2010年4月 展覧会      

      ボストン美術館展(2010年4月23日・六本木ヒルズ 森美術館)
前々から、ボストン美術館の名品が来る! とさかんに朝日新聞紙上(朝日が主催なので)で宣伝しまくっていた展覧会。ラインナップは日本人好みの印象派がそろってるし、さぞかし混雑するだろうなあ、土・日は避けて平日の夜に・・と思い、金曜日残業をはやめに切り上げて、会社のある四ツ谷から六本木に向かう。

四ツ谷からは南北線を使えば三つ目に「六本木一丁目」という駅があるのだが、以前ここで降りたら、さっぱり出口がわからず、迷ってしまってミッドタウン方面へ行くのに難渋したことがある。それで、四ツ谷から六本木に行くときは、南北線に乗って次の永田町で半蔵門線に乗り換え、さらに青山一丁目で都営大江戸線に乗り換えて次の六本木で降りるというコースをとってみたら、二度の乗換えでやたら時間がかかる。
おまけに、都内にお詳しい方ならご存知だろうが、大江戸線の六本木駅というのはおそろしく深い地下につくってあって、地上に出るまでがたいへんである(核シェルターみたいな場所である)。
電車乗り換え案内のソフトで検索すると、なんと上記のルートは出てこない(笑)。わたしはどうやら時間とお金ばかりかかる最悪の乗り換えルートを使っていたらしい。
それで今回は四ツ谷から丸の内線に乗って霞ヶ関で日比谷線乗り換え、六本木下車のルートで行く。なるほどこれなら乗り換えは1回だし、160円しかかからない。時間も15分ほどだ。地方出身者には、都内の鉄道網の乗り換えをスムーズに頭に入れるのはむずかしい。


さて、肝心の展覧会。
場所はかの六本木ヒルズ。52階にある森美術館だ。
この手の大規模商業施設って、とにかくわかりづらくて、迷路のよう。
警備員さんにたずねてようやっと美術館へのぼる入り口にたどりつき、映画に出てくる宇宙船の内部みたいな通路を抜け、エレベーターへ。
そこからは52階まで一気に上昇する。森美術館に来たのは6年ぶり。当時は福岡に住んでいて、東京の友人を訪ねて上京し、ヒルズに連れてきてもらったのだった。

館内の混雑ぶりが心配でおそるおそる入ってみると・・なんと、中は拍子抜けするほどガラガラ。
金曜日の夜なので、会社帰りらしいサラリーマンの姿が目立つが、絵画の知名度の割には、観覧者は少なく、人の頭で絵が見えないよ! ということもない。まあ、わたしとしてはゆっくり絵が見られて非常によかったのだが、それにしても有名な絵画ぞろいなのにナゼ? と思ってしまう。
まず、国立西洋美術館や、国立博物館、藝大美術館がある上野と違い、ヒルズに美術館があること自体、あまり知られていないんだろうか? 


レンブラントやベラスケスの肖像画、エル・グレコの宗教画など重厚な絵画の展示からはじまり、ミレーの農村風景、モネの風景画、そして日本人にもっとも人気があるであろう印象派の画家たち、そして近・現代の静物画へと並んでゆく。

わたしがいちばん印象に残ったのは、クロード・モネの「小クルーズ川の峡谷」。
フランスのとある地方の谷の、ごつごつした風景を描いているのだが、その峡谷がまるで火山の溶岩の流れた跡のようななプリミティブな造形で、華やかさはないものの、なんだか、原始の地球の姿を思わせる。
ついわたしは熊本県の阿蘇をどこか連想してしまった。
モネ自身もその風景に心を奪われたのか、数ヶ月この地に滞在して、創作を行ったのだという。
ほかにもモネの絵では、イギリスの海を描いたものが、明るいライトブルーのタッチで、目をひく。


クロード・モネ「ヴァランジュヴィルの崖の漁師小屋」1882年


ミレーは「落穂拾い」「晩鐘」「種蒔く人」などの絵が有名だが、今回の展覧会では、同様の、農村の農民を描いた「馬鈴薯植え」が展示されていた。朴訥な農民の姿は、21世紀でも農業国で、食料自給率が100%を超えているフランスの原点を見る思いがする。
この絵の複製画をわたしの実家の母のプレゼントに買う。
実は、母の実家(わたしからすると母方の祖父母の家)に昔、ミレーの「晩鐘」の複製画が飾ってあったのだ。
わたしがミレーの絵を知ったのは、祖父母の家で、それを見たのが最初である。
日々の糧を下さる大地への感謝をささげる農民の姿は、おなじ農業を営む祖父母にも共感するものがあったからなのであろうか。
祖父母とも他界した今となってはたずねる術はないが、ミレーの絵を見ると、実直でやさしいおじいちゃんとおばあちゃんをわたしはいつも思い出すのだ。


フランソワ・ミレー「馬鈴薯植え」1861年


それからこの展覧会のポスターにもなっているゴッホの「オーヴェールの家々」。
いかにもゴッホらしタッチ、緑を基調にした色合いがさわやかな感じを出している。じっといつまでも眺めていたい絵だ。


フィンセント・ファン・ゴッホ「オーヴェールの家々」1890年


展示された作品はそれぞれに見ごたえがあったものの、出品数はそんなに多くないため、ちょっと物足りなさも残ってしまった。同じ52階には、東京が一望できるヒルズの展覧ルームがあるのだが、それは別料金。
美術展見た客ぐらい、サービスで入れてくれたっていいのに・・と思いましたよ。
五月の連休には九州に帰るので、友達へのお土産用に、絵葉書を多めに買って帰りました。