My EYES give you...
君は
知らないだろうけど
オレは前から
君を知ってる
ずっと
君主の中から
君を見てた
あの日
大丈夫と言った
君の
ぼんやりした瞳と
儚い笑顔を見た時
俺は
君主に背いても
君を助けたい
と思った
もう一度
あの笑顔が
見たい…
立花の目が見えなくなった次の日…部屋でボーッとしていると、誰かが近寄って来る足音がした。
…蔭時の音ではない
「立花…目…大丈夫か…?」
凛とした…でも何処か心配そうな男の声…
「あなたは…誰?」
声の方を見上げる。
「あ、悪りぃ…俺恒燐ってんだ。研究員じゃねぇからなんでも気軽に言ってくれよ。宜しくな」
…やっぱり…俺の事なんか知らないよな…
あたりまえだ。会ったことが、ないのだから。
立花は細い指を声のする方に向けた。恒燐の唇に指が当たる。
「あ、御免なさいっ…私目見えなくて…貴方のお顔も解らないんです…」
「いや…俺は大丈夫だけど…」
…ドキッとした…
「貴方は…何の種族ですか?炎の気質があるようですが…」
相手に触れただけでそこまで見抜けるのか…
「ファイヤーだ…だから中々外に出させて貰えねぇんだ」
「そんな…だったら私なんかに構わずに空の下に行って下さい。御免なさいね、御引き留めして…」
霞んだ目を申し訳なさそうに伏せ立花は頭を下げた。
「いいんだ…別に外行きたいとも思わねぇし」
…違う
違うんだ
君の傍に
いたいんだ
いてあげたいんだ
寂しそうに笑う
キミの側に・・・
「…ずっと…一人なのか?」
「…いいえ…毎日一回…必ず蔭時様が来て下さいます」
立花の表情が嬉しそうにほころぶ…
「…好きなんだ…?そいつのこと…」
立花は真っ赤になって首を振った。
「ち、違いますっ!蔭時様は私のご主人様で、私はただ御慕いしているだけですっ」
「…そっか…」
立花が座っている長椅子の向かいの床に恒燐は座り、今度は立花を見上げた。
「あのさ…その…蔭時って人が来る迄で良いんだ…ここに遊びに来ても良いかな…?」
…相手が目の見えない人で良かった…
こんな格好悪い表情…見られたくない
「私なんかに付き合って下さるの?もしご迷惑じゃなかったら…嬉しいわ…」
…体の力が抜けていく感じがした
毎日、君主の部屋を抜け出し、立花と色んな話をして、夕方に君主が部屋に帰って来る迄に元の場所に戻る…
なかなかスリルのある生活だった。
立花は毎日他愛もない話に笑顔で付き合ってくれた。自分の事も話してくれた。
凄く嬉しかった…
でも、日に日に弱っていっている気がするのは
俺だけか…?
「立花!ちょっと外出てみねぇか?」
ある日そう言って部屋に入って行くと、立花はこちらの方を向いてにこっと笑った。
「連れてってくれる?」
立花は立ち上がり、恒燐の手を掴んだ。
手を引かれ、立花は久々に太陽の下に体をさらした。恒燐が空に向かって背伸びする。
「気持ちいい〜!空も真っ青で綺麗だろ!…あ…」
そう言った後で思わず口を閉じる。
「太陽の日差しも温かくて…風も気持ちいい…有難う、連れて来てくれて…」
立花は恒燐の方を向き嬉しそうに笑った。
でもその笑顔はあの時と同じ儚いものだった…
「俺が…こんな姿にされてなかったら…癒しの力があったら…その目を直して上げられたのにな…」
俺の目を
代わりにあげたっていい
君に
この空を見せてあげたい
そして
笑ってほしい
その相手が
俺じゃなくても
「実は…貴方と会ってから一度も…蔭時様と会ってないの…」
芝生に座った立花はぼそっと言った。
「え…?!」
「きっと…忙しいのでしょうね…」
何故だろう。
蔭時って男は、なんで、彼女を一人にするんだ…!?
こんなに彼女は、待っているのに…
「でも…貴方がいてくれるから…毎日楽しいわ。有難う。これからも…遊びに来てくれる…?」
やっぱり自分は
代わりでしかない
立花は、俺と毎日会うより
主人と一度会う方が喜ぶに決まってる
俺が立花に出来る一番喜ばれることは…
「明日…その主人を連れて来てやるよ」
立花は口を開けて驚いた…
夕方…君主の部屋を掃除していると、君主は帰ってくるなりカルテのような紙を見つめて笑った。
「…明日で…立花の目薬が切れるわ」
思わず手がとまる。
明日…立花は…
「そういえば、恒燐、明日お前に解剖実験を手伝って貰うよ。人手が足りないからね」
明日は…
約束が
ある…
「…解りました」
何時からだろう…?
しかし都合はいいかもしれない
明日、目が見えるようになる立花と会える…
自分の
姿を
あの目で
見つめてくれる
その時
俺は
立花と会える最後の日が
迫っている事を
知らなかった…
2002/12/01
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確かこの解剖実験が…あ…れ…?なんだっけか…(ダイピーンチ!