終戦記念日には靖国神社に行こう!
葉寺 覚明
皆さんこんにちわ。いかがお過ごしですか。最近はいわゆる「自由主義史観」流行りで、「歴史認識」云々でホットな論争が続いているとのこと、さぞやハートを熱くさせているのではないかと存じます。
突然で申し訳ないのですが、貴方は靖国神社に行ったことはおありでしょうか?
ご存知とは思いますが、営団東西線九段下駅から、歩いてすぐのところにある立派な神社です。そればかりではなく、日本の「軍国主義者の精神的支柱」ということで、世界でも有名な神社であります。
とりわけ8月15日、いわゆる終戦記念日というのはマスコミが一斉に「戦争を考える」ようになるだけではなく、戦没者の霊を偲ぶために、全国から遺族、右翼、そして政治家が参拝に訪れるので、そのたびにマスコミと麹町警察署が忙しくなる日なのです。
もちろん模範的で、平和を願う日本国民である私としては(?)、毎年この日には足を運ぶことにしているわけであります。
最初はもちろん真面目な動機で足を運んでおりました。しかし、周囲を散策するたびに目に飛び込んでくるオモシロ現象を見逃せるはずもなく、いつしかそれが目当てになってしまったのであります。
この日はちょうどお盆に重なっているうえに、コミケ参加者にとってはもっとも忙しい前日或いは当日というわけなので、そんな悠長なことは言ってられないとおっしゃるかも知れません。又、地方におられる方や里帰りされる方は、そんな所に行く金はないとおっしゃるでしょう。
しかし!勤勉な遺族の方々は高齢化が進んでいるとはいえ、毎年足を運んでおられるのです。足を運ぶという行為には、それだけの価値があるわけです。ナヌ?嘘だとおっしゃるか?まあいいでしょう。別に、たまには平和について考えよう!なんて気張らなくても構いません。ミーハーな気分で足を運んでももちろん悪いことではありません。そもそも祝祭とはエンターテイメントそのものなのだから。ただし、あそこは神社なんだから、無礼な真似はするなよ。
ともかく、一度は足を運んでおいて損はない。私が言いたいのはそういうことだ。実際に足を運び、肌で堪能して頂きたい。私のこの拙い案内が、道標となることを願って止まない。
なお、私は読む者の思想云々には一切関心がない。したがって、思想及び良心の問題の範疇に属するクレームは一切受け付けない。とは言え、そんなこと書いても、文句たれる奴はいるんだよね。
ちなみに交通手段は、JRなら総武線飯田橋駅、営団地下鉄なら東西線の九段下駅である。道に迷うのがイヤなら後者をお薦めする。何しろ「九段下の大鳥居」と歌われているように、靖国神社は九段下駅が一番近い。
九段下駅でも飯田橋駅でもどっちでも構わないが、しばらく歩くと、九段下駅から地上に出るとすぐに大鳥居が見える。坂が結構きついので年輩の方々はさぞや難儀しているに違いない。
ついでに言うと当日は政府による戦没者追悼集会が行われ、天皇陛下や首相が演説するので、このときの模様はTV中継される。ただし、招待状がなければ入れないので注意されたし。もちろん警備もかなり厳重であるから、不埒な考えは起こさない方がいいぞ。
一応言っておくが、敷地内の売店を除いて、周辺はあまり飲食店はないので、参拝の途中でちょっとしたものを口に入れようと思ったら飯田橋駅まで歩かなければならない。しかし30分ほどかかるのでこれを機に別の場所を移るというのでなければお薦めできない。
どうせ歩くなら靖国通りをずっと歩いて神保町まで行った方がずっといいと思う。お盆だというのに、殊勝にも店を開いている古本屋が軒を連ねているのだ。えらい!
蛇足ではあるが、ちょっと歩くと千鳥が淵墓地がある。だいたい社民党など、労働組合系の連中が集会している。ただ、労組系は集会後にデモったりするので暑い中を練り歩くのがイヤな人にはお薦めできない。人混みに紛れてトンズラしましょう。
中には、シンポジウムを開催する団体もあります。そっちの方が室内なので涼しくてよろしい。ただし、冷やかしで足を運ぶことだけは絶対にしない方がいい。言うまでもなく扱うテーマがものすごく重苦しいし、そうでなくてもイデオロギー性がかなり濃厚なイベント。おまけにこの日行われるイベントは立場が似たり寄ったりの人々しか集まらないのであまり得るところがない。雑誌か何かに目を通した方がよっぽどいい。
どうしても肌で体験したいならともかく、当日パネラーが何を喋っていたのか知りたければ、後日レジュメを取り寄せれば済むことである。
ここで、このようなことをつらつらと書きなぐることが平気で出来るような平和な世の中になったことを、靖国神社の英霊に感謝したい。いや、ホントに。
右翼ウオッチングのすすめ
先ず、何はともあれすべきは周辺の様子をチェックすることである。全国から右翼が集結しており、さながらモーターショウのようだ。
右翼の街宣車はよく見ると色々なバリエーションがあって、ちっとも飽きさせない。中にはドアの窓に「昇降口」などとガラスに書かれたままという、バスを改装した巨大なものなんかがあって、なんともたまりまへん。
スローガンは天井に書いていることもあるから要注意だ。当日には「一人一殺」というのと「一殺多生」というのとが1列になっていたぞ。外見はほとんど同一だったので、まさかペアになっているんじゃ・・。
中には「英霊につづけ!」という過激なものも。平和な時代に無理して戦死する必要はないと思うんだけどなー。ところで、これ誰に呼びかけているのかしらん?右翼のアジはときどきこういった誰に呼びかけているのか理解に苦しむものが見受けられますねえ。
並みいる右翼の面々に混じり、もちろんそこには愛国党の姿も見える。私が、右翼の中では一番好きな党派である。
彼等はイラストを駆使したピケがお好みのようで、今年もその例に漏れず、似顔絵で小渕首相を名指しして糾弾しとります。おちょぼ口でたれ目、丸顔だけど貧相な特徴を見事に捉えた小渕首相の似顔絵だ。思わず吹き出してしまう。うぷぷぷぷ。
思えば、愛国党のピケはとても面白い。だいたい攻撃の対象は政治家なのだが、特に首相の似顔絵が毒があって秀逸である。他にも、土井たか子がよく攻撃されていた。
中でも傑作なケースをあげておきましょう。やはり土井委員長を攻撃している。
ピケに書いてある絵を見ると顔はもちろん土井。しかし何故か胴体は動物。
「私は真っ赤な北朝鮮ばばあよ国民を騙すっきゃないわ!」とか、
「私は金日成の愛人、女ギツネばばあよ!」
などと絶叫している。ということは胴体は女ギツネ。
いやぁ、こういうのを見るたびに思うんですけど、連中のピケやパフォーマンスは最高。どれをとっても、思い出し笑いがこみ上げてくる。写真を撮っておかなかったのは私の最大の過ちであったと思う。
あとは首相の似顔絵が描いてあって、「**首相は**せよ!」と命令口調で書いてあるのが多い。よく電柱に貼ってある愛国党のポスター(文面がすごく面白いぞ。なぜか毎回筑紫哲也を名指しで批判している)では外国の元首に対しては「**大統領に物申す」てな言い回しであることを考えると、日本の政治家が彼等に攻撃されているだけではなく、バカにされていることを示している。
ピケのスローガンに添えられている首相の似顔絵の表情が妙に情けなくて、もう涙が出そうだ。
小渕首相は「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の中心メンバーであったが、日本遺族会会長でもある橋本元首相とは違い、参拝はしていない。そのせいで、右翼に「小渕は遺族の票を食い物にしている!」と弾劾されていた。
まだ自民党が強力だった中曽根内閣のときならばともかく、さすがにあれだけ政局が不安定ではねえ、参拝することは出来なまい。もしかしたら自分の不人気ぶりを自覚しているのかも知れないね。
しかし、今年ここにいた連中をよく見ると、彼等は「日青同」と書かれた腕章をしているのに気がつきました。
そういえば愛国党は赤尾先生死後、分裂したんだっけ。でも、どう見ても「青年」には見えないぞ。確か、青年自由党はパンフで「心が青年なんだ」と言っていたけど、彼等も同じことを言うのかね。しかし、面倒くさいので、ここでは以下、愛国党と記す。何卒ご勘弁を!
参拝者に浴びせられるビラの数々
この日の醍醐味である右翼ウオッチングを済ませ、周辺をぐるりと散策したら鳥居をくぐる。
この日は、駅周辺に必ずビラを配布している人と警官とがいる。何しろこの日は日本人のナショナリズムを掻き立てるのには最適だ。警官はというと、制服も私服(襟元に黄色いバッジをしているからすぐに分かるぞ)も、よりどりみどりだから、警察マニアにとってもたまらないぞ。
ビラ(あるいは出版物)を受け取った。冊子「生命之光」だ。
ビニールに入っていて、「原始福音信仰証誌」という副題が。
又、「日本よ永遠なれ」というビラが入っていました。ビニールは透明なので、袋を開かなくても読めます。
全文を引用しましょう。
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日本よ永遠なれ
祖国日本のために生命を捧げられた英霊に、謹んで哀悼の意と感謝を捧げます。私たちは日本を愛し、日本精神の復興を願うキリスト者です。
三年前、終戦五〇年という節目のときに、私たちも靖国神社を訪ね、就遊館を見学しました。祖国のため、愛する者のために闘い散って逝かれた、父祖の世代の尊い生きざまを知って、強く心を打たれました。
しかし、日本人が真の誇りを失った結果、現今の日本に充満する、教育、政治、経済などに見る精神的荒廃は目に余るものがあります。
今日は、英霊への感謝と、愛する日本への祈りをこめて、私たちの信仰証誌『生命の光』を謹呈させていただきます。ご一読いただければ幸いです。
皆様の上に主キリストの豊かな祝福を祈りつつ
合掌
キリストの幕屋・京浜三十代会
平成十年八月十五日
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これを発行している「生命之光」というのは、手島郁郎という人が創設者で、キリスト教を神社神道によって解釈する宗教です。当然彼等は右よりあるから、ここにいるのは理解できますね。ただ、この「生命之光」を開いてみると、武士道を賛美していることと、「すいとん」という記事が載っていること以外は、それっぽいことは何も書いていないのは意外でした。
因みに、本文中にある「就遊館」というのは、あとで詳しく書くんだけど、靖国神社の中にある博物館でして、色々興味深いものが展示されております。
また、何年か前には、飛騨高山にある福来研究所がパンフレットを配っていました。超能力研究で知られる、オカルトマニアにはお馴染みの福来友吉博士の後継者たちがやっているところです。超能力とこのような政治的な主張とはどういう関係があるのか分かりかねるが、或いはスタッフの趣味なのかも知れない。何年か前はいたのだが、今年は見なかったので心配です。因みに、件の冊子には超能力の記載は一切なかったぞ。
だいたいパンフレットはコミケの無料本みたいにただで通行者に配っていますね。随分太っ腹だと思うんだけど、おかげで同じ本が何冊も手元に残ってしまう。コレクターとしてはあまり嬉しくない事態ではあるが、余った物は周囲の人に配って欲しいらしい。
いっそのことブース作って売った方が・・。
その中でも、もっとも広範に配布されているのはこの「英霊にこたえる会」が出しているマンガ冊子です。「東京裁判史観のマインドコントロールから抜け出そう」と題するもので、肝心の画力はあまり上手いとは言えません。何しろ登場人物も「さくらと一郎」といった案配で、若者向けとは思えないし、言いたいことは良く分かるのだが、戦死者が苦悶している姿は、悪いけどおちょくっているようにも見えるのです。こういうのを見てつくづく思うんだけど、何でお役所や政治団体(革マル派は除く)の描くマンガって、へたくそなのかねえ。プロに任せればいいのに。
維新政党・新風登場
あとは、今回の参院選に出た「維新政党・新風」がビラを配っていた。彼等が配っていたビラは、参院選の際に配っていたものの一部を切り取ったものを使っていた。
と言うのも、「新風」はすべての候補者が用いていたビラが、候補者の欄以外はまったく同一のものであったし、そこを除くと「新風」以外のことは書いていなかったので、候補者が写っているところだけを切り取ると、それがそのまま「新風」のビラになるのだ。
もっとも、ビラの裏を見ると、「新風」をイメージした風神様の顔の一部が切られているのが、妙にオマヌケ。
ついでに言うと、「新風」は政見放送は面白かったんだけど、ビラやポスターはつまらなかった。何せ候補者名を書く欄以外はみんな同じ。本気で当選する気はなかったらしく、むしろ党名を宣伝することに重点を置いていたように思えました。
特筆すべきは、企業が総会屋の雑誌を買わなくなりつつあることについて言及していて、「民族派雑誌への弾圧」などと主張しています。何だか、「右翼=総会屋」という図式を自認しているようにも聞こえるぞ。
彼等には、これからの参院選でも是非とも活躍して欲しい。なにしろ今年は泡沫政党が少なくて、ホントつまらなかったからね。
敷地内でビラを配っているのは、私が知る限り、おおむねそんなところである。もっと右翼団体がビラを配っているようにも思えるのだが、神社側がなかなか許可してくれないらしい。
せっかくの行為が無にされるなんて、ちょっと可哀想な気もするが、思えば昭和から平成への世代わりの際、多発する過激派による爆弾テロを憂いた右翼が、各地の神社の「自警団」になることを申し出たらしいが、案の定断られたことを考えると、「まつろわぬ民」のもの悲しさを感じた。
平和遺族会
周辺で街宣しているのは、もちろん右翼ばかりではない。むしろ彼等とは反対の立場にいる者の姿もある。中でも平和遺族会はその代表格だ。これは別に左翼の中でヘゲモニーを握っているという意味ではなく、終戦記念日に活動している平和団体の中で、とりわけ知名度が高いという意味である。異論はあるとは思うんだけど、まあ勘弁して下さい。
この平和遺族会とは、日本遺族会から分裂して出来た団体である。靖国神社の国有化などに反対するという、要するに左翼。しかも、両者はいずれも大東亜戦争の戦没者を遺族に持つが故に、遺族という共通の基盤をめぐって争っているわけです。もっとも、その勢力たるや、微々たるものですけど。
右翼はもちろん、肝心の遺族の冷たい視線にも係わらず、わざわざ靖国神社の前で情宣活動を行う理由も、ここにあるんだな。まあ、私としては主義主張はともかく、遺族の心情を逆撫でする効果しかないと思うので、こんな場所でやらないで、もっと離れた場所で行うように、勧告したい。あれでもし情宣の方法がもっとえげつないものであれば、禮所不敬罪が適用されても、文句は言えまい。
また、この平和遺族会には、キリスト者遺族会、浄土真宗遺族会といった左翼的な遺族会も加盟しています。特にキリスト教系、正確には日本キリスト教団系の政治運動というのは左翼的なものが多く、8月頃に出される信徒向けの雑誌には毎年戦時中のクリスチャンの怨みったらしい思い出やら、日帝時代を連想しうる一切の代物に対する強烈な憎悪を見ることが出来て、何というか、非常に陰鬱な気分になれますぜ。
当日行われる行事
午前中には敷地内に設置されたテント会場にて、「戦没者追悼国民集会」が開催されます。「朝まで生テレビ」や保守系雑誌でもお馴染みの人々の熱弁がただで聞けるのが嬉しい。もっとも座席に座るのがかなり難しいのが難点。因みに、このときに斉唱するのが「君が代」と「海ゆかば」であるのが何とも言えないぞ。
しばらくすると、もう正午だ。正午になると、黙祷する。私はこういうときに薄く瞼を開く癖があるので分かるんだけど、みんな下を向いているぞ。
黙祷が終わると天皇陛下のお言葉が流れる。やはり皆さん、耳を立てて聞き入っていますねえ。でも、その直後に、首相が話すの段になると、動き出す人がいるんだよ。まあ、仕方あるめえ。
敷地内の様子
マスコミもかなりいます。中でも目立つのが海外のそれです。参拝者へのインタビューがかなりの比重を占めているようで、それと思しき光景がかなり目に付く。必ずニュースで報じられるんだけど、私は毎年このために外出しているので見られないのが残念。
また、毎年見かけるのだが、戦争画を20点ほど展示している人がいる。誰が書いたか分かんないんで申し訳ないんですけど、だいたい戦闘シーンや神風特攻隊がモチーフになっているのが目に付く。中には女神がが命を散らせた隊員を抱き抱えているものなんかがあって、思わずじっと見入ってしまいますね。どこかに画集売っていないかなあ。でもまた来年展示するだろうからそのときに見に行こうっと。
当日は至る所に、先程書いた英霊にこたえる会という日本遺族会に近い団体がいます。彼等は参拝者に毎年麦茶を振る舞っている有り難い方々。冷たくて美味しいから毎回貰うことにしている。ちなみに、そこでは「みどりの日」を「平和の日」に改めようという署名運動が行われているぞ。
本が売っているブースに行くと、兵士たちの手記などが売っている。
特に今年はいわゆる「自由主義史観」系の本が目立つ。この「自由主義史観」というやつについては賛否両論あるが、教育や歴史の分野では今まで左翼の力が強かったせいか、今まではその弊害は否定すべくもないし、何よりも「戦争を知」る世代の大多数は左翼が嫌いなので、この立場にいる人が、そのような人々の「声なき声」を代弁していたという要素もあるように、私には思えるのです。ただし、私は東日本ハウスを私物化している青年自由党の中村功党首はワンマンなので嫌いだ。
だいいち、彼等は当日、ここに登場していないぞ。非国民め!
そこには当然小林よしのり「戦争論」や藤岡信勝「教科書が教えない歴史」も売っていました。これらは「委託販売」なので定価。売れ行きは好調だ。
他にも、常設の売店と食堂を兼ねた店があるが、異様に混雑しているので参ってしまいました。何しろ座席はあるもののなかなか座れない。長々と居座っている人が少なくないし、おまけにあまり綺麗ではないので座るのに躊躇してしまう。もっときちんと散らかさないで食べて欲しいものだ。
そこではみやげ物もなかなか豊富に取りそろえてある。中でも目を引くのが太平洋戦争にまつわるもの。なんと終戦の詔勅の写しまである。これ、何十年かあとに「なんでも鑑定団」みたいな番組で「我が家に伝わるお宝なんです」とかほざく奴とか・・いるわけないか。
参拝者と右翼とをチェック
そういえば、かっこいい街宣車で登場したとは言え、右翼も参拝に来ているんだよね。
そう思って、周囲を見回してみたら、いたいた。お揃いのTシャツを着て来た右翼がいたぞ。黒くて、模様は銀色。背中には菊のご紋と団体名(忘れた・・ゴメン)でばっちり決めています。このTシャツ欲しいぞ。カッコイイ!構成員の顔のせいか、暴走族にも見えるのが難点だが。
周辺の街宣車と、参拝者の中に混じっている構成員とを合わせてみると、いちいち名前は挙げないが、選挙の出馬歴があるような有名どころはだいたい来ているようである。
参拝者が群れを為している。もちろん、右翼の方々の格式張った様子も堪能できる。野太い声で一斉に「君が代」を斉唱したり、「靖国ぃー神社のぉー、英霊にぃー対しぃー、敬礼ッ!」なんていう合図に応じて連中が一斉に敬礼しているという図を心ゆくまで堪能した。ごちそうさまです。ホント、たまんないね。
就遊館に行こう
先程書いたけど、靖国神社には就遊館という立派な博物館があります。 入場料が500円かかるんだけど、毎回企画展をやっているので、絶対に見に行きましょう。確か今年は女性戦没者の遺品が展示してあったよ。
部屋の出入口には拝観者の感想を書くノートが置いてある。悪いけどこれが面白いんだよ。絶対に読むんだよ。忘れちゃダメだぞ。
だいたい年輩の人だが、もちろん真面目に「若くして散った命のことを考えると平和を祈らずにはいられません」というような真面目な書き込みも見られるんだけど、中には「必ずや米英に復讐します」などと好戦的な書き込みもあります。スゲー。
場所柄、保守的というか右翼的な書き込みが多いのが特徴ですが、中にはわざわざ批判するために来たのか、左翼的な書き込みもあります。「戦争責任を糾弾しよう!」とか「ここの展示は戦争の悲惨さが伝わってこない」などといった場違いな書き込みもあります。いやはや。
しかし、これらはまだましな方でして、お互いに敵対している相手のことを明らかに意識した書き込みもあります。「天皇制をなくせ。もしもあのときなくなっていたら日本はもっとましな国家になったのに」などという激烈な書き込みの脇で、それに対して激昂した人(そりゃーするだろうさ)が「左翼はみんな死ね」などと書いてあります。まったく、あんたら、何しに来ているんだい?「便所の落書き」と揶揄されかねないような電脳世界の掲示板を思い出してしまうぞ。
しかし、あそこであんな左翼的な書き込みをするなんてほんとにいい度胸しているなあ。年輩の人は死者を偲んでやって来るんだし、そうでなくともここに来るような人たちは左翼が嫌いです。そういう人たちが見ていたらどうするんですかね?今まで良くもまああそこでけが人が出なかったものだと思ってしまいます。しかし、最近は概ね大人しくなったようです。かつてはインターネットやパソコン通信の掲示板並みに下品だったのが嘘みたいである。真面目な人々にとってはいいことだと思うのですが、どうしても面白いものに目が行ってしまう私としては、少し寂しいですね。
もちろん中には外国人の書き込みがあるのですが、語学力がない私には読めません。中国語はともかく、英語は読みにくい筆記体で書いてあるし、ハングルはさっぱり分かりません(機会があれば勉強したいんですがね)。説明は日本語でしか書いていないので、この人たちは展示が理解できていたのか気になってしまいます。
反対にやたら脳天気なのが絵馬の書き込みです。絵馬はもちろん就遊館ではなくて外に掛けてるんですが、「**大学合格」とか「**君と**がずっと幸せで暮らせますように」とかいった感じで、ほとんど他の神社と変わりません。ただ、ときどき自衛隊関係者のものとかがあって、「おおっ」と唸ってしまいますね。ただ、今年はなぜか「還我釣魚台 中国人」と書いてある絵馬が2つばかりあって、思いきり笑わせて頂きました。
バトルシーンに遭遇
敷地内はおおむね散策したので、そろそろ外に出た。
午後2時を少し過ぎている。
来るときに見かけた連中はまだいるのかな。
私が来た午前中から平和遺族会が延々と街宣していました。何を言っているのか聞き耳を立ててみる。
「皆さんこんにちは。私たちは、平和遺族会です。私たち平和遺族会は、私たちが遺族だから、愛する肉親を戦争によって奪われた遺族だからこそ、誰よりも平和の尊さを訴えることが必要であると考えます」
そのことについては日本遺族会とて同様だと思うんだけどな。
行くときはろくすっぽ見なかったのだが、見所はチェックしたのでついでにピケやプラカードを見てみた。「公式参拝反対」とか去年と同じことを書いているぞ。
中には「秋野さんは政府の無策なODAの犠牲者」と書いているのもある。
「しかし、追悼集会においでの、靖国神社への参拝者の遺族の皆さん」
「私たち遺族の平和への願いは、歪められてしまいました!」
どうやら武道館に来ている遺族へと訴えているようですぞ。
靖国神社に行くような人は平和遺族会の主張には反対だからともかく、武道館の入り口は靖国神社との至近距離にある。どうやら切り崩しを狙っているらしい。
「私たちは、愛する肉親を、聖戦のためだと、大東亜共栄圏のためだとそそのかされ、肉親を失いました」
そういった長ったらしい前置きを経て、彼等はいよいよ左派的なことを口にし出しました。もちろんそこには午前中見かけた愛国党の姿も。相変わらず同じ場所で街宣していました。ホントご苦労様です。
それにしても、午前中は平和遺族会と愛国党とは最初は2〜30メートルほど離れたところでともかくも「共存」していたのですが・・。
激突!
今までずっと演説しているだけだった愛国党の様子がおかしい。
「さて、これから私たちは首相官邸と国会議事堂に抗議のデモをしに行きます。靖国神社に公式参拝しない小渕首相と議員に対し・・」
ここから首相官邸に行くときには、目の前にいる平和遺族会とぶつかってしまう。まして、連中を前に遠回りすることは、敵前逃亡みたいで何とも締まらない。
一斉に官邸の方、すなわち平和遺族会の方を向く。それに呼応するように、たちまち、周囲の警官が動き出した。
双方の周りに、取り囲むように集まる警官と野次馬。
道幅が広い靖国通りを隔てた横断歩道でも、群衆がただならぬ気配を感じたらしく、一斉に目をやる。
やった!今年も遭遇できたぞ。右翼と左翼とのバトルシーン。これがたまらないんですよ。たとえ実際にゲバっていなくても、互いに緊張感を漲らせているだけで、私はたまらない気分になってくる。ワクワクしちゃうねえ。
言うまでもなく、当日は全国の右翼が集結する。おおむね彼等は口よりも手が早い人々であるし、左翼だって黙って引き下がるわけはない。
彼等が巻き起こすすったもんだももちろん見逃せない。
それは間もなく開始される。否、もうすでに始まっている!
攻撃開始
いきなり、平和遺族会の宣伝カーに2人の右翼が駆け足でやってくる。あっと言う間の出来事だ。
ドカッ!ドカッ!ボコッ!
2、3発ばかりのキックが宣伝カーに炸裂!ドアがへこんだ。 襲撃したのは20歳ほどの若者である。どっちも右翼と言うよりはチンピラヤクザの風体である。そりこみとパンチパーマ、そして原色スーツ。彼等にとっては礼装ではあるが、やっぱり怖いよぉ。
あっと言う間に警官に連行された。最初は警官に抗議するものの、何しろ現行犯だし、逮捕されるのは当たり前なので、少々抵抗しつつも、説得され、おとなしくなった。
だがこれは、更なる騒動の序曲でしかなかったのである。
愛国党が平和遺族会のいる方向にデモりだしたのだ。周囲の警官も一斉に動き出す。見逃せないぞ。
私も思わず駆け足でもみ合っているところへと滑り込む!
私はというと、この紛争のさなか、そこにずっといたおかげで、何回もお巡りさんに「君、危ないからあっちに行っていなさい!」と注意されてしまう羽目になってしまいました。そんな殺生なあ。日本人が野次馬根性の固まりなのを知らないのか!
いよいよ右翼の演説が目に見えて騒がしくなってゆく。メガホンの音量を上げているらしい。明らかに威嚇している。
遺族会も負けじとマイクのボリュームを上げ、怒鳴り始めた。「エー、周囲が段々と喧しくなってきましたがっ!」 声が少し震えているので、「何とかしてかき消してやる」という気持ちがひしひしと伝わってくる。
ビラを配っている人はおおむね大人しいが、中には活動家臭い攻撃的でおまけに不愛想な人がいる。ぜんぜん平和的じゃないぞ。
これでは安心して話しかけられないではないか。
右翼のシュプレヒコールに対し、
「それが人間赤尾敏のやることなのかよお!」とか、「天皇制なんかいらないぞう!」などと怒鳴っている。そればかりでは飽きたらず、右翼に突っかかろうとして、警官ともみ合っている。たいした「平和主義者」もいたもんだ。どうやら遺族のことよりも自分の主張の方が大切らしい。
その点、それ以外の人は物腰は穏やかだった。
「ちょっと右翼の方が来てしまいましてね・・。まあ、街宣はじきに終わりますけどね・・」
それが正しいと思いますよ。しかし、もう少し離れた場所でやるとか、時間をずらすとかした方が・・。
「・・ええ。そうですね。すいません」
別に謝らなくてもいいんですけどねえ。まあ、無事を祈る。去年も右翼に妨害されていたというのに、ホントこりないよなあ。
右翼の大勝利、しかし警察には敗北
結局街頭では、右翼の大勝利であったと言えましょう。
なにしろ、一方的に攻撃される平和遺族会は純粋な被害者です。しかし、周囲の同情は驚くほど薄い。ほとんどの群衆が「当たり前だ」という顔をしています。中には、加害者である右翼に対して、「がんばれ!」と声援を飛ばしている人も。
結局、平和遺族会の安全を守ったのは肝心の遺族でも人民でもなく、彼等が敵視している警察だというのは、何とも皮肉な話ですね。
そんなことじゃあ右翼には勝てないよ。悪いけど。
対左翼戦では大勝利を収め、群衆にも精神的な援助を受け、ノリにノっている愛国党。
もはや一方的にがなるだけである。
「日本人は甘いから、お人好しだから、北朝鮮につけ込まれたりするんだ!」
「この弱肉強食の国際社会で、日本が平和なのは誰のおかげだと思っているんだ!すべて靖国神社の英霊が命を懸けて闘ってくれたからではないか!」
「それを・・、日本人のくせして靖国神社の公式参拝するなとか、日本人が悪いのだとか、まったくふざけている!靖国神社の英霊を、バカにするな!」
「日本人に生まれて、そんなに北朝鮮が好きなら、金正日のもとで、軍事訓練やりなさい!軍事訓練を!」
アジっているのは、血気盛んな爺さんでした。まさに、老闘士と言うにふさわしい。少し濁声で訛っていましたね。
又、「日本の歴史を、もっと、ちゃんと勉強しなさい!」とも言っていたけど、この台詞はどちらのサイドの人もよく口にするセリフだね。
どっちが正しいのかはその人の好みに委せたいけど。
よく聞いていると、なぜかいつの間にか北朝鮮批判になっているのに気がつきました。確かに左翼の中には北朝鮮びいきが腐るほどいるけど、少なくともここにいる平和遺族会の連中はここでは誰一人としてそんなこと言っていませんぜ。かえってマイナスだと思うんだけどなあ。
しかし、そんなことを気にするような右翼ではない。
「日本人のくせして、靖国の英霊を冒涜するような輩はっ、にーほーんかーらー、出ーてーいーけー!」と愛国党おばちゃんがアジると、「出ーてーいーけー!」と全員が唱和する。右翼のアジは語尾が下がるのが特徴だ。
このころになると、右翼と警官のとのもみ合いは、ひとまず集結したように見えました。何しろ、結局警官に阻まれて進めず。
いっせいに、くるりと向きを変える愛国党。
転進し出したのでした。
またもや愛国党おばちゃんが「小渕ぃー総理ぃー大臣にぃー告ぐぅー!小渕総理大臣はぁー、靖国神社に公式参拝せよぉー!」とシュプレヒコールすると、みんなが「公式参拝せよぉー!」と唱和しつつ、彼等は首相官邸へと向かう。
横断報道を渡り、ちと遠回りな道を通り、彼等は消えていった。信号が赤だったときには、連中もきちんと青になるのを待っていました。
右翼と警官とがもみ合っている隙を見て、撤収する平和遺族会。
まさに、歴史は繰り返すといえよう。
過激派の動向
私は右翼マニアであると同様、過激派マニアでもあるので、やたらと気にはなっていたのですが、結局、当日は過激派はいませんでした。何年か前は少し離れたところで、ヘルメットをかぶって情宣していたのだが、最近は動員力などが危機的な状況にあり、それどころではないらしい。
そうそう。ビラを配るのはいいけど、色が付いた紙でビラを作るなら、一色に統一してね。色が違うと、つい違うビラだと思って受け取っちゃうんだよ。同じビラを何枚もらってもねえ。面白ければいいけど、だいたいこの日にばらまかれるビラって、読んでいてつまんないんだよ。そもそも私は左翼じゃないんだし、「戦争責任」などとしたり顔で言われてもねえ。しかもこの話題を振るときになると、あいつら、とたんに押し付けがましくなるんだよね。「共鳴しない奴は敵だ!」てな論理がありありと見えてくるので、困っちまう。わざわざ近づいてビラ受け取っておいてなんだけど。
そういうわけで、近頃は過激派を見るにも一苦労である。
もしも確実に見たい場合、近くに法政大学があるのでチェックしよう。あそこは言うまでもなく中核派の最大拠点なので、アジっていない場合があるけど少なくともタテカンはあるからそういうのがお好きなら見に行って損はないぞ。
また、法大に行くときに絶対に忘れてはならないのは自販機でジュースを買うことである。今時100円なので有り難いぞ。しかしむやみにうろうろしていたらかなり目立つのでそのあたりは注意したまえ。
あと、法大の周辺にも機動隊が待機しているから言動には注意されたし。特にこれ見よがしにでかい荷物持ってウロウロしていると、職務質問される恐れがあるぞ。特に反抗的な態度をとらない限り何もないから素直に協力しなさい。まあ、私はされたことないけど。
運が良ければ中核派が演説している。もしいれば少し近づくとシュプレヒコールが聞こえるはずです。やはり8・15は重要な日らしく、連中も張り切っている。もっとも大学は夏休みだから学生はほとんどいないけど。昔はもっと元気だったんだよー。ほんとうに頼むからアジぐらいもっと派手にやってくれー。さみしいぞ。
近頃よくいる「悪いことしたんだから素直に謝るのが正しいと思いま〜す」なんてマンガに出てくる学級委員みたいないいこぶりっこで紋切り型な純粋まっすぐ君の軟弱な台詞を聞くと、もしもそういう人が読んでいたら申し訳ないんですが、鳥肌が立ってしまいそうだ。
まだ過激派の「粉砕するぞー!」の方が力強くて率直で好感が持てるぞ。
そうそう。何か手みやげが欲しい場合、ビラが置いてあるところがあるからそこを当たってみたまえ。因みに私は、成田がらみの「ゲリラ事件」を口実とした法政大学自治会室ガサ入れ弾劾声明をゲットしたぞ。
実に有意義な日であった。来年も必ず行こうっと。
おわり
(平成10年9月脱稿)
・筆者のメールアドレス(hjkm1998@geocities.co.jp)。