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FATE 04 兄弟の秘密

 

「・・・だれ?」

屋根の上に座らされた御影はかねてからの質問をぶつけた。

「キョウだよ・・・」

背中の翼を風にはためかせキョウは笑った。

「キョウ・・・カオリと同じ顔・・・人間じゃない。」

御影は眉根を寄せる。

「確かにいつもはね・・・ただし、満月の晩だけいつぞやに寄生した私の・・・ゴルバットの遺伝子が動き出す。今いつもの 香は眠っている」

御影にはよく理解できなかったが、ともかく今の姿は人間ではなくゴルバットだということは解った。

月が照らす彼の姿は確かにゴルバット―――吸血鬼だった。

「もう一人は?」

さらに質問を投げかける。

「あぁ・・・ミサトの事?あれは・・・ヘルガーだよ。彼の中にはヘルガーが住み憑いているらしくてね・・・

 会話ができるみたいだよ。つくづく変な兄弟だと私は思うね」

そういうとキョウは御影の方を向いた。不思議そうな顔で質問する。

「私が怖くないのかい?」

御影はさも当然といわんばかりの顔をして見せた。

「べつに。私人間キライ。でも・・・キョウは人間じゃない」

その答えにキョウはまたも意味深な笑いを見せた。

「それはよかった・・・さて、邪魔が来る前に・・・」

キョウは御影の腕を両手で抑え、肩に顔を埋めた。

「痛っ」

キョウは顔を上げた。口元についた血が不気味な影を作る・・・

「ゴチソウサマ。やはり血の味は格別だ・・・」

口元を舐めながらキョウは久々の血の味を楽しんでいた。

「・・・美味しいの?」

御影は噛まれた自分の首元を見ながらいった。噛まれた跡が残っている。

「美味しいよ。君が日の光を求め逃げ出したように 私は血を求めて彷徨っているんだ・・・」

その言葉に御影は一歩下がった。キョウに疑惑の目をむける。

「ここにいるといい・・・香も君の事を気に入っているみたいだし・・・

 どこから来たのかは聞かないが、そこよりは楽しい生活ができると私は思っているよ」

御影は黙ってうつむいた。

 

「コラァ―――――――――――――!降りて来いキョウッッッ!!」

庭から怒鳴り声がした。

「・・・まったく・・・キャンキャン五月蝿いイヌだねぇ・・・」

「イヌじゃねぇ!オレはヘルガーだっ!!」

「じゃぁ屋根くらい登ってきなよ・・・」

ミサトは庭にあった一番背の高い木に足をかけ、屋根へと登り始めた。

その姿を見てキョウは溜息を漏らすと御影を抱きかかえ、屋根にもう少しで手をかけようとしていたミサトに近づいた。

「一晩この娘と出かけてくるから決して探さないように。じゃね」

大きな翼をはためかせ木を揺らすとキョウは夜空へ飛び立った。

「駄目に決まってんだろ待てこのっ」

屋根ではなくキョウの服をつかもうとしたミサトの手は空を切り、真っ逆さまに墜落した。

 

「・・・マテ!コラァァァ――――――――――――ッッ!」

 

 

静かな空にミサトの叫び声がこだました。

2002/09/22  

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