BIRTH...

 

「ねぇ、“タンジョウビ”ってなぁに?」
御影の状態をチェックする香の目にそんな文字が飛び込んで来た。
ふと視線を移すと、培養ケースの中に両手をべったりつけてこちらの答えを待つ御影が見えた。
「自分が生まれた日の事だよ。なんで?」
「ミサトが言ってた。いい日なの?何かあるの?」
御影は嬉しそうに首を傾げた。
「いい日だよ。皆でお祝いしたりプレゼントをあげたりするんだ」
「ぷれぜんと…」
複雑な表情をして御影は下を向いた。
「さぁ、今日は許可が降りたから外に行こう。サザンカが綺麗なんだ」

香は御影をケースから出して着替えさせると研究所の外へ連れ出した。

研究所の外はもう冬陽気で、太陽は温かくても風は冷たかった。
香は御影に自分の白衣を着せて中庭の小道を散歩した。
「ほら御影、これがサザンカだよ」
ピンク色の大きな花を一輪摘み取ると、香はそれを御影の髪に飾った。
「可愛いよ」
御影は一生懸命上を向いて飾られた花を見ようとした。
それがなんとも滑稽で香はくすくすと笑った。
すると御影は何か思い出したようにサザンカの樹の前に行き、花を一輪摘み取ると、香の元に小走りで戻って来た。
そして両手にその花をのせ、香の目の前に差し出した。
「ぷれぜんとっ!」
「!??」
「ミサトが今日は“カオリのタンジョウビ”って言ってた」
香はポカンと口を開けた。
「…嬉しくない…?」
御影は淋しそうに眉を情けなく下げた。
「…有難う」
香は御影に微笑みかけ頭を軽く撫でた。
御影は背伸びして香の頭の上に花を乗せるとにっこり笑った。
「オソロイっ」
その純粋な笑顔に香が微笑み返すと、頭の上の花がぽろっと落ちた。
「落ちちゃった…」
御影は花を拾い上げ、もう一度つけ直そうとした。
香は御影の背に合わせてかがみ、顔を近付けると、そのまま御影の額に口づけた。
「有難う、大切にするよ」
こつんとおでこをぶつけられ、御影は何故か自分に言われたような気がして真っ赤になった。

…香は花を胸ポケットにさしていて気がつかなかった…


 

 

 

 

 

2002.07.03.22:29


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今日はほのぼのせめてみました。 御影どう考えても頭の中味幼稚園児だよ…(笑)  日に日に香が優しくなっていく(微妙