<増刊・97号> 政権交代
| 2009年8月30日の総選挙で、事前の予測どおり、民主党が圧勝し、308議席を獲得、ついに「政権交代」が現実のものとなった。 しかし、「歴史的な日」だったはずなのに、TVニュースの開票速報を見ながら、思ったほど感慨が湧いてこない。誰かが言ってたように「むしろ、他国であるアメリカでオバマ氏が大統領に当選したときのほうが感激した」という気持ちがわたしの中にもある。 かなり前から「民主党が勝つだろう。あとはどれぐらいで勝つのか。議席は何議席取れるか」というのが争点になっていたのもあるだろう。あらかじめ約束された勝利でもあったのだ。 しかしその勝利が「敵失」によるものが大きいことも、どこか冷めた気持ちにつながっている。 安倍ジュニア、福田ジュニアは2代続けて政権を投げ出し、吉田茂3世は、しゃべればしゃべるほど愚かさをさらけだして、彼が解散を先延ばしにするたびに、自民党は沈みこんでいくばかりだった。 子供のころわたしは「与党=自民党」だと思い込んでいた。 「ヨトウ」というのは保守政党の別称だとばかり思っていたのだ。 それぐらい、ロッキード事件のような大規模な疑獄事件が起きようが、多少議席数が目減りするだけで、政権をひっくり返されることは当時は考えられなかった。 いつのまにか「日本は社会主義国でもないのに、一党独裁が長らく続く稀有な国」とまで言われるようになった。 軍事独裁政権が長かった韓国でも、10数年前まで戒厳令が敷かれていた台湾でも、民主的な総選挙で政権交代が実現した(金大中氏しかり、陳水扁氏しかり)。 日本ってほんとうに民主主義の国なの? とさえ思うような自民党の長期政権だ。 やはり政権交代は、中選挙区から小選挙区制度に変わったのが、非常に大きい。 中選挙区だと、不祥事を起こしたりいろいろ批判があれども、第1党の議員は定員5人なら5番目にすべりこんでの当選がありうる。しかし1人区だとそうはいかない(まあ、落選させたつもりでも比例区復活、という制度はいかがなものか・・と思うが)。 小選挙区はオセロゲームのようにひとつのきっかけで局面が劇的に変わる。 オール自民党のエリアが、今度はオール民主党になってしまった、とか。 だから、小選挙区制度のほうが、政権交代を実現しやすい。 わたしは政治において「保守」「革新」という区別に意味があるのか、このところわからなくなることがある。 いわゆる「革新政党」が長期間政権を維持すれば、それを守るため、いやがおうでも「保守的」になる。かつての「保守政党」が現政権に批判的になり、改革を求め、こちらが「革新的」にうつりはしまいか。 これをわたしは身をもって見聞している。 1989年にベルリンの壁が崩壊し、「共産圏」の国々が「民主化」で政権が変わり(あるいはチャウシェスクのように民衆側に処刑されたり)、ついに1991年には「共産主義の家元」のソビエト連邦が解体していった。 「共産主義」ってこれ以上ない「革新的」な制度だったはずが、最悪の非人間的な社会システムに堕していた。 そして、ソ連崩壊のゴタゴタの後、かつてのソ連共産党の連中は「守旧派」と呼ばれだした。 つまり「共産党」は旧共産圏では「保守政党」でしかないのだ。 イデオロギーってある意味、相対的なものかもしれない、と激動する歴史を眼前にして実感したのだ。 日本でもわかりやすいたとえで言えば、140年前の幕末、国内では考えが最先端だった「薩摩・長州」が、明治維新で体制側になると超保守にかわってしまう。現代でも山口や鹿児島は保守的な土地柄と言われてますからね・・あ、でも菅直人は山口・宇部の出身だけど。 さて、民主党に政権交代して本当に大丈夫なのか。 マニフェストは実現できるのか。 いろいろ懸念がささやかれている。 不安はたしかにあると思うが、わたしはそれでも「政権交代がないより、あるほうがマシ」と思う。 自民党も野に下れば、世襲はやっぱり批判されるよな、とかバカなヤツを首相なんかにすえれば、うまくいくわけがないよな、とかちったあ反省するだろう。 民主党も期待されている分、国民が見る目が厳しい。うかうかしてると次の選挙で負けてしまう、という緊張感を持って政策に取り組むだろう。 かつて日本社会党が万年野党の時代は、ただただ自民党を批判していればよかった。よもや自分たちが政権をとるなんて考えていないから、具体的に政策を立案しなくてもお気楽でいられたと思う。 ただ過大な期待はしないほうがいいだろう。 世の中はそんなに変わらない。 否、変わることも大事だけど、変わらないことも大事なのだ。 極端な話、いきなり「明日から自衛隊はなくします。JRは国営に戻します」ってなったら大混乱だろう。 だから少しずつ少しずつ変えて行くほかはない。 民主主義というものは手間ヒマかかる。効率は決してよくない。 だが「いろいろ問題点はあるものの、現時点で人類が考えうる中で、少なくとも最良の政治システムは議会制民主主義」(菅直人談)なのだから。 ドラスティックに世の中を変えてほしいなら、これはもう、独裁者に登場してもらうほかないでしょう。 それが運良く名君ならば幸いかもしれないが、ヒトラーやキム・ジョンイルみたいな人物だと、国民が塗炭の苦しみを味わうだけだ。 こういうことを考え出すと「政権交代、すごいな〜」という気持ちには、なかなかなれない。 それだけ、自分もオトナになったというか、年を取ったということなのか。 政権交代の実現で、やっと日本も「普通の国」に近づいた、のかもしれない。 それにしても民主党の高速道路無料化はいただけない、と思うんだけど・・。 渋滞がひどくなって、排気ガス増えて「逆エコ」じゃん。 個人的には派遣労働者については、一定期間勤務したら、正社員として採用するのを義務付けるとか、企業の罰則規定をもうけるとかしてほしい。「ハケン」を大義名分に、労働条件の劣悪さを正当化してしまっているからだ。 (2009年9月5日) |
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