『50年代共産党非合法軍事文書集成4』前書き

北のりゆき

この文は、91年12月に冥土出版が発行した冊子『50年代共産党非合法軍事文書集成4』の前書きです。この冊子は遊撃インターネットでも通販をしています。

遊撃インターネットに戻る


 はじめに

 本書は、1952年当時、非合法下に軍事路線をとった日本共産党がひそかに配布した地下文書の復刻である。本巻では主に、VOL.1で採録しきれなかった軍事と武器関係のものを集めた。しかし、残念ながらオリジナルは入手できず、検察庁の内部文書(部外秘)、公安調査庁が偽装して設立した通信社が発行した出版物、70年闘争当時のアナーキスト系ミニコミからそれぞれ再録したことをお断りしておく。どれも限定出版で現在は入手が不可能なものであるし、でき得る限り内容を確認したうちでは、改ざんもないようである。なお、50年代の共産党の軍事路線についての詳細は『50年代共産党非合法軍事文書集成1』を参照されたい。

 危険文書刊行委員会は、今後様々な危険文書を精力的に発掘して行く予定である。期待されたい。

解説

  1.理科学辞典

 検察庁の内部文書に転載されていたものである。左翼のあいだでも従来その存在はまったく知られていなかった。それもそのはずで、このような妙な絵を簡略な説明だけでは実際に武器を製造することは困難であろう。それどころか危険ですらある。太平洋戦争が終結してわずか5年後に配布された武器製造書が、この程度の代物では、日本の武器教本の多くは権力側が流した謀略文書であるという説が現れるのもうなずけよう。

  2.料理献立表

 この程度の知識は、少し専門書をひもとけばすぐに得ることができる。武器闘争を行う非合法党が極秘に配布するとしては、変なものである。だいいち爆薬の組成を示しただけでは、何の役にも立たないだろう。ただし「3.放火謀略の実例」は、多くの示唆に富んでいるように思える。それにしても「放火謀略」という言葉は、左翼臭がなく、むしろ権力機関の臭いがするように思えるが、いかがだろうか。

  3.男女一代開運の秘訣

 これは日本共産党の文書ではなく、在日朝鮮人の非合法軍事団体である祖国防衛全国委員会の秘密文書である。現在の朝鮮総連に近いものと思われるが、その詳細は不明である。ただし、日共の指導下にあって活動していたらしいということが確認されているので、本書に収録した。同時期の日共の文書よりも、より武装闘争の戦術が具体的に述べられているが、上部からの指令によって非合法闘争を行った共産党と異なり、下層の朝鮮人が下から積み上げる形で闘争を行ったゆえであろう。非合法下の共産党の闘いは、被差別部落民や在日朝鮮人が最も尖鋭に闘ったということが知られている。当時は、治安警察官の飼い犬が毒殺されたり警官自身が背後から銃撃された事件や、共産党員が権力の手で非合法に拉致され行方不明になった例など、相当激しく武装闘争が闘われていた。なお、日本共産党と朝鮮総連は、現在かなりの敵対関係にあることを付記しておく。

  4.祖国防衛全国委員会指令 在日朝鮮人民の祖国防衛闘争を強力に発展させるために祖国防衛隊の組織と行動を拡大強化せよ

 本文は、「1.当面の情勢と我々の任務」と「2.祖防隊の組織と戦術」の2部構成となっていたが、ページの関係で「2」のみを掲載した。「1」は、正義の北朝鮮・中国・ソ連対、侵略者米帝・カイライ日本といった、今の資料を手元に置いてみると間違っているとしかいいようのないテーゼで、あまりまともに検討するにも当たらないような代物である。面白くもない理論よりも、武装闘争の具体的な戦術に関心のある我々としては「2」のみで十分であろうと考え割愛した。

  5.軍事ノート

 1号から10号までを収録した。武装闘争についての当時の覚え書きに近いものだ。一部に伏字が使われているところを見ると、組織がある程度露出したところにも配布したようだ。おそらく細胞レベルの軍事委員会にまで配布されたのであろう。極めて秘密を要する活動であるだけに孤立し一揆主義に走りがちの軍事面での意思疎通を、この様な文書で図ったと思われる。純粋な軍事目的の貫徹のために記されたプロレタリア革命を目指すのではなく、アメリカに占領され従属させられた日本の民族自決と広範囲の民主勢力による半封建体制からの民主革命という2本の柱からなる「民族民主革命」を目指していた。以上の点を念頭において読まれれば、その理解が一層容易となろう。

通信販売ページ(カートあり)
通信販売ページ(カートなしメール注文)


 遊撃インターネットに戻る