ヒトラー総統演説集Vol.1
政権獲得演説ジャケット
53分 2500円−−ゲッベルス『勝利の日記』より−−
2月10日
午後六時、シュポルツパラストはもう満員になっている。市内の広場にはみな人垣ができて、総統の演説を待っている。全国で二〇〇〇万から三〇〇〇万の人間が、この偉大な出来事をせめて耳からだけでも知ろうとラウドスピーカーの前に腰をおろしている。
ぼくはまだかぜが抜けないが、足をひきずるようにして出かける。演壇からまずジャーナリズムに教訓をたれ、それから放送局を通じてシュポルツパラストがどういう意味をもつ場所であるかを二〇分間はなす。思っていたよりもうまくいく。だが今まで生きた人間の前で話し、聴衆の雰囲気で精神をたかめ、かれらの顔から演説の効果を読みとることになれていたのが、いきなり生命のないマイクの前に立たされてみると、じつに妙な感じがする。
総統は熱狂的な喝采の嵐でむかえられる。総統はすばらしい演説をおこない、マルキシズムにたいする激しい闘争を宜言する。最後に彼は信じられないような感情のたかぶりを見せ、「アーメン」という言葉で演説を切る。これがきわめて自然に響き、聴いていた者はみな心の底からゆりうごかされる。これまでのものとは比較にならぬほど自信と気迫にみち、新鮮で偉大な演説だった。
この演説は全国に感動の嵐をまきおこした。国民は戦わずしてぼくらのものとなるだろう。シュポルツパラストの群衆は陶酔し、正気をうしなっている。ようやく今、ドイツ革命ははじまりかけたのだ。
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