はじめに

 本書は日本で発行された中では最も危険な文書として有名な 腹腹時計VOL.1 である。1974年3月に東アジア反日武装戦線“狼”により発行された。
 腹腹時計の最も危険でありかつユニークな点は、単に爆弾の作り方を述べたに止まらず、いわゆる反日理論をもって爆弾闘争の正しさを主張し、爆弾の仕掛け方や都市に隠れたゲリラ戦の方法まで詳細に述べており、そればかりか地下出版したグループが実際に連続爆弾闘争を行ない多くの死者や負傷者を出している点である。このように内容的にあまりにも危険なため、爆弾製造法の第3篇「技術」と爆弾の仕掛け方の第2章「展開」は省略を余儀なくされた。しかしその上でもなお多くの示唆に富み、資料的価値があると考えここに公開することとした。


はら      はら      とけい



  腹 時 計



  都市ゲリラ兵士の読本 VOL.1



      東アジア反日武装戦線“狼”





目 次

はじめに・・・・・・1

第1章 武装闘争=都市ゲリラ戦の開始に向けて・・・・5

 第1篇 個人的準備=ゲリラ兵士としての配慮・・・・5

 第2篇 武装=都市ゲリラ組織の基本形態・・・・・10

 第3篇 技術・・・・・・14

   1 火薬・・・・・・14

   2 起爆装置・・・・17

第2章 展開・・・・・・27

 第1篇 爆破・・・・・・28

 第2篇 作戦の一般的原則・・・・・・33





    はじめに

 今日、日帝本国に於いて、日帝を打倒せんと既に戦闘を開始しつつある武

闘派の同志諸君と、戦闘の開始を決意しつつある潜在的同志諸君に対して、

東アジア反日武装戦線“狼”は「兵士読本 Vol.1」を送る。これは、武闘派

同志諸君と共に東アジア反日武装戦線へ合流し、その強化をめざす為のもの

である。

 さて、「兵士読本 Vol.1」は、東アジア反日武装戦線“狼”がこれまで自

分たちの手で研究、開発、実験し、爆弾闘争を闘った経験を今の段階で総括

するものであり、今後更に深化すべきものをその内容としている。即ち、日

帝本国に於いて武装闘争=都市ゲリラ戦を開始するにあたって最低限守らね

ばならないこと、最低限獲得し、習熟しなければならない諸技術、極く初歩

の戦闘に於ける確認すべき原則などを今迄の“狼”の経験より提出し、同志

諸君に点検、検討されるべきものである。

 日帝本国に於いて、連合赤軍の敗北に至る多くの武闘組織の全員逮捕、武

装解除という事態と、爆弾すら作り得ず使用できない観念「武闘」派の存在、

爆発しない=武器足り得ない「爆弾」作りの存在。それはわれわれに、武装

闘争=都市ゲリラ戦の基本原則、初歩的技術の獲得を再度確認、実践するこ

とを要求している。即ち、それは、日帝本国に於ける非合法、地下活動の問

題であり、思想性の点検の問題であり、爆弾の行使などをはじめとする戦略

的、戦術的な把え返しの問題である。

 さて、「兵士読本 Vol.1」は前述の如く“狼”の経験の現時点での総括で

ある。過去われわれはいくつかの非合法関係文書、爆弾テキストを共有し、

大いに参考にしてきた。「バラの歌」、「ゲリラ戦教程」、「栄養分析表」、

「新しいビタミン療法」など。しかしこれらのテキストは、われわれが今日

実際にそのまま活用するには、いくつかの問題をはらんでいるものでもある。

先ず一つには、それらが発行され、それらの発行を促進した時代、状況と、

われわれが生きている今とでは大きな違いがあること。従って、時代、状況

の違いをどの様に克服して読み取り、実際の力に転化していくのかという課

題があること。次に、爆弾=武器は一つ間違うと、製造者、使用者とも危険

にさらしてしまうものであるにもかかわらず、それらのテキストを復刻、翻

訳紹介した人たちがどれ程確信を持って(つまり実験などを繰り替して)い

たのか疑問だということである。

 “狼”は、あくまでもわれわれの現状より問題を提示したいと思う。そし

て少なくとも爆弾の製造に関しては、確信ををもって提示することができる。

 “狼”は、現在いくつかの爆弾「事件」によって治安警察から「追求」さ

れているが、致命的な捜査資料は残していない。そして次の「事件」の準備

を着々と進めている。それを今迄保証してきたのが、「兵士読本 Vol.1」の

内容の実践的適用であった。同志諸君の中で大いに検討され、これを踏み台

として更に飛躍されんことを期待する。爆弾の製造とそれの行使に関する基

本準備は万全となるはずである。

 なお“狼”としても、基本的準備、基本原則を踏まえての更なる飛躍、高

度なテクニックなどを、これ以後連続的に送る「兵士読本 Vol.2」、「兵士

読本 Vol.3」によって展開、提示するつもりである。



 さて、以下に東アジア反日武装戦線“狼”はいくつかの問題を提起し、日

帝打倒を志す同志諸君と、その確認を共有したいと思う。

1  日帝は、36年間に及ぶ朝鮮の侵略、植民地支配を始めとして、台湾、

  中国大陸、東南アジア等も侵略、支配し、「国内」植民地として、アイ

  ヌ・モシリ、沖縄を同化、吸収してきた。われわれはその日本帝国主義

  者の子孫であり、敗戦後開始された日帝の新植民地主義侵略、支配を、

  許容、黙認し、旧日本帝国主義者の官僚群、資本家共を再び生き返らせ

  た帝国主義本国人である。これは厳然たる事実である、すべての問題は

  この認識より始めなくてはならない。



2  日帝は、その「繁栄と成長」の主要な源泉を、植民地人民の血と累々

  たる屍の上に求め、更なる収奪と犠牲を強制している。そうであるが故

  に、帝国主義本国人であるわれわれは「平和で安全で豊かな小市民生活」

  を保証されているのだ。

   日帝本国に於ける労働者の「闘い」=賃上げ、待遇改善要求などは、

  植民地人民からの更なる収奪、犠牲を要求し、日帝を強化、補足する反

  革命労働運動である。

   海外技術協力とか称されて出向く「経済的、技術的、文化的」派遣員

  も、妓生を買いに韓国へ「旅行」する観光客も、すべて第一級の日帝侵

  略者である。

   日帝本国の労働者、市民は植民地人民と日常不断に敵対する帝国主義

  者、侵略者である。



3  日帝の手足となって無自覚に侵略に荷担する日帝労働者が、自らの帝

  国主義的、反革命的、小市民的利害と生活を破壊、解体することなしに、

  「日本プロレタリアートの階級的独裁」とか「暴力革命」とかを例えど

  れ程唱えても、それは全くのペテンである。自らの生活を揺ぎない前提

  として把え、自らの利害を更に追求するための「革命」などは、全くの

  帝国主義的反革命である。一度、植民地に於いて、反日帝闘争が、日帝 

  資産の没収と日帝侵略者への攻撃を開始すると、日帝労働者は、日帝の

  利益擁護=自らの小市民生活の安定、の隊列を組織することになる。



4  日帝本国に於いて唯一根底的に闘っているのは、流民=日雇労働者で

  ある。彼らは、完全に使い捨て、消耗品として強制され、機能付けられ

  ている。安価で、使い捨て可能な、何時でも犠牲にできる労働者として

  強制され、生活のあらゆる分野で徹底的なピンハネを強いられている。

  そうであるが故に、それを見抜いた流民=日雇労働者の闘いは、釜ヶ崎

  山谷、寿町に見られる如く、日常不断であり、妥協がない闘いであり、

  小市民労働者のそれとは真向から対決している。



5  日帝の侵略、植民地支配の野望に対して、多様な形態で反日帝闘争が

  組織されている。タイに於いては「日貨排斥運動」、「日本商品不買運

  動」という反日帝の闘いが導火戦となり、タノム反革命軍事独裁政権を

  打倒した。韓国に於いても、学生を中心に反日帝、反朴の闘いが死を賭

  して闘われている。しかし、過去一切の歴史がそうであった様に、また

  もやわれわれは洞ヶ峠を決めこんでしまっている。ベトナム革命戦争の

  挫折とわれわれとの関係においても又然りである。日帝本国中枢に於け

  るベトナム革命戦争の展開ではなくて、「ベトナムに平和を」と叫んで

  しまう。米帝の反革命基地を黙認し、日帝のベトナム特需でわれわれも

  私腹を肥やしたのである。支援だとか連帯だとかを叫ぶばかりで、日帝

  本国中枢に於ける闘いを徹底的にさぼったのである。ベトナム革命戦争

  の挫折によって、批判されるべきは先ずわれわれ自身である。



6  われわれに課せられているのは、日帝を打倒する闘いを開始すること

  である。法的にも、市民社会からも許容される「闘い」ではなくして、

  法と市民社会からはみ出す闘い=非合法の闘い、を武装闘争として実体

  化することである。自らの逃避口=安全弁を残すことなく、“身体をは

  って自らの反革命におとしまえをつける”ことである。反日帝武装闘争

  の攻撃的展開こそが、日帝本国人の唯一の緊急任務である。過日、地下

  潜行中の某人が公表した文章に見られる待機主義は否定しなくてはなら

  ない。



7  われわれは、アイヌ・モシリ、沖縄、朝鮮、台湾等を侵略、植民地化

  し、植民地人民の英雄的反日帝闘争を圧殺し続けてきた日帝の反革命侵

  略、植民史を「過去」のものとして清算する傾向に断固反対し、それを

  粉砕しなければならない。日帝の反革命は今もなお永々と続く現代史そ

  のものである。そして、われわれは植民地人民の反日帝革命史を復権し

  なくてはならない。





 われわれは、アイヌ人民(彼らがアイヌとして闘いを組織する時、日帝治

安警察は、在日朝鮮人に対すると同様、外事課がその捜査を担当している。)

沖縄人民、朝鮮人民、台湾人民の反日帝闘争に呼応し、彼らの闘いと合流す

るべく、反日帝の武装闘争を執ように闘う“狼”である。

 われわれは、新旧帝国主義者=軍国主義者、植民地主義者、帝国主義イデ

オローグ、同化主義者を抹殺し、新旧帝国主義、植民地主義企業への攻撃、

財産の没収などを主要な任務とした“狼”である。

 われわれは、東アジア反日武装戦線に志願し、その一翼を担う“狼”であ

る。





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  第一章

  武装闘争=都市ゲリラ戦の

            開始に向けて

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 武装闘争を、大衆運動の自然的延長線上に構えてはならない。これは鉄則

である。日帝本国に於ける、今迄の武闘派のあらゆる敗北は、これの無自覚

ないしは軽視であったと断言できる。武装闘争=都市ゲリラ戦は、自ら決意、

志願し、自ら準備を始めることから出発する。



 第一編

    個人的準備=ゲリラ兵士としての配慮



 ゲリラ兵士は、あらゆる面で肥大化した都市機能、雑踏を最大限に活用し、

隠れみのとしなくてはならない。又、最大限の注意と配慮を講じなくてはな

らない。従って、ゲリラ兵士の出発の第一は、その条件を整えることにある。



1  左翼活動家であると思い込んでいる自分、又は他人よりそう思われて

  いる自分を、生活形態などを変えていくことに依って消していくこと。

  

  @ 居住地に於いて

    ◎ 居住地に於いて、極端な秘密主義、閉鎖主義は、かえって墓穴

     を掘る結果となる。        

    ◎ 表面上は、極く普通の生活人であることに徹すること。(そう

         思わせることだ。)

    ◎ 生活時間を、表面上市民社会の時限内に復すること。(特に、

     時間の転倒には気を付けなくてはならない。)

    ◎ 近所付き合いは、浅く、狭くが原則である。最低限、隣人との

     挨拶は不可欠である。

    ◎ 居住処としてのアパートや下宿等に、大勢の人間の出入りがや

     たらに目立ち、深夜、明け方に及ぶヒソヒソ話が続くことは止め

     なくてはならない。

    ◎ 居室に生活用品が全く無く、ポスター、ステッカー等が散乱、

     貼付してある状態は、絶対に止めなくてはならないし、形は整え

     なくてはならない。このことは、引っ越しの際など荷物が無いと

     大変目立つものだし、その事に依って人目を避け、コソコソと動

     き回る結果ともなる。

    ◎ 居室は常に整理し、清潔を保つこと。名簿、住所録、手紙、手

     帳などは常日ごろ整理し抜き、必要に応じて暗号化すること。不

     必要なもの、在ることのまずいものは他に移すか、廃棄、焼却す

     ること。



  A 職場に於いて

    ◎ 職場の選択の際、何故そこを選ぶのか明確にしておくこと。

    ◎ 既に職場に居る場合は、同じく、何故現在この職場に居るのか

     を常に意識的にしておくこと。メンバーをオルグするためにか、

     その企業を内部から解体するためにか、ある特殊な技能、物資を

     得るためにか、単に生活費を稼ぎ出すためにか、それらのいずれ

     にせよはっきりさせること。無節操にあれもこれもと手を出すべ

     きではない。

    ◎ 別に明確な目的を持たずに現在の職場に就いている場合、組合

     などで極左的に、原則的にゴリ押ししないこと。経営者はすぐに

     タレ込みをする。

    ◎ 居住地、職場とも共通なことは、極端な秘密主義、閉鎖主義に

     陥らぬことと、左翼的粋がりを一切捨て去る、ということである。

     長髪で、ヒゲをたくわえ、米軍放出の戦闘服などを着た「武闘派」

     がいるが、それは偽物であり、危険極まりない男であると判断す

     べきである。



2  ゲリラ兵士は、市民社会に自らの正体を知られてはならない。それは

  鉄則である。ところが、武闘派の諸君も、こと人間関係については全く

  無節操であり、下手である。今迄の武闘派の敗北の大半は、人間関係の

  失敗の結果といっても過言ではあるまい。



  @ 親、子、兄弟、妻、夫、友人などとの関係について

    ◎ 家族との関係をことさらに絶つ必要はない。ベタベタする必要

     は全くないが、ある日突然連絡を絶つことは、余程の事情がない

     限り止めた方がいい。突然関係を絶つことに依って、かえって身

     動きのとれなくなる場合も起こり得る。

    ◎ 家族を抱き込むか、関係を絶つかという二者択一はする必要が

     ない。「反戦・反安保」で共闘することとは根本的に異なるのだ

     から、全面的な交通を保つことはできないのだ。われわれにとっ

     ての全面的交通とは同志関係のことである。従って、極く普通の

     家族関係があればいいのだ。

    ◎ 市民社会での「友人」についても同様である。関係を絶つのが

     まずいのであれば、それをことさらにする必要はないが、われわ

     れにしてみれば、その関係の必然性もまた全くないのである。関

     係があるといっても、家族同様、自分の真の姿を見せてはならず、

     それには全くタッチしない関係でなくてはならない。その友人が

     将来同志として共に闘う友人であるのか、何故に現在関係を有し

     ているのか、厳密に検討すべきである。



  A 合法的左翼との関係について

    ◎ 職場に於いて、学校に於いて、居住地に於いて、彼らとの関係

     は原則的に厳禁である。彼らの圧倒的大部分は、徹底的に質が悪

     い。口も尻も軽すぎて、全く信用できぬ代表的部分である。

    ◎ 彼らとの関係の中で、組織の拡大、強化などを考えるのは全く

     の幻想であるし、それを強行すれば、組織の解体にすらつながる

     ことになる。(ゲリラ兵士はオルグされて成長するものではない。)



  B マスコミ・トップ屋との関係について

    ◎ マスコミ・トップ屋との関係は、一切合財止めるべきである。

     「赤衛軍」とかのドジ踏みの例を引用するまでもないであろう。

    ◎ マスコミは商品として売り出さんがために、闘いの本質を歪曲

     し、隠蔽し、自らの論理で粉飾して流通機構にのせる。(“狼”も

     コッテリと小ブル論理で粉飾された記事を書かれた経験がある。)

     それを意識的に日々遂行しているマスコミ関係者、評論家とか呼

     ばれる連中は、例えどれ程左翼的ポーズをとろうとも、それはポ

     ーズに過ぎない。奴らとの関係を持ってはならない。サツに売ら

     れて、奴らにしこたま稼がせる前に気付くことだ。



3 更にいくつかの基本的注意



    ◎ ゲリラ兵士は酒を飲まぬ。酒は平常心を失わせ、羽目をはずし、

     油断を生じ易くする。これは、ゲリラ兵士にとっての最大の敵で

     ある。特に、何人か集っての酒盛りは厳禁である。それは、合法

     左翼の専売特許であるべきだ。

    ◎ 喫茶店を使用するには、充分の配慮が要求される。特定の店を

     使用せぬこと。顔を覚えられてしまう。よく、団体で長時間、左

     翼系出版物を裸で携行し、ノートを広げて、学生活動家得意の用

     語を駆使して、口角泡を飛ばしているのに出っくわすが、あれは

     みっともないし、絶対にまずいので、われわれはそれをタブーと

     しなくてはならない。総じて、喫茶点の使用は注意すべきである。

     私服がゴロゴロしているし、過去、それに依って敗北した例も沢

     山あるのだから。

    ◎ 居室を製造所(工場)として使用する場合、深夜までキリキリ、

     ガリガリ隣り近所に聞こえる様な作業をしない様注意すること。

    ◎ 健康の維持は、ゲリラ兵士個々人の任務であり、責任を持たね

     ばならない。運動選手のような身体である必要は全くないが、闘

     いに要求される健康状態を常に保っていなければならない。肉体

     的消耗は、精神をも消耗させ、活動の停滞につながるものだ。日

     常的な点検と鍛練が必要である。



 ゲリラ兵士は、同志以外との交通関係は極力少くし、市民社会に於いても

うまく立ち回って、自分の真の姿を見せないことが鉄則である。先にも触れ

たが、親、兄弟、妻、夫、子供、友人との関係に於いても、困難な問題を抱

えるであろうが、原則は原則である。同志以外の人間に対する警戒と配慮は、

例え肉親であっても同様である。重大な決意を必要とするかもしれないが、

そこでもたついていてはゲリラ兵士にはなりきれない。

 われわれは、自分の姿勢、生活形態、目的意志を点検、確認し、交通関係

を整理し、自分の生活をすべて武装闘争に向けることに依って、最初の準備

をし終えることになる。





 第二篇

    武装=都市ゲリラ組織の基本形態



 武装闘争を闘い抜くゲリラ兵士は、極めて詳細な専門的知識、経験、訓練

を要求される。即ち、個々のゲリラ兵士の職人的熟練と正確さ、芸術家的情

熱と創意工夫が要求されているのである。その個々の力を結合し、更に促進

させるのが組織でなければならない。つまり、武装=都市ゲリラ組織は、武

装闘争を有効に、成功裡に展開するために、最大限の機能性を発揮するもの

でなければならない。常に攻撃性を主要に考えなくてはならないが、治安警

察などの追求をかいくぐる配慮もまた、要求される。



1 任務の分担

  ◎ それぞれの組織の事情によって、多様なやり方があるとは思うが、

   重要ないくつかの仕事については、その任務を分担すること。

   (“狼”の場合は、武器、爆薬の製造・保管・財政・情報収集・通信

   連絡等に任務を分担している。)

    一個人に集中的に過重な負担をかけてはならない。個々がその任務

   を受け持つことに依って、専門的で充分な力をつけることができるし、

   相互の任務を活発に、円滑に、計画的に進めることができる。そして、

   任務を分担することに依って、例えば一人が逮捕、戦死したとしても、

   組織全体に波及することはないし、ダメージを最小限に食い止めるこ

   とができる。(その際の、任務の引継ぎに関しては、訓練の項で述べ

   る。)

  ◎ 任務の分担に関連して、アジト(集会、会議場、連絡ポイント)・

   武器庫・工場・前進(出撃)拠点は、絶対に一致してはならない。一

   致させていると、一挙に解体される危険を生じ易い。連合赤軍(彼ら

   は山の中ではあったが)の敗北をみるまでもないであろう。しかし、

   未だそれだけの準備と隊形を整えないでいる場合には、武器庫と工場

   とか、前進拠点を仮のアジトとするとかで、うまく組み合わせるとよ

   い。しかし、武器庫や工場をアジトと一致させてはならない。



2 通信、連絡、符牒などの取り決め

  ◎ ゲリラ兵士一人一人は、組織名を持つべきである。日常、市民社会

   に於いて、われわれは本名と法的手続きの下で生活する訳であるが、

   組織内部では一切、組織名で呼ばれるべきである。しかし、市民社会

   に於いて、相互に訪問したり、電話連絡したりする場合は、組織名と

   本名とを厳密に使い分けねばならない。それは、相当の時間と訓練を

   積まなくてはならないが、それができていないと、戦闘時に往々にし

   てヘマをやってしまう。戦闘時に本名を呼び合い、それが敵に知れた

   場合、それは裏切りと同等の罪に値する。

  ◎ 内部通信、連絡は、すべて符牒を使用すべきである。電話、手紙な

   どで、最悪のアクシデントを想定せずに、だれにでもわかるやり方で

   連絡し合うのは絶対にまずい。従って、あらかじめ組織内部で符牒を

   設定、確認し合う必要がある。



3 武器、弾薬、闘争資金の獲得、捻出

  ◎ 武器弾薬、闘争資金は、自らで製造、獲得するのが鉄則である。

   “狼”の場合は、特に思想的にこの点を最重要視している。断じて他

   人に依拠してはならない。これらを自ら製造、獲得、捻出するのが、

   われわれの武闘の開始に他ならないのだ。なお、闘争資金の問題であ

   るが、“狼”は強制収奪を否定しない。だが、やり方と狙う対象は、

   充分検討した上でなければならないと考えている。以前、どこかのグ

   ループがやっていた辻強盗、ひったくりに関しては否定せざるを得な

   い。



4 訓練と兵士の補充

  ◎ 訓練は、具体的な日程にのぼった闘争を照準に入れて行うだけでは

   なくて、定期的にも行うべきである。戦闘に必要な全ゆる力を獲得す

   るものであり、日常活動の成果を一つ一つ点検する役目をも持つ。即

   ち、訓練の中で、個々の任務の成果を全体にゆきわたらせ、その任務

   を、火急の際には他の兵士に引き継ぐ効果を持つものである。訓練の

   過小評価は、敗北につながる。

    “狼”は、あらゆる機会を活用して訓練を行なっている。だが、そ

   れを行なう過程で、場所を探すのに大変苦労してきた。従って、訓練

   場所の選定も難しい問題である。大菩薩峠の敗北を想い起こさなくは

   ならない。

  ◎ ゲリラ組織は、兵士の数の多少にこだわる必要はない。小人数でも

   計画と訓練がゆきとどいていれば、大胆に鋭く闘いきれる。多人数必

   ずしもその組織の力の反映ではないのである。従って「水増し」は絶

   対に避けなくてはならない。これも敗北につながるものである。

  ◎ われわれは人間関係を限定し、合法的左翼との関係を絶っている。

   それでもなお、われわれは新たなゲリラ兵士を迎え入れることができ

   る。その可能性は、われわれの武装闘争に依って生まれる。

  ◎ 新規のゲリラ兵士との実際の結合は、時間をかけて、相互に点検し

   合い、訓練を終了した後勝ち取るべきである。デモへの呼びかけをす

   るのとは訳が違うのだから、慎重に構えるべきである。そして新規の

   ゲリラ兵士を鍛える最良の方法は、討論でも、研究・認識作業でもな

   く、もっぱら武装闘争を共に闘うことである。そしてその闘いを組織

   し、勝ち抜くことに依って、新規兵士と古参兵士のギャップを埋め、

   相互の信頼関係を強固にすることができる。





 以上で、武装=都市ゲリラ組織の基本敵形態や維持に関して、大体の基本

線を確認できたと考える。主要に見てきたものは、大きな組織についてとい

うよりは、小さな組織についてであった。大きな組織に関していえば、それ

は、それぞれ独立した小隊とか班とかに依って形成されるべきであり、初め

からピラミッド方式とかアルジエ方式とかで頭を悩ます必要はないのだ。都

市ゲリラ戦に於いて有効なのは、小数の兵士に依る独立した小隊や班の動き

である。班と班、小隊と小隊との関係・連絡は、個々の兵士の間に於ける関

係・連絡と同様のものを原則とする。

 “狼”は、政治綱領を決めて、それを前提に押したてて結集した組織では

ない。ヘルメットと鉄パイプで「武装」し、政策阻止闘争を「闘い」、状況

を変えて革命に至らしめようとしたわれわれの思考パターンを簡単に蹴散ら

し、思考を決定的に逆転させたのは、日帝の反革命史と、アイヌ・沖縄・朝

鮮・台湾人民の反日帝革命史の確認であった。“狼”は、日本人革命者とし

て何よりも先ず最初に闘い抜かなくてはならないのは、日帝の歴史、日帝の

構造総体に対して“おとしまえをつける”ことであると確認している。

 従って、武装に関しても、石つぶてから角材、角材よりは鉄パイプと火炎

ビン、それでもまだ機動隊には勝てないから手投げ爆弾というような思考か

ら取り組んだのではない。唯一、一人一人の思想性が、武装を追求した結果

なのである。そうであるが故に、“狼”は一人一人の思想性にこそ依拠した

武装組織であり、一人一人の思想性のみが、結束と、闘いの更なる深化を保

証しているのである。

 “狼”は既に東アジア反日武装戦線に志願し、その一翼を担っている。反

日武装闘争を闘おうと決意している、小隊から大きな軍隊までを含めてすべ

ての武闘派に、“狼”と共に東アジア反日武装戦線に合流し、共に闘うこと

を呼びかけたいと思う。



        第3篇「技術」および第2章「展開」は省略した。(編)





◎本書の持ち歩き、および保管には十分注意すること。

◎本書の増し刷り、海賊版をつくる場合には、ミスプリントの

 ないように十分注意すること。



続編予告



  ◎ 最近の国内の爆弾闘争の概括

  ◎ 電気部品、工具、機械、材料その他の知識

  ◎ モデルガンの改造と手製実包の製造

  ◎ 火薬庫の盗難防止装置について

  ◎ 塩素酸カリウムの製造

  ◎ トリック爆弾の製造(小包、手紙爆弾など)

  ◎ “狼”式手投爆弾の製造



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兵士読本  Vol.1

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1974年3月1日  発行

    頒価  100円



編集 東アジア反日武装戦線“狼”兵士読本編纂委員会

発行 東アジア反日武装戦線“狼”情報部情宣局

印刷 東アジア反日武装戦線“狼”情報部印刷局

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