【車掌25号の立ち読み】
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川崎旅行


志村を待つ 5 旅行篇
■車掌24号所収の「読み物・川崎旅行」(志村二朗著)で主人公がバスで辿った道のりを徒歩で、二朗がひょっこり現れるのを待ちながら行う、地味な旅行■

山田幸司・鈴木あずさ・塔島麦子・塔島ひろみと女性中心の川崎旅行一行は、13:20に川崎駅川33バス停前を出発した。
最初の信号ではるばる真岡から参加した山田氏が、歌のタイトル「川崎、降ったり止んだり」を決め、うきうきと歩き出してみたのだが、歩いても歩いても信号がなく、次の作詞へ進めない。地図を見るとこいつは「多摩川緑道路」という道で、多摩川に沿ってて、右が多摩川なので「右折」できない。だから信号がないのである。ユニバーサルデザインの21世紀の世にあって、信号待ちの好きな人の気持ちを全く考えず設計された、時代錯誤な、詐欺みたいな、ひどい道だ。次の順番は塔島だが、幸町二丁目→河原町団地前→とノンストップで次々バス停を通り過ぎる。我々は人間のくせに、これではまるでリニアモーターカーではないか!
ようやく信号が見えてきた。しかし「青」じゃん。信号待ちのできない信号は、我々にとってはクリープを入れないコーヒーと同じだ!
そこで「約束事」にもある通り、標語「青だけど 次の青まで 待つゆとり」を積極的に取り入れ、貴重な信号が見えてきたら歩を遅め、青が点滅してあーもう間に合わないや、という頃に信号前に着くよう調整をした。更に標語の解釈を広げ、赤信号で書いてて青に変わっても、「次の青まで待つ」ことにした。自民党を手本としたこの狡からい方法により、本当は書けないはずの歌は書き進められていったのである。
1番の6行目で、山田は「青信号は意外に長い」と歌っている。これは赤で書き始め、青に変わっても次の青まで待っているときのやましい気持ちを歌ったものだが、この山田を見て塔島麦子がKY発言。せっかく暗黙の了解でずる工作をしてるのに、
「ねえ、どうして青になっても書いてるの?これじゃ「信号待ち」に作った歌になんないじゃん。私は「ちょっ」しか書いてなくてもちゃんと終わりにしたのに」
と正論で攻めてきやがった。空気を読めや、娘!
しょんぼり罪を認め、正直なやり方に戻す。すると正直者に福があり、道は途中から内陸部に入り込み、信号が増えた。ずるする必要がなくなったのだ。
さて道中のおすすめ観光スポットは、3番に歌いこまれた駄菓子屋米屋と自治会館バーゲンで、「お土産交換」のお土産もすべて、この2か所で買われた。なお自治会館はロビーで志村二朗が不自由研究の記録をしたことでも知られる。
終着地「健康美」に着いたのがちょうど17:00。バス川33の行路8.33キロを3時間半かけて歩ききった。健康美前では「読み物」をまねて、像のまねをして記念撮影。最後まで志村二朗には会えなかったが、電話ボックス内の電話帳の間、自治会館のチラシの棚、中原ブックランドの書架に並んだ聖書の中、はたまた小杉御殿町二丁目町内会館掲示板ほか沿道の複数の掲示板に、いつの日か志村の目に留まることを祈りつつ、志村へのメッセージがそっとあるいは堂々と、残されたのである。


 志村さんへ
私たちは今、志村さんにたまたま会う偶然を待ちながら、「川崎旅行」をしています。24号を渡したいです。ご連絡お待ちしています。
  車掌編集部「川崎旅行者」一同


  「川崎、降ったり止んだり」  
ここは川崎戸手四丁目
信号がなくちょっ
黒ばらでパーマをあてて
武道館で身体を鍛えて
汚れた道着はイノウエ
でクリーニング
青信号は意外に長い
ここは川崎下平間
信号はゆとりをもってちょっ
ユナハゲン ユナホルモン
焼きたてパン屋に
ラ・ベルージュ
信じれば皆 幸福
幸わせならふくじゅ保育園
ここはどこだか わからない
川崎は 志村さんがちょっ
米屋で駄菓子の充実〜〜
赤信号は突然やってくる
道路にワーゲン
自治会館でバーゲン
川崎に雨は降らなかった



★車掌読者である志村二朗氏のゆくえを探しつつ作られた25号は、予想以上に志村さんを待つ企画だらけだった。もちろん、志村さんはチットモ見つかってません。誰か教えて。ほかに、死にそうな有名人を予想する「バトル・ザ・死ぬのを待つ」、伊藤岳人が息子の誕生を待った「生まれてくるのを待つ」など。