ところがジョミーは、ブルーを慕ってくれたのだった。拠り所としてくれたのだった。力ある次代のソルジャーを迎えたミュウにとって、力衰えた先代のソルジャーなど厄介者でしかないのに、ジョミーはどこまでもブルーに優しく接してくれたのだ。
恥ずかしかった。どうして彼を利用することばかり考えていたのだろうかと、後悔した。
ブルーがジョミーを後継者として見出したのは、その類まれな能力によるところが大きい。しかし実際に接してみると、彼の資質がそれだけにとどまらないのだと分かった。他者を慮るこころもちに、柔軟な思考。そういった事々が、ブルーには為しえなかったミュウの未来の安定を、確たるものにしてくれると思われた。
そんなジョミーに、どうしてブルーが惹かれずにいられよう。すでに忘れかけていた気持ちを、思い出させてくれたのはジョミーだった。胸が締めつけられるような、それでいてあたたかいものでいっぱいになるような、不可思議な心地。苦しくて、切なくて、でも嬉しくて。後は朽ちていくばかりだと思っていた日々に、まるで明るい光を投げかけられたようだった。
青の間には、相変わらず重苦しい沈黙が満ちていた。互いの呼気さえ聞き取れそうな静寂は、僅かな身動ぎでさえ躊躇うほどである。同じように感じているのか、床に落ちているジョミーも、先刻から微動だにしていない。両手を身体の後ろについて、両足を前に投げ出している。くしゃくしゃになった真紅のマントが、彼の後ろでわだかまっている。乱れた髪もそのままに、ジョミーはただぼんやりとブルーを見上げていた。
ブルーのESPが、彼を寝台の上から弾き飛ばしたせいである。
とおいあなた 〜本文3P〜
足音に気がついたのか、気配を察したのか。彼は目を落としていた分厚い本から、ふと視線を上げた。流れるような仕草で頭を巡らせると、その端整な面にふんわりとした笑みを浮かべる。ちょっとだけ首を傾けて、形のよい唇から吐息をもらしたようだった。
「ジョミー、ずいぶん早かったね」
「はっ……はいっ……駆けてっ……来ましたからっ……」
中庭の、木陰のベンチに腰かけたブルーの傍らに辿り着いたジョミーは、荒い呼気の隙間からなんとか言葉を紡いだ。一刻も早く彼に会いたくて、あんまり彼を待たせたくなくて、ジョミーはずいぶんと距離のある部室棟から、ここまで一息も入れずに駆けてきたのである。
だがいくらサッカー部で鍛えているからといっても、きつい練習の後の全力疾走はさすがに堪えた。ジョミーは両膝に手をついて前屈みになると、ぜいぜいとせわしない呼吸を繰り返す。これでは、いくら早々にブルーの元へとやって来られても、意味がない。
「ジョミー……君、大丈夫か?」
挙句の果てに、ブルーに心配までかけてしまった。ジョミーは懸命にかぶりを振って、なんでもないという意思表示に変えた。いつまで経っても新鮮な空気を求める肺が、恨めしい。
「そんなに慌てなくても、僕は帰ったりしないのに」
「分かって……ます……けど」
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