黒影編最中の出来事です。話がわからないとおもいます。
後半で影貴が恭一と話す回があり、影貴はそこで自分が少なからず響に惹かれていたことを悟ってしまいます。
ぎくしゃくとした恭一との関係もとけて、影貴の中に兆しが見えてきた、そんな日の夜のお話。
お願いお星様…☆に続いています。
ヒトリノ夜
コツン
コツン
なにかの音がする。
薄いカーテンを開け、淡い月の光を顔に受ける。
コツン
コツン
静かにカーテンを閉め、もう一つの窓の雨戸を開けた。
「影貴?」
鉢合わせした幼なじみは複雑な笑みを浮かべた。
「ごめん…起こしちゃった…?」
無意識だったのだろうか。
「月…見てたんだけど…気候もいいし…くしゅんっ」
説得力のないくしゃみ。寝られないのだろう。
「来るか?」
すこし体をずらすと影貴はするりと部屋に滑り込んできた。
影貴は月明かりに照らされたベッドに寝転がり、空を見ていた。
「一人って…恐いね…」
脇に座った恭一の手を握り、影貴は呟いた。
「いっぱい…色んな事考えちゃうの。色んなこと…」
何も言わずに手を強く握り返してやった。
「私、…なんでこんなんなっちゃったのかな、とか…昔は一人でも平気だったのに…とか、
もしかして、私…先生の事…」
首を振り、影貴は空を見ていた首を傾けた。
口を閉ざし、細く温かい指を絡め、こちらを見つめている。
「隣こないの?」
「入れねぇよ」
「入らなくないよ」
「−−…」
仕方なく隣に寝転がり、両手を自分の後頭部に回した。
「兄弟とかいればよかったのになぁ…」
影貴はそう言ってご丁寧に蒲団をかけてきた。
「いらねーよ」
「風邪ひくよ?」
しっかり蒲団を被った影貴はぴっとりとくっつく。
「っ抱き着くな!」
「…恭くんあったかい…」
無駄なようだ。
確かこの場所で久々に現れた影貴が寝こけた上泣き出したのが本日午後四時と想定される。
「おまえいくつだよ」
「17だよ」
17の女がこんなことするかよ。
10年生きなおせ。
「恭くん?」
「あ?」
そっと影貴が耳打ちした。
耳に吐息がかかる。
影貴の方を見ると影貴は二コッと笑って目を閉じてしまった。
「…ずっと…一緒にいてね…」
そう言ってお前はちゃっかり男見つけちゃうんじゃないのか…?
俺を置いて…
「ったく…勝手な女」
「なんで?」
悪気もなく彼女は問い掛ける。
「夜道歩いて刺されんなよ」
「?」
翌日は休日だった上、部活も中止の連絡が入った為、幼なじみをそのまま放置しておいた。
「恭一起きてるー?」
着替えていると母が部屋に入って来た。挨拶を交わすと母が心配そうに尋ねる。
「ねぇ、影貴ちゃん知らない?部屋にいないんですって…」
指差した蒲団を見て母が唖然とする。
「なんで…」
「寝てたら不法侵入して来た」
「あんたこんな狭い所で二人で寝てたの!?」
母の驚く声に嫌気を感じながら目を擦る。
「あんた変な事しなかったでしょうねぇ!?」
「…は?」
この女の何処に変な事を施す理由があろうか。たしかに更正すべき欠陥は多々あるが…
むしろくっつかれたこちらは身動きが取れず体中が痛いのだから疑いはむこうに掛けてほしい。
「とにかく下にいるから降りていらっしゃい。影貴ちゃんは寝かせといていいから」
そういい残して母は出て行く。
「まったく…息子をなんだと思ってんだ…」
影貴を揺すり声を掛ける。
「朝だぞ。俺下行くからな。起きたら下来いよ」
すると影貴は再び手を掴んできた。
「…あったか…」
「おーいーっ!」
ゆっくりと目を開けて影貴はボーッとした顔をこちらにむけた。
「オハヨ」
「母さん達心配してたぞ」
影貴は手を掴んだままはにかむ。
「へへへ…なんかよくねちゃった…」
むくっと起き上がって手を離し、影貴は頭を下げた。
「ありがとうっ、場所とっちゃってごめんねっ」
「…着替えたら戻って下来い。朝ごはんあるから」
そういうと影貴は嬉しそうに笑った。
きっと、
ただ単に誰かが傍にいて欲しいだけなんだろう。
それなら、
俺が兄弟のかわりに
お前の家族になっててやるよ…
改訂していません。しようがないというか・・・(汗
20031026