1-1 根頭癌腫病の病状、病原菌の特徴、治療法について

 根頭癌腫病は、多く発症しており、この病気のことを知らないため、一般的に、発症し
ていても、気付かないことが多くあります。

 最初に、あまり聞きなれない根頭癌腫病の症状を説明し、次に発症のメカニズムを説明
し、次に病原菌の特徴を説明し、最後に研究課題の治療法について説明します。

1症状(病状)
 
バラ科の植物に多く発症する。バラ科の植物は、果樹にも有り、りんご、桃、ビワ、梅、
梨、さくらんぼ、杏、プラム、プルーン等がある。これらの果樹には、ほとんどの場合、
接木がされており、台木(根の部分)もバラ科の植物がほとんどである。
 症状としては、幹の地際付近や地下の根にコブ(癌腫,腫瘍)ができる。発生初期は淡
黄白色で触れるとコブには弾力がある。進行するとしだいに肥大し、黒褐色で球形状の木
質化した硬いコブになる。古いコブは表面の細胞が枯死し、黒褐色の干しシイタケに似た
塊状になる。
 コブは切り取っても、切除した所から再生され,新しいコブが発生し、大きく生長する。
株は急激に枯れることはないが、だんだん生育が悪くなり、不治の病とされている。
 左下の写真の赤い矢印の部分がコブ(癌腫,腫瘍)である。同写真のAの矢印の部分を
拡大したものが、右下の写真。
 

2発症のメカニズム
 アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)と言う名の、
土壌で繁殖する細菌性の病原菌が発症の元になっている。
 植替えなどによる根の傷口、昆虫の食害による根の傷口から感染する。
 アグロバクテリウムは根の傷口から進入すると自分の体内で生成した物質を植物細胞に
注入することにより、植物細胞遺伝子のDNAの一部分に配列異常が生じ、その結果、異
常な細胞増殖が起こり腫瘍を形成していく。
 この異常な細胞増殖によって作られる腫瘍そのものが、菌の繁殖コロニーとなっている。
 一度感染すると植物細胞遺伝子のDNAの配列が組み替えられてしまうため、アグロバ
クテリウムが死滅しても症状は治らない。アグロバクテリウムが植物細胞に注入する物質
の量は微量なため、植物体全体に発症することはなく、局部的な発症となる。

3 病原菌の特徴
  アグロバクテリウム・ツメファシエンスは、0〜37℃まで生育可能で、死滅温度は
51℃。14〜30℃で良好に生育する。最適温度は22℃。発症適温は25〜34℃。
pH5.7〜9.2の間で生育でき、最適pHは7.3。乾燥や低温などの不良環境に強い。
 最適湿度は60%前後。好気性、運動性があり、病原菌の付着からおよそ3日間で遺伝
子組み替えが完了する。バラ科の植物に感染しやすい。
 病原菌は宿主植物が無くても土壌中で数年間生存が可能なため、一度発生した場所(土
壌)に植えると再発することがあり、古いコブの組織片なども感染源になる。

4 治療法について
 いよいよ、研究課題の治療法に話を進めよう。まだ、実施したわけではないが、実施す
る予定を書くことにする。
 
病原菌の特徴で記載したとおり、病原菌の死滅温度は51℃なので、コブの切除を行い、
切除した切り口とその周辺を300℃の局部熱処理をして、病原菌の死滅とDNAの配列が
組み替えられた植物の表皮近辺の細胞の破壊を行う。最後に、切り口とその周辺に殺菌剤
を塗布して終わりたいと考えている。どのような結果が出るか、お楽しみに
                               【2006年3月3日】


2007年2月25日
 りんご「王林」に発症した根頭癌腫病のゴルフボール大のコブ3個を切除した。分枝し
た根の一部にコブが1個できていたので、根と共に切除した。幹の根元に2個コブがあっ
たのでカッターナイフで切除した。
 切除した切り口とその周辺は電気半田小手を押し当て、病原菌の死滅と植物の表皮細胞
の破壊を行った。半田小手の先端から白い蒸気が立ち上り、ジュウジュウと音を立ててい
た。約40分ほどこの作業を行った。最後に殺菌剤の原液を塗布した。
 今回、実験を実施して感じたことは、ゴルフボール大のコブが3個も出来ており、症状
としてはかなり進んでいる状態で、処置に時間がかかった。やはり、早期発見、早期治療
が良いと思う。使用したカッターナイフとシャベルは熱湯消毒した。
 実験の成否が判るのは8ヶ月後になるので、結果は後日記載する。

2007年10月25日
 実験結果が出た。実験結果は理論どおりの結果となり、コブを切除後、切り口とその周
辺を局部熱処理した所の再発病はなく、傷口はきれいな状態だった。2007年2月25日の実
験は、鉢の植替えを行っている最中に実験したので、根全体の1/3を切り落とした状態で
あった。このため、根を切り落として、切口に熱処理をしなかった根の一部分には発病が
確認できた。
 結局、根の切口を熱処理した部分は全て、発病がなく、熱処理しなかった一部分に発病
があったことを確認でき、実験は大成功となった。
 ただし、実験では、熱処理後の切口に殺菌剤の原液を塗布したので、この殺菌剤の影響
を排除できていない。次回の実験では、熱処理だけとし、殺菌剤は使用しないことにする。
 次回をお楽しみに

2009年5月16日
 2008年1月20日に、りんご(王林)の根頭癌腫病の患部切除部分に熱処理だけで実験を
行った結果、局部熱処理部分に発症は無く、電気半田小手による局部熱処理法は大成功し
たことが今日、確認できた。

2015年5月13日
 某放送局で放送された番組「生命大躍進」の中で、植物と動物の光を感受する細胞には、
光を感受する部分のDNAに関して同じものが存在することが明らかになり、このDNAが、
ある時、植物から動物に取り込まれて、それぞれ進化していったことが推測されると放送
されていた。
 また、動物であるウミウシの一部には体内に葉緑素が存在し、光合成により生じたもの
をエネルギー源として生きてゆくことができると放送されていた。
 これらのこと等を参考にすると、植物における根頭癌腫病と動物における癌腫について
は、共通した発生メカニズムがあると推測することもできるが、この推測を全て完全に否
定することは現時点において、できないのではないか。
 また、根頭癌腫病の癌腫が植物から動物へ移行したとする仮設を証明できたら面白い。
 動物(人類を含め)の異種間では感染しないとされていた病状が動物(人類を含め)の
異種間で感染した事例も発生している。
 まだまだ、本当の基本的メカニズムが解明されていないものが沢山ある。



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