テロリストのための過激派組織論
北のりゆき
はじめに
この記事はデータハウスから発行された『危ない28号 第5巻』に書かせてもらったものです。
テロ団体の歴史と組織について書いてほしいということでしたので、こういう内容になりました。再録にあたり一部を書き直しました。
『危ない28号第5巻』は、まだ書店に並んでいるので、よかったら買ってあげてください。1400円です。アングラで面白いですよ。
遊撃隊TOPあらゆる政治団体にとって組織は生命ともいえるものです。テロ過激派といえども政治目的を持った団体なのだから、その組織を維持・発展させることは最も重要な意義があります。ここでは平穏な日常にあきたらない不満分子諸君にテロ過激派の組織論を紹介し、非合法活動を行う参考にしてもらいたいと思います。
「組織」とひとことでいっても、様々な形態があります。反体制的な運動であっても合法活動を重視するなら大衆運動に、もっぱら非合法活動を行うなら自覚した少数者からなる組織になるはずです。歌って踊って楽しいサークル活動というような運動や、せいぜい合法デモ程度ならばおおっぴらにかなり大勢の人を集めることが可能でしょう。しかし、暴力デモ→街頭武闘→武装闘争というように、非合法度=危険性が増すとともに結集する人数は減っていき、活動は地下に潜ります。もちろん合法的な大衆運動と非合法活動の結合はありえますし、むしろ非合法活動を行う反体制運動のほとんどは、合法的な表組織によって非合法活動を担う部分を支えるという形態をとっています。しかしその場合、合法部分もかなりの弾圧を加えられ、半非合法化させられる事が多いようです。日本の過激派などがよい例でしょう。
反体制運動のなかで合法的大衆運動を最も重視しているのが共産党です。もっぱら合法的な大衆運動を行う共産党が、突然非合法化され数十万もの党員がいっせいに地下に潜った例があります。ナチスが政権を握った直後のドイツです。当時ドイツ共産党は、ソ連以外の国の中で最大の党員数を擁し、世界で最も訓練されているといわれたドイツプロレタリアートに支えられた最強の党組織を誇っていました。合法的な大衆組織であると同時に赤色戦士戦線という軍事組織を持ち、ナチスとの実力闘争では双方に100人以上の死者を出しています。ナチスによる政権掌握が避けられないと見たドイツ共産党は、着々と地下に潜る準備を進めていたのです。
「非合法化の弾圧が下った瞬間、すべての細胞(支部)は機能を停止する。代わって、新しい全国組織『五人組』が動き出すのだ。細胞は十乃至三十名の党員から成っているので、大きすぎて地下活動には向かない。警察の密偵とか密告者とかに、つけ入る隙を与える。中核党員を五人組に組み替えれば、危険の度も少なくなる。組のリーダーにしか、あとの四人の本体や住所は分からないのだ。ビラミット型をなした党の組織の、すぐ上の層と接触するのは、このリーダーだけである。仮に彼が逮捕されても、彼がもらせるのは、組の他の四人、それから上層とのつなぎ役の名前だけである。」(ケストラー自伝『目に見えぬ文字』より)
しかし、何年にもわたる共産党の地下活動の準備は、わずか数日で全く無力なものだと判明しました。政権を握ったナチスは共産党に襲いかかり、世界最強といわれた党はほとんど抵抗もできず解体されてしまったのです。できたことといえば、わずかな首脳部をソ連に亡命させたことぐらいでした。考えてみれば当然の話で、日常的にナチスと対峙して闘争している党組織がある日突然5人組なるものに改編され地下に潜ったとしても、主要メンバーなどの情報はすでに掴まれているでしょう。合法時代の地下活動の準備は、ナチスや権力に筒抜けだったのです。この例でも分かるように、一度露出した合法組織を非合法組織に組み替えて地下に潜らせることは事実上不可能です。地下組織を地上に浮上させることはあり得ても、合法組織を地下に潜らせて非合法活動を行うことは敗北が約束されています。
ただしドイツ共産党の『五人組』には大いに学ぶことができます。地下組織の基礎ともいえる組織論なのです。同様の形態の組織にアルジェリアの『民族解放戦線(FLN)』があります。1940年代から60年代にかけてアルジェリアの独立を求めフランスと戦争状態にありました。民族解放戦線(FLN)の軍事組織は、3人一組で横のつながりがなく、三人組が逮捕されたとしてもその部分の連絡を切断すれば組織本体は温存されるというものです。ドイツ共産党の『五人組』と瓜二つの組織論ですが、民族解放戦線(FLN)はフランスとの戦争に耐え抜き独立を達成しました。ゲリラにすぎない民族解放戦線(FLN)は、軍事的には苦戦したのですが、フランスに出血を強制し国際社会の支援など政治力で勝利したのです。最初から地下軍事組織として造り上げられた点が、ドイツ共産党の『五人組』と異なり壊滅をまぬがれた大きな理由のひとつでしょう。
『五人組』も『アルジェ式』も元はといえばレーニンのボルシェビキ(共産党)の組織論を下敷きにしています。そして、レーニンの組織論は、「陰謀的、秘密的、地下的活動をやめると革命活動一般をやめなければならない」という一九世紀ロシアの革命家トカチョフの理論に強い影響をうけています。テロリストのための過激派組織論は、意外と歴史のあるものなのです。身近なところでは、山口組など広域暴力団も下部組織を分立させて横の連絡を取らせないという組織形態をとっています。おそらく経験からなのでしょうが、非合法的な組織は形態が似てくるようです。
現代の日本で、民族解放戦線(FLN)のような巨大な武装反体制組織をつくり上げることは困難です。現実問題として非合法活動や武装闘争は、どうしても意識した少数者による行動になるはずです。ここからは少数者の直接行動とその組織について考えてみたいと思います。
一人一党でも良いのですが、数人でも同志がいれば飛躍的に行動範囲が広がります。それらの同志をどのように獲得するか? 最も容易なのは、同種の思想傾向を持った巨大組織に加入し分裂させることです。ハイジャック事件などで有名な日本赤軍は、もともと赤軍派のアラブ委員会でした。それが独立して日本赤軍を旗揚げしたのです。母体となった赤軍派も過激派の共産主義者同盟(共産同)から分裂した組織でした。ですから正式名称は共産主義者同盟赤軍派といいます。その共産主義者同盟も、共産党の穏健な指導に飽き足らない学生党員が乱闘騒ぎのすえに分裂した組織です。このように過激組織は、大組織の急進派が分裂して結成する傾向があります。世界最初の都市ゲリラ組織といわれるウルグアイのツパマロス民族解放運動(MLN)も同様です。ツパマロス民族解放運動(MLN)は、最初20人の強固な戦闘員から出発しました。最初から軍事組織をつくりあげることを目的としており、1年半の準備ののち政府機関への襲撃など武装闘争に決起しました。最終的に数千人のメンバーを擁し、ウルグアイは内戦状態に陥ったのです。この最初の20人の戦闘員は、社会党の軍事組織員らによって結成されたといわれています。
今までの例は路線の相違から組織が分裂したものですが、これを一歩進めて他の巨大組織に身分を隠して加入し、メンバーを獲得して一定程度組織が成長したところで計画的に分裂して独立するという「加入戦術」があります。日本では社会党の青年組織だった社青同に入り込んだ60年代のトロッキストの加入戦術が有名です。数十人程度のトロッキストが社青同に加入し、わずか数年で千人近くにまでメンバーを増やしました。いくつかの労働組合も手に入れ、最終的に社青同からの除名というかたちで独立しました。
ある程度の規模の組織を短期間に容易に作ることができる「加入戦術」ですが、大きな欠点もあります。完全な秘密組織をつくり上げることができないという点です。加入する本組織には顔から本名まで知られてしまいますし、最後の分裂の局面では内ゲバ騒ぎが起こる可能性もあります。加入する組織は一定の人数のいる公然組織なのですから、当然権力の監視やスパイが入っていることも予想できます。それどころか分裂後、非合法活動をおこなった際に本組織によって権力に売られる可能性すらあります。共産主義者同盟から赤軍派が分裂した際には、結成大会からわずか8日後に警察庁などの公安担当官による赤軍対策の特別会議が開かれ、徹底的にマークされた赤軍派はわずか2年半で壊滅してしまいました。また、共産党などは分派組織に警戒心が強く加入戦術は困難です。かつての社会党が衰退した現在、加入する組織を見つけるのは難しそうです。
それでは警察にノーマークの完全地下組織をつくることはできないでしょうか。連続企業爆破闘争を行った『東アジア反日武装戦線』がそれに近いといえそうです。東アジア反日武装戦線は、学園紛争が激しかった70年代の法政大の小さな研究会が母体となりました。鉄パイプや火炎ビンが乱れ飛ぶ大学で朝鮮革命史やアイヌ抵抗史の研究をするサークルが公安ノーマークになるのは当然です。東アジア反日武装戦線の特異性は、ゲバ棒で勝てないから鉄パイプ。それでも勝てないから爆弾というように武器をエスカレートさせたのではなく、最初から都市ゲリラとして爆弾を武器にした点です。昼はごく普通の小市民として会社勤めをして、夜は爆弾など武器の製造の精を出すという形態をとりました。東アジア反日武装戦線は、『狼』『さそり』『大地の牙』の3部隊からなり、メンバーは10数人でした。公安ノーマークのうえ、このような少人数で市民社会に潜られたら現行犯以外に逮捕は不可能に思えます。しかし本格的爆弾闘争を始めて1年足らずで東アジア反日武装戦線は一斉検挙されてしまいました。
東アジア反日武装戦線は、有名な『腹腹時計』という小冊子でその思想を明らかにしていました。アイヌ革命論などを下敷きにした反日理論です。公安警察は、まず同様の思想を持っている出版社やアナーキスト団体などを徹底的に洗いました。これだけで『容疑者』は数千人程度に絞れます。そして兄がアナーキスト系出版社に務めているメンバーと、以前アナーキスト団体に所属し逮捕歴のある2人が浮かびました。公安秘密警察の手法として、容疑者がいたとしてもすぐに逮捕したりしません。しばらく泳がせて組織の全容をつかもうとします。この2人を徹底的に尾行し、まず『狼』部隊が割れ、そこから数ヶ月に渡る尾行の結果『さそり』と『大地の牙』の組織も割れて一斉検挙されてしまいました。
実は、東アジア反日武装戦線もメンバーの一人に尾行がついているのに気がついていました。しかし、当時頻発していた内ゲバ事件の容疑だろうと誤認し、そのメンバーは創価学会に偽装入信して容疑を晴らそうとしました。この時点でこのメンバーだけでも地下に潜らせていたら、後の一斉検挙はなかっただろうと獄中出版物で自己批判しています。一旦公安秘密警察に容疑者とされた場合、警察がホシではないと絶対の確信を持つまで、徹底した監視下におかれます。創価学会に偽装入信するぐらいでは全く不十分です。その場合、メンバーを地下に潜らせるか、証拠となる品を全て処分して一旦連絡を切る以外ないでしょう。容疑者が別件逮捕され、拷問的な取り調べの結果自供させられる可能性を考えると、地下に潜らせるのが最善の策に思えます。
自分が活動をしているということを敵権力に分からせないのが最重要であることはいうまでもありません。しかし、ある程度敵に正体が知られてしまった場合、逮捕という決定的な局面にいたる前に「地下に潜る」ほかありません。「地下に潜る」とはどういうことでしょうか。実際の身分を隠し偽名で生活することに他なりません。これは特に居住地の秘匿が核心をなします。盗聴、尾行、家宅捜索の一切の前提にあるものは居住の割り出しであり、これを秘匿しきれれば活動の自由は限りなく増大します。居住地を秘匿しようとするならば、住民票の移動は行わず、電話器を取りつけないのが原則です。同時に部屋を借りるメンバーは逮捕歴等を有せず、アパート・ローラーなどにも対処できる公然性を有した人物でなければなりません。
ある特定の人物をターゲットとし、それを探し出そうとする場合、まずその人物が利用している交通手段を見つけだし、歩きの場合は駅に張り込み、自動車を使用しているならナンバーを照会し必ず外に駐車しているはずの使用車を発見することによりターゲットを補足します。相手の住所が分からない場合、結局にほかに方法はないのです。公安秘密警察は、アパート・ローラーを行うだけでなく、自動車・オートバイ・原付など居住者の交通手段のナンバーを照会し、そこに住んでいる人物を特定するという方法をとっています。地下に潜る場合、交通手段の秘匿と名義の変更も忘れてはなりません。
NTTの固定電話は、市民社会において一種の身分証明書のようなものです。万一にも本名で設置したら敵に容易に発見されてしまいます。偽名での加入であっても、受話器を置いた電話から室内の会話を聞き取るという電話をそのまま盗聴器にする機械があるので、やはり固定電話は置くべきではありません。身分を隠せるプリベイドカード方式の代金前払い携帯電話(プリケー)はどうでしょうか。プリケーの場合は、発信先などが記録されるので受信専門とし、メンバー間で連絡する場合は必ず発信する側は公衆電話を使うべきです。また、基地局などからどの地域で携帯を使っているか分かってしまうので、万一メンバーが逮捕された場合はその携帯を捨てて、アジトから姿を消すべきです。さらに、盗聴される可能性を常に考慮し、会話に符丁を使うなどすべきでしょう。
やはり地下に潜るよりも、自分が活動をしているということを敵権力に分からせないまま地上で行動する方が、制約が少なく活動もやりやすいことはいうまでもありません。それでは、いかなる時点で地下潜行を決断すべきでしょうか。最悪でも権力によりマークされ、尾行がつくようになった時点で地下に潜るべきです。東アジア反日武装戦線の例でも分かるように尾行を放置したら破滅につながります。繰り返しますが、一旦権力にマークされてしまったら、絶対にホシではないと権力が確信するまで徹底した監視下におかれます。この時点で地上での活動は不可能になったと判断するべきです。権力にマークされると、行動を把握するため必ず尾行がつきます。立ち寄り先や接触する人物をつかむ方法は尾行以外にありませんし、組織の全容を押さえるにはホシを徹底して監視するほかありません。ですからここで最も重要な点は、いかにして尾行を察知するかということです。尾行を察知できれば、マークされた部分を地下に潜らせるなどそれなりの対処ができます。しかし、警察の尾行は非常に高度化しており、漫然と警戒しているだけでは察知は困難です。たとえば、東アジア反日武装戦線の10数人のメンバーの中で、尾行を察知できたのは党派活動歴のある1人だけでした。
尾行は1人でやることはまずありません。必要に応じて5〜6人。多いときには20人という例があります。尾行要員は通常の服装のほか帽子や眼鏡などを用意し、ときどき上着や所持品を取りかえて尾行します。後方に基地となる自動車を待機させていることが多いようです。目つきの悪い中年男の刑事という固定観念に惑わされてはいけません。若い女の尾行者やテニスラケットを持った若者などもいます。人数に応じて近くで追う者、前を歩く者、道の反対側を歩く者などに分かれ、無線連絡をしながら入れかわり立ちかわり気づかれないように追尾します。
尾行を察知するための一番確実な方法は、尾行者の視野から一旦自分を隠して相手がこちらを見失うようにすることです。徒歩ならば、まず走って塀の内側などに隠れ、身を隠してそこで待ちます。尾行者は対象を見失うと必ず不審な行動をとり失尾したターゲットを探し始めます。それで尾行を察知できます。相当離れてついてくる尾行もありますので、最低3分程度は観察する必要があるでしょう。
ここまでは、組織防衛、つまり守りについてでした。攻撃行動についても考える必要があります。暴力を伴う非合法闘争は、理屈や決意だけではだめで、むしろ慣れが大きいようです。戦闘行為など非合法活動一般に関しては、様々な行動形式があり一概にはいえません。しかし、たとえば爆弾闘争やゲリラ闘争にしても、最初は何かの記念碑に小型爆弾を仕掛けるとか壁に向かって火炎ビンを投げるなど「軽い」闘争から始め、少しずつ本格的な闘争に入ってゆくべきです。
自覚した少数者による闘争にも欠点があります。現在の情勢では大衆をバックにした非合法闘争は不可能だという判断のもと少数者による地下闘争について考察しました。少数者による地下闘争では、組織に大衆的な基盤はありません。民衆はゲリラの海どころか密告者として立ち現れてきます。
昭和51年のことです。警察署に車で乗りつけ、鉄パイプ爆弾を15本投げ、7人に重軽傷を負わせたという犯人が自首し、警察を驚かせました。このような武装闘争を行った確信犯は、逃走も反権力闘争の一環として位置づけ、自首することなどまずあり得ません。指名手配されてから6年以上も逃げ切ったこの人物は、あらかじめ「自首することにしたいいわけ」という文書を準備しており、出頭した理由を述べています。
「『人民の海』など存在しない現状下、『逃走貫徹』のため、私にとって最も必要とされたことは、言葉つき、思考方法、全て並以下にすることだった…。能力を高めるのではなく低める。人格を高めるのではなく零落させる逃亡生活、もうダメだ…。」
彼は、逃走している間ほとんど支援を受けることができなかったようです。バーテン、ボーイ、皿洗い、運送助手、建築現場作業員などの仕事を転々としていました。市民密告者におびえ、消耗していったようです。こんな事にならないように、地上に出ている同志を最低1人獲得する必要があるでしょう。少数者による地下闘争には、このような不利があることをふまえておく必要があります。
最後に非合法闘争といっても、どのような思想的根拠に基づくものかを考える必要があります。ここでは主に左翼によるゲリラ闘争を例にしました。しかし、今どきサヨクは流行りません。今後非合法な地下武装闘争を行いうる潮流を挙げてみましょう。
最近流行の環境保護運動には過激派くずれや右翼が関わっていることがあります。欧米で活発な動物実験反対運動なども環境保護運動に含めることができるでしょう。この種の動物解放運動には、『動物解放戦線(ALF)』という秘密組織があります。70年代中頃にイギリスで結成されたといわれ、88年には毛皮を販売しているデパート5店に同時放火攻撃を敢行しています。アメリカでも93年のクリスマスに、デパート4店に同時放火攻撃をするなど活発に活動しています。日本にもシンパがいるようで、捕獲された猿を檻を破って逃がすという直接行動にでました。日本でも今後テロ化する可能性の強い組織といえそうです。動物解放戦線(ALF)は秘密組織ですが、提携団体であるPETAが物解放戦線(ALF)の活動を公表しています。過激派組織論からすると、PETAは動物解放戦線(ALF)の背後にある大衆団体ともいえるでしょう。ホームページもあるので興味のある人は見て下さい。
Animal Rights Resource Site
http://arrs.envirolink.org/また、18年にわたり16発の爆弾を企業や大学に送りつけたユナボマーも環境原理主義によるテロリストといえるでしょう。掘っ建て小屋に住んで隠者の暮らしをている大学の元助教授が爆弾をつくっては1年に1発の割合で企業や大学に送りつけていたのです。皮肉なことに新聞社に長文の声明を送りつけたため、その内容から犯人が特定されてしまいました。
A宗教
オウム騒動でちょっとメジャーになりましたが、宗教ほど人間を狂わせるものはありません。おおむね教祖が終末思想を唱えるようなカルトならば資格充分です。適当な宗教に加入し信者を獲得した後、分派して闘争に入りましょう。死も投獄も恐れない戦士が獲得できるはずです。
世界を震撼させているイスラムテロは、元はといえばアフガニスタンのイスラム聖戦士が中心になっています。世界各地から集まりソ連軍と戦ったイスラムの義勇兵たちなのです。戦争に勝って帰国すると、イスラムの理想とはほど遠い祖国があった、というわけでテロを始めました。イスラムのテロネットワークは戦友のきずなが基軸にあるようで、入り込むのは難しそうです。日本の右翼が空手の教官としてアフガニスタンに従軍していたようなので、そういったツテを使えば連絡が取れるかもしれません。ただし、イスラム教の信者になる必要がありそうです。
自分のことは自分で決めたい、他人に支配されたくないというのは人間の本性です。民族にもそれがいえます。それが「民族の独立」などという名目で戦争が起こる理由です。日本は首都のすぐ近くに治外法権の米軍基地があるなど世界的に見てもかなり特殊な状況にあります。従来の親米で資本の手先的な右翼ではない反米反権力の新右翼運動は、今後一定の支持を集めることができそうです。在日米軍など権力機関をターゲットにすれば、極左などを支持していた部分を取り込むことができるでしょう。ただし本気で反体制非合法の新右翼運動を行うなら既成右翼には近づくべきではありません。従来の右翼は、ヤクザが兼業している部分が多く、秘密保持の能力は、ほとんどないようです。
C無思想テロ
この他に個人で行う無思想テロがあります。リンカ−ン大統領を殺害した犯人の動機は「有名になりたい」というものでした。このタイプのテロは、地下活動を行うなどの執拗な反体制運動と異なり単発的な個人テロにならざる得ないようです。また、面白半分でコンピューターウイルスをまき散らすのも無思想テロといえなくもありません。サイバーテロは、爆弾などで建造物を物理的に破壊するより甚大な被害を与えることができます。そのわりに罪が軽いのも利点です。
最後に、反体制地下運動について考えると、組織論以上に個人の決意に行きつかざる得ません。ある種独自の世界観を持ち、そのためには死ぬことを恐れない人間。世俗的、物質的な利益に動かされない人間だけが危険な非合法活動に従事できるのです。今まで述べた過激派組織論は、言い換えれば弾圧から組織を守る「組織防衛論」ともいえるものです。反体制地下運動は、組織防衛と同時に死をも投獄をも恐れない人間を集め、また、育てる組織であることが重要なのです。「組織防衛論」と同時に「育成論」について学ぶ必要があるでしょう。死をも投獄をも恐れない人間が突然ひょっこりと現れるはずはありません。この育成については、慣れであり訓練であるとしかいいようがありません。さまざまな訓練方法が考案され実施されています。おおむね軍隊の訓練を参考にして工夫すればよいでしょう。
もし、死をも投獄をも恐れない人間を一人でも獲得できるなら、あるいは自分自身がそのような人間に飛躍できるなら、相当のことができます。テロリストのための過激派組織論とは、そういった中核をいかに守り活動させるかが最大のポイントなのです。