流氷の天使
クリオネの 
  アルちゃん




遠い北の国から流氷が流れて来ます。
凍った海の下にはたくさんの生き物が生きています。
暗い冷たい海の中で、
早く氷が溶けて明るい暖かい春を待っています。
その中にクリオネのアルちゃんがいます。

アルちゃんの願いは自分と同じクリオネの友達が欲しいことです。
アルちゃんは冷たい海の中でいつも泳いで遊びます。




アルちゃんがしばらく一人で遊びながら泳いで行くと
海星(ヒトデ)のヒデオ君に会いました。

ヒデオ君が言います。
「アルちゃん、また一人かい!」

アルちゃんは「うんっ!そうよ
ヒデオ君は何してるの?
また遊ぼうよ」

「俺はまだ遊べないだ
お腹が空いてるから
あとで遊ぼう」

アルちゃんはうなずき
また、一人泳ぐのでした。




アルちゃんがしばらく遊びながら泳いで行くと
巻き貝のマキ君に会いました。

マキ君が言います。
「アルちゃん一緒に遊ぼう!」

アルちゃんは
「うんっ!いいよ。頭の上に乗ってよ
飛行機のように泳ぐからね。
シッカリ!つかまていてね?マキ君」

「アルちゃん!シュッパツしていいよ」
しばらく遊んでいたら、
頭の上で
「アルちゃんもう下ろしてくれる?」

アルちゃんが下ろしながら心配そうに言います。
「マキ君、酔ちゃったのかな?ごめんね」

「アルちゃん違うよ
僕ね、ママに頼まれたことを思い出したの
お使いが終わったらまた遊ぼう」

また、アルちゃんは一人で泳ぐのでした。




アルちゃんがしばらく遊びながら泳いで行くと
貝の妖精、サクラちゃんに会いました。

サクラちゃんが言います。
「アルちゃんは泳げていいね
貝の仲間で自由に泳げる貝はクリオネだけよ
誰でも優しく話ができるしね
そして、可愛いワ」

アルちゃんは嬉しくって、嬉しくって、
サクラちゃんの周りをはしゃいで泳ぐのでした。

アルちゃんが言います。
「サクラお姉ちゃんは誰にでも優しく、
春のような心だよ。
素敵な桃色の服を着てるし
そしてね、綺麗だよ」

サクラちゃんはアルちゃんを
心のきれいな子と思いました。




深い冷たい海の底、
群を離れた一人のクリオネが泳いでいます。

サクラちゃんが言います。
「アルちゃん、あそこに泳いでいるのは
クリオネじゃぁな〜い?友達になれるかもよ」

アルちゃんが
「サクラお姉ちゃん、ありがとう・・・」

サクラちゃんはアルちゃんの
願いを知っていましたので
かなう事を心から祈るのでした。




アルちゃんが泳いで行くと
一人のクリオネがアルちゃんに
気づき泳いできました。

クレイ君が言います。
「僕の名はクレイだよ、君のなまえは?」

アルちゃんが言います。
「私の名前はアルって言うのよ」

「どうして群から、はぐれたんだい?」

「私は旅の途中で群れの仲間達と
はぐれたのよ。クレイ君は?」

「僕も旅の途中で群れの仲間と
はぐれたんだ。同じだね」

「私をね、クレイ君の友達にしてくれる?」

「いいよ、僕がアルちゃんの側にいてあげるからね」


クレイ君と二人仲良く泳いで遊びます。

アルちゃんはもう一人ではありません。

今年はいつもより春が早く来そうな予感が
アルちゃんにはしてきました。



                                                      *To be continued