル全土で空襲警報が鳴った。その数分後、イスラエルと国境を接するエジプト、シリアを中心とするアラブ連合軍が攻撃を開始した。第4次中東戦争(ヨム・キープル戦争)の勃発である。開戦後24時間でイスラエル陸軍は戟死者約500名、負傷者約1000名という大打撃を受けた。先制攻撃でイスラエルが大勝利を収めた1967年の第3次中東戦争(6日戦争)におけるイスラエル側の死傷者(約850名)と比較すると、第4次中東戦争開戦時におけるイスラエルの被害は甚大であった。しかし、10月10日頃からイスラエル軍は反転攻勢をかけ、アラブ連合軍を撃破し、戦況はイスラエル側に有利となる。

 - 略 -

 突き放して見るならば、第4次中東戟争はアラブ諸国がイスラエルを闇討ちしようとしたが、返り討ちにあったということだ。

 - 略 -

 アラブ諸国はイスラエル国家を文字通り地上から抹殺することを狙って、ユダヤ教徒に「労働」が禁止されている大腰罪日に先制攻撃を行うという「賭け」に出て、負けたのである。イスラエルではこの戦争を「ヨム・キープル戦争」と呼び、一種の宗教戦争と位置付けている。

 - 略 -

 国際社会の基本的な「ゲームのルール」から見てイスラエルの姿勢が正当だからである。イスラエルが、レバノン国家、イラン国家の存在を否定したことはない。これに対して、ヒズボラもイランもイスラエル国家の存在を否定し、その解体を政治目的に掲げている。対等の主権国家によって国際社会が構成されるという国連憲章で定められたゲームのルールに照らした場合、ヒズボラとその背後に控えるイランのイスラエルに対する姿勢は、到底容認できるものでない。

 ここらへんの記述は、はっきり言って大ウソだね〜。特に最後の「ゲームのルール」がどうとかいう部分など語るに落ちたというほかない。イスラエルがシリアのゴラン高原の自国領編入を宣言して国連から侵略と規定されたのは1982年のこと。それにイスラエル国家自体が佐藤優のいうゲームのルールとやらを無視してつくりだされた人工国家であるし、「イスラエルの姿勢が正当だ」と無条件で支持しているのは世界中でアメリカだけです。逆にいえばアメリカの後ろ盾がなければイスラエルは存続しえないんですね。
 四次にわたるイスラエルとの戦争をアラブの中心として戦ってきたのは、エジプトでした。現実問題として軍事的力量からもアラブがイスラエルに完全に勝利する展望はなく、エジプトの国益
(佐藤優が好きな言葉だ)のためにもイスラエルとの戦争状態を終結させる必要があった。当時のエジプト大統領サダトは、自己の政治的の立場を強化するために、また軍事的優位を確信し極めて強硬な姿勢であったイスラエルを交渉の場に引き出すためにも、軍事的な勝利が必要と考えました。その後のエジプト・イスラエル間の中東和平条約締結によりその試みは成功したのですが、そのために周囲のアラブ諸国を巻き込んで発動したのが第四次中東戦争です。つまり第四次中東戦争とは、敵国の殲滅を目的としたわけではなく、政治的な優位を獲得するための限定戦争でした。これはちょっと軍事に興味を持っている者だったら常識の範疇に入るでしょう。だから

 突き放して見るならば、第4次中東戟争はアラブ諸国がイスラエルを闇討ちしようとしたが、返り討ちにあったということだ。

  とか

 アラブ諸国はイスラエル国家を文字通り地上から抹殺することを狙って、

 なんていう記述は大ウソです。佐藤優がこの程度のことを知らないということはちょっと考えられないので、意識的にウソを書いているのでしょう。なぜそのようなウソを書くかといえば、オレにはこの人がイスラエルに雇われているからとしか思えないのです。
 ちょっと面白い本をもっています。自衛隊の陸戦学会が発行した『中東戦争論文集』という本です。880ページに17論文を収録という大著。主に佐官クラスの自衛官が第四次中東戦争について考察しています。

  

 読んだのは、もう20年くらい前なんだけどね。要約するとたしかこんなことが書いてありました。
 イスラエルの空軍力と機甲部隊に対抗できないエジプトは、航空機には対空ミサイルで、戦車には歩兵の対戦車兵器で対抗するという作戦をとった。大量のソ連製兵器を導入したエジプト軍の作戦は成功しイスラエル軍機と戦車に大損害を与えることに成功した。しかし、エジプト軍の主戦力はミサイルを装備した歩兵部隊なので足が遅く、イスラエル軍を包囲・殲滅するようなことは最初から考慮されていなかった。戦争の後半にはアメリカからの軍事援助を得たイスラエル軍が盛りかえす。
『中東戦争論文集』より高井三郎
3等陸佐の論文「6.第4次中東戦争-シナイ正面の地上作戦(1)」を抜粋します。

 2.エジプト軍の作戦準備
(1)概 要
 1973年9月ごろまでに確定したエジプト軍の作戦計画(バドール作戦)の内容は、おおむね次のとおりであった。
ア.作戦目的
 シナイ半島西部(注:ギディ、ミトラ両峠以西の地域)において、イスラエル軍を撃破するとともに、努めて多くの失地を回復し、外交上有利な状況を作為する。
イ・ゴラン正面との関連
 シナイ、ゴラン両正面同時に攻勢を開始して、全般戦況を有利に導く。その細部日時は、エジプト、シリア両首脳の協議の場で決定する。
ウ・作戦指導の要領
 当初の作戦期間を、おおむね10日間と予定する。
 ・第1期作戦(4〜5日間)
   2個軍(5個師団、2個機甲旅団ほか)で東岸地域に奇襲進攻し、北はポートフアドから南はラス・スードル油田までの間にわたり、縦深10〜15キロメートルの橋頭堡を構成する。
 ・第2期作戦(4〜5日間)
   4個機甲・機械化師団その他で超越攻撃し、ビルギルガフア 
- ギディ峠 - ミトラ峠の線を占領する。
 ・第3期作戦
   各歩兵師団を展開し、最前線に強固な防御線を構成するとともに、機甲・機械化師団をその後方に控直して、イスラエル軍の反撃に対処する。
エ・じ後のシナイ全域の回復
 イスラエル軍に消耗を強要するとともに、その効果を外交面に波及させる。
 エジプト軍は、第3次中東戦争以降、これまでの戦訓、イスラエル軍の防衛態勢等を考慮して計画準備を推進してきた。

 

 第三次中東戦争の壊滅的な敗北から六年でここまで軍を立て直したのだから意外にエジプトは有能です。Wikipediaの第四次中東戦争の項でも、この3等陸佐さんと同じようなことが書いてあります。佐藤優が書いているようなこととはぜんぜん違うでしょ。狙いどおりイスラエルとの和平条約が締結されシナイ半島を返還させることに成功したのだからこの戦争でエジプトは、政治目標を達成したといえるでしょう。しかし、そのためにサダト大統領がイスラム原理主義者に暗殺されてしまったのは歴史の皮肉でした。
 佐藤優は、意識的にウソを書いている。ウソはいけないよな。特にすぐバレるようなウソは。
 日本がイスラエルと組めば中東に核やミサイルを輸出しようとしている北朝鮮を押さえられるというようなことも書いています。そいつもあやしいものだろう。アラブとイスラエルの抗争は、もともと日本とは関わりがないものなのだから、中立が正解だと思う。アラブは、原油を産出する重要な地域だし、どちらかといえば大義はアラブ側にあるのだから、アメリカに遠慮しつつもアラブ寄りの中立という現在の日本の外交政策は、佐藤優が好きな「
国益」にかなっているのではないか。
 知的だし面白いんだけど、どうも佐藤優は、「外務省のラスプーチン」といわれただけあって相当にいかがわしいところがある。

 

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912日(金)メモリを2ギガに増設

 通販で1ギガバイトのメモリを二枚購入し、積みかえました。送料込みで八千円くらい。現在メインで使っているパソコンは三年以上前の中堅機だからいい加減に新しいパソコンがほしい。しかし、いかんせんカネがもったいない。そこでメモリやらグラフィックやらを増設して対応することにしたのです。
 メモリを交換してパソコンを起動したら、ピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッと鳴るばかりでちっとも立ち上がらない。いや、あせった。相当強く押しこんだつもりだったんだけどね。再びパソコンを開いてさし直しました。ナナメに力が加わったら折れてしまうのではないかというくらい強く押しこんだら、ようやくカチリという手ごたえを感じ、ちゃんとパソコンが起動するようになったのでした。
 しかし…、
XPではメモリを1ギガから2ギガにしてもたいして変わらないねえ。重い画像でもあつかえば少しは違うのかなあ。さすがにCPUをかえるのは手間だし、OSをビスタにする気にもならない。まあ、自己満足ですね。

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913日(土)映画『デトロイト・メタル・シティ』をみる

 友人にさそわれ新宿まで映画『デトロイト・メタル・シティ』をみにいきました。ちょっと早めにいって金券ショップで前売り券を購入。二人分で六百円くらい節約したのでした。
 ついでに家電屋に入って未練がましく液晶モニターを観察しました。アマゾンの大安売りで二万三千円で買った液晶は、新宿の家電屋の三万五千円程度のモニターの性能です。アマゾン以外のネット通販では、現在でも三万五千円で売っている品なんだから当然か。
 しかしどの液晶モニターも
CRTにくらべると全然だめです。慣れもあるんだろうけどね。視野角の左右は、昔にくらべればまあまあマシになったんだけど上下で色が変わるのが不快! いろいろ調べたところ昔五万円で買ったCRTと同等の性能を液晶モニターに求めたら十万円以上出さないと無理みたいだ。じゃあCRTを買えばいいじゃんと思ったら、日本で最も大きいであろう新宿の家電屋にも、もはや置いてなかった。技術の退化ではないか…。
 パソコンにくわしい友人に視野角の上下で色が変わるのが嫌だといったら、だったら液晶ハイビジョンテレビをモニターにすればよいとのアドバイス。鋭い
! そこでテレビ売り場ものぞいてみました。…なんだ、やっぱり十万円くらいするよ。それにテレビでパソコンをやったら目が疲れそうだ。やっぱりこういうものは、値段と性能が比例します。十万は無理としても型落ちで七万くらいの上級モニターがほしいなあ。

 半年ぶりくらいに模索舎にいってきました。中核派革命軍の地下部隊員で脈管(連絡や補給などの後方部隊)を担当した人が書いた手記『雲と火の柱 地下生活者の手記』を購入。薄っぺらい本なのにけっこう高価い。八百円くらいした。
 機関紙コーナーをのぞくと分裂した中核派の本家
?のほうが『前進』を、分家?のほうが『革共同通信』を出していた。『革共同通信』は、紙一枚を折ったもので新聞というよりビラみたいだ。時間がないのでざっと両方をながめてみたけど解放派と違って内々ゲバはする気がないみたいです。

 その後、友人と合流して『デトロイト・メタル・シティ』をみました。ネットでの評判は上々だったけど、オレはあんまり面白くなかったね〜。日本映画特有の嫌なところが鼻につきました。ウエットで人情物でセリフが長くて説教臭く演技がわざとらしい。コンサートのシーンなど部分的には面白いんだけどねえ。もっとこう、スパッとカラッとテンポよくいかないのだろうか。
 映画鑑賞後、ライオンに寄って一杯やりました。同じビールのはずなのに近所のスーパーで買ってきたものとはまるで別物のようにうまい。それにここは食い物もうまい。一流とされるレストランぐらいの味で、とても居酒屋のツマミという味ではありません。値段を考えると異常なほどです。宣伝もかねたサッポロの旗艦店だからなのかな。そういえばはるか昔、ここで社会党委員長の就任パーティーがあってオレも参加したっけ。

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914日(日)『地下生活者の手記』を読む

 先日模索舎で購入した『雲と火の柱 地下生活者の手記』を読みました。新書サイズで九八ページという薄っぺらい本なのに八四〇円もした。『雲と火の柱』という題は、旧約聖書からなんだけど中核派の地下軍事機関誌の題名でもあります。革命軍をつくる以前に内ゲバで糾察隊が活動していたころ三号くらい発行されたとか。

 

 このたぐいの過激派ゲリラ戦記本は、戦旗派の『ぱるちざん戦記』や『大逆のゲリラ』が元祖かな。最近は、赤軍派と並ぶ超過激派だったRG派の『ゲバルト時代』とか管制塔占拠事件の内幕を書いた『1978326 NARITA』なんて本が続々と出版されて過激派好きの共産趣味者としては嬉しいかぎりです。
 中核派革命軍といえば過激派中の過激派。過激派ゲリラの総本山みたいな組織です。火炎放射ゲリラで自民党本部を丸焼けにしちゃったしね。今どきの日本で人を数十人も殺している組織なんて他にないよ。どんな内容かと興味津々で手にとりました。
 作者は、脈管
(連絡や補給などの後方部隊)を担当していたとのこと。残念ながら華々しいゲリラ闘争の記述など全くありません。肝心の地下活動についてもあんまり書かれていない。身分を隠して最底辺の労働現場にもぐりこみ資金稼ぎをするという内容。その際に出会った底辺労働者の様子が中心です。著者は、彼らに共感や同情はするんだけど、具体的に何かするわけでもない。身分を秘匿した過激派の地下部隊員なのだから当然なのだが、なにか釈然としないね。そして身分詐称がバレそうになると仕事をやめ住所をかえる。職と住所を転々として地下生活二十年…。
 そうはいっても地下活動について書いている部分も少しはありました。やっぱり面白いのはそういうところだよね。

 当時、表と裏を結ぶ「脈管」は、3段構えになっていた。まず、表の脈管と、非公然の脈管がつながり、非公然の脈管は、さらに奥の脈管と通じていた。この外堀をめぐつての激しい攻防があり、今回、この箇所が破られたのだ。事実をありのままに言うと、そうした場合、重要な文書がやはり奪われていたのだ。
 権力の尾行体制というのは、実に大がかりで、地域全体を目に見えない面という形で制圧し、通行人の半数が、実は無線で連絡を取り合う私服刑事の群れという場面もあった。しかし、それでも、69年の破防法弾圧以来開始された地下組織を壊滅することが出来なかったのである。この地下組織を維持するために莫大な資金がつぎ込まれた。つまり実に多くの人々の汗で闘いとられた地平であるのだ。

 つまりこういうことじゃないかな。地下組織の革命軍といっても政治的な目標を達成するための装置のひとつなのだから指導部の指示で活動し、人的資源や資金面で表の合法組織に多く依存している。権力もそんなことは承知のはずで、表組織を観察し徹底的に洗えば革命軍との接点をつかんで組織を洗い出すことができるはずだ。そこで対抗上、革命軍を二重構造にして、革命軍Aが表組織との接触や資金面を担当し、実際にテロやゲリラを行なう革命軍Bに受けわたすというバケツリレー方式をとった。特に一番足がつきやすいのは、記録に残りやすいカネの流れだろう。そこで資金面では表組織に依存するだけではなく革命軍Aのメンバーが賃労働をして革命軍Bを支えた。著者は革命軍Aのメンバーだったんだな。あんまり面白い任務じゃなさそうだ。
 解放派の軍事組織員だった高原駿の『沈黙と軌跡』では、役所で公務員をしながら鉄パイプを盗みに工事現場に忍びこんだり内ゲバをしたりしている。時代が十年近くずれているからかもしれないけど、同じ『革命軍』でも中核派と解放派では大変な違いです。
 この本では、はっきりと書かれていないけど中核派のゲリラ路線は破産します。この本でも最後にゲリラ隊員は「
表に浮上」することになります。その場面がよかった。中核派は、中央派と関西派に分裂してしまったらしいのだけど著者は、関西前進社に出頭します。関西派なのかな?
 同時期にゲリラ闘争をやっていた戦旗派にくらべると中核派は、暗い。戦旗派のゲリラは、人がいないところに対する放火までで人的被害を出さないように、パクられても重刑を食わないように配慮されていたけど中核派は、爆弾闘争にまで踏みこんでいたからなあ。鉛の散弾を仕込んだ圧力鍋爆弾ですよ。革マルとの内ゲバで数十人も殺してるし、まだ書けないことも多いのだろう。
『雲と火の柱』は一般書店では入手不能。アマゾンで買える主要な過激派ゲリラ本にリンクしときます。

    

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915日(月)1テラバイトハードデスクが戻る

 修理に出していた1テラバイトのハードディスクが戻ってきました。連休中だというのにえらい。中に修理票が入っていて「症状あらわれず。交換」なんて書いてあります。変だな〜。三台のパソコンにつないで故障を確認したんだけどな〜。ハードディスクが熱をもったらおかしくなるとか? 新品にかえてくれたみたいだから、まあどうでもいいや。
 さっそくつなげてみたら、当り前だけど正常に動きました。しかし、バックアップ用のハードディスクなので膨大な量のデータを入れなおすのが面倒くさい。ネットをうろついてハードディスクを酷使せずにデータのコピーや移動をしてくれるというフリーソフトをみつけ使わせてもらいました。たしかにコピーしてもハードディスクがカリカリいわない。それに普通はコピーや移動をしているとパソコンの動作が重くなるんだけど、このソフトを使うとそんなこともない。なかなかのすぐれものでした。
 最近はパソコンの中味を丸ごと保存できるという便利なソフトがあります。いつかパソコンのハードディスクが壊れても新しいハードディスクに交換してドライバから何からすべて保存した時の状態に復活させることができるらしい。
1テラバイトもあると三台のパソコンの中味を丸ごと保存してもかなり余ります。過信は禁物だと思うので、それとは別に画像や音楽や動画やメールのバックアップをとったのでした。

 Fire File Copy
 http://www.k3.dion.ne.jp/~kitt/pc/sw/ffc/index.html

 

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916日(火)カラ売りでひと儲け

 アメリカのリーマンブ・ラザーズが事実上倒産したせいで世界中の株式市場が大荒れです。こういう大型倒産は必ず土日にある。
 月曜が祝日だったので日本には火曜に暴落が波及してきました。年に数回程度あるこういう暴落の日は、カラ売りで儲かるんですよ。カラ売りというのは、株価が下がったら儲かるという信用取り引きです。
 市場が開く前に成行で売りを出します。暴落の日なのでなかなか寄りつきませんが、しばらく待つとその日の始値近くで約定します。普段だったら始値がその日の安値ってことも結構あるんだけど暴落の日は、約定したあともたいてい株価がずるずる下げていくんですね。まあ、これは経験則にすぎず
100パーセントというわけではない。でも、確率は非常に高い。バクチだと考えても勝率八割以上でしょう。こんな割の良い勝負をしない手はありません。
 思った通り約定後も株価は下がっていきます。ここから先はいろんなパターンがあります。突然V字型に反転することもよくあるので、欲をこかず三万くらい利がのったところで買い戻しました。しかし、買い戻してからもガンガン下がります。前日のアメリカ市場が
4パーセントくらい下がったので、日本もそのくらいは下がるだろうと予想していました。安全策をとって日経平均がマイナス3.5パーセントくらい下がったところで買い戻したんだけど今回の暴落は、そんな程度ではおさまりません。さらに下がっていきます。マイナス5パーセントくらいまで下がりましたねえ。ここまで持っていれば十万くらい儲かったのに…。そううまくはいきません。それからV字反転です。これも暴落時によくみられる現象でパニック売りがひと段落すると急反転して上がっていきます。当り前だけど100パーセントそうなるというわけではないよ。普段だったらだらだら下がることのほうが多いくらいです。しかし暴落の時は、株価が行ったりきたりするんだよね。これも割の良い勝負です。すかさず「買い」をいれます。今度は二万くらい儲かったところで決済しました。
 こんなにおいしい日はめったにないので一日パソコンの前にへばりついて株を売ったり買ったりしましたよ。総額で九万くらいの利益でした。面白かったけどクタクタですよ。これが不労所得とはとても思えない。
 こういうデイトレードは、パソコン一台では無理です。最低でも二台。できれば三台ほしい。パソコン二台を株価ボードにして気配情報を観察。さらに一台をリアルタイムで更新されるチャートにして眺めます。また「売り」と「買い」を間違えるとえらいことになるので、パソコンを「売り」専用機と「買い」専用機に分けてマウスにマジックかなんかでしるしをつける…。
 そこまでやってこんな条件のよい日に九万程度の利益なんだから我ながらしょぼっちい。市場というのは冷徹だから自分の能力の限界や性格の弱さをよく見せつけてくれます。

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917日(水)モニターMDT242WGを注文する

 昨日は五時間もモニターに向かって赤や緑にペカペカ点滅する画面をみていました。目が痛くなるのを通りこして頭が痛くなってきましたよ。だめだ…これは。
 安くてよい品を買うというのがオレのポリシーです。それで、三万五千円のモニターが二万三千円で売られているのを発見して飛びついたわけです。しかしやっぱり無理でした。このクラスの液晶モニターでは、オレみたいな使いかたをしていると身体を壊しそうです。
 あらためて液晶モニターについて調べたんだけど、安くて品質がよい品というのは存在しないみたいだね〜。価格と性能は正比例するようです。上下の視野角が広くて目が疲れないことを重視して三菱の
MDT242WGというモニターを購入することにしました。

 このページを参考にさせてもらいました。
 
http://review.sakuratan.com/index.php?MDT242WG

 TNパネルというのを使っている安い液晶は、視野角が狭いらしい。視野角の広いパネルを使っている液晶は大型で値段も高くなってしまう。MDT242WGは、売り出し直後では十二万円くらいしたらしいけど価格がこなれてきて現在は七万八千円程度。このくらいの値段ならなんとか…。アタマが悪いOLみたいな言いかただけど、自分へのご褒美に昨日カラ売りで儲けた金をつかうことにしたのでした。
 昨日儲かったのに味をしめ再びデイトレードをやってみました。…六万円くらい儲かったぞ。アメリカの政府が保険屋のAIGの救済や資本注入を実施するということで相場が上昇するだろうと予想し今日は「買い」が中心でした。我ながらピタリとはまりましたねえ。でも、目が痛い…。

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918日(木)REITを買う

 調子に乗って三たびデイトレードをしました。昨日おとといと儲けた貯金が十五万もあるので、ちょっと大胆にやってみました。
 …十三万円も儲かった。打つ手打つ手がすべてうまくいきます。たまにはこういうこともあるんだなあ。
 バクチで儲ける一番の方法は、勝ったらやめることでしょう。ヤクザが開帳している賭場では勝ち逃げできないけど、株式市場では可能。全部決済して手を引いたのでした。
 合計で二八万円も利益が出ました。八万円でモニターを買うとして残りの二十万円はどうしようか。せっかくの臨時収入を女を買ったり飲み食いにつかってしまうのはもったいない。
 そこで
REITを買うことにしました。日本版の不動産投資信託。不動産を証券化して切り売りした債券です。アメリカでは、サブプライム問題で一番ヤバイ金融商品ですね。日本でも土地の値段はそんなに変わってないのに最盛期の価格から三分の一近くにまで暴落しています。年利十パーセントなんて銘柄はゴロゴロしているし、十四パーセントなんてジャンク債なみのものまである。
 内容もジャンク債なみで、相当うさんくさい。すぐに増資して証券を希薄化させ、分配金を半分にしますとか平気で言います。特に新興のカタカナ不動産会社系の
REITなんて親会社からボロ物件を高値で買いとるためのゴミ箱と化しているようなものまである。無茶な事をしてたまに金融庁から怒られるみたいだけど、まあ、何も知らない人から金を巻き上げる合法的サギですよ。
 でも、なかにはまともなところもあるんだよね。物件の質が高くて手数料が安くサギ増資をしないという
REIT。そんなところもサブプライム問題のあおりで暴落していて年利八パーセントとかになっています。いろいろ調べたところビ・ライフ投資法人というのがよさそうなので、ちょっとお金を足し二六万三千円で一口買ったのでした。ここは毎年二万五千円も分配金をくれます。長期でみれば良い投資だろう。

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919日(金)カードキャプターさくらをみる

 細君がでかけたので子どもと留守番です。絵本を読んでやったりしてあんまりテレビはみせないようにしているんだけど、間が持たず昔NHKで放送していた『カードキャプターさくら』をみました。主要登場人物は、主人公のさくらちゃん以外みんなホモかレズかあやしい人。ところが悪人が一人も登場しないという希有な作品です。
 なぜ『カードキャプターさくら』なのかというと、子どもとオレが両方楽しめる番組ってこれくらいしかないんだよね。子どもはケロちゃんに大喜び。オレはさくらちゃんと知世ちゃんに大喜び。
 いつも留守番のときにみていたら、今回で全話見終わってしまった。う〜ん。面白い。魔女っ娘アニメもここまで進化したかって感じだよね。特に知世ちゃんのキャラクターがよい。性格は柔らかいけどあんなに聡明で頭が切れる女はいないよな。それに↓下みたいな絵をみると女の子に生まれればよかったと思っちゃうよ。

 

 アニメ好きの友人にきいたところでは、前半はセル画で後半はデジタル作画なんだそうな。どおりで雰囲気ががらりと変わると思った。オレはシリアスな後半が好きだが子どもはコミカルな前半がいいみたい。
 数年前にヤフーオークションで全話収録DVDを五千円くらいで買いました。なぜか香港だったかどこかの外国から送られてきた。海賊版なのかなあ。正規品銀色シールが貼ってあるが…。まあ、ちゃんとみられるからどうでもいいか。英語字幕が入っているので英語の勉強にもなります。

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920日(土)モニターMDT242WGが届く

 さっそくモニターMDT242WGが届きました。設置します。
 おおおおおおお
! これは、いいいいいいい! 寝っ転がっても色合いが変わらないよ。それに目に優しくてくたびれない。さすが八万近くしただけある。ちょっとしたノートパソコンが買える金額だもんな。
「モニター 調整」で検索していろんなページで実験しました。さすがに前のモニターとはモノが違います。前モニターでは何時間試してもうまくいかなかったガンマやコントラストの調整が、何もせんでも決まっている。価格以外は大満足といったところでしょうか。あえて気がついた点をあげてみます。
 初期設定がひどすぎる。ブライトネスが高すぎてビカーっと輝き、まるで蛍光灯です。オレはブライトネスを
100から5にしました。0から10の間がちょうどいいくらいですね。それに画面モードが何種類もあるんだけど『スタンダード1』以外は使えない。『ムービーモード』やら『フォトモード』やら役にも立たない機能をつけるんだったらその労力を画質の向上にあてるか値段を下げてほしい。また、内蔵のスピーカーはお話しにもならないシロモノ。邪魔だからないほうがいいくらいです。それにパソコンからの入力部がものすごく付けにくいところにあるのもギモーン。他にいくらでも背面スペースがありゲームやビデオ用の端子は、まともなところについているのになぜパソコン用端子は、わざわざ一番つけにくいところにあるのか? 取りつけの際に手が痛くなるしこんなんじゃモニターをひっくり返して画面を傷つけそうだ。これを設計したヤツはバカじゃなかろうか。また、ビデオ端子を接続してパソコンしながらテレビをみることができるという機能もあるけど、こんなの使わないなあ。小うるさいしテレビのニュースなんて時間の無駄だよ。ネット上から文字で読んだほうが早い。
 逆に何の役に立つのかと思っていたリモコンは、意外に便利。ゲーム機や複数の機器を取りつけたら手放せなくなるだろう。リモコンボタンひとつでブライトネスの変更や入力を切りかえられるのが素晴らしい。
 ずいぶんゲーム機を意識したモニターでした。変な機能がついてるけど使わなければいいだけのことだ。もっと安ければいうことなかったんだけどね。パソコン用のモニターとしても大満足の品です。前のモニターは早急に売りはらおう。

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921日(日)獄中記(佐藤優)を読む

 岩波書店から出版された佐藤優『獄中記』を読みました。ちょっと前に読んだ『国家の謀略』よりはるかによい。なんで国権派の佐藤優が人権派の岩波から本を出すんだろうと思うけど、パクられる前から岩波の『世界』に連載を持っていた関係かららしい。佐藤優は、右派のサンケイから左派の岩波まで幅広く書いていますね。今まで読んだ中では『国家の罠』『私のマルクス』『獄中記』がよく、最近出版された本にはあんまりたいしたものはない。ネタ切れかな?
『獄中記』は、『国策捜査』でパクられた際の著者による獄中読書・思索日記といった内容です。この人は、ちょっとヘーゲルにかぶれていてエリート主義なのが鼻につくかな。実際エリートさんだったんだろうけどね。文体が明晰なうえに内容も知性的で面白いですよ。やはりこの人の文章は、立花隆に通じるものがある。
 現在の日本において政治犯
(著者はそう主張している)として五〇〇日も独房にぶち込まれ、読書・思索三昧というのは珍しいよね。戦前の共産党幹部みたいだ。はっきり名前を出していないのだけど、東京拘置所では、連合赤軍事件の坂口弘死刑囚の隣の房だったようです。坂口弘は、日本赤軍によるハイジャック闘争での奪還を拒否して獄に残り死刑判決を受けたひとです。不条理といえばこんな不条理な話しはない。解散した日本赤軍メンバーで拘束されたのは微罪者が中心で、死刑になりそうな人たちは、いまだに自由の身です。そこらへんは、かくまっているアラブの人たちの配慮もあるのだろう。

『国家の罠』にある程度詳しい事情を書いたが、私の隣人で、いつも沈着冷静で、真撃に読書と思索に取り組んでいた確定死刑囚については、ある弁護士の尽力で、この人のお母さんと連絡をとることができた。手紙で息子さんの獄中での様子を伝えたところ、ていねいなお返事をいただいた。息子さんの様子について連絡する機会が得られただけでも私が投獄された意味があると思っている。
 吉田松陰の辞世の句が、
「親思ふ 心にまさる親心
 けふのおとづれ何ときくらん」
であったが、獄中の確定死刑囚である息子のことを思う母親の気持ちを考えると胸を締めつけられる思いがする

 外務省のラスプーチン・佐藤優にもいいところがある。しかし、元高級官僚だから拘置所では特別あつかいです。オレも六〇日くらい留置所に入れられたことがあるけど、こんなに待遇よくなかったぞ。二週間前に人を殺したヤクザとか変な説教癖のあるチンピラとかと同じ房に入れられ、落ち着いて読書できる環境じゃなかったよ。メシも違う。留置所より拘置所のほうがいいものを食わせるね。
『獄中記』を読んでいる時にちょっと面白い体験をしました。それほど大したことではないのだけど…。下に引用した部分を読んでください。支援してくれている元同僚への手紙です。

 昨年五月、僕の気持ちは遠藤周作の『沈黙』を読んでもらえばわかると言ったら、あなたから「佐藤さんはもう『踏み絵』を踏んだのか」というメッセージが返ってきた。それに対して、僕は特に答えなかったが、「踏み絵」を踏むか否かは、「究極的なもの」から判断する話だと思う。
 二人の転びバテレンは、神の沈黙に直面して、「転ぶ」という形で「究極的なもの」に従った。
 - 略 -
 僕は『沈黙』の中で、あなたたちにもう一つの示唆をしたかったのは、キリシタン目付である井上築後守が述べた、「この国(日本)は沼地だ。どのような草を植えても根がくさってしまう」ということである。前島にしても、あれだけ一生懸命仕事をし大言壮語していたにもかかわらず、逮捕・勾留くらいで崩れてしまうのは、根がないからだ。これは「究極的なもの」がない(あるいは弱い)ということに関係していると思う

 オレは何冊かの本を平行して読みます。この数時間前に読んだ『日本の神々の事典』の前書きにこんなところがありました。芥川龍之介の小説『神々の微笑』について言及しています。遠藤周作と芥川龍之介がほぼ同じ事を書いているのに驚きました。

 芥川は、この短篇(神々の微笑)で、戦国時代の元亀元年(1570)に来日し、織田信長の庇護の下に布教していたイエズス会のオルガンティノ神父が、ある春の夕べ京都の南蛮寺で日本の神々に出会う不思議な幻想に見舞われる、という架空の題材を小説にしている。
「この日本に住んでいるうちに、私はおいおい私の使命がどのくらい難いかを知り始めました。この国には山にも森にも、あるいは家々の並んだ町にも、何か不思議な力が潜んでおります」
 
 - 略 -
 芥川は、しかしこの神父を主人公にして、何を語ろうとしたのだろうか。それは、神父に語りかけた「この国の霊」と名のる老人の最後の言葉に示されている。
「ことによると泥烏須
(デウス)自身も、この国の土人に変わるでしょう。支那やインドも変わったのです。西洋も変わらなければなりません。我々は木々の中にもいます。浅い水の流れにもいます。どこにでも、またいつでもいます。お気をつけなさい。お気をつけなさい。……」

 遠藤周作が芥川を読んでいないわけがないから意識はしているんだろう。それにしてもまったく関連しない二冊の本を同時に読んで、たまたまその両方が日本と外来の宗教について同じようなことを述べているのは不思議です。こういうのもシンクロニシティというのだろうか。ユングのいう共時性現象は、オレの周囲でしばしば起こります。
 遠藤周作では二度目ですよ。遠藤周作の著作で興味を持ちキリシタン弾圧の史跡を訪ねて長崎に行ったことがあります。たしか昔のネット日記にも書いたはず。たまたま土産物を売っていたシスターに遠藤周作の話しをしたら偶然にも生前に面識のあった人で、そのシスターから面白い話しをきかせていただくことができました。数日後に九州から船で沖縄に向かう途中、船室にそなえてあったテレビをつけるとたまたまNHK
-BSが遠藤周作の最後と臨死体験について放送しています。時間の無駄なのでオレは、テレビなんてめったにみません。テレビをつけたのは、船室に備えつけられているのが珍しかったからで本当に偶然でした。しかもそのとき旅先で再読しようと思って持っていた本が立花隆の『臨死体験』だったのです。シンクロニシティが幾重にもまとわりつくという不思議な体験でした。実はオレにはこういう事がけっこうあります。なにを意味しているのかは、いまだに分からない。

   

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922日(月)日本の神々の事典を読む

 学研のエソテリカ事典シリーズ『日本の神々の事典 神道祭祀と八百万の神々』を読み終わりました。図書館で借りたんだけど同シリーズの『仏尊の事典』にくらべるとずいぶん本がくたびれている。神道のほうが人気があるのかなあ。オレは仏教のほうが好きだが。
 日本神話では『ナントカ神』が現われ、それがどんな神かは書いてある。しかし、その神がなぜ・なんのために現われたのかとか、人間のさまざまな問題や苦悩をどう解決するのかは、ほぼ書いていない。神道は、素朴といえば素朴なアニミズムであり、生老病死など人間を悩ませる問題を解決しようと視点は、ないのではないか。せいぜい祈祷するくらいだろう。それに仏教やキリスト教とくらべて理論がない。そこがつまらなく感じるんだなあ。たぶん神道とは、読んだり理解したりするものではなく「感じる」ものではないだろうか。早朝の神社特有の清々しい雰囲気とか、そういうものを「感じる」宗教なんだろう。
 あんまり腑に落ちないながらも読んでみて感じたのは、天津神系の神話より国津神の神話のほうが面白い。また、日本書紀よりも古事記のほうがよい。
 天津神系の神話がつまらなく感じられるのは、オレが野党的体質の持ち主だからというだけではなく、天津神系は大和朝廷の支配を正当化するために創作された神話なので、そのために生じる作りもの感がつまらないのだろう。土着の国津神系の神話が本来の日本神話じゃないかな。
 日本書紀よりも古事記のほうがよく感じられるのは、たぶん日本書紀には、漢籍の影響が強く感じられるからだろう。昔なにかの本で読んだのだが、日本書紀の原文は、最初のほうは「日本語英語」のような日本化した漢文で書かれており、それが途中からちゃんとした漢文になっているんだそうだ。おそらくその時点から中国から帰化した学者が加わったからであろうと。

 

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923日(火)迷信俗信大百科(不二龍彦)を読む

 学研の『迷信俗信大百科』を読みました。「招福大宝典」なるあやしげな副題がついています。図書館の棚でみつけた本で、くだらなかったらすぐに読むのをやめてしまおうと思っていました。しかし意外にもちゃんとした内容です。前書きはこんな調子。

 ●一部記述について
 紀元前からの歴史的迷信・俗信を収録しているため、今日の人権擁護の見地に照らした場合、不当、不穏当と思われるものが若干含まれていますが、迷信・俗信の背景、歴史的意味を説明し、また、打破すべき迷信を明らかにするために必要と思われるものに限って紹介しており、差別を助長する意図はありません。その点をお含みおきの上、お読みください。

 日本の差別の多くは、赤不浄・黒不浄に代表される忌み・穢れからくる迷信からきているものと思います。迷信と差別は、密接に関わり合うものであり、差別にふれることなく迷信を語ることはできないだろう。しかし「打破すべき迷信を明らかにするために」こんな本を手にとったわけではない。まあ、書き手の免罪符というやつでしょうね。
 内容は、日本の迷信を中心としたちょっとした世界迷信百科です。過半は日本の迷信。それ以外ではヨーロッパとインド、中国が多いですね。
 とりわけ日本の死や葬儀に関わる迷信俗信が興味深かった。葬式では、水に湯を注いだり、室内で履き物をして外に出たり、屏風を逆さに立てたり、枕膳にそなえるハシは一本だったり…。つまり死に関わる儀式では、事物を逆さにする。日本人にとって冥界とは穢れであるとともに逆さま世界なのだろうか。
 酒を飲めない人は、飲み会でウーロン茶で乾杯したりするよね。なぜ水で乾杯しないのだろうか。水杯は、別れのときの杯で死を暗示するからだそうだ。日本だけではなく欧米でも同じ理由で水杯を嫌うらしい。人間の潜在意識は、みな同じようなことを考えているのだろうか。それとも中国あたりの習俗がヨーロッパと日本に伝わったのかもしれない。現代人にも無意識のうちにさまざまな迷信俗信が入りこみ実際に行動を規制している。そんなことを考えながらこの本を読んだのでした。

 

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924日(水)毎日新聞から朝日新聞に変更

 新聞屋がきて毎日新聞の契約を三月まで延長してくれといいます。そんな半年も先のことは知らんので契約が切れるころにきてくれといったのだけど、ペコペコペコペコ頼まれてしまった。それならいっそ今日で毎日新聞の契約を打ち切って朝日新聞にかえ三月まで契約しようと提案。同じ販売店なのに新聞を変えると成績が上がるらしい。新聞屋は大喜びでティッシュペーパーや洗剤を大量にくれた。そういうわけで購読紙が毎日から朝日にかわりました。
 毎日は、もうひとつやる気がない。一等地に不動産をもっていて新聞事業などやめて不動産会社になったほうがよほど儲かるらしい。新聞発行の仕事は、毎日新聞社にとっては社会事業らしいぞ。統制がなく社員が好き勝手にやっているから変態記事をネットにアップしたり逆にすごい特ダネをモノしたりするのだろう。毎日新聞の購読者層は、朝日新聞は嫌いだけどサンケイや読売は軽蔑しているという中庸を自認する年寄りが中心じゃないかな。
 そういうわけでひさしぶりに朝日をとることにしました。相変わらず上から目線のいばった新聞ですなあ。でも目のつけどころや総合力は、毎日新聞なんか足元にも及ばないね。カルト漫画『地上最強の男竜』の風忍が夕刊の連載小説にさし絵を描いているのに驚きました。やはり毎日より読むところが多くて倍くらい時間がかかる。でも、川柳は毎日のほうが面白かったな。

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925日(木)水槽の引っ越し

 先日大量のグロ虫が発生したエビ水槽は、もはや手がつけられません。いくらプラナリア・ホイホイで駆除してもあとからあとから無限にわいてくる。しかし、魚がいる水槽にはプラナリアがでないんだよな。どうやら食われているらしい。
 そこで思いついたぞ。魚をエビ水槽に入れ、エビを魚水槽に移動する。住居の交換だ。一番貪欲なタナゴとトレードするのがよかろう。
 そういうわけでタナゴとドジョウをバケツに移し、ついでに三分の一くらい水替えをしてからエビをタナゴ水槽に移動したのでした。
 しばらくして水槽をみにいくと、どういうわけかエビとタナゴが数匹ずつ死んでいた。…なぜだ。

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926日(金)AMONデビルマン黙示録を読む

 通りかかりのブックオフで『AMONデビルマン黙示録』というマンガをみつけ五巻までまとめて買ってきました。永井豪の超名作『デビルマン』の番外編?続編?みたいな作品です。
 帰宅後さっそく読んでみたのですが、まあ、そんな大層な作品でもなかったですねえ。普通のマンガくらいには楽しめますが、それ以上ではない。比較の対象があの『デビルマン』ではしょうがないのだが…。
 オリジナルの『デビルマン』は、とんでもない作品です。善と悪が戦って、そのうちどちらが善か悪かわからなくなっていく。人間の狂気が重要なテーマのひとつらしく、ヒロインは、キチガイ群衆に文字通り八つ裂きにされ、生首さらされてお祭り騒ぎに。ひとつの時代をつくるほどの才能の持ち主が神がかりみたいにトランスって描いた一生に一度の大傑作でしょう。それと比べちゃったらねえ…。
AMONデビルマン黙示録』のほうは、白人ねーちゃんみたいな顔のデーモンが巨乳を丸出しにして戦うというマンガで、深いところは感じませんでした。デーモンが人間のような価値観や感情を持っているのが特に気に入らなかった。デーモンは、人類の天敵のような価値観を共有できない異生物じゃないと違うと思うんですよ。『デビルマン』の影響を受けて描かれた作品だったら『寄生獣』のほうがよほど面白かったな。
 そういや『デビルマンレディー』なんていうアニメもあったなあと思いついて検索してみました。
Yahoo!動画で無料でみられるみたいだぞ。http://streaming.yahoo.co.jp/p/t/00114/v05343/
 それでみてみたんだけど…。この程度の画質で、
Yahoo動画は無料!とかいわれてもなあ…。まぁ美人の主人公が十字架にかけられて火あぶりにされているオープニングがかっちょよくてなつかしかったですね。いっしよにみていた友人が「これ、熱くないんだよ」といって爆笑したっけ。
 

  

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927日(土)うつうつひでお日記その後(吾妻ひでお)を読む

 吾妻ひでおの最新刊『うつうつひでお日記その後』を読みました。
 アマゾンは便利だよな。「こんな本でるよー」というメールをくれて、予約したら発行日の翌日に届いた。
 ホームページに描かれた鉛筆描きイラストと日記を集めた本です。オレは、吾妻ひでおの存在がなかったらオタクにならなかっただろうというくらいのアズマニアなので新刊が読めてうれしかった。しかし普通の人が読む娯楽作品としてはどうだろうか。
 吾妻先生は、やはりよく本を読んでいるよね。それに元アル中で鬱なのによく外に出歩いている。オレのほうがよほど引きこもりだよ…。
 この本は、吾妻ひでおの読書日記でもあります。今度は吾妻先生が◎をつけた本を読んでみようと思う。電波男
(本田透)、ダイアルAを回せ(ジャック・リッチー)、ウォッチメイカー(ジェフリー・ディーヴァー)、水の中の犬(木内一裕)の四冊。
 ちなみにオレが今一番面白いマンガだと思っている『よつばと』は、○でした。マンガ作品で◎は無いのか…。
 日記を読むと吾妻先生は、かなり不健康であまり先が長くなさそうな気がする。大丈夫だろうか…。

 

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928日(日)旧モニターが売れる

 ヤフオクに出品していた旧モニターが19500円で落札されました。友だちにやっちゃうか押し入れにしまっておくくらいしかなかったのだからありがたい。
 もともとアマゾンで
35000円の品が23000円で売られていて、そいつを一週間使用して19500円で売ったことになります。購入の際、細君のアフリフェイト経由で23000円分のアマゾンギフトを購入し、4パーセント引き。さらにそのギフトを使用して細君のアフリフェイト経由で注文し3パーセント。そのうえでアマゾンクレジットカードを使い1パーセント引き。合計8パーセント引きです。裏技だけど違反というわけではないらしい。
 まあ、お金をもらうのは細君なんだけどね。その分を差し引くと実質払ったのは
21000円くらい。ヤフー税を5パーセントとられるとして、入ってくるのは18525円。2500円くらいの損です。思ったより被害が少なかったよね。そういえば14800円で買った変なパソコンDNRH-001256Mメモリも送料込み1000円で売れたぞ。ヤフオクはつかえるなあ。

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929日(月)「みんなの意見」は案外正しい(ジェームズ・スロウィッキー)を読む

 ひどい題名だけど内容は非常に優れた本です。原題は、The Wisdom of Crowds(群衆の英知)。こっちのほうにすればよかったのにね。
 群衆とか大衆というとろくなイメージがありません。「衆愚政治」とか「群集心理」とかね。人間は、一人一人は立派で賢くても集団になると愚かになるというのが一般的な理解でしょう。しかし、実際に統計をとり調査すると実態はその逆であるらしい。
 野球賭博や選挙予想賭博を利用したデータによると予想の平均値(つまり群衆の予想)は、常に上位
25パーセントに入るらしい。真ん中の50パーセントではないんですね。常に上位25パーセントに入るという成績は、一番成績のよかった個人よりも勝っており、事実上のトップであると。
 つまり巨人が阪神に何点差で勝つか負けるかという予想ゲームをすると、ここの予想の平均値が最も正解である確率が高い。おおむね
25パーセントの個人は、群衆の予想よりも正解に近いのだけど常に上位25パーセントを維持することはどんな天才であっても不可能。この予想ゲームを何回も行なうと必ず群衆の予想がトップになる。たとえば星野監督や野村監督といったその道のプロが一年にわたって巨人×阪神戦の点差と勝敗を予想したとすると絶対に群衆の予想には勝てない。
 こんなところも面白かったですね。ちょっと長くなるけど引用します。

 一九八六年一月二八日午前一一時三八分、スペースシャトル・チャレンジャー号がフロリダ州ケープカナベラルから発射された。七四秒後、チャレンジャー号は地表から一六キロ上空まで上昇し、そして、爆発した。
 発射の模様はテレビ中継されていたので、事故のニュースはすばやく伝わり、爆発から八分後、ダウジョーンズ・ニューズワイヤーズが最初の報道をした。株式市場は喪に服す間もなく、最初の報道から数分もしないうちにチャレンジャー発射に関わった主要企業四社の株の投売りを始めた。
 - 略 - 
 爆発から二一分後、ロッキードの株価は五パーセント、マーティソ・マリエッタの株価は三パーセント、ロックウェルの株価は六パーセント下落していた。だが、いちばん下落幅が大きかったのはモートン・サイオコールの株価だ。
 - 略 - 
 サイオコール株を売りたい投資家があまりに多かった一方で、買いたい人があまりに少なかったために、同株は瞬く間に取引停止に追い込まれた。爆発からほぼ一時間後に売買が再開されたとき、株価は六パーセント下落し、その日の終値では下落幅が約二倍の一二パーセントだった。対照的に残り三社の株価は持ち直して、下落幅は二パーセント程度にとどまった。
 これは、ほぼ瞬時に株式市場がチャレンジャー爆発の原因はモートン・サイオコールにあり、この惨事が同社のボトムラインに与える影響は深刻だと判断したことを示す確たる証拠だ。
 - 略 - 
 事故の当日、サイオコールに責任があるというコメントは一つとして公になっていなかった。明くる朝、ニューヨークタイムズ紙に掲載された記事は当時出まわっていた二つの噂に言及したが、いずれもサイオコールに責任があることをうかがわせる内容ではなかった。同紙は「事故の原因を特定する手がかりはない」と断言している。
 だが、市場は正しかった。爆発から六か月後、チャレンジャー号大統領調査委員会は低温のせいでサイオコール製のブースターロケットに取りつけられた0リングシールの弾力性が失われ、隙間ができたためにガス漏れが起きたと明らかにした。
 - 略 - 
 サイオコールの責任が認められ、他社の嫌疑は晴れた。
 市場がサイオコールを選び出したのは、単なる偶然だったかもしれない。たまたま同社の事業は宇宙開発計画中断の影響を受けやすい、と思われただけかもしれない。あるいは取引停止という事態が、投資家に何かメッセージを送ったのかもしれない。
 こうした点にも注意すべきではあるが、このときの市場の動きはやはり不思議だったとしか言いようがない。一般的に株式市場はメディアの憶測やウォールストリートの狂乱などに歪められることが多く、個々の投資家の知恵を集約して集団の知恵を得るメカニズムとしては不安定だ。それにもかかわらず、あの日の株式市場が純粋な計量機械としてきちんと機能したということが何とも不思議なのである。
 市場はどうやって正しい意見にたどり着いたのだろうか。

 市場には超能力でもあるのか? 人間には「無意識」の外側に「共意識」とでもいうものがあって相互につながっているのかもしれない。この本では、このような現象が起こる理由はわからない。しかし、個々の人々が断片的に持っている知識を集約した最適の解が市場価格ではないだろうかとちょっと苦しい説明をしています。
 しかし群衆知がそれほど素晴らしいものなら、なぜ戦争がおきたりバブルが発生するのだろう。ここでは、群衆知を発揮するために四つの条件があるとしています。

 意見の多様性(それが既知の事実のかなり突拍子もない解釈だとしても、各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている)、独立性(他者の考えに左右されない)、分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)、集約性(個々人の判断を集計して集団として一つの判断に集約するメカニズムの存在)という四つだ。
 この四つの要件を満たした集団は、正確な判断が下しやすい。なぜか。多様で、自立した個人から構成される、ある程度の規模の集団に予測や推測をしてもらう。その集団の回答を均すと一人ひとりの個人が回答を出す過程で犯した間違いが相殺される。言ってみれば、個人の回答には情報と間違いという二つの要素がある。算数のようなもので、間違いを引き算したら情報が残るというわけだ。
「集団の知恵」という言葉に実質の伴った価値を与え、私たちを驚かせてやまないのは、みんなの意見に含まれている情報量の多さだ。ゴールトンの実験やチャレンジャーの事故などのケースでは、集団が共有する集合的な「頭」の中に世界のほぼ完壁な絵が描かれているではないか。

 たしかに戦前の日本では意見の多様性や独立性などは極めて制限されてきた。そこが勝てもしない戦争に突入した大きな原因なのかもしれない。もっと大きくみると黒船以来、日本が常にアメリカの劣位にあるのは、資源や国土の広さ以上に意見の多様性や独立性に乏しい点に理由があるのではないか。逆に中国の人口が日本の十倍もあり現在爆発的に経済発展しているとしても、日本のほうが中国よりも意見の多様性や独立性などがより担保されているので、今後追い抜かれることはまずあるまいと思ったりもしますね。
 この本の説は、冷戦終結後に流行している新自由主義的市場万能論の臭いがする。でもまあ、役に立つものだったらなんでもよいよね。アメリカ人の実用主義はたいしたもので、大統領選挙の勝者や得票率を予測する市場をつくるなどして群衆知の理論を実際に活用しているようです。この予測市場は、世論調査よりも正確に選挙結果を予測するらしい。
 オレが学生だったころは、マルクス経済学はもうすたれていてグラフや統計を利用した新古典派の近代経済学が主流でした。面白くもない学問だと思ったけど、最近の経済学は、心理学などと結びついた人間の行動を考える非常に面白いものになってきたように思います。

 

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930日(火)映画『パラダイス ナウ』をみる

 自爆テロにむかう青年二人の二四時間を描いた映画『パラダイス ナウ』をみました。監督がパレスチナ人でプロデューサーにはイスラエル人が加わっているそうだ。
 オレのテロリストに対するイメージは一般とはちょっとずれているかもしれない。冷静で常に感情を殺し、それが必要なことだと確信しているからこそテロを決行する、オレのテロリスト像は、そういうイメージです。『パラダイス ナウ』の主人公二人は、オレの勝手なイメージとは逆にテロに到るまでかなり動揺しゆれている。生きていても意味がないと思わせるような劣悪な占領地の状況がテロに志願させた、いわば絶望が生んだテロリストです。
 テロリストといえば地下活動家で一般人の日常生活からは切断されているというイメージもあります。ところがここで描かれた二人の自爆テロリストは、劣悪とはいえちゃんとした職を持ち家族と暮らす生活者なのです。そんな二人が当り前のように武装組織に加わり自爆テロに志願する、いわばテロという異常と日常が非常に近いところにあるという描きかたが興味深く感じられました。
 あとは細部ですね。銃を掲げて自爆テロの声明をビデオに収録するシーン。ビデオが故障して何回も撮りなおすことになり主人公は怒りだしてしまう。自爆テロの声明収録という異常な状況にビデオの故障という陳腐な日常が入りこみ、二四時間後には自ら爆死するという人間が怒りだす…。
 非常によくできた映画でした。みてみる価値はあると思う。

 雑記47 

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