『
赤軍の戦略戦術』前書き北のりゆき
この文は、
1995年に冥土出版が発行した冊子『赤軍の戦略戦術』の前書きです。この冊子は遊撃インターネットでも通販をしています。 遊撃インターネットに戻るはじめに
本書の原版はは、1938年にドイツ国防軍参謀本部が発行した『赤軍の戦争指導に関する戦略戦術の原則』を日本の陸軍大学校将校集会所が1939年11月に翻訳発行したものである。ちなみに独ソ戦が開始されたのは1941年6月21日未明であった。巻末に『赤軍の編成及び装備の概要』という付録が10ページほどついていたが、紙面の関係で割愛した。目次は巻末に入れた。
ソビエト軍(赤軍)を代表とする社会主義の軍隊は、その根源をフランス革命とナポレオン戦争に求めることができる。ソビエト軍の有名な政治委員制度も、フランス革命時の派遣委員がモデルになったようだ。社会主義の軍隊とは、徴兵制に支えられた官僚制国民軍であり、その戦略戦術の最大の特徴は犠牲をかえりみない間断なき兵力の投入であるとされる。
本書を読む限り、原版が発行された当時の赤軍の戦略戦術は充分に近代軍の名に恥じないものがある。特に戦車による機動戦の重視。航空機など各兵科を立体的重層的に使用した戦術などは注目に値しよう。この教科書通りに戦えば、独ソ戦初期にあれほどの大敗北を喫することはなかったのではないだろうか。1937年のスターリンによる大粛清により、赤軍の近代化を推し進めた参謀総長トハチェフスキー元師ら赤軍将校団が壊滅させられたため、この教科書通りに戦えなかったのであろう。
本書の内容が、『電撃戦』を行ったドイツ軍の戦略戦術に酷似していると感じた人もいるかもしれない。それもそのはずで、第一次世界大戦後に孤立していた独ソは条約を結び、ソ連が場所を提供、ドイツが軍事技術を提供したものであった。
このように世界最新の戦略戦術に触れることができ、それだけではなく実際にノモンハンでソ連軍と戦火を交えた日本軍がなぜあのように稚拙な戦争指導しかできなかったのか大いに疑問に思う。
今後もソ連軍関係の資料を発行する予定である。期待されたい。
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