8.10
ROCK IN JAPAN FES.2002


2年ぶりに家族全員でロックインジャパンフェスティバルを見に行った。おととし行った時は台風が直撃し、私は完全な二日酔いという最悪のコンディション。だが今年はTheピーズが参加する。だから体調を万全に整えてフェスに臨んだ。
会場は茨城県ひたちなか市にある国営ひたち海浜公園だ。「海浜公園」だからビーチ、砂浜かと思ってしまうが、海は防風林にさえぎられて全然見えない。公園に行く途中でも全然見えず、海浜感はゼロ。だけど海浜公園。まあ、ほとんど武蔵境に近いような我が家らへんでも「吉祥寺」を名乗っているマンションみたいなものか。
ライブは3日間、我々はその中日10日を見た。10日に出るバンドは15。すげー多いな♪と喜んだが、それもぬか喜びだった。前回参加したときとは違って、去年からグラスステージとレイクステージという2つのステージでライブを行う。だから両方同時に見られない。
グラスのラインナップは、KCK THE CAN CREW、スケボーキング、THE BOOM、UA、BUMP OF CHICKEN、YUKI、桑田佳祐。レイクのほうはPOLYSICS、GOING UNDER GROUND、smorgas、PENPALS、麻波25、Theピーズ、BOOM BOOM SATELLITES、NUMBER GIRLだ(出演順)。

我々一家が見たそうなのはレイクに集中していたので、レイクよりの木陰にシートを敷いた。そして見たいバンドは各自勝手に見に行く、シートに貴重品を置かない、メシは腹が減ったらそこらで買って食え。ということを決めて散った。
私はまずキックを見にグラスへ移動。グラスとレイクの違いは何なのかなーと思っていたが、グラスには大型ビジョンも設置されすごく広く音響もいい。物販や飲食テントもものすごーくたくさんある。だからグラスは大御所ゾーンだとわかった。
だがグラスのグラスは枯れ芝で、ものすごい土ケムリというか芝ケムリが立っている。しかもステージ真正面のシートゾーンやテントゾーンには木陰がまるでなく、想像していたよりハードなゾーンだった。
左の写真、知らないカップルの後ろ側に映ってるのがグラスのシートゾーン。日陰なし、なのに人がいっぱい。しかも桑田やブームのおかげか、ロックとは無関係そうな熟年紳士や婦人もおり、グラスゾーンは海浜感にあふれていた。知らないカップルの男性が首からぶら下げているのは、入口でくれた地図とプログラムだ。これはとても便利だった。
このフェスの特徴は、便利なキャリー入りプログラムに象徴されるようにこまごまといろんなことに気を配っているところだ。荷物を預かるクロークサービスやものすごく大量の簡易トイレ、休憩テントなどを設置してある。だから炎天下だということ以外は非常に楽チンなフェスで、フェス公式HPの掲示板では「こんなのロックフェスじゃねえ!」と毒づく若者もいたほどだ。あと桑田が出演するせいか本日の前売りチケットは発売即日完売。というのも若者たちには気に入らなかったようだ。確かに野外フェスで即日完売なんて聞いたこともない。主催者(鹿野淳)発表によれば入場者数4万人。と言われても、私にはそれが多いのか少ないのかよくわからない。海浜公園はものすごく広いから。だけど掲示板の若者によれば「詰め込み過ぎ」なのだそうだ。さすがロッキンオン主催だけあって、権利意識が強いインテリが集まってる。

えーと何の話だったか。そうそう、グラスにキックザカンクルーを見に行ったのだった。グラスゾーンにはDJブースがある。DJといってもくるりとかスピッツとか、よく三平ストアでも流れているような馴染みの音楽をかけてくれてとっても良い。テントで日陰だし、見たいバンドがないときはここで踊っていればいいのだ。
キックはヒップホップとかいってもナリは厚木系ヤンキーだし氣志團みたいで楽しかった。お祭りの曲みたいなのを演奏して、それがまた大変ラップに合う。やっぱ日本のはっちゃけソウルは祭り囃子っしょ…などと考えると、フォークがエンヤトットになってしまった岡林信康化するからあまり考えないことにした。踊りながらどんどん前に出て行ってたら、一緒にいたはずの娘たちとははぐれてしまった。グラスはすごく暑いからレイクに戻ることにした。グラスとレイクはとても離れており、もうあんまり来ないだろう。そこでグラスに来た思い出に、ナンバガのTシャツとか飲食ブースで売ってる「冷やしパスタ」などを購入。

えんえん歩いてレイクに戻り、冷やしパスタを食べた。それは冷やし中華の麺がスパゲッティなだけだ。まずかった。レイクステージからは「カントリーローード♪」が聴こえて来た。ものすごく情けない音だ。ゴーイングアンダーグラウンドが演奏してるらしい。ゴーイングは“泣き虫ロック”という異名をとっているらしい。本当に泣き虫だと思った。
ゴーイングのあとスモーガスのちょっとハードな音が聴こえてきたが、ハードさはあくまでもちょっとだけなので全然ステージまで見に行く気になれない。私だけでなく、家族全員がシートに戻って来てしまい、「レイクのフェスTはもう売り切れだ」などとヌルい会話でなごんでいる。けっ、木陰で家族団らんかよ。自分もダラダラしてることは棚上げして、テメーらロックじゃねーー! と心の中で毒づき、私はもう二度と行かないつもりだったグラスへ敢然と向かった。
グラスではブームが演奏していた。スタンディングゾーンに入り込むのも面倒くさくて通路でビジョンを眺めていたら、スタッフの人に「通路では立ち止まらないで下さい!」と怒られた。仕方なく海浜部分に入り込んで座った。宮沢の声は限りなくクネクネしていたが、クネクネしてれば沖縄ということになってるのかどうか。芝ボコリにまみれて夫と2人で我慢していたが、クネクネ攻撃に耐えられなくなり私は決然と「もう帰ろう!」と立ち上がった。
今度こそグラスの思い出にと、台湾風ラーメンと牛串焼きを食べた。どっちも500円。すごくおいしかった。でもさっきから何か食べてるだけだ。溶けそうな日差しの中でロックっぽい鑑賞態度を保つのは難しい。

だからレイクに戻ってペンパルズの次、麻波25は絶対見よう、そしてTheピーズの場所取りしたる、と決意。
次のバンド狙い場所取りは毎年問題になる行為だ。渋谷陽一も「アーティスト毎にステージ前の人たちが入れ替わって楽しめる、そんな形を夢見ています」とプログラムで注意していた。あとで知ったが、この日も桑田ファンが早くから場所取りしてて問題になったそうだ。しかし桑田ファンはお年寄りでモッシュやダイブを容認できないのだろう。だからモッシュが始まったら一緒におしくらまんじゅうをしてればマナーにはかなうだろう。渋谷の夢なんて知ったことかよ、ケッ! と心の中で悪態をついた。これでちょっとはロックっぽくなっただろうか。
本当は麻波25がどんなバンドなのかも知らず「マッハにじゅーご」と読むことも娘に教えられて知ったぐらいだったが、さもファンのような態度でなるべく前の方を陣取った。麻波25の人たちが出てきたら、キックの人たちと同じような厚木系だった。まわりを見ると刺青者が多い。あーこりゃヤバイなあと思ったら演奏が始まってしまった。
麻波の人は「Sayオーオ!」などと聴衆に掛け声を要求。私も刺青者が怖いため「Sayオーオ!」と10年来の麻波ファンのフリをして両手を掲げ、モッシュが始まったら一緒になって飛んでみた。サウナにいるようにモワーンとした汗臭い空間……。麻波の人はとにかくずーっと掛け声などを要求し続けた。20分ほど我慢したがイヤになり戦線離脱。バカヒップホップとかマジメに聴いてられっかよー、とシートで寝て体力を回復した。

そしていよいよTheピーズの番になった。私は飲食ブースで水を買い、素早くモッシュスペースに入り込んだ。しかし入り込み過ぎて前から2列目ぐらいになってしまい、恐ろしかったので娘たちを残してジリジリ後ろに下がった。娘たちは若いからまあダイブとかされてもなんとかなんだろ……。夫もやや下がり気味だ。年寄りは無理してはいけない。
そう自戒していたら、足下に婦人用のパンツを発見した。パンツというよりパンティといったほうがふさわしい華やかな下着だ。なぜパンツが。飛んでるうちに脱げ落ちたのか?
ステージではスタッフの人が「テステステス」とか「グギャギャギャギャーン」とかPAのテストをしている。するといきなりアビさん登場! どうもアビさんは、他人にチューニングをまかせておけないようだった。
テストが終わってピーズ登場!「おかえりーハル!」「待ってたぞう!」という掛け声が飛ぶ。ハルは「あいどーもピーズでぇす」と言って新曲のゴウランを演奏した。ドラムはピロウズのシンちゃんだ。こないだの復活一発目の千葉LOOKでは新曲しか演奏しなかったというので、今回も新曲だけかなーと思いきや次に「シニタイヤツハシネ」が。客は大喜びでモッシュ攻勢に。しかし私も「死ね〜!」と叫びながら死ぬのは自分では…脳溢血とかで…と思った。ハルも「死にたかねーけど死にそーだー」と感想を述べた。
「こんな気持ちよさげなトコでやらしてもらってアンガトー」とか、「こないだ千葉で5年ぶりにやってこんだ茨城で〜、なかなか東京には上陸できません!」とか、ハルっぽいMCで楽しげに演奏が続くのですごく嬉しくなり、もう死んでもいいような気がしてきた。
「向こうでも千葉の若者がやってんけどおじさんたちも頑張っちゃうよー」とはバンプオブチキンのことか。新曲の合間に「日が暮れても彼女と歩いていた」「ドロ舟」「とどめをハデにくれ」「ニューマシーン」などを演奏。水をぶちまけながらモッシュ、踊る。前のほうではダイブする若者も。ドロ舟はアビさんバージョンのスローなイントロのでかっこいい。客も一緒んなって一蓮托生ドロ航海、格安ツアーにピュアなむらがりだった。
40分ほどでピーズの演奏は終わってしまい、ムダと知りつつ「アンコール!」と叫んでみたがやはりムダだった。

そのあとブンブンサテライツも見るつもりだったが、全体力を消耗しきってシートに戻り倒れこむ。最前列を陣取った三女が「死ぬかと思った!」と言いつつ戻ってきた。若い三女が死にそうになっているんだから、年寄りの私が生きてるのは不思議なくらいだ。バンプが終わったグラスから若者がレイクに移動してきていた。レイクはエリアが狭いので人数制限がある。うーん、入れなくなったらナンバガ見られんなー、あーバンプ見たかったなー、などと考えても体は全然動かず。
ようやく動けるようになったので入場制限がかかる前にレイクへ移動。もはや夕暮れだ。客もスタッフも服装はTシャツにジーパン、スニーカーがほとんど。髪の毛をツンツンに立て、革アイテム(リストバンドとか)でキメているロック少年は、周囲から尊敬のマナザシを集めていた。3日通しで見る人は泊まりなのでリュックを持ってることも多い。あ、さっきのパンツは背負ったリュックから落っこちたものかもしれない。いいなあ青春だな、民宿とか泊まってさ、メシが死ぬほどまずかったりしてさ、夏の思い出って感じ。自分が高校生ぐらいのとき、こんなフェスに友だちと一緒に来れたらさぞ楽しいだろうな。親と一緒なんて絶対イヤだ。ウチの子たちはかわいそうだなと思うが、甘やかすのは良くないからあきらめてもらうことにした。

トリのナンバガは後ろでゴロゴロしながら見ることにした。しかしやたらマイクテストが長い。「チェッチェッチェックローチェック」と普通にテストしたかと思いきや、もんのすごいディレイかかって「テェェェエエ〜ス」と言ったり。すると突然「ただいまマイクのテスト中です」とナンバガ向井の声が。「Sayオーオ!」と麻波の真似をするので客も「Sayオーオ!」と応えると「Sayラッセーラー!」と向井。「Sayエエジャナイカエエジャナイカ!」とまで言い客も「何やってんねん」と苦笑まじりになったところで「公演開始まで今しばらくお待ち下さい」と落とした。
ゴロゴロするはずが、その声につられてついスタンディングゾーンまで出てしまった。向井にだまされた。それからややしばらくお待ちしてナンバーガールが登場した。向井が「えー福岡市博多区から参りましたナンバーガールでございます」と言ってゼゲンVSアンダーカバーを演奏。客がぐおおと盛り上がり前方はダイブの嵐。なんと恐ろしい…3曲目のナムアミダブツで客は狂乱状態に。久子ちゃんのギターはものすごい破壊力だ。
ナンバガのライブを見たのは始めてで、21世紀なんだなーとシミジミ思い、私はやっぱり後ろでゴロゴロすることにした。寝転がって星を見ながらナンバガなんて、大人の休日かしらホホホ。
そして1時間ほど経ったので、もう終わりになるだろうと片付けをするためにレイクを出ようとしたらやっぱり入場制限になっていた。

結局ナンバガは1時間半ぐらい演奏していた。終わってさあ帰ろうと駐車場に向かう途中、会場から花火がバンバン上がってるのが見えた。グラスは桑田なので花火を上げたのだろう。あ、結局桑田は全然まるきり見なかったし音も聴こえなかった。でもすごく盛り上がったそうです。
真夏の野外フェスについて学習したのは、
 1.運動靴じゃないと危険
 2.ライブ中はエビアンとか水をまいて景気をつける
 3.ダイブは「いいスか?」と断ってするからあまり危なくない
 4.Tシャツの替えは3枚ぐらい必要
 5.日焼け止めをいくら塗ってもムダ
 6.全部のバンドを見ると死ぬ
といったことだった。帰りはお腹が空いて、見るからにロクでもなさそうな国道沿いの店でラーメン餃子を食べた。餃子はまずかったがラーメンはうまかった。