ヒ ト ミ
研究所に入った後も立花だけは今までとさほど変わらない生活をしていた。
今日も白い実験服をひらひらさせ蔭時の後ろを歩いていた。
そんなある日、蔭時は浮かない顔をして立花に言った。
「明日から一週間程お前の能力を調べるらしい。お前にも培養ケースの中に入るように言われたよ」
翌日、立花の部屋にあった空のケースの中にエメラルド色の液体が入れられた。
立花はその中に入って色々な検査を受けるらしい。
しばらくは蔭時以外の研究者が立花の部屋を入れかわり立ちかわり出入りしていた。
余りの人の多さに立花は蔭時を探し出すことが出来ずにいた。
一週間の中頃、ずっと眠れずにいた立花は極度の眠気に襲われ、目を閉じようとした。
久々の心地良い眠り…そう思った瞬間、硝子ケースが叩かれた。
(…蔭時様っ!?)
がばっと目を開けると、そこにいたのは眼鏡を掛け、厳しい顔をしている女の人だった。
細身の体に白衣…ショッキングピンクのミニスカートのワンピースが色っぽいと立花は思った。
その人はケースを開け、立花を出すと、何も言わずに立花に目薬を射した。
「これは…なんですか?」
「目が疲れているでしょう?よく眠りなさい」
女の人はそういうと目薬を白衣のポケットに入れ、立花を戻した。
…良く目を閉じなさい…もう何も見えなくなるくらい…
朝、いつもの声で立花は目を覚ました。
「お早う立花、早くそこから出て来い…」
…目が霞む…エメラルドグリーンの靄がかかって何も見えない…
「あの…出していただけませんか…?」
「!??」
蔭時は何も言わずに水浸しになりながら立花を外に出し、冷たい床に座らせた。
「…なんだか…目が見えないんです…」
ぼやけて輪郭しか解らない蔭時の顔を見ながら立花は言った。
「…まさか!そんな馬鹿な!」
蔭時は立花の目にペンライトの光を当てた。
しかしその手は次第に力を失い、月花の頬から滑り落ちていった…
「死んでる…」
力の抜けた絶望的な声を残し、蔭時は黙ってしまった。
「蔭時様…?」
「…失明している…何故だ!どうしてこんなことに…っ!オレが…目を離したせいで……すまない…立花…っ!」
立花の耳に蔭時の死人のような声と彼が地面を叩く拳の音が聞こえた。
「大丈夫…きっと治ります…」
立花は静かに言った。蔭時は動きを止め、立花の方を向いた。
「ある程度は、自分の力で補えます。大丈夫ですから…泣かないで…」
立花は細い指で蔭時の頬を流れた一筋の涙を拭った。
原因はきっとあの目薬…
それは良く解っていた。
「D148−1149473失明、計画予定通り遂行しております」
「ご苦労」
黒いワイシャツに赤ネクタイ、白衣を着た男が、任務を終えた先程の女性と話していた。
「一週間しないうちに三人には次の段階に入って貰う。用意しておけ」
「万端でございます」
女は眼鏡を光らせる。
「私たち三人…いえ、六人は、蒐様の合図を心待ちにしておりますわ…」
眼鏡の奥から覗く瞳に謎の男…蒐は怪しい笑みを浮かべ、女のシャープな顎に手を掛けた…
「ボクは…冷、キミの合図を待ちたい所だけどね…」
冷はピンク色の口元を上げて意味深に微笑んだ…
02/09/02
<<BACK <TOP> NEXT>> あは、あいかわらず蒐キモっ(いうな) これくらい蒐が積極的だったらファンが卒倒しちゃうYO!
で、最終実験編なんだそうです。(後書きはいちいあてだったので割愛) 間が飛びまくっているので何が最終なのとか言われそう。ハハハ。
うん。まぁ、ね、ぶっちゃけ、、、裏なんですよ。そのための稚陽呂ですから。
今回は立花なので結構切ないかもしれませんが、残り二組は確実さようならなので覚悟を決めて下さい。あ、未遂だと思いますけど。
ごめんなさい。原稿が向こうの部屋なので確認とれません。しかも弟組はいちいの管轄です。 彼女書いてくれるんだろうか。・・・忙しいみたいだからなぁ。聞いてみよう。